マガジンのカバー画像

感染症診療

26
運営しているクリエイター

記事一覧

黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?

読者の皆様こんちには~ お元気でお過ごしのことと思いますが、私共公立昭和病院感染症科・感染管理部一同は、相も変わらずCOVID-19関連の対応で忙しい日々を送っております。 本日は、気分転換に黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?についてお話させていただきます。 まあ概要は、↑のスライドにお示しした通りです。記載チェックリストを一つずつ確認いただければ大きな問題はございません。 1つずつチェックしてまいります。 これは、大変重要なチェ

抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング~その②グラム陰性桿菌編

お久しぶりです。 本日は、抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング~その②と題して、グラム陰性桿菌に対する抗菌薬選択の概要をお話させていただきます。 まずは、冒頭のスライド~臨床現場で主に問題となるグラム陰性桿菌は大きく下記①~③の3グループにわけます。 ①腸内細菌科グラム陰性桿菌:PEK+PMSECK ②ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌:PAS ③グラム陰性嫌気性菌:BP それでは、最初にのグループ~①腸内細菌科グラム陰性桿菌PEKから始めます。 腸内細菌科グラム陰性

ステロイド薬(デキサメサゾン)を突然使わなくてはいけなくなったあなたへ

こんにちは~ 寒い日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか? 新型コロナウイルス感染症~COVID-19~の話題には、少々辟易されている読者の皆様も多数いらっしゃることと思いますが、もうしばらくは我慢してつきあっていくしか無さそうですね。 というわけで、本日は新型コロナウイルス感染症~COVID-19~の患者の皆様を診療されている、医療提供者の皆様向けのノートです。 新型コロナウイルス感染症~COVID-19~は、呼吸不全の程度に応じて重症度および治療方針の目安が設

抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング各論その①~グラム陽性球菌編

本日は、抗菌薬選択のための細菌グルーピングのお話の続きです。 まずは抗菌薬選択が比較的シンプルなグラム陽性球菌から。臨床の現場で、問題となる細菌は、グラム染色の鏡検所見から下記4つにグルーピングされるのでしたね。 まずは抗菌薬選択が比較的シンプルなグラム陽性球菌から。 グラム陽性球菌は、上記スライドのように大きく2つにグループ分けします。 ・グラム陽性レンサ球菌 ・グラム陽性ブドウ球菌 原則、グラム陽性菌は、球菌でも桿菌でも、いわゆる抗MRSA薬(バンコマイシンV

抗菌薬選択を限定するための細菌グルーピング

皆様お久しぶりです。 本日は、抗菌薬選択のための細菌のグループわけのお話です。 はじめにお断りしておきますが、本日の内容は原則から外れるものも少なくないため、実際の臨床現場で抗菌薬を選択する際には、臨床状況に則した判断をお願いいたします。 原因菌種とそれに基づいた適切な抗菌薬選択は複雑に感じる読者の皆様も多いかと想像いたします。 特に、近年は原因菌種と抗菌薬を一対一対応で考えることが大変困難な状況となっております。 その原因の大きなものとして、本ノートの重要テーマで

新型コロナウイルス感染症~COVID-19~ オンライン診療のススメ!

お久しぶりです~ 日本のみならず、世界中で新型コロナウイルス感染症~COVID19~が猛威を奮っております。 公立昭和病院感染症科・感染管理部ノート管理者も、大変充実した日々をすごさせていただいております。 当院脳神経内科深尾先生を中心とした先生方が、この目前の新型コロナウイルス感染症の脅威に立ち向かうための、院内遠隔診療システムを構築いただきました。 主な利点を列挙いたします。 ①医療提供者の感染リスク減少:医療提供者が新型コロナウイルス~COVID19~に感染す

MIC?の数値から抗菌薬の有効性の判断・投与設計へ~最適治療抗菌薬の選び方④

本日は、最適な抗菌薬選択に関するお話の続きです。 患者さんの検体を細菌検査に提出し、特定の菌種が原因菌(症例由来菌株)が培養される。 培養された原因菌(症例由来菌株)に対して、抗菌薬感受性検査を実施する。 原因菌(症例由来菌株)の特定の薬剤に対する最小発育阻止濃度っぽいもの(いわゆるMICっぽい数値ここでは”MIC?”で表現します)が得られます。 ここまでのMICの数値の意味合いについては、「MIC?(最小発育阻止濃度)の”ような”数値の解釈~あなたはわかりますか?」

