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【比較】日本の安全保障対策・4選

このnoteについて

ウクライナ情勢の悪化を受け、ニュークリアシェアリングといわれる「核共有」の考え方を皮切りに、安全保障についての関心が高まっています。
世界をより住み良い場所に、すべての人が十分な物質的、精神的幸福を持続的に得られる社会に変えていくためには、ネット空間にいらっしゃる皆さんが、共に手を取り合って建設的なアイデアを考えていく事が必要不可欠です。
ここでは、核共有をはじめとしたいくつかの安全保障のアイデアを提示することを通じ、皆様がこの問題について考えるきっかけを作る事ができればと思います。
まずは、話題の核共有の特徴に触れ、その後一般に広く考えられている安全保障の仕組みを考え、そして最後に、私の着想を2つほどお話しできればと思います。また、それぞれのアイデアの末尾に、以下のような観点での評価表を作成しました。

【アイデアの名前】
4つの観点から、☆★で5段階評価する所存です。
・実現の容易さ(★が多ければ多いほど、容易に実現可能)
・実現速度(★が多いほど、短期間で実現可能)
・持続性(★が多いものは、長期間での平和維持が可能。安全保障の目的が平和維持であることを考えると、非常に重要な項目)
・負担の軽さ(★が少ないほど、私たちの生活を圧迫する)
総じて、★が多いと高評価であると考えてください。

個人が作成した表であるが故、恐らく多少の主観や偏見が入ってしまっていると思われますが、こちらもご自身の考えを深め、多様なアイデアを比較する際に、参考程度に役立てていただけると幸いです。それではまず、話題のニュークリアシェアリングについて考えてみましょう。

そもそも:ニュークリアシェアリングとは

[ニュークリア・シェアリング](英語:Nuclear Sharing)とは、核保有国が核兵器を同盟国と共有するという考え方、戦略。アメリカがNATOに供給する形で実現された核抑止における政策上の概念である。NATOが核兵器を行使する際に独自の核兵器を持たない加盟国が計画に参加することと、特に加盟国がその国内において核兵器を使用する為に自らの国の軍隊を提供することが含まれている。(wikipediaより抜粋)

かいつまんで言うと、日本が独自に核爆弾の開発を行い武装するのではなく、アメリカの協力と理解を得たうえで、従来のアメリカによる核の傘を広げ、アメリカ製の核爆弾を日本国内に直接持ち込めるようにする事で、抑止力を高めるという考えです。この際、核爆弾の維持は日本が資金を出すことになりますが、核爆弾の使用についての最終判断は、アメリカが権限を持つこととなります。仮にこれが実現すれば、非核三原則「持たず、作らず、持ち込まさず」のうち、持ち込まさずが破られることになります。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。

懸念点

例)
・アメリカがそれを支持するかどうかが不明瞭である
・仮に配備できたとしても、周辺国の軍拡競争を過熱させてしまい、結果的に安全保障の悪化に繋がる危険性が高い(詳しくは、安全保障のジレンマを)
・核の維持により国内の予算が削られ、福祉、医療、教育といった分野への資金提供が滞り、結果的に餓死者や反社会勢力、救えない命が増える可能性がある{2014年の段階では、国家予算の内防衛関係費(安全保障に割くお金)は、社会保障費(福祉に割くお金)の1/6だった。これが増大していけば社会保障費も必然と減っていく事が予想される}
・被爆国である日本が、あくまでにアメリカに委託する形でとはいえ核を保有することは、大半の国民に対し心理的に大きなストレスと反発を生むこととなり、政府への信頼が下がることが予想される(2006年に取られた世論調査では、「あなたは、今後、日本はいままでの非核三原則を維持し続けるべきだと思いますか、それとも将来は核兵器も持つべきだと思いますか?」という質問に対し、「非核三原則を維持し続けるべき」と答えた人が82%を占めた)
・核を持っていても、「仮に核戦争になっても、自国民の一部が生き残ればそれでいい」と考え、威嚇がきかない国が存在する

数ある懸念点の中で最も私が懸念しているのは、仮に他国から核が打たれ、それを防衛できなかった場合に、人類滅亡に発展する報復の核を誰が打ち返せるのか?という事です。
これは、核共有に限った話ではなく、核を何らかの形で保有するアイデア全般に言えることかもしれません。独裁国家が核を打つ可能性はありますが、一定の良識と理性を持つ人間には、核は打ち返せないと思うのです。なぜなら、現在の予測より、核を打ったら核報復戦が始まり、核の冬が訪れ人類のうち約70億人(全人口のおよそ90%)が死亡してしまうことが分かっているためです。つまるところ核を打ち返し、報復戦へと突入すれば、この記事を見ている皆さんをはじめとした大多数の方々はもちろんのこと、核報復の当事者でもある政府関係者自身や、その家族や知人も、全てが核戦争によって灰燼と化してしまうのです。
核戦争に、勝者は存在しないのです。そこには文明が崩壊し、全ての人が絶望に打ちひしがれる未来が待っているだけなのです。

