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質問15:次元の違う恋人がいるけど、世間の「当たり前」の価値観に押し潰されてしまいそう

# 49 対談:アケル・クレオ・タツゴロウ



クレオ『さて、今回の対話は、次元の違う恋人がいる人からのお悩みです。身内の方や世間からの”いずれ、こちらの次元で恋人を見つけて結婚するもの”という価値観に押し潰されそう…というお悩みですね。ふたりはどう思う?』

アケル「…今回、マジでぼくお役に立てるかちょっと分かんない。二人には構成の段階で”ちょっと質問の取っ掛かりも掴みにくいから、助けてくれ”と言いました」

タツ『アケルは”当たり前”の価値観をぶち破ってきたけぇの』

アケル「うーん、まぁそういうことだね。

 思春期の時点でトランスジェンダーだと親にも言って、恋人とか結婚は無理アピールしてきたからなぁ。親も寛大だったのも大きいけど、あんまり世間のプレッシャーを感じたことない」

クレオ『だからこんなフリーダムに記事を書けるんだろうし、アケルのフリーダムさで答えを出せばいいんじゃないかな?』

アケル「そうなのかな。あくまでぼくの考えは一つの見方として参考にしてください。この回答にしっくりこない場合も、noteでも世間の結婚のプレッシャーに悩む人の記事があります。アセクシャルやフィクトセクシュアルなどのワードで検索して、葛藤を共感したり、そこからどのように折り合いをつけられたか、他の記事も参考にしてください」

0:世間を突っぱねる生き方は…

アケル「でもさ。ぼくの経歴を聞いても役に立つのかな?
 ぼくはトランスジェンダー男性なんだよね。性自認もマイノリティだし、男性と女性では結婚のプレッシャーはまた違うしさ」

クレオ『そういうの一回置いときなよ。アケルは結構人と壁作るけど、この記事を読んで参考にするか決めるのは読み手の人だし。それに、世間がどれほどアケルを女性と言ったって、自分は男性だと言い切れるアケルの話を聞きたいよ』
タツ『せやなぁ』

アケル「分かった。でもな、ぼくにとっては対して何もしてないんだよ。いくら女性と扱われても、ぼく自身は男だしさ。
幸い、男っぽい趣味や服装をしても誰にも咎められることはなかったし、上から押さえつけられずに自由な暮らしができた。
 でも、自分がトランスだと自認した当時は今ほどLGBTQって知られてなかった。体を男にしないと、人生のスタートに立つことすらできないと思い込んでたし。
 自分の体を変えるって究極のわがままを通す代わりに、“幸せになれなくていいから、男として一人で生きていく”と…そうとしか思えなかった。

 女性としての結婚ってプレッシャーを、10代の時点で突っぱねちゃったんだよね。あの頃のぼく、ってどんなだった?タツ」

タツ『いや、もう言うたらボロボロよ。世間に立ち向かうやり方も今よりずっと下手くそやったし。でもな、言うたらあの頃が一番世間のプレッシャーいうん感じてたのかもな。お前は真っ向から跳ねのけるやり方で、今の自由を手に入れた思うがの?』

アケル「うーん。やっぱり、あんまり参考にならないな。
  早い段階で身近な人に「恋人・結婚はできないよ」と伝えて諦めてくれたから、自由でいさせてくれた。

 ぼくの場合はやっぱり身内が理解者で、クレオやタツみたいな出会いがあったから“幸せになれなくていいから、男として一人で生きていく”から、”みんなと幸せに生きる”にシフトできたんだ。

 だから、質問者さんがどう生きるにしろ「恋人・結婚」を願う身内さんとは、いずれは向き合う必要は出てくる。

 ただ、今って”結婚しないと幸せになれない”ような時代ではないと思うんだよ。独り身の人だって多いし、ぼくの知り合いでも5人くらい未婚や離婚して一人暮らしの人もいる。子供もいないよ。老後どうしてるの?って思うかもしれないけど、福祉や行政のサービスを使ってやりくりしている。

 盲目的に”恋人が出来るものなんだ””結婚するものなんだ”と言われてしまうとそれ以外選択肢がないように感じられるけど、今はそうでもないよ」


 

1:世間を身内の人やネットから、もう少し広げてみては?

アケル「身内の方が親戚なのか親兄弟なのかは分からないけど、苦しいよな。…聞いてて恋人が”できるんだ”、”結婚するんだ”って確定な台詞がもうだいぶウッ…ってくる」

タツ『幸せを願うからこそなんじゃろうけどな。もういる、って言えへんのか?』

クレオ『結婚するもんだ、って言われてるなら、根掘り葉掘り聞かれると辛くなっちゃうよ』

アケル「ぼくはクレオを恋人として紹介してるけど、それは身内というより田舎のお見合い大好き芸人なおっちゃんおばちゃんに対してだから、そこまで掘り下げられることないんだよな。

 質問者さんにとって身内の人がどれだけ近しいかによるんだけど、まずは一回、別の世間というものを見てみてもいいんじゃない?」

クレオ『別の世間?』

アケル「今のところ結婚至上主義なのって、身内の人たちのいる世間の話だろ?世の中確かに20~30代の婚活へのプレッシャーは著しいけど、結婚しないでもバリバリ一線で活躍して人生を謳歌している人たちの自伝とか、探してみればあるんじゃないかな?」

