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『記憶にございません!』弱さから開く心の距離 vol.526

2019年放映された映画『記憶にございません!』。

国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれた総理大臣の黒田啓介は、演説中に一般市民の投げた石が頭にあたり、一切の記憶をなくしてしまう。各大臣の顔や名前はもちろん、国会議事堂の本会議室の場所、自分の息子の名前すらもわからなくなってしまった啓介は、金と権力に目がくらんだ悪徳政治家から善良な普通のおじさんに変貌してしまった。国政の混乱を避けるため、啓介が記憶を失ったことは国民には隠され、啓介は秘書官たちのサポートにより、なんとか日々の公務をこなしていった。結果的にあらゆるしがらみから解放されて、真摯に政治と向き合うこととなった啓介は、本気でこの国を変えたいと思いはじめようになり……。

https://eiga.com/movie/89619/

他の映画の予告の映像を見て気にはなっていた映画です。

大体気になる映画というものは、「これ絶対見たい」と思いつつも、記憶のどこか片隅へと消えていってしまい、再度出逢えないことが多いのですが、今回は免れたようです。

映画を見ての感想をまとめていきます。

これも一つのイノベーター理論か?

この映画を見て初めに思いついたのが、イノベーター理論です。

イノベーター理論については、こちらの記事をご覧ください。

何か新しい事象が流行するときの人と、その人の心理を分析した理論になります。

この総理、支持率は過去最低。

人間としても、目に余る行動に溢れています。

それでも一念発起、記憶を無くして起死回生をしようと心変わりしました。

しかし、そんな総理の周りについてきてくれる人はいません。

直近の秘書でさえも、それを隠すのに必死。

しかし次第に総理の心意気に感化され、徐々に総理を支持するようになっていくのです。

そして、総理はこの秘書を大事にしました。

とことん頼り、蔑ろにするなどはありませんでした。

いわば、内閣支持率はこの内側からの回復が転機となったのでしょう。

最も近くにいる自分を少しでも支持してくれる人を大事にする。

大切なことを思い出させてくれるような映画でした。

弱さを見せるから開かれる心と心

しかし、それだけでは周囲の人の心まで動かせません。

総理が周りからの支持を得られたのは、自分の弱さを余すことなく公にしたから。

秘密にすべき諸事は秘書に頼り、自らの人間が試されている場面はとことん人間として関わったのです。

その表と裏がない姿に心を打たれ、周囲は徐々に考えを改めていったのでしょう。

人はどうしても、自分の弱さというものはひた隠しにして自分のいいところで自分を表現したいものです。

しかしそれだけでは、人の目にはどこか去勢を貼っているように写ってしまうのでしょう。

弱さを見せるというのは相手を信頼すること、自分の存在を謙虚に見せること、そして、力を合わせたいという意思表示。

その全てがここに詰まっていたのでしょう。

自分を演じる力

これらは簡単にできることではありません。

でも、これらを考え自らコントロールしてできるとしたらどうでしょうか。

演者そのもの。

しかし、誰も不幸せにはなりません。

人をコントロールしているわけでもありません。

要は本来の自分のどの一面を出すかを取捨選択して行動するだけなのです。

誰にでもできることではありません。

自分の弱い部分を自分自身がしっかりと向き合い、認めたときに初めてそれを利用できるようになるのです。

この映画を見た最後、それを強く感じることになるでしょう。

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