*核の冬、および70億人の死者のソースついては、詳しくはこちらをご参照ください。  

以上の考察から、私個人としては、このアイデアに以下のような評価を付けました。

【ニュークリアシェアリング(核共有)】
実現の容易さ:★★★☆☆
実現速度:★★★★☆
持続性:★☆☆☆☆
負担の軽さ:★★☆☆☆

アメリカと話がまとまった場合の核配備のスピードはたしかに速いでしょう。ですが、アメリカ側に権限がある関係上向こうの軍事力、士気が衰えてしまうと防衛力が下がるリスクや、そもそも軍拡競争を加速させる結果に終わる可能性が高い、日本の平和主義国としての地位を捨てなければならない、そして私達の生活を急激に悪化させるなど、その持続性については疑問符が残ります。では次に、現段階で広く考えられている安全保障対策を見ていきましょう。

安全保障の一般論について

まず現状で実現可能な解決策としては、核ミサイルが打たれる確率を減らすべく他国と連携、独裁国家の暴走を止められるように社会を構築していく一方、打たれた場合にも極めて高い確率で撃墜できる仕組み作りに注力する事、つまるところ「核弾頭を打っても意味がなく、威嚇にも使えない状態」を作っていく事が考えられます。

ここで一つ、現状の日本のミサイル撃墜システムに注目してみましょう。ミサイルに対する防衛システムは、以下の3ステップに大きく分かれています。

1:日本列島全域で稼働しているレーダーで、ミサイルの発射を感知。落下地点を予測しつつ、数分以内に警報を鳴らし国民に避難を呼びかける。
2:海上自衛隊のイージス艦が宇宙空間を飛翔中のミサイル撃墜を遂行。一般的にはこの段階が、一番撃ち落としやすいと言われている。
3:イージス艦による撃墜に失敗し、ミサイルが大気圏に突入し、着弾寸前となった場合、航空自衛隊がPAC-3という迎撃ミサイルで撃墜を図る。
*撃墜に際しては、総理大臣の指示を待たず、現場指揮官が迅速に撃墜対応できるようになっている。(自衛隊法82条の3参照)

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一方で、現在の防衛システムには問題もあるのが実情のようです。
指揮系統の関係で陸、海、空の自衛隊が別々にミサイル迎撃に取り組んでいるため、撃墜対処が被ってしまったり、また対処を逃してしまう可能性がある模様です。そこで、それを解決するために国防省が推奨しているのが、総合ミサイル防空という構想です。

総合ミサイル防空とは:
 センサーやシューターの能力を高めていくほか、ネットワークを通じて、ミサイル防衛用の装備品とその他防空のための装備品を一体的に運用する取組み。
ネットワークと相互連携の強化を行っていく事で、迎撃対処の重複と欠落を防ぐことに繋げる狙い。例えば、自らのセンサーで目標を捕捉していなくても、他のセンサーからの情報を用いて迎撃ミサイルを誘導することが可能となって防護範囲が拡大するなど、防空能力の向上が期待できる。

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ミサイル迎撃の防衛力を高めるのであれば、総合ミサイル防空に費用をかけていくのが、安全保障を向上していく上で現実的な解でしょう。

しかし、こういった自衛隊の防衛力強化にも、当然税金やお金が掛かってしまうのが現実です。やりすぎてしまえば、私たちの生活が圧迫される他、福祉や医療にもお金が掛けられなくなってしまうという懸念もあります。さらに、仮にミサイルによる防衛を充実させたとしても、核保有国が撃ち落としにくいミサイル開発に熱を注げば、結局は技術開発のいたちごっこになりかねません。それでも、核武装や核共有よりは費用が少なく済み、周辺国の軍備拡張を刺激しないのが、迎撃ミサイルという防衛力のみの強化の利点です。
今後仮に、日本が今以上の防衛力強化を行っていく必要が出た場合でこの政策を進めていく決断を下した場合には、国民の生活の困窮をもたらさない範囲で迎撃力を高めていくという、難しくも大切な微調整を行っていく事が求められると想定できます。

以上の事より、私はこの政策に以下のような評価を下しています。

【総合ミサイル防空】
実現の容易さ:★★★★★(部分的には実現している箇所も)
実現速度:★★★☆☆
持続性:★★★☆☆
負担の軽さ:★★★☆☆

個人的な考えとしては、ミサイル防空についてはあくまで現状で実現可能な一時的な解決策に過ぎず、真の意味で核保有国の暴走を止めるためには、全く別のアプローチが必ず必要になると私は考えています。
私は、核を後ろ盾にした独裁者の暴走を止めるためには、現状可能な対策を講じつつ、それと並行してこれまでとは全く違う新たな対策の実現を目指していく必要があると考えています。

