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「わるふざけ」制作雑記 (後編)

わるふざけ後編はスタッフミーティングからスタートします

ミーティング(9月後半から10月まで)
 撮影の形が見えてくると、ミーティングの人数も増えていきます。ロケ地も決め、役者も決まり、撮影手法など話し合っていきます。そして、今回も画コンテを作成しました。
 実際にロケ地の縮尺を図っておき、そのサイズで部屋をモデリングしていきます。人間モデルも演者の身長を事前に聞いておき、そのサイズに、そしてカメラレンズも仮想ですが本番で使う画角(C100はAPS-C)に合わせて作ることで、本番でもほぼ近しいアングルができると考えてました。特に今回は演者とカメラマンがフリーで動くので部屋内のどこに動けるかを詳しく知っておく必要がありました。

コンテ_2

近年、フリーの3DCGソフトやコンテを描くツールが登場しており、中に人型モデルがあることが多いです。PC操作さえできればこのような形でコンテを描くことができます。ちなみに今回もBlenderを使用しています(人間はMakeHumanという人間を作るフリーのプラグインを使用しています)
また、画コンテの一環として、ロケハンに行っていない人に向けて、ロケ地の画像と資料も別途作成しています。

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ロケ地の写真とCG図

そして、前回と違った点は、今作品においては読み合わせだけでなく、事前に場所を借りてリハーサルを行いました。今回はカメラマンもフリーで動きながら撮影をしていくので、お互いがぶつからないか、どこに機材を置くかなど事前に動いて確認が必要だと考え、どこか安く借りれないか探したところ、住んでいる自治体の公民館を借りることができました(ちゃんと申請しました)
そこに図ってきた部屋の長さの線を引き(テープ)実際に演者とカメラマンの動きを行いました。

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実際にお借りした施設の内観

最近ではリモートが主流となっていますが、実際演技を行う人たちに集まってもらって演じてもらうといろいろと見えてくるものがあります。といっても、昨今は難しい状況にあることは確かです。CG屋の自分としては、何か技術的になんとかできるようになることを願ってますね。

撮影(11/8~11/9)
 
ついに撮影の日が来ました、機材を搬入し、いざ撮影!!と考えていた我々に思わぬトラブルが!!

ドガガガガガガ・・・・・


外から大きな音が鳴り響きます。そう、なんと撮影の日からロケ地前の道路で工事が始まったのです。さすがに工事の日程までは抑えておらず、そのまま撮影を続行、工事の合間を縫ったり、音の届かないところで撮影したりとなんとか撮影を続行していきました。

スクリーンショット 2022-09-25 015555

香盤表

そしてこれが今回の香盤表です、4人の演者が入れ替わり登場していくので、どこのカットで誰が出てくるかをまとめてあります。香盤もテンプレートを利用しつつ、撮影ごとに加工して使っています。
 撮影は前回と同様、香盤に合わせて撮影していきます。そして、順調に進むわけもなく、いろいろな問題が起こります。やれ小道具がない、やれここどんなカットだっけ、などなど。人数を増やすこともできないのでいろんな作業を兼務していくので、もれも増えてしまい、いろいろと走り回ったり、買い出しに急遽行ったりしました。ちなみに、撮影は2日目の深夜までかかり、夜通し片付けをして、我々スタッフが岐路についたのは日が明けていました。
今回はロケ地を2日間借りることで場所代を節約し、2日間撮影を実現しました。これだけでも大きな進歩でしたが、やはり今回も撮影はスケジュールとの闘いでした。もっと予算を増やして撮影日を増やしたいものです。


編集・追撮
今回も編集はAdobe Premiereを使用していきます。そして今回はそこにカラーグレーディングを盛り込むため、SpeedGradeを導入することに決め、作業をはじめようとしたところ、なんと、編集を始めた1月に突然のSpeedGradeの廃止が決定、過去バージョンも入手できなくなるという事案が発生し、いきなり出ばなをくじかれてしまいます。
( AdobePremirereがいままでなぜプロの現場で採用を渋られていたかを思い出し、当時の自分はAdobeを信用しすぎた自分に怒りがわいてました) 
とりあえず、ファイル共有をあきらめてそれぞれオフライン作業を行い、今回もPremiere上で完結させていきました。ソフトウェアがサブスクリプション中心になって、いろいろな問題も出てきています。Adobeは最新版を推奨してきますが、最新のバージョンに合わせるためにはPCのスペックの仕様も必要になります、また最新版のバグがあってそこがトラブルになることがあります。古いバージョンに合わせるにしてもソフトが入手できないという問題が出てきます。ノンリニアになり低コストになったものの、そこにはいろいろな問題が秘めています。
今回も足りないカットを追撮していきます。この時は監督の犬竹と2人、一眼レフを持って都内を駆け巡ります。
あと、本編中、地味にCGを使っているカットがあります。デジタル時計の数字はCGで作成していたり、邪魔な影を消したりしています。派手な爆発だけがCGではないのです!!

スクリーンショット 2022-09-25 024816

この文字盤はCGで作りました


公開(2/24、25,26)
編集を終え、映画が完成したら次は公開です。制作打ち合わせのときから公開を見据えてスクリーンを探していました。その中で我々がレンタルしたのは神宮前にあるCAPSULE という劇場をお借りし、過去作品を含めて3日間上映をしました。(公開日、スケジュールと違っていましたね)

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チラシもちゃんと作成

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監督による挨拶

やはり、ちゃんとしたスクリーンで流すというのはとてもうれしいものです。どうしても短編映画ということで劇場公開に載せるのはなかなかむつかしく、都内であっても貸してくれるスクリーンを探すのはなかなか大変でした。公開イベント後には打ち上げを行い、各人の忖度ない意見に打ちのめされながら、それでもまた作っていきたいよね、という話をして、「わるふざけ」制作プロジェクトは終了となっていきます。この後は制作した作品を映画祭に応募をしていきました。

まとめ
今回も長くなり、かつ一旦記事を書くのが伸びてしまいましたが、2017年から18年にかけて制作した短編映画「わるふざけ」の制作まとめとなります。
まだまだトラブルを引き起こしますが、これまで3作作ってきたことで、予算感や制作の流れノウハウがだいぶ溜まってきました。そして、短編映画であるが故になかなか劇場で流せなかったり、映画祭なども少なかったりと制作後の展開の難しさにも気づいてきました。
とにもかくにも必要なものはお金と時間、いや時間もお金が解決します。短編映画にはそんなに大金がかけられるものではありません。ただ、全体の工程を知れば、ここは仲間を集めてやっていける、機材はこれが転用できるな、知り合いの空き地使わしてもらえるかも、といった具合にいろいろ手は見つかるものです。お金がなければ工夫と人です。
そして私たちももっと良い方法はあるのじゃないか、と考えて日々次回作について考えています。この記事が少しでも自主映画制作の参考になれば幸いです。


そして、この打ち上げの末、ついに我々は長編映画制作を決め、動き出します。予算も集め、シナリオも完成に近づいたころ、世界を揺るがすあれがやってきてしまうのです・・・

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