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思い切った支援が必要

取材対象者 
(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル 取締役副社長 森本 裕二氏

大部分の国や地域における渡航再開の見込みはまだなく、事業を思うように進められない開発コンサルティング企業にとっては依然として苦しい状況が続いている。海外経済協力基金(OECF)や(株)国際協力銀行(JBIC)に在籍していた経験も持つ(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル取締役副社長の森本裕二氏に、開発コンサルティング業界の現状と事業の課題について聞いた。

途上国とコストの折半も想定
 コロナ禍においても国際協力機構(JICA)は、新規案件の公示を継続している。案件の契約は進んでおり、また現地へ渡航できない間は国内業務への付け替えも可能であるといったJICAの柔軟な対応は大変ありがたい。
 だが、恐らくJICAは公示の継続を決定した4 月ごろには、「10月に海外への渡航が再開し、現地出張が可能になる」という見通しを持っていただろう。しかし、7月時点で日本の新型コロナウイルスの感染者数は再び増えており、開発途上国でもコロナ禍が収束する気配はない。新型コロナのワク
チンや特効薬が開発されない限り、収束の見通しは立たないだろう。そのため、今年は大部分の途上国への現地出張は難しいと見ている。そうした中で、当社でも遠隔による案件の実施を進めているが、案件によっては対応できるものとできないものがある。例えば、案件を担当している当社のコンサルタントが一旦日本へ帰国して、その後はオンラインでやり取りすることを許可しているカウンターパート(C/P)もいれば、現地で対応しないとダメだというC/Pもいて、今なお現地に残っているコンサルタントもいる。このように実際は相手国の状況に応じて案件ごとに対応している。これは大変な労力だ。一番大切なのは社員の命なので、会社としては全員帰国してほしいと思っている。しかし、一度帰国するといつまた現地へ出張できるかが分からない。その場合、新型コロナの感染拡大以前に定められた期間内に契約を履行できない事態も発生しうる。
 無論、われわれ開発コンサルタントとしては、案件を進められない一方で人件費は発生し続けるため、その分のコストは支払ってほしい。他にも、工期の延長や工事量の増加も必要になるかもしれない。これらを認めてもらうには、途上国政府に今回のコロナ禍をフォースマジュール(不可抗力)と
してみなしてもらわなければならない。だが、それを認めない、もしくは認めたくない国はたくさんある。途上国自身もコロナ禍で深刻な被害を受けているからだ。今後は、現在発生しているコストの負担を被害者双方で折半することも考えなければならないのではないか。それだけ双方にとって状況
は深刻だ。

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