見出し画像

東海道NOW&THEN 12 「三島」

箱根から三島へ3里28町。約15km。箱根八里の後半。

 箱根馬子唄に「三島照る照る 小田原曇る 間の関所(箱根)は雨が降る」とある。わずか離れているだけで山の天気ががらりと変わることは、私自身、箱根の東坂で経験済みだ。元箱根を出て旧道の上り坂へ入るところに小さな祠「山の神」。中には馬頭観音と地蔵が鎮座している。箱根峠まであと少しの上り。そこを越えると三島へ向けて下り坂だ。 

 広重の絵は、朝霧の中、三島大社の大鳥居の前を早発ちする旅人が描かれている。早朝だからか馬に乗った旅人は、うつむいて眠っているように見えなくもない。三島大社は源頼朝が北条政子と参拝し源氏再興を祈願したとされる。また、商売繁盛の神様としても知られ「関東のえべっさん(戎様)」とも呼ばれているそうだ。

 旧東海道は箱根から国道1号線と時折交差しながら、峠を越えて山の中を三島へと下ってゆく。小田原北条の出城であった山中城址を過ぎると、突然目の前が開けた。そこには雄大な富士とそれを背景に人気観光スポット「スカイウォーク」。その広い駐車場を横目で見つつ、旧道はすぐ再び山の中へ。こわめし坂、臼転坂を過ぎるころには坂も緩やかに。しばらく行くと道路際に北斎の「凱風快晴(赤富士)」と広重の「箱根湖水図」を合体させた、漬物製造業の大きな看板。洒落のきいたアイデアに思わず頬がゆるむ。

 三島は浜松と並んで鰻が名物。大鳥居の向かいにある「すみの坊」は、その先にある「桜屋」と並んで人気店の一つ。昼食抜きで箱根から下ってきたので、昼はぜいたくに鰻をと思ったら準備中の札。中に声をかけて「弁当はできませんか?」と聞くと、準備中は焼いてないので無理との返事。残念。
  大鳥居から少し行くと「時の鐘」がある。古くから宿場に明け六つ暮れ六つを報せた鐘だが何度も造り替えられ、現在のものは戦後のもの。鰻の桜屋は、その隣。西見附を出てほどなく「八幡神社」。治承4年(1180)、兄・頼朝の旗揚げを聞き、奥州平泉から馳せ参じた義経がここで頼朝と対面し平氏追討が加速する。対面した時に2人が腰かけた石は、この八幡宮に「対面石」として残されている。

 対面石八幡神社を出ると、つぎの沼津宿までは約4km。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?