<論文>空旅のコロナ感染リスク
Risk of COVID-19 During Air Travel
JAMA. Published online October 1, 2020.
doi: 10.1001/jama.2020.19108
空旅でのCOVID-19の感染リスクは、オフィスビルや教室、スーパー、通勤電車よりも低いとされている。
COVID-19はどのようにして感染するのか?
COVID-19の原因となるウイルスは、会話、咳、くしゃみ、歌唱などで、主に短距離移動する飛沫で、時には浮遊したままさらに移動できる小さなエアロゾル粒子として放出される。これらの粒子が口や鼻に直接または手を介して到達すると感染することがある。また、接触感染も重要となることがある。
旅客機の空気はどの程度きれいか?
空気は頭上の吸気口から機内に入り、床面の排気口に向かって下に流れる。空気は、同じ座席の列またはその近くの列で出入りする。列の前後の気流は比較的少なく、列間で呼吸粒子が拡散する可能性は低い。
現在のジェット旅客機の空気の流れは、通常の屋内の建物よりもはるかに速い。その半分は外部からの新鮮な空気で、残りの半分は手術室と同タイプのHEPAフィルターを通して再循環している。残りのリスクは、他の乗客との接触感染である。背もたれは部分的な物理的バリアとなり、ほとんどの乗客は席から動かないので、直接的な接触はほとんどない。
かなりの数の旅行者がいるにもかかわらず、世界中の旅客機でのCOVID-19感染の疑い例および確定例は少ない(計約42例)。これと比較して、中国の高速列車内でのCOVID-19感染の調査では、2300人以上の接触者がいたが、感染率は全乗客の0.3%だった。物理的な距離を保つことができない他の状況と同様に、機内でのリスクは、顔を覆うことでさらに低減することができる。
空港と航空会社によるリスク低減のステップ
空港や機内で行われている対策としては、検温や症状(発熱、嗅覚障害、悪寒、咳、息切れ)の確認、清掃と消毒の強化、非接触搭乗/手荷物処理、空港での物理的バリアの使用と消毒、空港内や搭乗中のフィジカル・ディスタンスなどがある。フェイスカバーやマスクの使用、可能な場合は乗客同士の分離、接触を減らすための飲食サービスの調整、接触を最小限に抑えるための通路やトイレへのアクセスの管理、乗務員の感染への曝露の制限、そして乗客が発症した場合の接触者追跡の促進などが行われている。
その他のステップとして、COVID-19のフライト前検査と検疫要件の調整が研究されている。
乗客ができる対策
マスクを着用する、体調不良があれば旅行しない、機内持ち込み手荷物を減らす。可能な限り他人と距離をとり、体調不良の人がいれば職員に報告する。頭上にエアノズルがある場合は、自分の頭に向けて真っ直ぐに調節し全開にする。可能な限り座ったままで、乗務員の指示に従う。こまめに手洗いや消毒をし、顔を触らないようにする。
<感想>
JAMAのPatient Page(患者向けぺージ)ですがまとまっています。感染リスクを減らす一番のポイントは,マスクや消毒よりも換気(空気の流れ)と思います。可能な限り風上,つまり図の通りであれば,窓側よりも通路側の席のほうがよいでしょう。とはいえ,長時間のフライトではどうしても感染が起きてしまうかもしれません。興味があれば以下を読んでみてください。
Transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 during long flight.
Emerg Infect Dis. 2020 Nov.
doi: 10.3201/eid2611.203299
In-flight transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2.
Emerg Infect Dis. 2020 Nov.
doi: 10.3201/eid2611.203254
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