見出し画像

豚も愛し合う時間が尊重されるこの国で


スウェーデンに来て1ヶ月と少しが経った。
たった40日ほどだけれど、ゆ っ く り とここでの暮らしを学び(時に嘆き&諦め)受け入れつつある。

店員の笑顔がないのは普通、サービスは基本遅いし、ミスがあっても謝らないし、店は早々に閉まるし、大事な郵送物は紛失する。
洗濯と風呂は関心が低くて散々だ。←丁寧な暮らしとやらの中でだいぶ優先度が低いように感じる
手を洗える水道は公園にない、トイレは観光地でない限り数が少なく基本有料で飲食店にないこともある。
医療費は無料or少額なものの、すぐに医師に直接診てもらえる訳ではない。
水回りの衛生を保つとか子育ての痒いところに手が届くような便利なグッズの類はない。あっても何故これでいいと思ったのだろうといった出来だったりする。
コンビニはコンビニエンスしていないし、安くて美味しい外食は幻級。
日本は清潔で、きめ細やかなサービスや物で溢れていた。
100均一の店内アナウンスの通り、あったらいいなが、そろってる!!!!!
そう、物に関しては。

では、ここスウェーデンにあるものは何か。
それは個人の選択の自由と、権利がある・・・と感じる。
見えない。けど、確かに有ると感じる。
権利があるからルールや法律があるんだな。だからこんな質問してくるんだな。と生活しているとあらゆる場面で気づかされる。

私が最初に驚いたことはベジタリアンフードやプランツベースの食品の多さ。
ハンバーガー屋さん、ラーメン屋さん、イタリアン、わりとどこに行ってもある。
スウェーデンの18-39歳の5人に1人はベジタリアンで、肉食を減らしたいと思っている人はもっと多いそうだ。
https://www.is.fi/ruokala/ajankohtaista/art-2000006647100.html
スウェーデン人の菜食にする理由が「環境>健康」という点も驚きだが、私が感動していることは、例え少数であっても自分が何を食べるかを尊重してもらえる点にある。
私は菜食ではないけれど、日本の菜食の人に対しての態度はひどい物だったと思う。
「肉を摂取しないと老けるのが早い」とか「何でもバランスよく食べなきゃ」「ファッションでやってるんでしょ」「肉食が環境に悪いのは根拠がない」
良かれといってるのかもしれないがお酒やお菓子を食べる人にはここまで言わないのに、やはり菜食にだけ特有の風当たりの強さがあった。
それに自分自身も全く偏見がなかったかというと嘘になる。
過去にSNSで焼肉の投稿をした際「肉を食べるなんてひどい。動物に優しい五十嵐さんがそんなことするなんて失望した」とヴィーガンの友人からリプライがあり菜食って過激だと思ってしまったことがある。
でもこの問題の根本は一緒で、本人が何を体に取り入れるか選択する権利を無視したことにある。
食事という精神・健康・宗教などが絡むセンシティブなことを他人がとやかく言う必要はないんだなと学んだ。
フランクにごく当たり前に実行されていることが新鮮だった。

びっくりポイントその2 子供の権利。
子供を子供あつかいしない。でもしっかり守る。
我が子は2歳8ヶ月で、会話は成立したいことの方が多いのだが、それでもみんな普通に話しかける。
癇癪を起こしてショッピングモールの床に突っ伏していると、お母さんの言うことを聞かなきゃだめだよと一緒に諭しアシストしてくれることもある。
フィリピンや韓国に行った友人がみんな赤ちゃんが大好きでヨチヨチかわいがってくれたと言う空気とはまた違うのかなと思う。

我が子は今保育園に入れようとしている段階なので、プレスクールの実体験はまだ書けないけれど、入れる前からカルチャーショックで全身が痺れている。
スウェーデンでは子供自身が学ぶ権利を持っているため1歳以降はプレスクールに通わせることができる。プレスクールは1万5千円くらい。
第5希望までの保育園の申込書を提出したら3〜4ヶ月以内には必ず手配される決まりだ。
東京都の保育所激戦区1位の江戸川区で1年半に渡り活動し両親ともにフルタイムでも17ヶ所の希望に落選後、認可外に何とか滑り込んだ身からすると・・・夢のようなシステムだ。
親や働いていたり学校に行っていない場合は、預けられるのが週30時間という制約がつくが、それでもこれはすごいことだと思う。
そして親の収入によって教育の機会が奪われることがないように、一部の私立を除いては3歳から大学卒業後まで学費が無料!!!!!!!

