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<論文>DMへのスタチン追加でがんも減る

Association Between Statins and Cancer Incidence in Diabetes: a Cohort Study of Japanese Patients with Type 2 Diabetes
J Gen Intern Med. 2020 Oct 15.
doi: 10.1007/s11606-020-06167-5

背景
スタチンの抗腫瘍効果が強調されているが、臨床試験の結果はまだ結論が出ていない。糖尿病患者はがんのリスクが高いが、このような患者集団においてスタチンががん予防に有効かどうかは不明である。

目的
2型糖尿病患者におけるスタチンとがんの発生・死亡率との関連の評価。

研究デザイン
日本人の2型糖尿病患者を対象とした低用量アスピリンの無作為化比較試験であるJapanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes(JPAD)試験のフォローアップ観察試験。

参加者
2002年12月から2005年5月までの間に、2型糖尿病があり、30~85歳で、動脈硬化性心血管系疾患の既往歴なしの2536人が登録された。JPAD試験で募集されたすべての参加者は、何らかの致死的なイベントが発生した日または2015年7月まで追跡された。登録時にスタチンを服用していた参加者をスタチン群(n=650)、残りの参加者を非スタチン群(n=1886)と定義した。

主要尺度
一次エンドポイントは、何らかのがんの初回発生(がん罹患率)であった。副次的エンドポイントは、何らかのがんによる死亡(がん死亡率)であった。

主要結果
追跡期間中(中央値10.7年)、318人の参加者が新たながんを発症し、123人がその結果死亡した。がんの発生率と死亡率は、スタチン群では1000人年あたり10.5人年と3.7人年、非スタチン群では1000人年あたり16.8人年と6.3人年であった。スタチンの使用は、交絡因子を調整した後のがん発生率および死亡率の有意な減少と関連していた(がん発生率:調整後ハザード比[HR]、0.67;95%CI、0.49-0.90、P=0.007;がん死亡率:調整後HR、0.60;95%CI、0.36-0.98、P=0.04)。

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結論
スタチンの使用は、日本人2型糖尿病患者におけるがんの発症率および死亡率の低下と関連していた。

スタチンの抗腫瘍効果については、実験研究においていくつかの仮説が提案されている。スタチンによるメバロネート経路の阻害と、細胞機能の維持に必要なメバロネート経路の下流生成物の減少は、がん細胞の増殖と遊走を減少させると考えられている。また、糖尿病におけるがんリスクの増加とコレステロール代謝との関連も調査されている。その仮説の一つは、糖尿病におけるインスリン様成長因子1シグナルの増加が、ステロール調節エレメント結合タンパク質を介してメバロネート経路を活性化し、がんリスクを促進するというものである。この仮説は、糖尿病患者のがん予防にはスタチンの方が有効である可能性を予測しているが、それを明らかにするためにはさらなる調査が必要である。


<感想>
真っ先に自分も思ったのはhealthy user biasです。喫煙を含む可能な限りの交絡因子を調整したようですが,果たしてどれくらいスタチンに意味があるのでしょうか。もちろんもともとの理由である心血管系イベント抑制のために処方するわけですが,オマケがつけば少しオススメしやすくはなるかもしれません。



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