モンダイを正しく認識する
本日は、感染症診療の基本のお話です。
モンダイ:肺炎の治療薬は?
さて、あらゆる病気の治療方法を考える際に、最も重要なことは、その病気の原因が何であるか?です。
原則、「原因 ⇒ 結果」の順にものごとは起こります。
ですから、「原因」に対して、なんらかのアクションを加えることで、「結果」が変わる可能性が生じることになります。多くの皆様には「アタリマエ」のことと感じることでしょう。
では、「肺炎」を「結果」と捉えるとどうでしょうか?
「結果」には、何らかの「原因」があるわけですので、「肺炎」にも「原因」があると推定することが可能となります。
では、「肺炎の治療薬は?」という問題に答えるためには、何が必要でしょうか?
そうです! 肺炎の原因を正しく・適切に見つけること~これが必要なのです。
もし、「肺炎」という「結果」の「原因」を正しく「認識」できれば、それに対して何らかのアクションを起こして、「肺炎」という「結果」を変えることができる可能性がでてくるのです。
冒頭の問題:肺炎の治療薬は?に対する答えを見つけるために、問題を認識し直すと、以下の2つの問題への回答が必要となります。
・肺炎の原因は?
・特定・推定された原因に対して、私達ができることは?
実は、肺炎の原因には、様々なものがあるのです。
例えば、感染症では、細菌・ウイルス・真菌など。感染症以外では、様々な薬、自己免疫疾患、吸入ガス、放射線等・・・いろいろな原因で肺炎は生じる可能性があるのです。
ですから、「肺炎の治療薬は?」という問題に対しては、これだけでは「『原因が不明』なのでわかりません」というツレナイ答えになってしまうのですね。
ここで一つ大事なことがあります。
「抗菌薬(抗微生物薬)は、抗炎症薬ではない」ということです。
ですから、抗菌薬(抗微生物薬)は「肺炎」という「肺」に生じた「炎症」を直接的には治療できないということになります。
抗菌薬(抗微生物薬)は、あくまでもヒトに感染した「細菌」(微生物)を減らすということしかできないのです。
肺炎(結果)の原因が「特定の細菌」で、その原因となる「特定の細菌」を減らすことができる「特定の抗菌薬」を治療薬として使用した場合にのみ、
「肺炎の治療薬は?⇒『特定の抗菌薬』」
と言えるのですね。
抗菌薬(抗微生物薬)が細菌(微生物)を減らした後どうなるか?
肺に生じた炎症は、ヒトのカラダに備わっている免疫力・回復力が作用して、炎症を改善させているのです。
次回は、感染症診療で最も重要な「診断」についてのお話をもう少し追求していく予定です。
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