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<論文>虫垂炎の手術vs抗菌薬

A Randomized Trial Comparing Antibiotics with Appendectomy for Appendicitis
N Engl J Med. 2020 Oct 5.
doi: 10.1056/NEJMoa2014320.

背景
虫垂炎の治療には、手術に代わる抗菌薬治療が提案されている。

方法
我々は、米国の25の施設で虫垂炎患者を対象に、抗菌薬治療(10日間コース)と虫垂切除術を比較する実用的な非盲検非劣性無作為化試験を実施した。主要アウトカムは、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)質問紙を用いて評価した30日間の健康状態(スコアの範囲は0~1で、スコアが高いほど健康状態が良好であることを示す)で、非劣性マージンは0.05ポイントとした。副次アウトカムとして、抗菌薬群における虫垂切除術と90日間の合併症を含めた;解析は虫垂結石の有無で定義したサブグループで事前分類した。

<初期点滴薬(少なくとも24時間)>
・ertapenem
・cefoxitin
・メトロニダゾール+セフトリアキソンorセファゾリンorレボフロキサシン
<経口薬(10日間の残り)>
・シプロフロキサシン
・セフジニル
<参考>EQ-5D日本語版 - QOL評価の具体的方法等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002mpa7-att/2r9852000002mpe0.pdf

結果
計1552人の成人(虫垂結石あり414人)が無作為化を受けた;776人が抗菌薬群(そのうち47%は指標治療のため入院しなかった)と、776人が虫垂切除群(そのうち96%は腹腔鏡下手術を受けた)に割り付けられた。抗菌薬群は、30日間のEQ-5Dスコアを基準にすると、虫垂切除群よりも劣っていなかった(平均差0.01ポイント;95%信頼区間[CI];-0.001-0.03)。抗菌薬群で90日間に虫垂切除術を受けた人は29%で、そのうち虫垂結石ありは41%、なしは25%であった。合併症の発生率は抗菌薬群の方が虫垂手術群よりも高かった(100人あたり8.1 vs 3.5;率比2.28;95%CI 1.30-3.98)。抗菌薬群の合併症発生率の高さは、虫垂結石ありに起因していると考えられ(100人あたり20.2 vs 3.6、率比5.69、95%CI 2.11-15.38)、虫垂結石なしでは(3.7 vs. 3.5;率比1.05;95%CI、0.45~2.43)だった。重篤な有害事象(それぞれ死亡はなし)の発生率は、抗菌薬群では100人あたり4.0人、虫垂切除群では100人あたり3.0人であった(率比1.29;95%CI 0.67-2.50)。

結論
虫垂炎の治療において、健康状態の評価に基づくと、抗菌薬治療は虫垂切除術に比べて劣っていなかった。抗菌薬群では、10人に3人近くの参加者が90日間に虫垂切除を受けていた。虫垂結石ありは、なしに比べて虫垂切除と合併症のリスクが高かった。

別の見方としては、抗菌薬群では、10人に7人以上の参加者が手術を回避することができ、多くは外来で治療を受け、患者と介護者は虫垂切除術よりも仕事を休む時間が少なかった。これらのデータは、COVID-19のパンデミックの際に、患者と医師がそれぞれのアプローチの利点とリスクを検討する際に、特に重要な意味を持つと考えられる。


<感想>
抗菌薬の選択と経口スイッチまでの短さにやや玄人感があるように思いますが(日本だとアンピシリン・スルバクタムで数日~1週間→アモキシシリン・クラブラン酸,などでしょうか),コロナに絡めた報告にすることで,"散らす"有用性に追い風が吹きそうです。



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