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音の建築 - 空間にはすでに音がある -

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表参道ヒルズ、東京銀座資生堂ビル、グランフロント大阪、電通ビル、愛知万博、浜名湖花博…多数の空間や建築を「音」の切り口からプロデュースしてきた井出 祐昭。音と建築について、その極…
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#5 本当に音が必要か? | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

前回は「結晶化されたひとこと」で如何に現場と共有し、初志貫徹できるかをお話しました。 今日のテーマは、「そもそも本当に音がいるのか?」。実は音を加えることをやめる判断もしょっちゅうしています。 音を出さない判断綺麗な騒音 まず、空間には騒音がありますね。実は綺麗な騒音というのがあります。 そのものが出来ちゃってる。極論すれば、そのまま自然に行っちゃえば、そこで音の世界が出来あがっている、という状態です。 シリーズのサブタイトル「空間には既に音がある」に通じる考えです。

#4 結晶化されたひとこと | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

前回のお話で、音響プロデュースに於いて大切な「空間と仲良くなる」方法について等をご紹介しました。 今回は、仲良くなった先のお話です。 結晶化されたひとこと自分だけが表現者じゃない 空間と仲良くなり、方向性などが絞られていくと、もう一つ課題が出てきます。それは、その空間を表現するのは自分だけじゃなく、沢山の人がいるということ。その人たちと同じ方向を向く必要があります。 その際に「ふわふわしていて、キラッと輝いていて…」なんて説明してもなかなか伝わりません。 私はそこで

#3 空間と仲良くなる | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

前回までのお話おさらい音のプロデュースの仕事ですが、音を付け加えるという考えは逆効果。空間にはすでにエネルギーがあり、その空間をどうすればいいか教えてくれます。 素っ裸にならないとそれは感じ取れない。ではどうすれば…? 今日は、空間と「仲良くなった」経験についてお話します。 空間と「仲良くなったか?」みーんなそう思う域 素っ裸で空間と向き合い、返ってきたものが分かると、空間と仲良くなったと感じます。その感覚は、自分にしか分からないようにイメージするかもしれませんが、実

#2 素っ裸でいくと素っ裸で返ってくる | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

空間、人、モノ…どんな対象にも深い所にエネルギーがあるというお話を前回しました。 空間の場合、空間に入った第一印象でそれが分かります。「こうしてくれ」と言ってくれているようなものなのですが、それを感じ取るには少しコツがいります。今回はそのお話をします。 素っ裸でいくと、素っ裸で返ってくる「音のプロデュース」の最大のコツがあるとすれば、初対面の時に自分を素っ裸にして、相手の中にあるもの、外に出てくるものを感じること。 「素っ裸」がポイントになります。 空間にはコンセプトや表

#1 空間にはすでに音がある | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

深い所にあるエネルギーを引き出す空間にはすでに音がある。本シリーズのサブタイトルでもあるこの言葉、その意味から解説していきます。 私の仕事は、ある空間、ある人、あるモノを音で表現するという側面があります。その際に上手くいかないパターンがあって、それは何かというと、実は「音を付け加える」という考え方です。これは水と油になることが多いのです。 音のプロデュースなのにどうして?と思われる方もいるかもしれませんが、これが、45年間ずっと同じ考えでやってきたことなのです。 私は、