「誰が、誰で、誰と」制作雑記 (後編)
後編は実際にスタッフが集まり始めてのミーティングから、撮影、編集、公開について、まとめていきます。
ミーティング(8月後半から11月まで)
はじめは2人でスタートしてきた映画制作も、役者、技術スタッフと集まるにつれて打ち合わせも増えていきます。はじめはシナリオを渡し、技術スタッフとはどんな機材が必要かを相談し、撮影の順を相談します。また、役者陣にはシナリオを読んでもらいイメージを作っておいてもらいます。そして、技術、役者を集めてのミーティングでシナリオとともに画コンテを制作して配布し、撮影時のカメラの動きを確認してもらいます。
前作までは監督が書いた場面ごとの内容を記載したシート(字コンテ)で撮影をしていました。実際に役者がロケ地に立ち、カメラで覗いたところでアングルを決めていきます。ただ、これはかなり時間が必要になります。当然、ロケ地を借りる時間が延び、製作費が膨らんでいきます。
※以外と思われるかもしれませんが実写作品ではシナリオ、字コンテまで用意して、絵コンテやイメージボードを作成しないこともあります
そこで、前作の字コンテから、今作からは絵コンテを制作しました。
幸い宮口は3DCGを生業にしており、格別絵が得意というわけではありませんが、ロケ地が決まった時点でロケ地の寸法を測り、それをもとに3Dで部屋を作成、3Dキャラクターを置き、場面を作成しコンテを作成していきました。
現場では撮影の流れからこの通りにならないこともあります。それは、あくまでこのコンテの画が参考であり、参加メンバーが共有のイメージを持てるようにという意図で作っています。また、コンテを作成することで撮影時のミスや時間の節約になりました。
そして撮影の前に、全役者、技術が集まり、リハーサルを行います。実際にシナリオを読み合わせとキャストの動きを行い、カメラマンもアングルなどを確認していきます。実際には読み合わせを数回行うのが好ましいですが、なかなかスケジュール的にも費用的にも難しいのが自主映画の厳しいところです。
撮影当時から、現在大きくかわった点はオンラインが一般に認知されたことでしょう。今ならZoomなりSkypeなりのオンラインミーティングを多用するのがよいかと思います。
撮影 (12/17)
5月に企画を始めて12月、ついに撮影の日がやってきました。借りたのは予算の都合上1日だけ、朝から夜までですべてのカットを取り切らなくてはなりません。そこで1日の撮影順などを記した香盤表を作成します。
(実際に作成した香盤表が下図になります)
映画の撮影において、シナリオの流れに沿って撮影していくことを順撮りといいます。しかし、スケジュールを考えるとそれは難しく、シナリオの日中や夜、場面などをまとめて撮影してしまいます。そのときに重要となるのがこの香盤表になります。
(いつかは順撮りしていきたいものです・・・)
撮影に入ってしまうとあとはひたすら撮影をこなしていきます。撮影中にはいくつものトラブルが発生しますがもうその場で臨機応変に対応しながらロケ地の終了時間を見つつ、ただただ黙々と撮影していきます。
控室ではカメラ出力をテレビに映し確認できるようにしてました
監督は撮影された画を見ながらカメラマンや音声と相談し、演者はシナリオを確認しつつ演技プランを練り、プロデューサーはロケ地の終了時間を見ながら進捗を報告し、なんとか撮影を終わらせるようにと動いていきます。
監督のこだわりとロケ地の終了時間のせめぎあいは撮影現場で良く起こる問題です。なんとか想定していたカットを撮影し終え、先に演者を帰し、技術スタッフは機材の片づけをしていきます。
(そのときに音声と撮影データをPCにコピーし持ち帰ります)
これで撮影は終わり、と思いたいのですがこの後にある仕事が待っています。それは機材の返却です。撮影前日に借りた機材を翌日返却しに行く必要があります。翌日仕事がある場合には出勤前や休みを取得しておいて返却しにいきます。ここで機材を返却し終えて、やっと撮影が終わります。
このように撮影はあっという間に終わります。始まるまであれだけ時間をかけてもいざ撮影してみると一瞬です。
編集・追撮
撮影が終了したら、次は編集作業です。ここからは孤独な作業、ひたすらPC上で試行錯誤を繰り返していきます。
編集に使うツールはAdobe Premirereを使用します。映像編集ソフトは数ある中でPremirereを選ぶのはソフトの入手のしやすさと長年個人で使用されてきて誰しも1度は触ったことがある、そして他Adobeソフトとの連携が取れるという点です。調音、エフェクト、タイトルからカラーグレーディング(当時はSpeedGradeというカラーグレーディングソフトが存在してました)
まで、一通りのソフトがあるので対応しやすいです。
編集の手順としてはまず粗編集(オフライン編集とも)して大体の流れを作ります。そこから必要なエフェクトや効果音を集め、そこからはひたすら編集を繰り返し完成を目指していきます。
編集をしていて気がつくこと、それは画が足りないということです。演者の動きは全部あるのですが、それをつなぐだけではどうも切羽詰まった感じになり、外観などの間を補完する映像、ブリッジがほしいと思うことが多々あります。そんなとき撮影の合間でいろいろ撮影しておけばよかったのですが1日しかない撮影日、カットを撮りきることに意識が向き、そういったものを撮る時間がなく撮影は終了します。そんなとき、そういったカットや効果音などを撮影しにいきます、これが追撮です。このときも自前の1眼レフで屋外や道路、効果音など編集の合間に監督と自分の2人で何度か撮影しにいきました。
公開
映画を製作したら最後に公開です、と言っても無名の人間の自主制作の短編映画を公開してくれる劇場なんてありません。この時は小さなスペースを借りて知り合いに見てもらう会を開きました。また、制作した映画はそのあと映画祭に出品をしていきました。
まとめ
かなり長くなってしまいましたが、これが2015年から2016年にかけて制作した短編映画「誰が、誰で、誰を」の制作のまとめです。実際15分程度の映画を撮影するのにもここまでの作業が必要になります。大変でしたが、それでも準備は楽しいし、撮影は祭りのように気持ちが載ってきますし、編集はただただ自分との闘い悩みます。そして完成する映画を人に見てもらい、いろいろ言われて喜んだり凹んだりします。
この記事を読んでぜひあなたも映画を撮影してみてください。
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