退職して博士進学した後の就活の結果

背景

退職して博士課程へ進むことを決めた際,お金のことと同じくらい気になっていたのが就職についてだった.これは業界ごとに,個々人の事情ごとに全く状況が違うので参考になるか分からないが,僕が立てていた就活の計画と実際の就活状況を一例として書く.参考になれば幸いです.

なぜ退職して博士課程へ進んだのか

就職時に希望していた部署は研究開発系,実際に配属されたのは技術系の部署だった.働き続けることは精神的・肉体的に可能だと思っていたが,その部署で働き続けて得られるだろう知識や技術に,先数十年の人生をささげるだけの魅力を見出すことができなかった.その時点では.

自身の条件

農学系のメーカーに修士卒で技術職として満3年間勤務.

農学専攻,植物の遺伝育種学が専門.行っていた主な実験は組織染色やDNAマーカーベースのジェノタイピング等ウェットなものが中心.ドライは染色体地図の作製にRを少し使う程度.

退職時点で考えていた博士課程での就活計画

博士進学時に漠然と考えていた就活の計画は2つ.どちらかには引っかかるだろうと思っていた.

1. 元の会社に出戻る

そも会社を辞めた主因は希望の部署への配属ではなかったことだった.しかし,退職の旨を伝えた際に希望の部署への配置換えの可能性を示されたことと,いざ退職する際に博士取得後に行く先がなければ連絡をくれと言われたことから,元の会社の希望の部署への出戻りを博士取得後の計画の1つとして考えていた.博士3年の12月末までに内定がなければ元上司へ出戻りの相談をさせてもらうつもりだったが,その前に幸運にも就職が決まった.この計画がうまく行ったのかは分からずじまいだが,戻れる場所がある(かもしれない)ということが,就活時の心の安定につながっていた.

2. 農業試験場への就職

僕の通っていた大学のある県は農業に最も力を入れている県の一つであり,県の農業試験場に博士取得者が割合高く在籍していた.育種を専門とする博士人材も抱えていた.そのため博士持ちであれば恐らく,筆記試験さえ通過すれば難なく就職できるだろうと高をくくっていた.(これはとんだ見込み違いだった.)

実際の就活結果

就活を始めたのは博士3年の4月.就活が嫌で嫌で,先に投稿論文を仕上げなければならないことを言い訳にそれまで一切何もしてこなかった.ポスドクに行く覚悟もなかったので,4月に民間の就活を始めるという半端ぶり.

4月-6月 地元のJAや種苗会社等,合計4社にESを提出し3社通った.

7月 ESを通過した会社の一次面接(WEB).すべて落ちた.退職時に本命の1つと考えていた県の農試の筆記試験があり,こちらは無事通過.あと国研の特別研究員の公募へ出した.書類を用意するのに1ヵ月かかったが通らず.

8月 県農試の面接(最終試験).通るだろうと調子に乗っていたら落ちた.結果の開示に行き分かったが,筆記試験はトップ通過,面接で合格圏外に落ちていた.持ち前の傲慢さがにじみ出ていたのだろうか.この時点で就活の残弾がなくなり,頭が真っ白になったのをよく覚えている.

国研の公募(任期付き)は8月頃から多く出始めるので,2ヵ所ほど応募したが書類で落ちた.

9月ー10月 何をしていたか覚えていない.会社に出戻りする夢を高頻度で見ていた.

11月 国研の公募へ2件応募,2件とも書類通過.博士・ポスドク対象を謳う大学主催の企業とのマッチングの会へ参加.周りはD2とD1がメインでD3は1割以下,ポスドクは見かけなかった.ただ,自身の研究を分野外の人へ伝えるのがうまくなったので参加していてよかったと後になって感じた.

12月 国研2件の面接.奇跡的に1ヵ所から内定をもらい,そこへ就職することを決めた(任期付研究員).残り1ヵ所は落ちていた.元上司へ年賀状で就職先等の近況について連絡した.

総括

> 反省点

改めて,本当に半端で計画性のない就活をしたと思う.反省点にきりがない.自身がどういう人間かを知ることができた.頭では分かっていても,例えば食いっぱぐれないためにはビッグデータの解析技術や英語力等汎用性のあるスキルを磨くべきだと分かっていても,そういう「必要なこと」にコツコツと取り組むことが僕にはできないことが分かった.

> 退職して博士に進んで

僕の場合,退職して博士進学した強みは,博士取得後に元の会社へ出戻るという道が(おそらく)残されていたことだった.出戻ったらもう次は退職できないよな,とか,退職してさらに出戻りの人間は社内で相当嫌われるな,とか,いろいろ不安はあったが,それでも「ここは雇ってくれる」(だろう)というのは精神的な支えとなっていた.元上司の方々が信頼・尊敬できる人物であることも,もし戻っても何とかやれるだろうと思わせてくれる要因だった.会社を退職する際,上司へは早い段階で伝えていたため,3年間しか勤めていなかったが円満に退職することができた.

今は興味ある研究に取り組めている.大学時代から続けているテーマで科研費の申請もできた(結果待ち)し,退職して博士に進んだことに後悔はない.しかしこれは結果論で,もし過去の自分にアドバイスできるなら,絶対に会社を辞めるなという.辞めるだろうけど.

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