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抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング各論その①~グラム陽性球菌編

本日は、抗菌薬選択のための細菌グルーピングのお話の続きです。

まずは抗菌薬選択が比較的シンプルなグラム陽性球菌から。臨床の現場で、問題となる細菌は、グラム染色の鏡検所見から下記4つにグルーピングされるのでしたね。

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まずは抗菌薬選択が比較的シンプルなグラム陽性球菌から

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グラム陽性球菌は、上記スライドのように大きく2つにグループ分けします。

・グラム陽性レンサ球菌

・グラム陽性ブドウ球菌

原則、グラム陽性菌は、球菌でも桿菌でも、いわゆる抗MRSA薬(バンコマイシンVCM、ダプトマイシンDAPなど)が有効です。(もちろん例外はあります)。

次に、グラム陽性レンサ球菌グループ

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グラム陽性レンサ球菌のグループは
・腸球菌
・腸球菌以外

にざっくりと分けて考えます。

そこで、便利でなのがランスフィールド分類です。

腸球菌属の細菌は、ランスフィールド分類のD群に分類されます。

ですから、グラム陽性レンサ球菌が血液培養等から検出された場合には、ランスフィールド分類を確認し、D群であれば腸球菌属の細菌の可能性があります。(ただし、ランスフィールドD群の全てが腸球菌属ではありません。例外が多くてゴメンナサイ)。
ランスフィールド分類は大変役に立つ細菌検査による分類方法です。機会をみつけて詳細はお話させていただきます。

腸球菌以外のグラム陽性レンサ球菌は、血液寒天培地の溶血性で分類します。

・α溶血
・β溶血
・γ溶血(溶血せず)

α溶血グラム陽性レンサ球菌グループは、肺炎球菌とそれ以外に分類します。

β溶血グラム陽性レンサ球菌グループは、いわゆる溶連菌の仲間です。
敗血症性ショック等の重症感染症(いわゆる劇症型溶血性レンサ球菌感染症)等の原因微生物にもなる高病原性の細菌グループですね。

これで、グラム陽性レンサ球菌の抗菌薬選択のためのグルーピングは終了です。つぎは、お待ちかねの抗菌薬選択です。

それでは腸球菌グループから。

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腸球菌グループの抗菌薬選択の原則は、菌種同定+感受性結果判明前の初期治療抗菌薬選択の段階では、バンコマイシン等の抗MRSA薬を選択

菌種同定+感受性結果が判明し、ペニシリン系抗菌薬に感受性があれば、最適治療抗菌薬としてPCG、ABPC等のペニシリン系抗菌薬に変更。

ペニシリン系抗菌薬に耐性で、バンコマイシンVCMにも耐性の腸球菌属細菌の場合(いわゆるバンコマイシン耐性腸球菌VRE)には、ダプトマイシンDAP,リネゾリドLZD等のバンコマイシン以外の抗MRSA薬を選択する。

腸球菌グループの抗菌薬選択の際に大変重要な注意点が・・・

原則、腸球菌グループに対して、セフェム系抗菌薬は選択しない!

という点です。これも例外はあります・・・

例外はいろいろとあるのですが、まずは「原則論」を記憶してください。

話はそれからです。

次に、腸球菌以外のグラム陽性レンサ球菌グループの抗菌薬選択です。

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腸球菌属以外のグラム陽性レンサ球菌は、原則ペニシリナーゼ等のβラクタマーゼを産生しません(ここでも原則・・・)。

ですから、ペニシリンG(PCG)、アンピシリン(ABPC)、アモキシシリン(AMPC)などのペニシリン系抗菌薬が選択されます。

つぎは、グラム陽性球菌最後、ブドウ球菌属Staphylococcus spp.です。

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ブドウ球菌属グループの抗菌薬選択は、第1世代セフェム~セファゾリンCEZもしくは経口セファレキシンCEXが使用可能かどうか?が重要となります。

ですから、ブドウ球菌属グループ(Staphylococcus spp.)の抗菌薬選択は、薬剤感受性試験結果を見て、セファゾリンCEZが感受性”S"であれば、静注ならセファゾリンCEZ。経口ならセファレキシンCEXを選択

CEZが耐性”R"なら、いわゆるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)もしくはMRCNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)と判断し、バンコマイシンVCMやダプトマイシンDAP等の感受性を確認して抗MRSA薬を選択するのが原則となります。

筆者は遭遇したことがありませんが、世の中にはバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌VRSAも存在するようですので、念の為薬剤感受性検査結果は確認してください。

いろいろとご存知の読者の皆様には、上記の記載内容にはは「ちょっと言いたいことがある~」という方々もいらっしゃるかもしれませんが、ブドウ球菌属の薬剤感受性試験結果の解釈は、別途お話させて頂く予定ですので、本日のところは上記の説明で勘弁してください。

最後に、本日のまとめ~抗菌薬選択選択のための細菌グルーピング~グラム陽性球菌編のスライドを再掲して本日のお話は終了です。

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