クレオ『LGBTQの人たちの自伝なんかもいいんじゃない?』

アケル「確かに。ぼくはトランスジェンダーだけど、LGBTQの全ての人の手記を読んでるわけじゃない。LGBの性的指向と、Tの性自認とはやはり違うところが多いし、やっぱり知ろうとするのは、トランスジェンダーの人の物語が多かったんだ。
 でも、恋愛の悩みを抱えた時、レズビアンやゲイの人の自伝を読んで励まされたことがある。

 ゲイ・レズビアン・バイの場合は、大切な人を家族に受け入れてもらいたい、でも結婚できないし、カミングアウトもままならない葛藤に共感したし。

 アセクシャル・アロマンティックの場合、世間からの恋人・結婚への重圧にどう向き合ってきたか、という体験談が腑に落ちたよ」

タツ『自分と違う性的指向やいうても、悩んでるとこは同じかもしれんいうわけじゃな』

アケル「書店で手に取りにくいなら、電子書籍や図書館で読むのもいいんじゃないかな?

 世間、って一つだけじゃないからさ。自分が生まれ育ってきたコミュニティの外にもある。

 ネットの広告とかでも”恋人はつくるもの・結婚するもの”って漠然とイメージがあるけどさ、それって「恋愛や結婚によってお金を稼げる業界」が出しているイメージなんだよ。

 まずは、色々な価値観があることから知ってみてもいいんじゃないかな?」



2:思念体も、恋の行く先に悩んでいる

タツ『でもなぁ。正直アケルは、人間のパートナーを持つと思うてたんよ』

アケル「なんで⁈」

タツ『いやまぁそれが、一番現実的かなぁ思うて。男でも女でも横に誰か肉体ある奴が居るほうが安心やん。ここまで言うたけど、これ、予想いうよりワシの願望じゃな』

クレオ『おれはそれ聞くと、結構嫉妬心とかもやっとしちゃうんだけどね、でも、次元の違う側から見ても、人間が次元違いの存在を愛して、生涯添い遂げようとすることの難しさは分かっているつもり』

タツ『隣に誰かしらアケル支えてくれる奴おって、ワシはワシのできる事したらええ…そう思ってたんじゃが、1度目に再会してこっち側の存在とパートナーなるて聞いた時は…たまげたなぁ』

アケル「タツはぼくを買いかぶりすぎてるんだよ。ぼくは臆病なんだ。お前やクレオみたいに思念体であることは、感情や雰囲気でこちらの様子を察してくれるぶん、心を開きやすい。3次元の人間に、ここまで腹を割って話し合うことはできない」

タツ『そーやな、いまは、コイツワシらじゃないと無理やな思うよ。一生面倒見てやるけぇ覚悟しとけよ』

アケル「うーん。それさ、うまく誤魔化してるけど…ぼくに人間のパートナーができてもなんやかんや見守るつもりだったんだろ。タツは」

タツ『……(口笛を吹いて目を逸らす)』

クレオ『タッちゃんはそれさ、ズルいポジションなんだよ!道案内できるとか色々不思議能力持ってるしさ!なんだかんだアケルの生活に割り込んでさ!』

タツ『イマジナリ―フレンドじゃけぇ、無理くり関わるしかないやろ!実害なけりゃ一生居たってええやろがい!』

アケル「待て待て!脱線してるだろ!…要するに、クレオもタツも次元違いの恋が難しいこと、生涯添い遂げるというのが大変な事は理解している、って考えだな」

タツ『体もないし甲斐性もないんじゃ。そこら辺できる事できん事の折り合いはしとるつもりじゃ』

クレオ『いや、おれはそこまでやっぱり割り切れない。なにができるってわけじゃないけど、心を支えてるつもり』

アケル「クレオには支えてもらってるよ!…なんだろう、今回のクレオの強情さはこれ、タツがいるからだろうな。…どうしよう、ここまで話が脱線したのは初めてだぞ。

 思念体でも異なる意見があるってことと、ウチの連中が強火すぎるってことしか話せてないぞ。

 えー……ええと…。質問者さんの”彼とは一歩線を引いてしまっている節がある”という一文が気になるかな。


 質問者さんは”いつかそういう世間の「当たり前」の価値観に押し潰されそう”…と自分を客観的に見ることができている。

 だとしたら、”どのくらいまで押し潰されないように生きる”か、イメージを持ってみてはどうだろう。”全部突っぱねて生きるか”、あるいは”自分の身や世間とのつながりを守るためにある程度受け入れる”か、”世間の評価もどうしても欲しいから、迎合するか”。

