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どう違う?「医療面接」と「問診」

多くの鍼灸、あんまマッサージ指圧師の専門学校で、副教本として授業に使われている『鍼灸臨床における医療面接』。

15刷という版を重ねたロングセラーが、このたび『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』として、改訂されました。

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医療面接はなぜ大切か

鍼灸やマッサージの治療院を訪れる患者さんのなかには、「3分診療」ともいわれる病院で「話を聞いてもらえなかった」と感じている人も少なくありません。

だからこそ、治療技術はもちろんのことですが、「患者さんにいかに寄り添って、話を引き出し、治療に生かせるか」が治療家には求められます。

そんな患者中心の医療を実践するには、医療面接は欠かせない、と著者の丹沢章八氏(明治国際医療大学名誉教授)は書きます。

《臨床の場で医療者と患者との間で交わされる会話は、一般に問診といわれてきました。それがいま医療面接ということばに置き換わったのです。 置き換わった最大の理由は、医療は患者(病者)を中心に据えた医療―「患者中心の医療」―に変わらなければいけないということを、医療界全体が気づき直したからです》 (『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』p14より)


「医療面接」では患者を全人的にとらえる

しかし、こんな疑問が浮かびます。

「医療面接といっても、通常の問診と、どう違うのだろう」

まずはその違いを知ることが、本書の出発点となっています。

《その違いをはっきり認識することが、私たちが携わる医療の本質の理解につながるのです》(『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』p14-15より)

本書では、医療面接と問診の違いについて、以下のように解説しています。

●問診―疾病の診断に必要な病歴をとることを目的とした患者との会話

●医療面接―患者が訴える苦しみ(病苦)に耳を傾け、病苦をもたらした原因を探ることと、病苦がその人にどのような意味を持っているかを確かめるために交わされる患者との対話

医療面接は「病歴の聞き取り」にとどまらず、その患者さんの病苦の原因を探りながら、対話を通じて、その意味を探ることにあるということです。

また、次のような表現もなされています。

●問診―医療者が患者を主に医学的関心の対象、つまり臓器や器官を持った人として見る立場で行われるもの

●医療面接―患者の身体面(臓器や器官を持った人)だけを対象とするのでは なく、苦しみを抱えながら生活し、活動している人(地域社会の生活 者)として、心理的な面や社会的な面もみんな含んだ、つまり患者を 全人的に捉える立場で行われるもの

身体を各部位ではなく、全体でとらえるのが、東洋医学の考え方だとすれば、どちらを目指すべきかは言うまでもないでしょう。

本書は「実践編」「解説編」「学習編」の3部構成となっており、解説編の第2章では「医療面接の目的と構造―よりよく患者を理解するために―」として、さらに医療面接の目的について掘り下げています。

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(『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』p70-71より)


セッティングから「医療面接」は始まっている

医療面接は、患者さんを迎える前から始まっています。本書では、以下のポイントごとに、具体例を挙げています。

・リラックスした雰囲気づくり

・予診票の活用

・診療室のセッティング

・身だしなみのチェック

そして、患者さんを迎えれば、いよいよ実際の対話に入ります。

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(『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』p90-91より)

日々患者さんに対峙する治療家が、どのような点に気をつけて、医療面接をするとよいのか。

会話例も参考にしながら、明日すぐに使える医療面接のノウハウをぜひ、本書でぜひ身につけてもらえればと思います。

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【『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』執筆陣】

丹澤 章八(明治国際医療大学名誉教授)
伊藤 和之(国立障害者リハビリテーションセンター主任教官)
小泉  豪(国分寺ひかり診療所所長)
福田 文彦(明治国際医療大学教授)
島田  力(気流LABO代表)
瀬尾 港二(アキュサリュート高輪院長)
戸村 多郎(関西医療大学准教授)
菅原 之人(東京衛生学園専門学校教員)
三枝加代子(東京衛生学園専門学校教員)
谷  美樹(社会福祉士)

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記事トップ画像:Gerd AltmannによるPixabayより 

(了)

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