見出し画像

診断をつけるという行為はどういうことなのか?~感染症診療の基本的な考え方~その3

感染症診療の基本的な考え方の続きです。

今回は感染症診療の重要なポイント~診断~について考えてまいりましょう。

診断をつける~読者の皆様はマジメに考えたことがあるでしょうか?

医療提供者の読者は、おそらく日々特別に考えることもなく、診断をつけるという行為を行って来たのではないかと想像いたします。

「そんなことは無いよ~診断学を十分に学んできたつもりです」

そうですね。
診断学を学ぶことは、臨床医にとっては大変重要なことではあると思います。
ある程度、診断学的なものを習得していないと、国家試験受験の際にも困りますからね。

でも感染症診療を学習するにあたり、今一度、「診断をつける」とはどのようなものなのかを考えてまいりましょう。


上記スライドをご参照ください。
このモンダイの答え「診断名」~読者の皆様は何か思いつきますか?

「無理」
「モンダイになってない~」

そうですね~なので「難易度∞」と出題している私も、ちゃんと認識しております。

それでは、なぜこのモンダイは「難易度∞」こたえが得られないのでしょうか?

「そんなのアタリマエですよね~情報が少なすぎる~というかゼロだからです」

そうかもしれません。
では次のスライドをみてください。


「ばかにしてるんですか?」
こんなモンダイ簡単ですよ

そうですか。簡単ですか。
では、なぜ上記スライドの問題の回答を得ることはそんなに「カンタン」なのでしょうか?
ここは大変重要なポイントなので、下の回答を見る前に、皆様自身でじっくり考えてみてください!

         ⬇
         ⬇
         ⬇
自分なりの考えがまとまりましたか?
それでは私の回答です。

         ⬇
         ⬇
         ⬇

曜日なんて、7つのうちのどれかに決まってるじゃないか~
そうですね、次にすすみましょう。

ようやく、本「感染症診療の基本的な考え方」講義の重要な抽象的概念「限定」がでてきました。

そうです~今日は何曜日ですか?という問題の回答は、
・月曜日
・火曜日
・水曜日
・木曜日
・金曜日
・土曜日
・日曜日
これら、7つにこたえが限定されているのです!
でも、答えが限定されている「だけ」では、カンタンに回答できません。
では、なぜ「カンタン」に回答できるのでしょうか?

上記スライドに記載の通り、「問題」に対する「答え」が限定されていて、さらにその限定されている答えを、過去に全て学習していたから、この問題がだされた時点(学習していた過去より未来の出来事)で、答えをカンタンに予想・推定できた~ということなんです。


話をすすめます。

最初にだした、眼の前の患者さんの診断名を問う問題~ここまでくればなぜムズカシイのか?わかりましたね~

では次の問題です。


こんなのアタリマエでしょ~10ピースのジグソーパズルのほうがカンタンに決まってるでしょ。

その通り。私もそう思います。
1000ピースのジグソーパズルも、選択肢(この場合はパズルのピース)が1000個に限定されてはいるのですが、その限定されている正解の選択肢が多すぎては、カンタンにはいかないのですね。

上記から、問題に対して、答えをカンタンに引き出すには下記の条件が必要と言えるでしょう。

・問題に対する回答の可能性のあるもの(選択肢)が限定されていること
・その限定された回答の可能性のあるもの(選択肢)を既に学習して記憶していること
・さらに、回答の可能性のあるもの(選択肢)が、少ないこと

ここで、本シリーズ2大キーワードの一つ、限定列挙についてお話いたします。

感染症診断も、目の前の感染症患者さんの診断名(いわゆる鑑別診断名)を100%の限定列挙で上げることができれば、その一つひとつを丁寧に検討していけば、最終的に適切な感染症診断(もしくは非感染性疾患の診断)にたどり着けるものであると、筆者は考えております。

ただし、曜日感染症には決定的な違いがあります。

それは、ヒトが作り出したもの自然界に存在しているものとの違いです。

曜日という概念は、ヒトがつくりだしたものですから、7つの曜日に限定されていることは明らかです。

それに対して、あらゆる感染症(とその病原微生物)は、自然界にもともと存在していたもので、ヒトが作り出したものではありません(勿論、生物兵器などというものも想定される時代ですので、例外はいろいろとあるのかもしれませんが)。
ですから、感染症診断に関する選択肢≒鑑別診断を、100%の限定列挙で選択肢を上げることは現実的ではありません
そこで筆者は下記を提案いたします。

感染症の診断をつけるという行為は、目の前の患者の皆様に「感染症の存在」を疑い・認識し、あらゆる手段を駆使して、感染症に関する情報を取得して、感染症診断に関する選択肢≒鑑別診断を限定列挙する。
その限定列挙された感染症診断名について、検討していき、究極まで感染症診断名を限定できたとき、

感染症診断をつけられた!

と自信を持って言えるのではないでしょうか。

ここで、感染症診断に関する選択肢≒鑑別診断を限定列挙する~サラッと記載いたしましたが~
感染症診断の選択肢を限定列挙可能な知識を予め学習しておかなくては、適切な限定列挙になることが無い
             ⇊
正しい診断にたどり着けない~適切な予想・推定には事前学習が重要
ということも、十分に納得いただけることでしょう。

これからは、さらに感染症診断について追求してまいります~


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?