そこで次に、恒久平和実現の為独自に考えたアイデアを、「例えば」の具体例として2つ提示する事とします。

1:衛星による、ミサイル防空の実現
2:世界政府の樹立

1:衛星による、ミサイル防空の実現

一つ目のアイデアは、世界中の空に無数のミサイル迎撃機能を持つ衛星を飛ばし、大気圏内に入った核ミサイルを自動で破壊、無力化するシステムを実装するというものです。
近年の弾道ミサイルは、大気圏から地上に落ちるまでの速度がとても速かったり、核弾頭が分裂したり、一般に撃ち落としやすいと言われる大気圏内でのミサイル迎撃にも不確実性があったりと、地上からの撃墜が非常に難しくなっています。そこで、地上撃墜の構想から離れ、天空にミサイルを自動破壊する固定砲台を、衛星を活用して設置するというアイデアに辿り着いたのです。

実現方法:
ステップとしては、まず半径数百~数千km²以内のミサイルを自動で撃ち落とせる衛星を作り、その後それを量産、世界中の空に浮かべるという流れです。
ここで気を付けたいのが、衛星の維持には莫大な費用が掛かるという点(人工衛星の1機当たりの開発費だけでも、約150~500億円掛かるといわれている。それにミサイル迎撃のための武装も施し、維持するとなると、1基で数千億円規模の費用が掛かると予想される)、そして衛星も飛ばしすぎると、地球の周りをまわるデプリ(有害な宇宙ゴミ)が増えすぎてしまうという点です。
そのため、未来永劫に世界中にミサイル迎撃衛星を飛ばすというのは、非現実的と考えられます。そこで考えられるのが、各国が協力して数年間だけ世界中に衛星を配備し、核攻撃を無効化している間に、大国の働きかけで世界中の国家から核兵器を廃絶していくという作戦です。核兵器廃絶後は、新たな核兵器が一つも現れない様に、監視の目を光らせていく必要もあります。核兵器の開発には大規模な演習場や資材が必要不可欠なので、大国がしっかりと監視をすれば、兵器完成前の発見は十分可能と考えられます。
そもそも核兵器自体を廃絶してしまえばミサイル防衛の維持も必要なくなるため、あくまで数年規模に限定した衛星による防衛の実現であれば、費用、廃棄物の観点から見ても実現の可能性が出てくると思われます。

衛星によるミサイル防空の実現の為には、国家間の協力はもちろん必要ですが、それだけでは足りないと私は考えています。
例えば、倫理観どちらも兼ね備えた資本家や技術者個人個人が連携していく事により、衛星を地球上に広めるこのアイデアは実現するだろうと、私は予想しています。また、この実現には世界規模での連携も必要になると考えられるので、後述の世界政府の樹立と並行して行うというのも、実現の選択肢としては考えられます。
期待できること:
これが実現すれば、核兵器をいくら打っても空中で撃ち落とされてしまう状況が作れるため、世界規模での核兵器の無力化が期待できます。そうなれば、小国に対しては核を盾に恫喝、侵略を行い、大国に対しても核武装を謳う事で人権侵害を容認させようとする軍国主義国家の、国内外を問わない権力低下が見込まれると考えられます。
さらに、各国が自国防衛のために仕方なく保有、維持していた核が必要なくなることで、世界中の国々の軍縮による国力増加、それに伴う経済力強化、生活水準の向上も見込むことができます。
懸念点:
実現に膨大なコストが掛かるのは言うまでもないことですが、仮にそれが実現できたとしても、核によって、核以外の戦力を持つ軍国主義国家からの侵略を防いでいた国の安全保障が下がる恐れも想定できます。
コストの点については、先述の通りあくまで数年間のみ衛星防衛システムを維持するという点で軽減が可能であり、国家や資本家達の連携が取れれば実現が全く不可能なわけではありません。
一方で、核の防衛力を活かしていた小国に関しては、核廃絶の代わりに、大国が責任を持って軍国主義国家から守っていく必要があると考えられます。これまでは、軍国主義国家による小国の侵略に対し、大国はあまり干渉が出来ませんでした。干渉すれば核戦争となり、自国にも被害が及ぶ恐れがあったためです。しかし、仮に核を無力化する事が出来れば、大国が小国を守る事への抵抗は減り、より軍国主義国家の侵略行動も行いづらくなると考えられます。

以上の事より、この着想には下記の評価を与えています。

【衛星によるミサイル防空】
実現の容易さ:★★☆☆☆
実現速度:★★☆☆☆
持続性:★★★★☆
負担の軽さ:★★☆☆☆(あくまで一時的に衛星を展開する政策なため、長期的に見たコストは少ない)