感受性検査結果から抗菌薬耐性機序を予想する~最適治療抗菌薬の選び方③

最適治療抗菌薬選択に必要な、感受性試験結果の解釈の仕方のお話を続けてまいります。 今回は、薬剤感受性の判定  S:susceptible  I:intermediate  R:resistant の結果から、薬剤耐性機序を予想する、抗菌薬選択に大変重要な内容となります。 予めお伝えしておきますが、感受性の判定”S"、”I"、”R"から薬剤耐性機序を予想するため、正確な薬剤耐性機序がわかるわけではないという点はご注意ください。 しかしながら、臨床現場で臨床的に有効な抗菌

感染症治療薬選択は微生物学的診断が重要~最適治療抗菌薬の選び方~その②

寒い日々が続きますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか? 本日は、最適な感染症治療薬・抗菌薬の選び方の続きをお話しいたします。 適切な感染症診療の基本となるのは、「2つの感染症診断」を可能な限り正しく診断することでした。 2つの感染症診断 ・臓器・解剖学的診断 ・微生物学的診断 参考:2つの感染症診断≒正しい問題認識 https://note.com/idshowa/n/n7b2220340aa0 では、本日のモンダイです~ 感染症治療薬選択において、 ・臓

MIC?(最小発育阻止濃度)の”ような”数値の解釈~あなたはわかりますか?

本日は、菌種同定検査結果に記載がある「薬剤感受性MIC?」のような数字の解釈のお話しです。 冒頭のスライドをご参照ください。 右上に菌種:大腸菌 Escherichia coli 左側に、番号、薬剤名(略号)、MIC?数値が記載されております。 それでは、モンダイ! 一番MICの小さい薬剤はどれですか?回答者「そんなのカンタンじゃん!」 簡単ですか・・・では答えは? 回答者「7 MEPM(メロペネム)です。だって0.5って一番小さい数値が記載されているじゃないで

血液培養は血行性転移を見つけるために実施する

本日は「血液培養」のお話です。 読者の皆様もしくは周囲の方々が細菌感染症になられたことがあるでしょうか? たとえば、細菌性肺炎。 肺に特定の細菌が感染して発症するのですね。 そして、一番頻度の高い細菌性肺炎の原因微生物が「肺炎球菌:Streptococcus pneumoniae(正式な菌種の名前:学名)」です。 2つの診断を確認しましょう。 ・臓器・解剖学的診断:肺炎 ・微生物学的診断:肺炎球菌 Streptococcus pneumoniae では、どのように

抗菌薬感受性結果を臨床判断に活かす方法~最適治療抗菌薬の選び方①

本日は、細菌検査結果が判明した後の「最適治療抗菌薬」選択のための導入のお話です。 抗菌薬は「2度決定」するのでしたね。 参考:正しい診断なくして適切な治療なし https://note.com/idshowa/n/nba77ccf8479b 1度目抗菌薬決定:初期治療抗菌薬 2度目抗菌薬決定:最適治療抗菌薬 (初期治療抗菌薬と最適治療抗菌薬が同一の場合もあり得る) 初期治療抗菌薬は、2つの感染症診断  ・臓器・解剖学的診断  ・微生物学的診断 この内、主に「微生物学的

耐性菌を”ゼロ”にする魔法

本日は、薬剤耐性菌のお話です。 本ノートの主要なテーマの1つが薬剤耐性AMR問題です。 世の中で「薬剤耐性AMR」の話題が結構頻繁に出てくるようになったことは、筆者は内心ちょっと嬉しくもあります。 それは、人々の興味・関心が薬剤耐性AMR問題に向かっていることの証でもあるからです。 時に、薬剤耐性AMR問題への関心がさらに高まる場合があります。 それが、薬剤耐性菌が〇〇病院から多数検出されました~というような,いわゆる「耐性菌アウトブレイク」関連のニュースが、報道さ

薬剤耐性菌~自然耐性と獲得耐性

ある細菌が、特定の抗菌薬が効かない≒「薬剤耐性」と考える場合には、その薬剤耐性機序が「自然耐性」であるのか?それとも「獲得耐性」であるのか?の判断が大変重要です。 薬剤耐性菌について検討・議論する場合には、この2つの薬剤耐性機序のどちらについてなのか?を明確にしましょう。