【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第二部 第二十八話「コピー空間」
第二十八話「コピー空間」
家の戸締りをした後、
瑠璃は大きなランチボックスを持つと皆と家を出た。
妖精達に言われるままに、
裏庭の木戸を開ける。
別にどうということのない竹林だが、
瑠璃が足を踏み入れると、
初めてここを訪れた時と同じように体が輝いた。
見るとフォスも輝いている。
「なっ? 俺達にはここは異世界なんだよ」
ネルはそういうと、白く光る空間に入っていった。
竹林の中央が輝いていた。
「瑠璃も早く」
クリソスに言われるまま、フォスと手を繋ぎ歩きだした。
空間を抜けると、
見たこともない綺麗な景色がそこにあった。
「ここはどこ? 」
瑠璃が聞くと、
「フェアリーストーンのコピー空間」
フェーンが笑顔を向けた。
「私達もこの前はじめて知ったの。
瑠璃がお仕事に行ってるときに、
フォスとここで遊んでるの。
ここなら走り回れるし、空気も綺麗だから」
「この空間はね。
私達が知ってる場所をコピーして、
再現してくれるからフォスにも、
勿論瑠璃にもいい空間なのよ」
ピュアが気持ちよさそうに深呼吸した。
「地球は空気が悪いから、
この空間は体が楽になる。
フォスも瑠璃も気が整えられて、
体の毒素を消してくれるわよ」
そう言われれば体が楽な気がする。
下を向くと、フォスも気持ちよさそうだ。
やはり地球人ではないから、
体は辛いのかもしれない。
「瑠璃も魔法訓練にいいと思う。
ここなら思いっきり爆発させても、
何も問題ない。
攻撃魔法を習得するのにもいいな」
ふむ。そうか。
今まで思いっきり力を出すことができなかったから、
ここなら存分に魔法を放出できる。
魔力を自分でコントロールできないので、
攻撃魔法の練習には気を使っていた。
どのくらいの攻撃力があるのか分からないまま、
仮想空間の敵に向かって魔法をかけていた。
力を加減していたので、
どのくらいの威力かもここなら確かめられる。
何と戦うか分からない今、
いつでも戦闘態勢でいられるようにしないと、
危険かもしれない。
魔法に耐えられるだけの基礎体力も付けて、
更に大魔法使いにもならないと。
戦うおばさんに私はなるぞ~~~~~!
瑠璃は心の中で叫ぶと、
フォスを見て笑顔になった。
「このコピー空間てこの景色だけ?
他にもあるの? 」
瑠璃が不思議に思い聞くと、
「自分の記憶が形になるから、
魔法が使えるなら再現できる。
瑠璃ももう魔法はかなり習得できてるから、
コピー空間は作れるはず」
ブロンが言った。
私にもできるのか?
どんなものがいいんだろう。
皆が知らなくて、
フォスが楽しめる空間…………
そうだ!
「私が作りたい空間を魔法で出したいんだけど、
どうすればいい? 」
「杖に念じて円を空間に書いてみな」
フレアに言われた通り、
自分の記憶をたどり杖を振る。
すると………
なんじゃこりゃ。
夢の国を想像したのに、
色んなものがごちゃごちゃになって現れてしまった。
でも………
「凄ぉ~い」
妖精たちとフォスの笑顔を見たら、
まぁ、これはこれでいいのか。
瑠璃は笑顔になった。
よろしければサポートをお願いします! いただいたサポートは物作りの活動費として大切に使わせていただきます。