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理詰めで誰でも面白いストーリーが作れる 8 行動規定因子表で生身の人間を生み出す

面白いストーリーを作るための、充分な量と質の理論を提供する連投テキスト。
8回目である今回は、前回紹介した行動規定因子表の、具体的な使い方等について述べる。


埋めるべき項目の数

まずは行動規定因子表の画像を以下に示す。

前回のテキストでも言った通り、
充分な行動規定因子を設定し、それを遵守することによって、生身の人間としてのキャラクターを作る・描くことができるようになる。
そこで問題になってくるのは、「充分な行動規定因子の設定」とは、具体的にどのようなものであるかという点であろう。

例えば前回例に出した因子、「極度の寒がり」「節約家」「貧困」という三つの設定のみでは、全くもって不充分である。
では数にしていくつの因子があれば、充分な設定と言えるのだろうか?

その問いに対して答えるためには、以下の二つの点を考慮する必要がある。
①作ろうとしているキャラクターが物語作品の中で担うべき役割(例えば主人公か主要キャラか脇役か等)
②作ろうとしている物語作品の長さ

まずは①について述べよう。
作ろうとしているキャラクターが主人公であるなら、冒頭に示した行動規定因子表の、全ての項目を埋めることが、最低限必要な設定である。
一方、作ろうとしているキャラクターが、一つのシーンにしか出て来ないほどのチョイ役である場合には、薄い水色で塗り潰されたセルの項目を埋めることが、最低限必要な設定である。
作ろうとしているキャラクターが主人公でもチョイ役でもないなら、その重要度に応じて適宜判断すればよい。
例えば主人公のライバルとかラスボス的存在については、全ての項目を埋めるのが得策だろうし、主人公の仲間や中ボス的存在なら、全項目ではなくともよいが8割くらいは埋めた方がよいし、チョイ役とまではいかない脇役の場合は、水色セル+α程度でよいといった具合だ。

なお、「充分な設定」の話をしていたはずなのに、「最低限必要な設定」という表現を用いたのには理由がある。
その理由とは、設定の項目の数だけで、「充分な設定」という条件を満たすことはできないからだ。
事務的に項目を埋めさえすれば、それだけで生身の人間が作れるというのは、残念ながら考えが甘い。
各項目を埋めることは最低限の大前提で、その埋める内容をどれだけ作り込むことができるかによって、その設定が充分なものになるか否かが決まる。
そのその作り込み方については、次節「エピソードで埋める」内で詳しく述べるので、大いに参考にしてほしい。

次に②について述べよう。

主人公については全項目を埋める必要があるとは言ったが、実は例外的なケースもある。
それは、物語作品の長さが、極端に短いケースだ。
極端に短いというのは、小説で言えばショートショートくらいの長さである。
とくにショートショートというジャンルでは、設定の奇抜さやストーリーの意外性が重視される傾向にある。
そのため、キャラクターの生身感については、それほど強くは要求されない。
もちろん、キャラクターに生身感のあるショートショートがあってはいけないなどと言っているのではない。
あるならあるに越したことはないが、たとえ無くても高く評価してもらえるというのが、ショートショートというジャンルの特徴である。
したがって、ショートショートの主人公を作る際に埋めるべき項目は、水色セルだけでも構わない。
ショートショート以外の、極端に短い物語作品についても同様である。

エピソードで埋める

さて、「項目を埋める」と一口に言ってみても、事務的あるいはデタラメに、ただただ埋めればいいわけではない。
例えば性格表現用語一覧のようなものをネットで拾って来るなりして、単語をランダム抽出するフリーソフトにそれらを突っ込んで、選ばれた用語を空き項目に放り込んでゆくといった方法で、生身の人間が作れると思ったら大間違いだ。
各項目を単語や短文で埋め終わったら、さらなる一手間を加えることが不可欠なのだ。

