「J2の頂点を目指すなら勝ち続けなければいけない」のは本当なのか検証してみた。

はじめに

J2優勝を目標として掲げたファジアーノ岡山。目標である優勝を遂げるには単純に考えれば「全部の試合に勝てば確実に優勝できる」のは確かであるが、現実的にそうはいかないもの。では、これまでのJ2リーグを征したクラブはどんな戦績だったのか。検証することでクラブにとっての一助となれば幸いです。

個人的仮説

「全部の試合に勝てば確実に優勝できる」のはそりゃ当然であるが、自分の肌感覚では自動昇格を決めたチームは序盤より終盤の勝ち点が多いという印象があった。それは真か偽か。検証していきたい。


データピックアップ 〜22チーム制全42節となった2012年以降の優勝クラブの戦歴を確認する〜

以下、
〇〇年 クラブ名
年間勝敗・勝ち点(5節/10節/20節/30節/35節時点の順位)
前半戦勝ち点/後半戦勝ち点
順位推移グラフ
開幕5試合の勝敗
終盤5試合の勝敗([]は優勝決定節)
短評

として記載します。

・2012年 ヴァンフォーレ甲府

24勝14分4敗 勝ち点86(2/3/6/1/1)
前半37/後半49

○○○●○ 勝ち点12
△○△○△ 勝ち点9(第38節に優勝決定)
全体的に引き分けが多いものの、エースストライカーのダヴィの活躍で中盤から躍進したヴァンフォーレ甲府が優勝を遂げた。年間を通じて4敗と手堅く勝ち点を積み上げた一年。

・2013年 ガンバ大阪

25勝12分5敗 勝ち点87(8/2/1/1/1)
前半46/後半41

△○△△△ 勝ち点7
○○[○]○△ 勝ち点13
「そもそもなんで落ちてきたんや」というツッコミはさておき、開幕こそ勝ちきれない試合が多かったものの、生え抜きのエース宇佐美貴史の復帰もあり最終的には年間得点数99。圧倒的な攻撃力で同じく「なんで落ちてきたんや」枠の神戸との昇格争いを征する。

・2014年 湘南ベルマーレ

31勝8分3敗 勝ち点101(1/1/1/1/1)
前半60/後半41

○○○○○ 勝ち点15
●○○○○ 勝ち点12(第33節に優勝決定)
驚異の年間勝ち点101。チョウキジェ監督率いる走り勝つサッカーで一年を通して安定したシーズンを送り多くのJ2民にトラウマを植え付けた。それにしてもすっげぇなこの順位の推移。パンサラッサかよ。

・2015年 大宮アルディージャ

26勝8分8敗 勝ち点86(10/5/1/1/1)
前半46/後半40

○●○△△ 勝ち点8
△○△[○]○ 勝ち点11
3チームが勝ち点80overとなったシーズンを征したのは渋谷洋樹監督率いる大宮。「負けないサッカー」で序盤から着実に勝ち点を積み上げ、混戦を征した。勝ち点こそ大混戦だったが、順位の推移で見れば中盤からの独走っぷりが目立つ。

・2016年 北海道コンサドーレ札幌

25勝10分7敗 勝ち点85(6/2/1/1/1)
前半45/後半40

●○△○△ 勝ち点8
●○●○[△] 勝ち点7
シーズンを征したのはこの年からチーム名を変更した北海道コンサドーレ札幌。手堅い勝利を積み重ねて一時は独走体制に入ったかに思えたが終盤に失速。追い上げてきた松本・清水含め3チームに優勝の可能性が残されたまま最終節までもつれ込んだが最終節で引き分け、J1昇格を決めた。

・2017年 湘南ベルマーレ

24勝11分7敗 勝ち点83(1/3/2/1/1)
前半43/後半40

○○△○○ 勝ち点13
○[△]●△△ 勝ち点6
主力流出の影響からか2014年ほどの独走体制にはならなかったものの、チョウキジェ監督体制の継続性が功を奏し、第39節の岡山戦での引き分けにより優勝を決めた。

・2018年 松本山雅

21勝14分7敗 勝ち点77(20/9/5/2/1)
前半37/後半40

△△●△● 勝ち点3
△●○△[△] 勝ち点6
序盤は一時は20位にまで落ちたが、リーグ最少失点で手堅く守り勝った松本山雅が征したシーズン。最終的に1〜4位までの勝ち点が77/76/76/76とほぼ横並び状態となった。

・2019年 柏レイソル

25勝9分8敗 勝ち点84(2/5/6/1/1)
前半37/後半47

○○○○△ 勝ち点13
○●○○[○] 勝ち点12
J2民にとっては2014年以来のトラウマとなったであろうシーズン。チームを最も知るネルシーニョ監督に率いられた柏レイソルは前年夏加入したケニア代表オルンガが大暴れ。優勝が決まったのは最終節。京都サンガ相手に13-1と驚愕の攻撃力で優勝を確実なものとした。