子供権利条約50条のうちから
2条:すべての子どもは差別されることなく、同様の権利を持ち、同等の価値を有する。(差別の禁止)
3条:子どもに関するすべての改善は、子どもの最善を第一に考える。(子どもの最善)
6条:どの子も命が守られ、身体的、精神的、道徳的、社会的に成長し、生きていく権利がある。(生きる権利、育つ権利)
12条:子どもには、自分の意見を表明する権利があり、子どもに関するすべての事柄について考慮させる権利がある。その際には、子どもの年齢と成熟度が考慮されるべきである。(意見表明の権利)

こういった条約のもと、実現されるために保育士の待遇を改善したり、虐待防止の法整備をしたり、相談できる機関があったりと、国が本気で取り組んでいっていることが素晴らしい。人口の少なさや経済の基盤が違うといったら、まぁそうなんだけれど、こんな国が本当にあったのかと目から鱗が落ち続ける。

スウェーデンでは子供を取るに足りない未熟な存在として扱うのではなく、一人の人間として扱う。
怒鳴ることをよしとしないし、叩いたり、閉じ込めたりすると逮捕される。
ではどうしても言うことを聞かない場合はどうしたらいいかというと、こんこんと言い聞かす。
子供の考えを聞いて、叶えられなければ何故だめなのか、どうすればいいのか、根気強く話す。対処法を考える。
親の時間と精神に余裕ができないとできないことだが、50年前は暴力によってのしつけが普通だったところから法整備や相談窓口の設置、牛乳パックに虐待防止の啓発を記載するなどあの手この手で価値観を変えようとしてきた流れがあるそうだ。

我が子を一人の人間として尊重できていたか。所有物としてコントロールしようとしていなかったか?自分の胸に手を当てて今までの言動を振り返ると、怪しい部分があるので、この国から学びたい。簡単なことではないだろうけど。

びっくりポイントその3
動物の権利について。
夫の会社には犬を連れて出勤する人がたくさんいて、犬専用フロアあり、カオスだったと言うことを初出勤の時に聞いた。
どうやら犬を飼うには厳しいルールあり、6時間放置すると逮捕。家の中でも2時間以上繋いでおくのも逮捕。犬舎外で毎日排泄させるのも義務。
じゃあどの会社もみんな犬を連れていけるかと言うとそうではなくて、連れて行けない人は犬の保育園に預けたり、ペットシッターを雇ったり、飼い主のコミュニティーでお互いに預かり合いをしたりする。
犬は社会的な動物として、人と交流したり、外を探索するニーズがある。故に権利がある。

レストランのテラスは大体が犬OKで、愛犬とともにFIKAしている人を毎日見る。
住居を探す際は、ペット可とわざわざ明記されなくても飼育していいし、バスや電車には犬が歩いたまま乗っていい車両が必ずある。
日本の愛犬家もスウェーデンの愛犬家も犬は愛する気持ちに差はないのだろうれど、言葉の話せない犬を研究して「こういう生き物でこう言うニーズがあるから、それを無視するのは尊厳の侵害だよね。法律します!」が実行できるのはすごいなと思う。
とはいえ動物アレルギーの人もいれば、中東では宗教上の理由で犬がNGの人もいるので、そういった人とも共存し合えるように、居ていい場所とだめな場所の両方を設けて、折り合いをつけているけれど、実際のところ犬が苦手な人は住みずらい国なのかなぁとも思う。

 ペットだけではなく、家畜福祉法という食べられる牛豚鶏たちにも権利がある。
牛は放牧しないとだめ、鶏はギチギチにカゴに入れてはだめ、豚は自由なスペースでオスとメスが愛し合う時間が必要とか、ホルモン剤は禁止、苦痛の少ない方法で屠殺するなど。
これを守ると設備や人件費が上がって、卵や肉の値段が上がるけど、それはまぁ仕方ないねということで1988年にいちはやく導入されたらしい。
豚でさえ愛し合う時間を尊重される国、スウェーデン・・・



ここで私が言いたいのは、スウェーデンまじすごいっっしょ!ということではなく、声が小さい存在、また言葉をもたない存在にも耳を傾けて、こういったニーズがあるんだと声をあげ、短期間でルールとして社会に実装されている例が存在しているんだということ。
命が平等に扱われようとしているのを見て、日本ではお金を稼ぐ人が主役で、その人たちが中心となり社会を動かしているんだなぁと思った。
お金を稼げない子供や学生だったころ、そして子供を持って会社で戦力外になってしまった時、とても自分が取るに足りない重要ではない存在に感じた。一度人生のB面に来てしまったらもう二度と戻れないのではないかという先の見えない絶望が胸の中にあった。
今も移民で母でとてつもなく弱い存在で、誰かの役に立つ力はまだないけれど、保育の援助と移民むけの無料の学校もあって、今からでも社会のために何か力をつけられる道がある。
長い人生でB面に来てしまうことは、抗えないことだけど、そういった時期を内包して進むから学びたいことや気づけることがあるのではないかと思う。
31歳、子持ち学生、頑張ります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?