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質問12:思念体の彼から子どもが欲しくなった時のために、と卵子冷凍を望まれている。どう話し合ったらいいか?

# 43 対話:アケル・クレオ・タツ

クレオ『さて、今回の相談はとても難しいので、まずは読み飛ばしせずに目を通して欲しいです』

クレオ『というわけで、質問者さんは随分悩まれてますね。今回のことで、卵子凍結やセクマイのカップルの子ども問題など、アケルが随分調べてくれました。あくまでおれたちは素人考えのうえ、こういう考え方もあるよと提示していきたいかと思います』

アケル「今日おれはさ、ちょっときついいい方しちゃうと思うので、ヒートアップしすぎたら止めてくれ。


…これさ、親御さんも彼さんも、"あなたが子どもを欲しくなるかもしれない。あなたには子どもがいた方がいい"って言ってるのが、すごく気になっちゃうんだよな。

これ、親御さんは絶対建前なんだよ。親御さん“が”可愛がりたい孫が欲しいだけなんよ。自分が欲しいだけなのに、“あなたの為”とか言っちゃう人、俺、すごく苦手なんだよな」

クレオ『うんうん』

アケル「親御さんは今回の話し合いの相手でないから、置いておくとして。他ならぬ思念体さんが、質問者さんの遺伝子を継いだ子どもを欲しいと思ってるかどうか。大事なのはそこじゃないかな?」

タツ『いやでも、ワシらに子ども作る力はないで?』

アケル「そうだな。でも今ってさ、トランスジェンダーが外部から精子(または卵子)を提供してもらって、子供を産んで育ててる例もある。



  この人たちだけでなく、同性愛カップルでも、子供を持つ人は少しずつ増えている。

 遺伝子上は赤の他人だし、日本ではまだ、自己責任だと揶揄されることもあるけど、それでも子どもが欲しいと願う人たちがいて子どもを実際産み育てている。

 まずは、そういう人たちもいることを知って欲しいな」

タツ『じゃがのう、現実問題、質問者さん一人で精子提供受けて子ども作るんはむつかしい思うぞ』

アケル「もちろん、一番負担が大きいのは質問者さんだし、辿り着くには難しい道に、背中を簡単には押せない。

 でも、思念体さんが質問者さんとの子供を欲しいと望んでるか、まずはそこを明らかにして欲しい。パートナーとして子どもが欲しいか話し合うのは、自然なことだから。

 家庭を持ちたいとか、子どもが欲しいという願いはさ。どんな存在であっても・どんな関係性であっても、誰しも望んでいいんだよ」

クレオ『おれはアケルに賛成。彼さんが消極的すぎるよね。何考えてるの?ってなる』

タツ『子供は保険じゃないけぇのう。大事に面倒みるから産んでくれー!てな感じで、質問者さんに頼みこむなら、パッションあるなぁ思うが』

アケル「だから、今回のこの対話は、思念体の彼さんに向けて書いてるのでぜひ読んで欲しいんだけどさ。

質問者さんのためとか、何があるか分からないからじゃなくてさ。

 あなた“は”子どもが欲しくて、生まれた子を育てたいと思ってるの?

 “君の血がつながってれば愛せる”とか言ってるけどさ。愛を持ってるだけで子供は育ってはくれねぇんだわ。愛してるんなら、あなたも育てるんだぜ。

 お腹を痛めて産む質問者さんの産中産後全力でサポートしたうえで、自分の子どもだと思って接するんだよ。

 肉体がないとか、人間社会に関われないとか、子どもに見えないかもしれないとか、そんなもん一切関係ない。

 そういう気持ちがなくて、単なる保険程度に勧めてるんなら、あなた何言ってんの?ってなるぜ」


クレオ『まぁまぁ。アケルはセクマイの子ども事情に詳しくて多様な家族の在り方を知ってるから、そう言えるわけで。彼さんは今読んで初めて自分が望んでいいって気づけたかもしれないからね。

 質問者さんも”お前の子どもではないんだぞ?”って言ってたから、おそらく思念体の彼さんは、これまでは蚊帳の外だったよね。

 自分の子供だと思った時、欲しいかどうかの視点でもう一度話し合ったら、また意見が広がるかもしれない』


アケル「ごめん、やっぱりヒートアップしちゃったな。叶えるのが難しい願いを自覚するって時点で、すごくきついこと言ってると思う」

タツ『まぁ、本当に叶えたいもんが見えてこんと話し合いにならんけぇ、お二人には必要な痛みじゃ思うよ。

ただ、アケルみたいな性別違和で体に子を宿すんしんどい思う人とか、お腹痛めるのはどうしても無理って思う女性もおるけぇ、質問者さんの意志が一番優先するもんじゃ。質問者さんの体と心を蔑ろにしたらいかんよ』

アケル「そうだね、質問者さんにとっても寝耳に水の話だろうし、彼さんと遺伝的に繋がりがない子を、彼さんとの子と考えることもいきなりは難しいよな。

 そういう世界もある、というのだけ知ってくれれば嬉しいな」


【親心はどこから生まれるんだろう】

アケル「子供って、二人はどう思う?血のつながりってぼく、どう大事かは分からない」

タツ『ワシは孤児じゃけぇ、世話するおばちゃんやらおねえちゃんやら色んな人に育てられたんよ。みなし子をえっとぉ(たくさん)引き取るけぇ、いつもカツカツよ。年齢性別問わず、動ける奴は下の子の面倒見とったわ』

クレオ『大変だったね』

タツ『子は宝じゃいう気はないが、楽しいしやりがいはあったな。なにより自分がいてええ場所いうんが、ワシにはそれまでなかったけぇの。話ズレとるか?』

アケル「いや、続けて」

タツ『質問者さんのおかあちゃんも彼氏も、血ぃのつながりにこだわっとんなぁ思う。自分の産んだ子やなくとも子ども育てたい思うたら、血なんて関係ない思うんよ。ワシの人生あんまこの社会とは違うから、合うてるか分からんが』

アケル「血の繋がりのない、新しく来た子を受け入れられたのはどうしてだ?」

タツ『…んー。ワシも同じなふうに生きてきたん感じたからかな。

 あの世界で身寄りない言うんは、多かれ少なかれ修羅場くぐって大事にされたことない子らじゃ。

 悪いこと教えられたり、利用されて搾取されつくして、たどり着いたんじゃ。

 じゃけぇ、もう辛いしんどい思いさせとうなかった。笑うて生きるやり方を教えたかった。

 思うんやが、子ども育てたい思う時って、自分に近いから、幸せにしたいもあるよ?