その一手間とはすなわち、各行動規定因子にまつわるエピソードを最低でも一つ、具体的にありありと思い浮かべるというものだ。

例えば「年齢」という項目を、18歳という単語で埋めたとしよう。
そうしたら、その「年齢18歳」という行動規定因子にまつわるエピソードを、最低でも一つイメージするのだ。

例えばこんな具合である。

18歳の誕生日には例年と同じく、別段祝い事めいたこともせず、誰かから祝福の言葉をかけられることも無く、いつもと変わらない一日として過ぎ去った。
彼本人はその日の夕方ごろに、誕生日であることに気付いたが、とくに何らかの感慨に浸ることも無く、趣味の読書に没頭し続けた。

こういった短めのエピソードを、必ずしも文字起こしする必要は無いが、とにかくイメージすることが必要不可欠である。
単語や短文で項目を埋めるだけでは、それは単なるデータに過ぎない。
だがそこにエピソードを添えることによって、そのキャラクターの生身感は少しずつ、そして着実に増してゆくのである。

ある項目を埋める際にイメージしたエピソードが、他の項目を埋めてゆく過程で、整合性が取れなくなってくることは当然ある。
その際には、どちらの因子を優先すべきかを念入りに検討して、破棄すべきエピソードは破棄し、整合性の取れる代替エピソードを新たにイメージする。
そうした作業はひどく億劫に思えるかも知れないが、生身の人間を作るという行為に伴う、産みの苦しみだと思って耐えて欲しい。
そうすればふと気付いた頃には、そのキャラクターへの愛着が芽生えていて、そこから先はその作業が楽しくて仕方が無く思えてくるはずだ。
愛しの我が子を産み育てるプロセスだと思って、めげずに続けてみてほしい。

優先順位はどこまで決めるか

項目をエピソードで埋めてゆく過程で、各因子間の優先順位の問題に行き当たることは前節で述べた。
その都度優先順位を明確化してゆくことは必要不可欠であるが、それだけでは充分な優先順位付けとは言えない。
たとえ問題に行き当らなかったとしても、無条件で明確化しておくべき順位付けがあるのだ。

まずは言うまでもなく、最も優先される行動規定因子を明確化する必要がある。
加えて、主人公であればトップ5まで、チョイ役であればトップ3までの優先順位は、明確化しておかなければならない。

つまり、優先される行動規定因子トップ3~5と、
項目を埋めてゆく過程で必要に迫られて優先順位付けしたもの。
最低でもこの二点は明確化し、表にも明記しておくべきである。

トップ3~5については単純に番号を振り、
必要に迫られて順位付けしたものについては、欄外に不等号で記す(例えば「極度の寒がり>貧困」)等の方法で、可視化しておく必要がある。

まとめ

作ろうとしているキャラクターが主人公であるなら、行動規定因子表の全ての項目を埋める必要がある。
作ろうとしているキャラクターがチョイ役であるなら、薄い水色のセルの項目のみで構わない。
作ろうとしているキャラクターが主人公でもチョイ役でもないなら、どちらに近いかを基準にして、埋めるべき項目の数を決めればよい。
極端に短い物語作品については、作ろうとしているキャラクターが主人公であっても、薄い水色のセルの項目のみで構わない。

項目を埋める際には、単語や短文のみではなく、それにまつわるエピソードで埋める必要がある。
項目を埋める過程で必要に迫られた場合には、因子間の優先順位を明確化し、表中に明記すべし。
たとえ必要に迫られない場合でも、主人公ならば優先順位トップ5、チョイ役でも優先順位トップ3までは、明確化して表中に明記すべし。

今回のテキストは以上である。
最後まで読んでくださったそこのあなた、本当にありがとうございましたm(__)m

参考文献
○ロバート・マッキー著、越前敏弥訳『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』(フィルムアート社)(2018年)
○沼田やすひろ『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』(講談社)(2011年)
○Webサイト『コトバンク』内「政治体系」の項(https://kotobank.jp/word/政治体系-1178804)
○アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ著、新田享子訳『トラウマ類語辞典』(フィルムアート社)(2018年)

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