ストーリーオブマイライフ 私"と"若草物語

先日、映画館でストーリーオブマイライフ〜わたしの若草物語〜を鑑賞した。
四姉妹がそれぞれ鮮やかに描かれており、観た人誰でも(特に女性)どこかしらに共感できる部分があるのではないか。多種多様な価値観が提示され、それを肯定してくれる。観た後に貴方らしくいていいと背中を押してくれるような、前向きな力を与えてくれる映画だ。オールタイムベストに入る。


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恥ずかしながら若草物語を読んだことはないのだが、アニメ『愛の若草物語』や過去の映画を観たことがある。断片的ではあるが、キャラクター達やエピソードは記憶の奥底に残っていた。その懐かしい記憶が映画館で蘇った。それだけでもとても感動的だった。細やかな衣装、背景。アカデミー賞衣装デザイン賞を獲得したのも納得だ。

若草物語と続若草物語を交互に展開し、過去起きたことによる現在への結果がわかりやすくまとめられていた。過去は暖色で、現在は寒色で。過去を懐かしむようなジョーを始めとする登場人物たちの心情も反映されているかのようだ。


特に心に残ったセリフ2つは下記の通り。(うろ覚えなのでニュアンスだけでも伝われば…)

母 の言葉
「私はいつでも怒っているのよ。でも怒りとうまく付き合っているの」

自分の気持ちと折り合いがつかないジョーへの言葉。そう、人はいつでも怒っている。母の怒りはきっと1860年代の社会…つまり女性が自分らしく生きることが困難だった社会への怒りもきっと含まれている。結婚し家庭に入ることこそが女性にとっての幸せとされた時代。自由のない時代。良妻賢母を体現したような母だって怒っている。それはジョーにとって何よりの自己肯定に繋がる。怒っていいのだ。怒る心を否定しなくていいのだ。そして、その怒りとどう付き合っていくのか。怒りをコントロールできるようになることが大人への一歩なのだろう。



メグの言葉
(結婚だけが幸せなんて間違ってる、お姉ちゃんは女優になった方がいいというジョーの言葉を受けて)
「私は自分で結婚を選んだ。あなた(ジョー)と私は価値観が違うのよ」

女性の社会進出。男女格差は無くさないといけない。これは大前提だ。しかしその上で、何が人にとって幸福なのかはそれぞれの価値観だ。社会で働くことが幸せ、好きな人のために家庭に入ることが幸せ。幸せは多種多様だ。フェミニズムを唱えるエマ・ワトソンが四姉妹でも一番保守的な長女を演じることが不思議だった。でもこのシーンの為なのだなと観てわかった。自分で選ぶからこその幸せなのだ。そして、その"選ぶ"行為が社会によって制限されることはあってはならない。選択は自由であるべきだ。

このメグの言葉は、私にとても刺さった。私は今、世間からいわゆる結婚適齢期と呼ばれる年齢だ。結婚せず働き続けるか、結婚して働き続けるか、結婚して家庭に入るか。自分にとって何が幸せなのかまだわからない。ただ、どんな選択をしても周りから何か言われる筋合いはない。私は私、あなたはあなた。結婚しなきゃ、と焦る周囲に釣られて自分を見失うことだけはしたくない。そして、大切な友人たちがどのような人生を選んだとしてもそれを祝福し、肯定したい。

きっと、この映画を観た人は四姉妹の生き様にどこか共感できるはず。そして、自分は自分で良いのだと強い肯定感を得られるだろう。四姉妹が、そしてジョーが、気高く自分らしくあろうとする姿は世界中どの時代でも変わらず私たちを鼓舞してくれる。また観返したい、大傑作だった。


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