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抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング~その②グラム陰性桿菌編

お久しぶりです。

本日は、抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング~その②と題して、グラム陰性桿菌に対する抗菌薬選択の概要をお話させていただきます。

まずは、冒頭のスライド~臨床現場で主に問題となるグラム陰性桿菌は大きく下記①~③の3グループにわけます。
①腸内細菌科グラム陰性桿菌:PEK+PMSECK
②ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌:PAS
③グラム陰性嫌気性菌:BP

それでは、最初にのグループ~①腸内細菌科グラム陰性桿菌PEKから始めます。

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腸内細菌科グラム陰性桿菌の中でも、市中感染症~特に、尿路・肝・胆道系感染症で問題となることの多いグループがPEKです。

大腸菌(Escherichia coli)や肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)など、臨床現場でお目にかかることの多い、読者の皆様にも馴染みのある?グラム陰性桿菌でしょうか。

自然耐性のみで、獲得耐性の機序がなければ、第1世代セフェム系抗菌薬セファゾリンCEZ(静注)やセファレキシンCEX(経口)が有効です。


ただし、このPEKグループは、ESBLs等の各種βラクタマーゼ産生による獲得耐性機序をもつものも一定数存在しますので、初期治療抗菌薬としてPEKグループを目的菌種として抗菌薬選択される場合には、地域の薬剤感性率(アンチバイオグラム)の確認も重要ですね。

次は、①腸内細菌科グラム陰性桿菌PMSECKへ~

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市中感染症で目にすることの多いPEKとは異なり、PMSECKグループの腸内細菌科グラム陰性桿菌は、主に医療関連感染症で問題となることが多い菌種となります。

AmpC型βラクタマーゼ過剰産生を含め、獲得耐性機序を複数もつものやカルバペネム系抗菌薬が無効なもの(CRE:carbapenem-resistant enterobacteriaceae)など薬剤耐性問題で存在感を増しつつあるグループでもあります。

このグループを目的菌種として抗菌薬選択をされる場合には、各施設・地域の薬剤感性率(アンチバイオグラム)に基づいた選択が大変重要となります。

80~90%程度以上の割合で、感受性が推定される薬剤を初期治療薬として選択。菌種同定+感受性結果が判明し次第抗菌薬の「最適化」を図るという基本に忠実な抗菌薬選択が重要ですね。

もし、初期治療段階でアンチバイオグラムを確認し、単剤で80~90%程度感性のある薬剤が無い場合にはどうするか?

その場合には、初期治療の段階では感受性が想定される薬剤2種類以上を併用することで、菌種同定+感受性結果が判明した段階で、

しまった~感受性の無い抗菌薬だった・・・

ということをなるべく回避する方法も選択される場合があります。

次は、②ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌PASグループです。

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②ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌の代表格は何と言っても緑膿菌でしょう。

緑膿菌に関しては、いわゆる抗緑膿菌活性のある抗菌薬グループから、各施設・地域の薬剤感性率アンチバイオグラムを参考に初期治療抗菌薬を選択。

検出された緑膿菌の薬剤感受性が判明した段階で、最適な抗菌薬に変更する点はいつも同じですね。

緑膿菌以外のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌PASグループを形成するアシネトバクター属菌やStenotrophomonas maltophiliaについては、緑膿菌とは異なる薬剤選択となるのですが、このお話はまた別の機会にさせていただきます。

次は、③グラム陰性嫌気性菌グループです。

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グラム陽性嫌気性菌に関しては、ペニシリン系、セフェム系を含むβラクタム系抗菌薬が概ね治療効果が期待されます。抗菌薬選択という観点からはあまり悩ましい点は少ないかな?と筆者は考えております。

それに対して、グラム陰性嫌気性菌に有効な抗菌薬は限定的なものとなります。

臨床現場でお目にかかる可能性のあるグラム陰性桿菌の代表は下記2属でしょうか。
・Bacteroides属菌
・Prevotella属菌

これらのグラム陰性嫌気性菌に有効性の期待される薬剤は、上記スライド記載の通りです。初期治療抗菌薬については、この中から選択し、感受性結果判明後に再度検討するというところでしょうか?

今回は、抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング~その②グラム陰性桿菌編~をお届けいたしました。

グラム陰性桿菌に対する抗菌薬選択は、グラム陽性菌の抗MRSA薬(VCM
、DAPなど)のように、とりあえず抗菌活性の期待できる薬剤がなかなか無い点が重要かと思います。

そのため、日頃から各地域・施設の薬剤感受性率”アンチバイオグラム”を作成し、予めどのような抗菌薬が有効なのかを把握しておくことが大切なのですね。

最後に抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピングを掲載して終わりたいと思います。

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