短歌、俳句、美術、美術、美術?

皆さんこんにちは。一度書くと調子付いてさらに新しい記事を書くところがすごい安直だなと我ながら思います。
それでは最後までお付き合いお願いします。

今回は前回少し触れた話をしたいと思います。
それは、純粋にただ何かを伝えるための表現体系としての芸術作品とは違う芸術作品とはどのような性格か、という話です。

前回は芸術作品を言語で説明せずにその表現体系に最適の認識作用で知覚することでその作品の純度を下げずに楽しむことが可能で、さらにそうした鑑賞方法を日常的な世界認識の一手段としてさらに昇華させることでさらに優れた人間になれるだろうという話をしました。

では世の中の芸術作品の内、どれほどのものが純粋な情報伝達道具として創られているでしょうか。恐らくそれは驚くほど少なく、割合で言えば数パーセント程度ではないでしょうか。(これは単なる主観的な想像ですので悪しからず)

それではそのような道具として創られていない芸術作品はどのような性格を持っているのでしょうか。

この性格は最近生まれたものではありません。
古くに醸成されたこの性情は様々な形で存在していました。
最も明確に表している古の遊戯といえば和歌でしょう。
今僕は死文志望の、失礼。私文志望の浪人生ですから、受験勉強が現在の僕の存在意義であるわけで、そんな文系の受験生にとって和歌はいついかなる時も受験生についてまわる面倒な存在です。

そもそも古文や古典世界での和歌の役割は時にはラブレターであったり時にはその人の知性を表す指標でした。
当時の人々は限られた(!)三十一文字という持ち駒で自身の気持ちと魅力を相手に伝えていました。
そしてこの和歌を詠む際に加えて重要であったのはそのスピード。相手の言葉を聞いて即座に気の利いた一首を読む必要があったという訳です。
こちらの言葉を聞いてその瞬間の雰囲気や情景、複雑な修飾語法や過去の優れた歌の一部などが反映された三十一字の和歌を即座に読まれた日にはもうその人にメロメロ不可避だったでしょう。

そして何を隠そう上記の和歌の魅力を構成する性格の本質はまさに現代の世の中の多くの芸術作品を構成する要素でもあるのです。

効率化が何より強調されて謳われる現代という歴史の一区分において制約は淘汰されるべきものであり、摩擦や抵抗のない世界が追求されています。(皮肉にも東欧では摩擦の最大形態である軍事衝突が今もなお続いていますが)
そんな状況において情報の伝達はほとんどが活字や言語音声によって担われており、絵画や写真、最も人間原始的な五感などは煩雑で非効率だとして用いられていません。

しかし絵画や写真、音楽などは今もなお根強い人気と共に娯楽や文化の一部として繁栄しています。
それは何故か。
効率的に情報を伝達する道具ではなく、自ら制約を課した状態で何かを表現するということのゲーム性、遊戯性が魅力的だからでは無いでしょうか。
ただ普通に情報を伝達することは容易です。ですがあえて非効率な方法で何かを伝えること、伝えようとすること。そして苦心した結果として自分の伝えたいことが相手にあたかもコピーアンドペーストしたかのように伝わった際の達成感。これらが魅力的で他のものでは代替不可能だからではないでしょうか。僕はそう考えます。

ですからやはり短歌も同じことであるわけです。自ら制約の中に自分を投じて、それを克服する。そしてその姿に相手は感動し恋慕の情や憧憬の念を抱いたりするという理屈であると僕は考えます。

このひとつの本質は恐らく皆さんの身の回りに多く存在すると思います。
例えば僕は服を着ることが好きです。服装を考えることが好きです。
この趣味もこの本質を淵源としています。
その日の天気や行き先、行事や自分の持っている限られた手持ちの服(悲しいかな、金銭的な制約もあるので図らずとも二重の制約である)という制約の下でその日の気分を表す。誰か他の人を真似する。コスプレのように着る。自分の機嫌を取る。
この制約を克服して自分が満足する服装に身を包んで外出した時には、身の回りの煩雑な出来事や憂鬱な苦悩の種も蛙鳴蝉噪も全てが無に還元されて開放された気分になり自分が普段よりかっこよくなれたと錯覚することができます。

現代美術、前衛芸術、アヴァンギャルド性。その根底には上記の遊戯性が孕まれているのかもしれません。

こういった観点で芸術作品を楽しんだり世界を知覚(また言ってるよ!)してみると楽しいかもしれません。
そして当然受動的な活用だけではなく、皆さんも何かを表現してみたいと思った際には言葉や日本語ではなく、あえてジェスチャーにしてみたり、手話にしてみたり、英語や中国語にしてみたりして制約を設けてみてはいかがでしょう。マンネリしたコミュニケーションがちょっとスパイシーになるかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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