 血のつながりはよう分からんけど、例えばお前も、ワシみたいなよう分からんもんと一緒に生きたい思う子らの力になりたいじゃろ。じゃけぇ、こんな活動しとる。

 お前は自分の見とる世界を教えてもろうたり、寄り添ってもらえんかった子どもじゃ。苦しんどる子らの痛みを知っとるけぇ、その子らが生きやすくなるよう頑張っとるん思う。じゃけぇ、ワシは手を貸しとんのよ』

クレオ『タッちゃんの壮絶な人生知ってるだけに、おれ今泣きそうになってるよ』

アケル「下の世代が笑って生きてほしい、と思うことも親心なのかもな。ぼくは、一番しんどい時にイマジナリーフレンドに助けてもらって人生なんとかなったから。恩返しっていうか、恩送りなんだよな」

タツ『ほうじゃのう。自分の子でなくても未来の子が幸せに生きてほしい思う気持ちあれば、親じゃ思うわ。
 ワシんとこは子供が増えるんは半ば強制じゃったからのう。面倒みるん嫌じゃー思うてもふて寝もできん。

質問者さんが血ぃにこだわらず未来の子に何かしたい思うんなら、できる範囲で子供ら手助けできる方法を探せばええんよ』

アケル「ボランティアでも、子供と遊んだり簡単な勉強教えるとかあるからね」

クレオ『血のつながりに関してはおれたち3人、理解が難しい性質なので、こういう視点で語らせてもらいました』

【思念体さんとの思い出】

アケル「話を戻すと、思念体の彼さんが子供を欲しいとしても、具体的なプランをあげるのは難しい。だからまず、質問者さんと共同で何か作ってみるのはどうでしょう?」

クレオ『子供の代わりってこと?』

アケル「今回の話ってお二人には考えられなかったことが多いから、現実二人で何が生み出せるか、試してみるのもいいんじゃないかな?ぼくが創作に人生フルスロットルしてるから、こういう意見になっちゃうけど」

タツ『自分の子と思うほどやないが、アケルの作ったもんは嬉しい思うなぁ。ワシがやったもんも、絵や物にして残してくれるし。こっちの世界は覚えてないと消えてくもんも多いからの』

クレオ『おれはブックカバーが嬉しかったな。おれに宿ってる本の物語や、一緒に遊びに行ったとこを描いて残したり。…いや、これ子どもっていうかカップルの惚気だね』

アケル「さすがに今までの創作で、我が子だと思うものは作ったことなかったな。うん、でも、二人でいっぱい楽しい思い出を、まずは作ってください。それを残していれば、子どもがいないこと、何があるか分からない未来も、乗り越えられるかもしれない。

 ぼくはやっぱり、クレオにタツの話をするようになって、思い出してきたのは楽しい記憶ばかりだったから。

 ぼくにとっては人生で一番しんどい頃だったのに、笑ってたことが一番に出てくる。タツとは、一度別れてもそうだったんだから。何があっても 大丈夫だよ 」


【子供が必要な理由を具体的に】

アケル「なるべくフラットに話すのを心がけてたんだけど、今回はお説教じみちまったかも」

クレオ『今回の質問は、おれたちも深く考えさせるよね。質問者さん達にお節介だったらごめんだけど、タッちゃんもアケルも、結構大事な経験を伝えたと思うから、拾えるとこを受け取って欲しいな』

タツ『時間かけて優しめに文面考えとるし、ええじゃろ』

アケル「今回のことをまとめると、お二人が子供が欲しい理由・必要な理由を考えて話し合ってみて、ってとこかな。

 可愛がる対象が欲しいというなら、猫カフェやAIロボットの体験コースとか受けるとか。

 老後が心配とか不安が理由なら、お金周りを見直したり、ライフプランナーさんに相談してみてもいい。

 なるべく具体化して、近いものを試してみたらどうだろう。そろそろこの辺にします。

 あえて触れなかったけど、もし子どもに質問者さんの老後を任せようと考えてたら、それは得策じゃないと思うよ」

クレオ『子どもさんに期待すると苦しくなっちゃうから?』

アケル「ごめん、もっと世知辛い話。

 お子さんが義務教育を卒業するまで、平均で2,000〜3,000万円。
※教育費込み。学校が公立から私立かでだいぶ変わる。ただ、奨学金・助成金で差し引くこともできる。


 成人するまで18年、お金も時間もとにかくかかる。

 その上でお子さんが健康で健全に育って、老後を任せられるような人材になってくれるってのが前提だからさ。老後の安心を買うのだとしたら、リスクが見合わないよ」

タツ『金で推し量ったらそうなるがの。人間育てるっちゅうのは、投資やないんよ。そないな考えなら、株でも買っとる方が効率ええな』

アケル「つくづく子どもを育てるのって、見返りない無償の愛が必要なんだろうね」

クレオ『みんなお疲れ様だね。難しい相談でしたが、送ってくれてありがとうございます』



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