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中学生、高校生の時に書いたショートショート―走馬燈、流星群、未来的金の斧銀の斧―

走馬灯と流星群は中学生の時書いた。
走馬燈は、ありがち。面白くない。流星群はどちらかというとなぞなぞ。あまりうまくはないし、意図がわかりづらい。
未来的金の斧銀の斧は高校生の時書いた。
まあ、意味がわかるかはその人次第(化学的知識が必要かもしれない、細かいことには突っ込むな)

走馬燈

チャイムが鳴ったので玄関のドアを開けるとスーツ姿の男がいた。
「こんにちは。例のものを届けにきました」
男はそう言い、私に小包を渡した。
「もう出来上がったんですか?」私は尋ねた。
「はい。まあ…でも…あと一週間あるかないかぐらいですしね」
「以外に速くておどろいたよ」
「まあ、まとめるだけなので...」
そういいながら男は持っていたポーチバックから紙を出し、私にサインをするように言った。私が紙に触れると大きく{認証}の文字が出た。
「ディスクのほうは見るか見ないかはあなたの自由ですがせっかくなので見ることをお勧めしますよ」そういって、男はそれじゃあとお辞儀をして消えた。
私がリビングでソファに座り封を開けると中にはディスクと説明書、本人であるかの確認の紙が入っていた。紙を消して、ディスクを机の上に置いてから、私はデバイスを使ってワインとチーズを机のうえに出した。そして、ディスクをデバイスに入れて起動させた。走馬灯、とデバイスに表示された。
この、走馬灯システムが導入されたのは30年前のことだ、すでに犯罪率も0.01%ほどに減少し、人が死ぬ次期も大体わかってきた為、人が死の危険を感じることが少なくなった。そのため本来死の恐怖によって見る、走馬灯を見る人が減少していた。そこで、政府は30年前に開発された記憶をコピーする装置を使い、記憶を保存しておき、それを死ぬ直前の人間に送ろうと考えたのだった。
私が死ぬと言われたのは一ヶ月前のことだ、医者に言われ、走馬灯作成のための最終記憶抽出をしてから約三週間でディスクが来た。
デバイスの画面の走馬灯の文字がフェードアウトして消え、赤ちゃんの私と思しき人物が映し出された。チーズをつまみワインを飲みながら幼児、幼少、少年と進む奇跡を見た。いかにも普通の人生であった。いや、おそらくこの国の大部分が私と同じような走馬灯ムービーを見ているのだろう。科学が発達するにつれ国はより組織化していった。人々は国から与えられた食べ物を食べ、国から与えられた仕事をし、国から決められた交際相手と結婚する。国から決められた人生を国から決められたように走る。だから走馬灯も、人それぞれのものではなくなっていった。私の走馬灯もそうだ、国から決められたことを決められたようにやっているだけ。今も、国から与えられた家の中で、国から与えられた家具に囲まれて、国によって作られた走馬灯を、国から与えられたワインを飲みながら、国から与えられたチーズを食べてみている。私が走馬灯を見終わった瞬間、私は左胸の激痛に襲われ意識を失った。もちろん、国から言われたように...

 

流星群

男は宇宙の流星群を見て、絶望した。機器は反応しない、管理センターに連絡しようとしても完璧に電気が通っていないらしい。数分後、男の体は凄まじい衝撃におそわれた。

宇宙管理センターに入った連絡によると、カラビス星に地球人の乗った宇宙船が墜落したらしい。男は全身打撲で、即死であったようだ。原因は宇宙船の機器の故障であったらしい。

未来的金の斧銀の斧

白い木々の森の中、斧の音のみが響き渡っている。その中で、ぼろぼろの服を着た男は同じく歯がぼろぼろになった斧を振り、白い木を一心に切っている。男はその木を小型火力発電所へと持って行くことで生計を立てていた。山を登るのは大変だったが、人口爆発以後、地球上の資源は瞬く間に減っていき、金銀はもちろんのこと、鉄やアルミさえも高価な資源となった世の中において、木を切り、山の近くにある小型火力発電所に運ぶという男の仕事は、その労力に値するほどであった。

ある日男は疲れていたのかうっかり手を滑らしてしまい、斧を離してしまった。斧は流線型の弧を描き宙を舞い、近くにあった泉の中へ落ちた。唯一の仕事道具を失った男は絶望を感じ、湖面を見ながら放心した。すると突然、爛々と泉が光り始め、湖の中心から世にもきれいな美女が現れた。男はその光景に驚き思わず腰を抜かし、しりもちをついた。泉の上に立った女神は言った。

「あなたが落としたのはこの金の斧ですか?」

そして、どこからともなく取り出した金色の斧を男に見せると、続けて

「それともこの銀の斧ですか?」

と言って、銀色の斧を男に見せた。

その光景を唖然としてみていた男はふと子供時代に聞いた童話のことを思い出した。題名は忘れてしまったが終わりの場面は明瞭に覚えている。男はその場面を思い出しながら叫んだ。

「いや、違う、俺が落としたのは歯がぼろぼろの鉄の斧だ」

これで金と銀が手に入ると男はほくそ笑んだ。しかし、女神の答えは予想とは違っていた。

「あなたはうそつきです。あなたが落としたのはこの木の棒であり、鉄の斧ではありません」

男は絶句した。そんなはずはない。俺が落としたのは鉄の斧だったはずだ。

女神は泉の中へと沈み始めた。男はそれに気づき、怒りと焦りの混じった顔で叫んだ。

「ま、待ってくれ、お、俺が落としたのは鉄の斧だ、第一、なんで木の棒なんて落とすんだ、おかしいと思わないのか!」

しかし、女神は泉へと徐々に沈んでいく。男は半狂乱で泉に飛び込み何とか女神を止めようともがき、叫んだ。だが、努力むなしく女神は泉の中へ消え泉は光ることをやめた。男は絶望に近い気持ちになり、痛みを感じた。心の痛みではない、体が痛む。理由はわからない、熱い、痛い、男はもがき苦しみ始めた。誰か助けてくれ、男は叫ぼうとしたが、声は出ない、男は池の中で泳ぐこともままならなくなり、やがて、池の中へと沈んでしまった。

白い森は斧の音さえ響かぬ静寂となり。やがて、雨が降った。

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