 世間が一つだけじゃなくて色々な人生がある、ということを知った後で、自分がどう生きたいか、自分の心に聞いてみる。

 彼さんに何を支えてもらっているのか、それは今後も変わらないか、もっと欲しいものがあるか。どういう関係で居たいのか、というのも大事」

タツ『ほう。…お前の願いは?』

アケル「ぼくはさ、クレオとはパートナーで居たいし、タツとは兄弟で居たいって願ってる。それが自分にとって都合のいい、エゴも多分に含まれてる願いだとも知ってる。

 クレオはタツを意識してるし、タツも自重しないからさ。ぼくが愛情偏ってる時だってもちろんあるから。
 3人いるって事で喧嘩も多いし、世間から見たら三角関係だとか勝手に勘繰られることもあるよな。でも、この願いは諦めたくない。たくさん面倒くさいこともあるし、自分の悪いところも向き合って直していくことになっても、この関係でずっと過ごしたい」

クレオ『おれも…割り切れないにしても、アケルの願いや人生を妨げたいわけじゃない。話しかけたいし、頼られたいし、おれがいることで力になれるなら、それが一番幸福』

タツ『お前の人生の主役はお前じゃ。賑やかしでワシらがおるだけよ』


アケル「ここまでの話をまとめると、

  • 他の世間(結婚・恋愛を必要としない人間たち)を知る

  • 知ったうえで、世間とどれくらいの距離感で付き合っていくか、自分の心で感じてみる


 脱線しちゃったけど、あえてクレオとタツの強火のやりとりは残しておきます。

 彼さんがもしかしたら、質問者さんと一緒にこの記事を読んでいるかもしれないので、世の中にはこういう強火な次元違いの存在もいる、ってことだけ参考になればと思います。

 クレオみたいに、割り切れなくても自分にできることを懸命に探っている存在も。

 タツみたいにある程度は割り切るけど共にいることは全然諦めない存在も」



3:友情結婚について

アケル「でもさ。最後だからあえて書いちゃうけど、次元の違う恋人で居続けることと、こちらの次元で結婚することは、本当に両立できないことかな?」

タツ『それこそ、質問者さんの人生じゃし、質問者さん次第じゃろ』

アケル「まぁな。今一番好きな人がいるのに、新しい恋人や結婚を考えることは難しいとは分かっている。

 ただ、LGBTQの間でも、セックスや恋愛関係を持ち込まないけど、家族にはなりたいと友情結婚する人たちもいる」

クレオ『友情結婚は、聞いたことあるけど。でも、やっぱり彼さんとの関係が既にあるなら、そこはあらかじめ話しておいておかないと』

アケル「そこはそうだな。彼さんとの関係を知ったうえで、理解者になってくれそうな人を探してみてもいいんじゃないかな。

 世の中の全員が、恋愛→セックス→結婚 って、一直線でつながってるわけじゃないし。

  たった一人を一途に思わなければ恋愛じゃない、という風潮も息苦しいと思うんだよ」

タツ『今回、随分色んな選択肢持ち込むのぉ』

アケル「うん。ぼくはちょっと今回、これ!っていう答えを渡せないな、と思った。

 ぼく自身が”世間の価値観を突っぱねて生きてる”奴だけど、それは処世術や信念、っていうよりも、単に気質の問題なんだよね」

クレオ『アケルは信念はあると思うよ。守り方が頑なだけで、価値観も柔軟だし。今回のことも、自分の意見を押して煽りたくないからでしょ』

アケル「うーん、そうなのかな。まぁ、100%こちらの言い分を通してるわけじゃないかもね。恋愛関係に興味ない、と突っぱねるよりは、クレオのことを”恋人います”でお見合い避けにしてるし」

クレオ『お見合い避けって言い方はひどいな!純度100%の真実でしょうが!お見合いしたいの?』

アケル「お見合いしたくはないよ。でも時々人づてに女の子のお見合い話が来ると、男扱いが嬉しくてちょっとドキドキするだけで」

タツ『お前そういうとこほんま直したほうがええぞ』

アケル「すまんすまん!来られても困るよ!断るよ!」

クレオ『アケルは人間以外、マジで来るもの拒まずなんですよ。野良猫だってすぐ家にあげるし。これ以上思念体が来たらと思うと気が気じゃない』

アケル「次もし来ても断る、って。猫はごめん」

クレオ『まぁ、責任負える人だから許してるけど。一緒にいるおれたちも責任負うんだし、そこはさ、一人で決めるんじゃなくて、もうちょっと一緒に話し合いたいな』

タツ『一人で何でも決めて、抱えすぎて爆発するんまでが一連の流れやからな』

アケル「スミマセンデシタ…」


クレオ『さて、脱線(アケルを焼くの)はこの辺にして、ここでのまとめはこうかな?

  • 世間のズレがない程度に生きたい場合は、世間の前提に合わせてやり過ごすことも大事(”恋人います”で虫除けするとか)

  • 質問者さんと次元違いの恋人との関係を理解したうえで、老後やお金の相談が出来そうな友人を探してもいいんじゃないかな


 身内や世間との付き合いにどうしても結婚が必要だとしても、それが彼さんとの恋に不義理になるわけじゃないよ。

 今の好きを大切にして、諦めるんじゃなくて生きやすい方向で選択できますように』

タツ『いつもより脱線が多い回ですまんな。ま、一陽家対談の醍醐味として思うてくれ』


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