パート1_第7回_冒頭

治療家のための”伝わる”英語勉強法 第7回 総合力を伸ばす

文:斎藤大介(JAPANESE SPORTS MASSAGE)

前回までの6ステップをしっかりと継続していけば、この連載の目的である日常会話や施術時に必要な『伝わる』英会話を習得することは可能です。ですが、さらに上のレベルを目指す場合はその勉強法では、ある一定のレベルで行きづまります。私も海外で生活して約1年でその段階になりました。

語彙を増やしてレベルアップ

理由は英会話のレベルが上がってもボキャブラリー(語彙力)がついてこないためです。ボキャブラリーの豊富さは英語を勉強する上で土台となります。その土台がしっかりしていれば必然的にリスニングやスピーキングもどんどん伸びていきますが、あまり語彙力がないと、知っている単語の範囲でしか話すことや聞き取ることができません。また、実践重視の勉強だと知っている言葉の中で使いこなす能力は上がっても、語彙力を効果的に上げることは難しくなります。

ネイティブの使用する単語数は約2万~3万語と言われているのに対して、日本人に馴染みのある『英検』を例にすると2級取得者で約5000語、難関と言われている1級でさえも約1万語と言われています。
各自の目標設定がどこにあるかによって変わってきますが、目標が『伝えるための英会話』だった場合、そこまでの語彙力は必要ないので、前回までにご紹介したようなステップを徹底的に行うことが、無駄な勉強時間をなくして、日々働きながらでも効果的に英語を勉強する方法です。日本で外国人の患者さんの対応をする場合や、海外でセラピストとして雇われて働く分には私の経験上その程度で十分です。
ただ、目標が海外に永住して開業することだったり、海外のスポーツチームや個人の選手と契約したい場合や海外の大学へ進学したいと考えている方は、上述の通り、言葉の引き出しを増やすように並行してトレーニングをして、さらにアカデミック(学問的)な英語も勉強する必要があります。
そのために効果的なトレーニング方法は、ずばり「テストを受験すること」です!!
なぜかというとリーディング(読み)、ライティング(書き)、リスニング(聞く)、スピーキング(話す)を満遍なく勉強することで各分野がつながって記憶として定着しやすく、語彙力を身につけながら英語の総合力を伸ばすことができるからです。
日本では英語テストと言うとTOEIC(Test of English for International Communication)が有名ですが、今回は世界的に有名な2つの英語テストをご紹介します。

①IELTS(International English Language Testing System)

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、南アフリカ共和国といった英語圏のほぼすべての国の教育機関で受け入れられているテストで、最近はアメリカでも多くの教育機関で英語力の判定試験として取り入れられています。

②TOEFL(Test of English as a Foreign Language)

アメリカの教育機関への留学を目指している方が主に受験するテストです。
上述した2つのテストはとても実践的なテストで、日本でも受験可能です。私が今まで出会ってきた方もスコアと英語の流暢さは比例している方がほとんどでした。


とても似ているテストですが、多少相違点があります。

いくつか違いをあげると、IELTSはイギリス英語、TOEFLはアメリカ英語なので、発音や単語などにやや違いがあります。またスピーキングテストはIELTSが1対1で向き合って試験官と話しながらボイスレコーダーでも録音するのに対して、TOEFLはヘッドフォンをしてコンピューターに向かって話すという形式です。


私はIELTSしか受験したことはありませんが、どちらを受験するか迷ったときはインターネットなどで両方とも受験されている方の意見を参考にされるのが良いと思います。多少の相性などもあるようですが、TOEFLのほうが難しいと感じる方が多いようです。
TOEICは世界的に日本と韓国では英語力の目安として知名度が高いようですが、英語圏の国ではほとんど取り入れられていません。理由として考えられるのは、TOEICにはスピーキングやライティングといった日本人が苦手と言われているアウトプット系の科目がないことです。ですので、TOEICのスコアが高得点であっても、英語を喋るのは得意ではないという方が多くいます。
2007年よりTOEIC S&Wとしてスピーキングとライティングが試験に導入されましたが、公式に発表されている受験者数を見るとTOEIC受験者240万人に対してS&Wテストは2万4千人と依然、リーディング、リスニングの試験として受験する人が圧倒的に多いということがわかります。
TOEICを否定するつもりはありませんが、目標がテストのスコアアップではなく、英語を使いこなすことだとしたら、初めにご紹介した2つのテストを私はおすすめします。
各テストのスコア比較は以下のリンクをご覧ください。
http://ieltsnavi.com/score_conversion.html  


