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14本目:有名人を見た

あれは何年前だったか、すでにモンテレイに住んでいたので2013年以降である。サンペドロで友達と食事をし、ひとりタクシーで帰宅していた。30代はほぼそういう生活だったので、いつもの日々のうちの、ある夜の話。

私がメキシコのモンテレイ時代の大半を暮らした家は、サンペドロから極近く、どんなレストランやバーからも大体20分はかからず家に着く便利な場所にあった。サンペドロ市から川を渡ってモンテレイに入るとすぐに貨物電車の線路が通っていて、たまに電車の通過にあたると、通過までに十数分は待つことになる。アメリカの映像でよく見る、何十両も連なった、あの貨物列車である。

その夜は、タクシー運転手の焦り虚しく、私たちが渡る前に電車の通過が始まってしまった。
ちなみに、そこは踏切はないので停車は自己判断である。
南カンザス鉄道の長い車両が、どこで伐採したのか、長い長い丸太を運んでノロノロいくのを数両眺めていた時に、である。
丸太の進行方向の端に直立している男を目に捉えた。
進行方向をまっすぐ見つめ、背筋をピンと伸ばしたその男は、車の混雑も意に介さずただただ水平移動していて、まごう事なき現代の桃白白だった。

もう私は嬉しくて仕方なかった
ドラゴンボール世代とはいえ詳しく覚えているわけではないのに、すぐ桃白白の名前は出てきて、脳内大騒ぎである
「桃白白だ 桃白白おる 今の桃白白ってメキシコにいるんだ
桃白白見れた 桃白白… 私の桃白白…」
その時の携帯では写真に納められないことを理解していた興奮の私は
とにかく彼を脳裏に焼き付けるべく、車両が遠くにいくまで見つめ続けた。
おそらく現代の桃白白は、作業者か、電車にくっついて国を渡る不法移民のどちらかなのだ。

家についても興奮は収まらなかった
きっとみんな笑うだろう
おもしろニデリーのおもしろ作り話と思われるだろう
だから、この体験の価値を理解できる人に、いつかこれを話そう、と
心に誓ったのであった

そして今、コンテストにあっさりとこの体験を暴露するのである。

#私だけかもしれないレア体験

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