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ポートフォリオゲームは人生の縮図

植村 友貴
東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 2年


はじめに

こんにちは。Identity Academy(以下 IA)5 期卒業生の植村友貴です。
今回は、IAで経験した数々のプログラムの中で特に印象的だった、ポートフォリオゲームについてまとめてみました。シンプルながら色々なことを考えさせられたとても面白いゲームだったので、そこで感じたものや浮かんだ考えをシェアすることによって IA に興味を持ってくれる人が一人でも増えてくれれば嬉しいです。

① ポートフォリオゲームとは

ポートフォリオゲームとは、銘柄の数や種類、予算、取引のタイミングに設けられた制約のもと、売買によって一定期間内に少しでも多くの利益を上げたチームが勝ちというゲームです。単なる株式投資シミュレーションゲームと異なる点は、森山さんの口座において実際の取引が行われる点にあります。自分達の出した注文は少なからず市場に影響を与えますし、自腹ではないにしても実際の金銭が動くので、失敗できないヒリヒリ感は段違いでした。

② 社会の仕組みについて勉強する良い機会である

IA では、森山さんをはじめとする、金融業界に長いこと在籍している(いた)プロ目線の講義によって、株式市場の基礎から、最前線で戦うファンドマネージャーのトレー ディングにおける考え方まで、さまざまな情報を得ることができます。こういった特別な機会があると、特効薬とか裏技みたいな一瞬にして最強になれる何かを期待してしま うのが人間の性というものですが、ガチの情報はえてして基本に忠実でした。ただ、社会の仕組みに疎かった自分にとって、「株と為替の値動きです」から始まる、ニュース番組の終わり際に存在する無為に思えた数分間をはじめとするニュースの大部分に、それなりの意味を感じられるようになったことは大きな収穫でした。
また、資産を増やすための知識が増えるだけでなく、身の回りに起こることにある程度の必然性を感じられるようになったり、今後が想像できたりするので、何が起きても割と冷静でいられるようになるのかなとも思います。少し前の話になりますが、シリコンバレーバンクが破綻したというニュースについて、森山さんがIA 卒業生向けのFacebook 記事にて述べられていた内容が、自身の見解と大きく離れていなかったことに、確かな成長とささやかな喜びを感じました。

③ 人生の縮図である

ポートフォリオゲームのもう一つの特徴は、人生の縮図としてよくできているということです。世の中に人生の縮図とされるものは多く存在し、試しに Google で「人生の縮図」と検索すると、一日は一生の縮図だとか、スポーツは人生の縮図だとか、はたまた麻雀は人生の縮図だとか、色々な記事が出てきます。しかし今回は、もはや手垢まみれにも見えるこの人生の縮図業界に、ポートフォリオゲームこそが真の人生の縮図であると、一石を投じたいと思います。

人生の縮図とされるものの特徴として、なんとなく成功と失敗があり、期限があり、一定の不確定要素があり、他者との関わりがあり、といったことが挙げられます。ポートフォリオゲームは、例に漏れずそれらの特徴を有していながら、他にない圧倒的なわかりやすさがあるなと感じました。

一押しポイントとして、このゲームでは株価もしくは、資産という一次元の指標の上下で戦うため、リスク(不確実性のこと)やリターンの概念が単純です。長い目で見ると、同じリターン(a)ならリスク(x(≧0))が低い方がいいというのは、(a+x)(a-x)が x(≧0) に ついて単調減少である事から簡単に導き出せるし、複数銘柄の組み合わせによるリスク リターンの効率も数字で出るし、PER、PBR、ROE といった企業や株価を評価する数値の指標も豊富でした。

また、チーム対抗であることや、実際の株取引を伴うこと、期限があること、不確定要素があること、最後は人間の判断に委ねられることなどによる、複雑な人間模様も非常に面白い要素でした。チームにおいて何かを主張するときには、失敗によってチームメイトや森山さんに迷惑をかける「責任を負う」という「勇気のいる行為が求められる」 し、チームによって銘柄選びやリスク選好度合いに「個性が出る」し、他チームとの関係性や残りの期間によって「許容できるリスクの量が変わってくる」し、想定外の値動きに「一喜一憂することもある」し、最後は「執念が勝負を分ける」が、振り返ってみると、時々「感情的になって短期的な動きに目がいってしまう」状態になっていたことがわかり、本来は「長期的な動きに目を向け、細かいノイズにはどっしり構えるのが正解」だった、などと思い出せるだけでも人生におけるエッセンスが多く詰まっていまし た。

これら数々の学びの中で、自分が特に意識したいなと思ったテイクホームメッセージは、大きなリターンを得ようとするとそれに見合う量のリスクがついてくるが、どれくらいの量のリスクを許容できるかは、それを取り返すのに当てられる時間によるので、 人生の残り時間がたっぷりある若いうちに大きなリスクをとって大きなリターンを狙う のがよさそう、というものです。また、リターンを得るにしても、それは今後掛け算によってさらに大きくなっていくものなのか、単なる足し算に過ぎないのか、や、きちんとリターンが伴ったリスクを取れているかといった、モデルとするポートフォリオゲー ムと実際の人生との間の整合性を確かめる作業も欠かせないなと思いました。

まとめると、ポートフォリオゲームは、人生において大事なことが言語化、可視化されるために記憶に残りやすく、今後の人生に生かすという観点では、非常に有用なゲーム だったなと感じています。
まさに人生の縮図ではないでしょうか。

終わりに

「ポートフォリオゲームが人生の縮図である理由について、ユーモアを交えて教えてく ださい」などと ChatGPT に頼むよりは多少なりとも読者の方に面白いと思ってもらえるものになっているかなと、生成された文章と自分のものを見比べながらこの文章に推 敲を重ねる自分の姿はまるで、AI と付き合っていく今後の人間社会の縮図となっているでしょうか。という感じでちょっとうまいこと言って締めたいと思います。

このお話を読んで少しでも興味を持っていただけた方には是非 IA に入学していただき、講師陣はもちろんのこと、自身を含めた大勢の愉快な仲間たちと交流してもらえれ ばと思います。

最後になりましたが、一緒に様々な議論を重ねたポートフォリオゲームのチームメイ ト、最終日まで目が離せない勝負を共に繰り広げた他チームのみんな、便利なツールを引き継いでくださった先輩の皆さん、このゲームをはじめとして、様々なプログラムの考案や運営などを行ってくださった森山さん各務さんをはじめとする IA 運営者の皆様 に感謝申し上げます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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