・2020年 徳島ヴォルティス

25勝9分8敗 勝ち点84(3/2/3/1/1)
前半43/後半41

○●△○○ 勝ち点10
○●△○[●] 勝ち点7
新型コロナウイルスの世界的流行により、約4ヶ月間の中断を強いられた一年。各クラブは日程の振替により過密日程でのプレーを余儀なくされた。そんな一年を征したのは、就任四年目となるリカルド・ロドリゲス監督率いる徳島ヴォルティス。スペイン出身の指揮官によって仕込まれたパスサッカーでリーグを競り勝った。

・2021年 ジュビロ磐田

27勝10分5敗 勝ち点91(11/4/2/2/1)
前半47/後半44

●●○○● 勝ち点6
○○△[△]○ 勝ち点11
コロナ禍の影響がまだ残る2021年のリーグを制したのはジュビロ磐田。序盤こそ勝ち星を取りこぼす試合が多かったものの、24節から無敗を継続し、追走する京都サンガを振り切って優勝を遂げた。

・2022年 アルビレックス新潟

25勝9分8敗 勝ち点84(12/5/1/2/1)
前半42/後半42


△△△●○ 勝ち点6
○△○[●]○ 勝ち点10
徐々に「アフターコロナ」の世界が見えつつあった2022年はアルビレックス新潟が征した。前年まで率いたアルベル監督がFC東京に移籍することになったものの、後任の松橋監督によりボールを握りつつ縦にも早く攻め上がるサッカーを武器にリーグ優勝を遂げた。

データからの検証


冒頭に述べた自分の仮説、「優勝クラブは終盤の勝ち点が多い」かという点からまず検証していく。

・リーグを征したクラブは、「先行型」か「追込型」か
ここでは、前半戦のほうが勝ち点が多いクラブを「先行型」、後半戦の方が勝ち点が多いクラブを「追込型」と分類する。

先行型:7クラブ
追込型:3クラブ
勝ち点同数:1クラブ

自分の仮説とは違い、前半戦の勝ち点が後半戦を上回るクラブが多かった。ただし、その勝ち点差は2014年の湘南ベルマーレを除き勝ち点6以内に留まっている。(2014年の項目を書いているときに何気なくパンサラッサに喩えたけど、本当にパンサラッサのレース運びみたいな戦績だった)
逆に追い込み型のクラブは2018年松本山雅こそ勝ち点3差であるものの、2012年甲府・2019年柏どちらも勝ち点10以上の差を後半に巻き返したことになる。
このことから言えるのは「先行型」が有利ではあるが、先行型は「前半戦のリードをそのままに逃げ切った」というよりは序盤戦から着実に勝ち点を積み重ねたケースが多いと言えるだろう。優勝勝ち点を仮に85と仮定した場合、一試合あたりの勝ち点は2.02となる。近々の勝ち点がこの数値以上ある否かが優勝を狙えるペースかどうかを占ういい指標となるのではないだろうか。

・序盤/終盤の勝ち点について
では、リーグ開幕5節と終盤5節ではどうか。同様に比較してみた。
開幕の方が多い:6クラブ
終盤の方が多い:5クラブ
同数:なし
この観点では完全に分かれた。前半でのロケットスタートからの逃げ切りという観点では2014/17両年の湘南ベルマーレの戦績から見て取れる。個人的な印象では両年ともに開幕からチョウキジェ監督の継続性を活かしたサッカーで他クラブより優位に立ち、そのまま逃げ切った印象がある。

・優勝クラブはどの時点で首位に立ったのか
グラフで見ればわかる話ではあるが、2012年から昨年までのJ2優勝クラブのうち最終節で順位を逆転させ優勝を決めたクラブは存在しなかった。では、どの時点で首位に立ったのか。ここでは、最初に首位に立った節/最後に首位に立った節を検証する。
2012 26節/26節
2013 16節/39節
2014 3節/3節
2015 15節/15節
2016 11節/13節
2017 2節/22節
2018 22節/40節
2019 25節/25節
2020 1節/30節
2021 21節/32節
2022 15節/35節
湘南無双の2014年はさておき、J2優勝を遂げたチームは夏〜秋にかけての時期には首位の座に立ったまま独走体制に走るパターンが非常に多いことがわかった。これは、チーム戦術の浸透や夏補強の成功などにより他クラブより抜きん出た差をいかに作れるかがカギとなるのではないか。また、全クラブに共通して言えることとして、26節までには遅くとも一度は首位の座に立っていることがわかった。ちなみに2012年26節も2019年25節もどちらも7月最終週の開催である。ちなみに今年の場合は第28節アウェイ清水戦となっている。

まとめ


ここまでの検証を通じ、現時点でリーグの行き先を判断するのは時期尚早にも程があるとしか言えない。ただし、

・勝ち点2.02ペースをキープできているか
・7月末までに一度は首位に立てるか
・夏から秋にいかにして独走体制に入ることができるか

この3つのポイントを抑えることでこれからのリーグ戦をより楽しめるのではないだろうか。まぁ、長ったるい話はさておき、まだ始まったばかりのリーグ戦、楽しまないとあなたが損するだけですよ?


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