IFAの時代へ

金融庁が2017年に策定(2021年に改定)した顧客本位の業務運営に関する原則のなかに
【願客の最善の利益の追求】
原則2.金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、願客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。
とあります。
要するに保険メーカーや保険商品の流通部門である保険代理店や外交員は自らの利益を追求するために顧客の利益を無視して業務を行ってはならない、顧客の利益を減少させることなく顧客の利益を最優先にビジネスを行うべきであるということかと思います。
今さらー?!今この時代になってそういったことに行政指導が行われるのかと驚くばかりです。
人類の長い歴史において、また保険という制度ができてそれがビジネスとして定着してきて久しくなりますが、今ここにきてこのようなことが大きな課題となっているというのはあまりにも残念なことに思います。
ではこれまではいったい何だったのでしょうか。保険セールスパーソンの方々はどのようなビジネスを展開してこられたのでしょうか。
ビジネスの目的とは何なのでしょうか。「仕事はなんのためにするのですか」と問いますと多くの人は「生きていくため。生活のため。お金を稼ぐため」と答えられます。確かにそれが間違いだとまでは思いませんが、自分の生活を成り立たせるためであれば他の多くの人々の生活は成り立たなくなってもよいのでしょうか。顧客の犠牲のうえにしか自分の生活が成り立たないということであればそれはビジネスとして間違っています。
人間は生きていくために共同生活をします。自分が持ち合わせている能力を使って何かを産み出して、欲しいものや必要なもの、自分の能力では手に入らないものと交換するわけです。つまりビジネスとは自分に与えられた能力を使って作り出すものと自分では作れないものを交換する、つまり自分の能力と他人の能力を交換することであるといえます。古代は物々交換の経済でした。その後、貨幣が発明され貨幣経済となりました。お金を稼ぐということは、買い手が自分では手に入れられない価値あるものを提供するとこによって得られる対価として跳ね返ってくるということです。
ビジネスとは人々の役にたつものを創り出して提供することであるということです。であれば、自分の利益を最優先に考えてビジネスを展開してもうまくいくわけはありません。「顧客の最善の利益を図る」ということは顧客のためということはもちろんですが、なによりビジネスを成功させるための方法であるわけです。顧客のためではなく自分の利益のために顧客に利益を与えると考えてみてはどうでしょうか。私は幼い頃に祖父が食卓でお金のことや商いのことをよく教えてくれました。いまも強烈に覚えていることの一つは、「商売というものは10与えたら3ぐらい自分に返ってくる。自分が儲けたかったら先に相手に与えることや。10与えたら3。割合にしたらそんなもんやぞ。だから稼ぎが少ないということは人の役に立ってないということや。いっぱい人の役に立っていっぱい稼げ」ということでした。多くの保険セールズパーソンの方と接しますが、「コミッションをいくら稼いだか」「保険メーカーから表彰された」というような自慢話はよく聞かされますが「お客様にいくら儲けさせたか」「どれだけの利益を顧客に与えたか」というような自慢話は聞いたことがありません。
とある教えで「自分を愛するようにあなたの隣人を愛しなさい」という教えがあるそうです。自分以上に他の人を大切にしなさいということは人間はできない。本能として人間は誰も自分を一番大切にするようにつくられている。だから自分と同じように他の人を大切にせよということだそうです。人間は共同生活をするようにつくられています。ですから本能として自分の行為で他人が幸せを感じ喜ぶと快感を感じるようにプログラムされています。この本能を引き出しビジネスを展開していくことがセールズパーソンとしてビジネスパーソンとして人間として最高に幸せな人生になると思うわけです。顧客に最大限の利益を与える、その先に大きな成功が待ち受けています。

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