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黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?

読者の皆様こんちには~

お元気でお過ごしのことと思いますが、私共公立昭和病院感染症科・感染管理部一同は、相も変わらずCOVID-19関連の対応で忙しい日々を送っております。

本日は、気分転換に黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?についてお話させていただきます。

まあ概要は、↑のスライドにお示しした通りです。記載チェックリストを一つずつ確認いただければ大きな問題はございません。

1つずつチェックしてまいります。

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これは、大変重要なチェック項目です~特に以下に関係しております。
・感染性心内膜炎
・化膿性血栓性静脈炎
・抗菌薬治療期間

血液培養の陰性化が確認された血液培養の採取日~これが、その後の治療に大変重要な役目を果たします。

ということは、黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA菌血症では、血液培養の再検・陰性化を確認していないと大変なことになるかも・・・と思ってもらえれば筆者は満足です。

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次は、感染性心内膜炎の除外診断です。

黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAは、感染性心内膜炎の頻度の高い原因微生物です。血液培養から、黄色ブドウ球菌が検出された場合には、積極的な感染性心内膜炎の除外診断が必要となります。

ただし、感染性心内膜炎の除外診断の方法は、各施設で実施可能なものでよろしいかと筆者は考えております。

・経胸壁心エコー
・経食道心エコー
・循環器内科医への相談
・持続菌血症の確認

各施設で実施可能なものを行っていただければ、よろしいのですが、一点だけ。

黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA持続菌血症の場合には、感染性心内膜炎である可能性が高く想定されます。

じゃあ、持続菌血症ってどうやってしらべるの?

それは、ひとつ上にお示ししたように、血液培養の再検で同一菌種の原因菌が検出されることで持続菌血症であることが判明いたします。

本項は黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA菌血症ですので、MSSAもしくはMRSAが、再検された血液培養で検出されればMSSAもしくはMRSAの持続菌血症ということになりますね!

この点からも、血液培養再検・陰性化の確認が大変重要であることがわかりますね。

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黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAがコワいのは、血行性転移を生じることがしばしばある点です。

では、血行性転移を調べるにはどうするか?

血行性転移による感染病巣を形成する可能性のある臓器について、CT・MRI等の画像検索をするのが実際の対応方法になります。

・頸部~胸部~腹部~骨盤部:体幹部CT(可能であれば造影が望ましい)
・頭部MRI

特に、中枢神経系への感染波及が示唆される画像検査結果が得られた場合には、中枢神経系への移行が十分な抗菌薬の選択が必要となります。

MSSA菌血症で第一選択薬となる、セファゾリンCEZは、髄液(中枢神経系)への移行が乏しい抗菌薬です。中枢神経系への感染波及の有無を確認することは、セファゾリンCEZが使えるかどうかを判断するためにも大変重要な項目となりますね。

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入院症例では、黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA菌血症の感染源として、血管内留置カテーテルは、一定の頻度のある感染部位となります。

血管内留置カテーテル感染症が想定される場合には、当該カテーテルの抜去・入れ替えが必要なことは言うまでもありませんね。

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黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA菌血症の治療が可能となる、適切な抗菌薬を選択することは大変重要です。

黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA感染症に対する、最適な抗菌薬選択については、かなり長くなりますのでまた別の機会にお話しさせていただきますね(ちょっと逃げてる感ありますが、いつかお話します・・・)。

最後に抗菌薬治療期間です~

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最重要ポイントは、
臨床経過が大変よろしくリスク因子が全く無い症例であっても、黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAによる菌血症は、血液培養陰性化を確認された血液培養採取日から数えて14日間は静注抗菌薬による治療を継続しなくてはならない点です。

具体的には、上記スライド記載の1~5
 1. 感染性心内膜炎がない
 2. 埋め込み型の人工物(心臓ペースメーカー・CVポートなど)がない
 3. 再検された血液培養で黄色ブドウ球菌(MSSA・MRSA)が分離されない
 4. 適切な治療開始後72時間以内に解熱している
 5. 血行性遠隔転移感染病巣がない

全てを満たしている、黄色ブドウ球菌MSSA・MRSA菌血症の場合には、最短14日間の静注抗菌薬治療が許容されるということになります。

逆に、上記1~5のうち、ひとつでも当てはまるチェック項目があれば、静注抗菌薬治療期間が4~6週間もしくはそれ以上という、大変長期に渡る抗菌薬治療期間が必要となる可能性があります。

今回は、血液培養から黄色ブドウ球菌
・MSSA
・MRSA

が検出された場合の対応につき、チェックリスト形式でご紹介させていただきました。

まだまだ改善の余地のある内容かと認識しております。

さらなる改善点がございましたらこっそり筆者まで教えてください~


おまけ
冒頭の文書を再掲させていただきます。
テキストをコピー&ペースト可能です。
これが最良のものとは全く思っておりません。
参考にされて、各施設でより良いものを作成ください!

~そして筆者からのお願いです~

素晴らしいものができましたら、ぜひ公開してくださいね。

黄色ブドウ球菌(MSSA・MRSA)菌血症マニュアル~抗菌薬適正使用マニュアル~

★黄色ブドウ球菌(MSSA・MRSA)が血液培養から検出された患者は以下のチェックリストの項目につき検討し、適宜実施する。
□ 血液培養の再検・陰性化の確認:陽性となった血液培養採取日から2~4日の間に再度血液培養を採取し提出
□ 感染性心内膜炎の除外診断:心エコー・循環器内科へコンサルテーション
□ 血行性転移病変検索:体幹部CT(可能であれば造影)、頭部MRI
□ 血管留置カテーテルの抜去・入れ替え:カテーテル感染が考慮される場合
□ 適切な抗菌薬治療
治療期間:以下の1から5の全てを満たす患者では、血液培養陰性化を確認された血液培養採取日から数えて14日間の静注抗菌薬治療を推奨
 1. 感染性心内膜炎がない
 2. 埋め込み型の人工物(心臓ペースメーカー・CVポートなど)がない
 3. 再検された血液培養で黄色ブドウ球菌(MSSA・MRSA)が分離されない
 4. 適切な治療開始後72時間以内に解熱している
 5. 血行性遠隔転移感染病巣がない
□ 遠隔転移感染病巣がある、または血液培養陰性化が速やかに得られない場合には、抗菌薬治療期間の延長を検討する。臨床状況に応じて、4~6週間以上の静注抗菌薬治療が必要となる可能性がある。

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