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キネマもん(ショートショート)

(ドラえもんのパクリで、「キネマもん(kinema-mon)」っていうキャラクターを作った。キネマもんは、映画の世界からやって来て、無比無比太(むびむびた movie movie-ta)の家に居候します。笑 この話の続編を今後も書くって言うよりも、雛型みたいなもんです。)

ある日、むび太が和室の炬燵に入ってミカンを食べていると、障子がぼうっと光っている。外で何かが光っているというより、障子のマス目それぞれが光源を持ち、白く光っているように見えた。

むび太は、ただならぬものを感じて、障子に目が釘付けになった。

次にむび太が目撃したのは、障子窓のある、外に面した部屋の二面いっぱいの100本の牛乳瓶だった。さっきの不自然な障子の白色は、障子のマス目の一つ一つをスクリーンにして、スクリーン一面にズームアップされた牛乳の白さだったのだ。

炬燵から出たむび太は、障子に近寄った。それは何の変哲もない和紙の張られた障子だった。むび太が和紙の手触りについうっとりして、撫でていると、障子の色は再び本来的なあたたかみを失い、マス目に赤や青の原色を交互に並べたスクリーン味を帯びた。原色はズームアウトすると、障子はさっきは牛乳瓶だったのが、今度は、原色ビキニの100の女たちになった。

女たちが一斉にビキニを脱ぎ捨てたから、障子は200の乳房でいっぱい。豊満な乳房を両手に抱え、むび太をたぶらかそうとしているように見える。

むび太は障子を撫でたままだったが、和紙の手触りを感じているのか、女の胸のぬくもりを手に感じているのか、もはやわからない。混乱したむび太は、股間を膨らませて、先日、親たちが張り替えたばかりの障子を「ざん!」と突き破った。

「ぺたぺた・・・」

ママが和室にやって来る足音が聞こえる!!

むび太が障子のマス目の一つを破ったが、この198の乳房を見られたら大変!!

むび太は、「あたたたたたたたた」と障子を次々と破っていった。


先日、ドラッグストアの外に山積みになった生理用ナプキンを肘が当たって落とした時に、こんな感じで戻しました。笑

ガラッと部屋の扉を開けたむび太のママが血相を変えてガミガミとわめいている。

「宿題をやっていると思ったらこの有様!!」

障子は元の質感に戻り、虫食いみたいな穴だけが残った。

「あなたが障子を直しなさい」

むびママは、洗濯のりと、刷毛と、障子用和紙を押し入れから持ってくるとプリプリしながら部屋を後にした。

「ちぇっ、まったくツイてないや。さっきのは何だったのかな。」

炬燵から出ると寒いし、お茶でも飲んで体を暖めながら、むび太はひとまず落ち着くことにした。

やがて、再び障子に異変が起こった。


部屋に二つある窓の、二つの障子の一方は「アパート」を、もう一方は障子の幅だけ道幅のある「奥行きのある横に広い道路」を映す、それぞれ縦長と、横長のスクリーンになった。

むび太と正面に向かい合う障子(南東)がアパート、炬燵に入ったむび太から見て左側の障子(北東)が道路である。車道をびゅんびゅん走る車がスクリーンから飛び出して来たら、炬燵とむび太を轢いてしまう。

北東の窓の障子は無傷だが、アパートを映した方の障子は、さっきむび太が乳房を消そうと必死に破ったから虫食いになっている。

スクリーンの世界は夜。障子のマス目は、ピッタリとアパートの窓と同じ大きさで、その窓からは住人の暮らしが見えるようになっており、アパートの壁や玄関、非常階段の役割を果たしているマス目もあり、虫食いのマスは消灯した部屋の窓になっている。もちろん例外もあり、破れていないけど消灯しているマス目もある。

明かりのついた部屋にはそれぞれの生活があり、遅い夕食を食べる恋人どうしや、ピアノを弾いている人、風呂上がりに鏡を見ながら入念に化粧水を塗り込んでいる婦人、深刻そうに会話をしている二人、猫を膝に乗せて窓辺で読書をしている女など、見ているだけですごく楽しい。生活様式は1950年代のアメリカのようだ。

むび太が思わず見入っていると、虫食いのはずのマスがかすかに光った。むび太が悪い目をこすりながら障子に近づくと、暗い部屋でパイプをふかしている男がいるではないか。さっき見たのは暗闇で光るマッチの火だった。

障子の破れたマスも、障子の裏側にある窓がスクリーンになっているじゃないか!