IELTSのスコアを基準にすると、私の経験上の目安としては 


【5.0以上】
日常会話程度は何とか可能で、非ネイティブとの会話であればおおよそ通じるレベル。
※オーストラリアでは永住権やビジネスをする為のビザの基準ラインが5.0以上です(ビザの種類などにより多少前後)。ですから、職種に関わらず海外で仕事をするための最低レベルがこのラインと言えます。


【6.0以上】
ネイティブとある程度の流れで会話ができるレベル。ただ、不得意分野の会話はまだ話についていけないことも多い。マッサージセラピストではなく、治療家として英語を使いこなしてグローバルに活躍するには、最低でもこのラインは必要だと思います。


【6.5~7.0】
大学の入学基準レベル。多くの大学がこのレベルに外国人の入学基準を設定しています。医学部や理学療法、鍼灸など専門的なことを学ぶ学部では7.0以上のことが多いです。大学生の友人の話では6.5ギリギリで入学すると何とか大学の授業にはついていけるが、専門用語などわからないことが多く、レポートなどはかなり苦労するそうです。


テストのスコアが上がるにつれて英語力が伸びていくのが実感しやすいのでとてもやりがいがあり、英語力の証明にもなるのでテストを受験することはとてもおすすめです! 教材も充実しているので、勉強もとてもしやすいです。
働きながら英語を勉強していくのはとても大変だと思いますが、英語の習得にはそれだけの価値があると私の実体験から断言できます! 私は英語を習得したことで自分が想像していた何倍も可能性が広がりました。私は来年からアメリカでゴルフの専属トレーナーとして働くことになりました。3年前、オーストラリアへ行くことを決めたときは、まさか自分がゴルフの4大メジャー大会のチャンピオンと世界をまわって仕事ができるようになるとは思っていませんでした。
私は日本でしか治療技術を学んでいませんし、日本で働いていたときとほとんど同じことしかしていません。そして高校卒業後10年以上英語から離れた環境で、28歳でほとんどゼロの状態から勉強を再開しました。

日本の治療家の技術は間違いなく世界で必要とされています。
多くの日本人が海外の学校へ行って、そこで得た技術・知識を生かして日本で活躍しています。これからは日本の技術を持った治療家が自分自身を世界へどんどん売り込んでいくことも必要な時代だと思います。そして、そのための大前提が英語力なのです。
これまで7回にわたって連載させて頂いた内容が、少しでも英語習得の助けになれたらとてもうれしいです。

【次回レポートは留学体験記!】

現在、英語学習者の間で大流行のフィリピン語学留学をご存知ですか?
英語留学と聞くと英語が公用語のアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどをイメージされる方が多いと思いますが、実はフィリピンでも英語が公用語の1つとなっていて、アメリカ英語の発音に近いと言われています。なぜフィリピンの英語留学が爆発的な人気を誇っているかと言うと、まずあげられるのが格安の料金とマンツーマンのレッスン形式です。
4週間の日程で、フィリピン・セブ島にある大人気の英語学校 3D ACADEMYに実際に私が生徒として入学し、授業や生活の様子を取材してきます!!
3D ACADEMY http://3d-universal.com/
同時に、日本の治療家が気軽に実践的な英語留学ができる環境をフィリピンでつくりたいと考えています。おそらく次回の更新は年末か年明けになると思いますが、良い情報を提供できるよう徹底して取材してきます!! お楽しみに!



※2016年11月8日にシアナサイトで掲載された記事を転載しています

パート1用


斎藤大介(さいとう・だいすけ)
1985年、群馬県生まれ。高校卒業後、柔道整復師、鍼灸師、あん摩指圧マッサージ師の資格を取得。2010年、ファイテン株式会社に入社し、企業のトレーナーとしてプロ野球選手、プロゴルファー、ビーチバレー、大学駅伝などの選手を担当。2014年に独立し渡豪。ゴルフの名門AnKゴルフアカデミーの専属トレーナーとして活動しながら、2015年8月にJAPANESE SPORTS MASSAGEをオーストラリア・ゴールドコーストに開業。プロゴルファーを中心に、水泳オリンピック選手、野球・ソフトボールオーストラリア代表などのアスリートや一般の方まで幅広く施術している。2016年9月よりアメリカ女子プロゴルフツアーにて、メジャーチャンピオン2名を含む4名の外国人選手と契約。





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