他の虫食いもよく見てみた。むび太はうっかりまた「ざん!」と障子を股間で破りそうになった。暗闇で男女が愛の営みをしている真っ最中の部屋があったのだ!

むび太の強烈な突きを免れた窓の中で、女の膝で寝ていた猫が全身の毛を逆立て、「フーーッ」と威嚇している。下の階の読書してる女がいる部屋だ。女が窓の外をキョロキョロと見まわし不思議な顔をした。

アパートに気を取られていたが、むび太は横長の車道となった障子にも目を留めた。夜だから車はまばらだが、奥の水平線からやって来た車がヘッドライトを光らせながらだんだん大きくなって、スクリーンの手前で切れるのは、なかなか迫力があるし、ドライバーの顔が障子いっぱいになって消える。

和室の壁で切れて一部は見えないが、車道を横切った先にアパートがあるから、道路を横断した人で、アパートに帰って来る人がいるし、二つの障子で一つの連続したスクリーンのようだ。

「あっ」車道に一台の黒塗りの車が停まった。しばらくすると車からドラム型の弾倉のトンプソン・サブマシンガンをもった、葉巻にハットのいかにもなギャングが降りてきた。アパートで抗争を始めるつもりか!?むび太は、障子に駆け寄り、ギャングが道路を横断する前に、障子をガラッと開けて、道路を封鎖しようとした。

アパートの映る障子も外した。血の惨劇なんて見たいもんじゃない。

その時!障子が元に戻るのと同時に、むび太の目の前で両腕を体の前でクロスして窓を突き破る、スパイアクションものの映画のスーツのヒーローと、ずんぐりむっくりの青いキャラクターの映像が交互に点滅した。


窓 破る 映画とググったら出てきました。何の映画?


ガシャーーーーーーーーーーーン!!!!!

窓が粉々になるとヒーローは消え、ずんぐりむっくりだけが消えずに、ゴム毬のように丸まり、ゴロゴロとアクロバティックな前転を繰り返しながら、実体化した。

「こんばんは!!僕キネマもんです」それはどう見ても黒澤明のサングラスをしたドラえもんだった。キネマもんは全身に割れた窓ガラスが突き刺さり、血まみれだ。

「キネマもん!?」むび太は腰を抜かしてひっくり返りながら、自分も窓ガラスの破片で怪我をしていないことが不思議だった。

むび太「突然、びっくりするじゃないか!!それより、大けがしてるみたいだけど、大丈夫!!?」

キネマもん「大丈夫だよ。だってこの血は映画の小道具の血糊だし、窓ガラスだってホラ!!」

キネマもんはそう言うと、全身に突き刺さっているようにしか見えないガラスの破片を手に取ってムシャムシャと食べ始めた。

むび太「おい、ガラスなんて食べたら口の中、血だらけになるぞ!!」

キネマもん「心配ないよ。だってこれ砂糖でできてるんだぜ」

むび太も半信半疑でおそるおそる部屋に散らばったガラス片を手に取るとペロッと舐めてみた。それは映画やドラマの特殊効果で使われる「飴ガラス」だった。

「ドタドタドタドタ」

やばい、ママだ。

ガラッ「まあ何ですこれは!!部屋に強盗でも入ったみたいにメチャクチャじゃないの!!!」

ひゅうううう・・・・・「さ、寒い!」

いつの間にか、キネマもんがいなくなっていた。

窓の外に三脚で固定された映画撮影用のフィルムカメラが回っていた。どうやら、ママが激怒している部屋の様子をカメラが撮影しているらしい。

障子は穴だらけのまま元に戻ったが、窓ガラスは飴ガラスのままで、踏んでも怪我をしないことが幸いした。ママはやがて僕が精神錯乱を起こしたと思って入院させようとするし、大変な騒ぎだった。キネマもんはまた、僕の前に現れるのだろうか?

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