実現には多くの力ある人たちの協力が必要不可欠ですが、出来ない訳ではない。それが、衛星によるミサイル防空の構想なのです。

2:世界政府の樹立

二つ目のアイデアは、世界政府の樹立を目指すというものです。
世界政府には様々な定義がありますが、ここで私が述べる世界政府とは、人種・言語・宗教・思想などの差異に関わらず、全人類が共通して持っている倫理観と価値観(一般には、これを共通善と言う)の元、世界中の人々に十分な物質的、精神的幸福を保証し、技術と人類の発展を目指して運営されていく、全ての国家の上位に位置する政府のことです。
共通善にもこれまた様々な解釈がありますが、ここでは主に以下のような、生育環境や遺伝的要因に関係なく、全人類の約98%に共通して、本能レベルで刻まれている認識を指すことにします。

例)
・理由もなく人を殺してはいけない
(心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあったデーブ・グロスマン氏著作の『戦争における人殺しの心理学』という本がある。この本によると、第2次世界大戦中の戦闘では、米軍の歩兵の内約85~80%が敵に向けて銃を発砲しておらず、代わりに戦友の救命や弾薬の補給といった、発砲よりも危険の大きい仕事をこなしていたという。
また、発砲する者の中でも、敵兵に弾を当てないように打ったり、あくまで狙撃を威嚇のみにとどめるものが大半だったという。さらにこのような現象は、第1次世界大戦や南北戦争でも同じく見られている。
このことより、戦争という極限状態においても、大半の人間は、たとえ相手が自分と違う国家に属している敵だとしても他人を殺すことは出来ず、軍隊の訓練や国家の圧力があってなお、良心を捨てる事はかなり難しいことが分かる)

・生まれたからには、私たちは人から愛されたり、社会から認められたりすることを求めてよい
(マズローの欲求五段階説でいうところの、所属と愛の欲求といった精神的幸福の欲求の箇所である。遺伝子レベルで見ても、人は社会的な生物であるため、いかなる時代、宗教、国家でも、他者、世界からの受容が幸福へとつながり、それを求めていく普遍的権利があるという考えは広く受け入れられていて、それにそぐわない差別、制度など(奴隷制度や人種差別など)は撤廃、もしくは忌諱されていく傾向にある。現在にも差別は残っているが、それについても、世代交代によってその多くは減っていき、より忌諱されていくだろうと考えられている)

仮に実現した場合、この政府には、世界中の軍事、法律、福祉、教育、学問研究を管理できる権限を持ってもらうのが最適解と考えています。

「1920年に創設された国連は、世界政府ではないのでしょうか?」と考える方がいるかもしれませんが、国連はその機能が限定されており(例えば、国家の政治方針に干渉できないし、国際法等に基づいて、国を裁くこともできません)世界政府と言えるような組織ではなく、これまでの人類の歴史上、世界政府は一度も実現されたことはないのです。

実現方法:
多くの人々の尽力があったにもかかわらず、未だかつて実現が出来なかったものを、いったいどのように実現するのか。
考えられるのは、力と倫理観に恵まれた個人達が団結し、その圧倒的な資本力と人脈、技術で世界を統一していくという方法です。
実現の道筋としては、各国内の資本家や政治家たちが団結し、まずは共通善に基づく町などの運営を試験的に行い、その町の人々の幸福度が上がったり、生産性が上がったという成果が出次第、それらの実績を元手に共通善に基づく政策を取っていくよう政府に働きかけ、共通善主義の国家へと国を変えてゆくのがファーストステップです。
次に、共通善によって動く国家間で国際連合のような国際組織を作り、やがてその国際組織に各国が先述の一部の権限を委譲することで、世界政府は実現すると考えています。あくまで、世界政府が持つ権限は軍事、法律、福祉、教育、学問研究に留まり、その国々が持つ独自の経済構造や文化等については、その国の中での自決権限を持たせるつもりです。

期待できること:
世界中の武力、権力が集まる世界政府を実現出来れば、誤った現状認識、短期的な利益を追求する利己主義などに基づき、他国に核の脅しをかけ恫喝をする国家元首の存在自体がそもそも現れないようにすることができます。それにより、核戦争のみならず、現在起こっている紛争や内戦、テロなども全て防止、もしくは軽減できるようになる事が予想されます。また、世界規模で十分な福祉、教育の徹底が普及する事により、現在の地球の総人口約77億人が、物質的、精神的に満たされる社会の到来が訪れる事も想定できます。
さらに、各国間で秘匿してきた技術が共通の利益のために全て公開され、そして共有されることにより、これまで以上の速さで、技術、研究発展が進むことも見込まれます。

懸念点:
実現が難しいという観点以外での、世界政府実現に際しての懸念は大きく分けて2つあります。一つ目は世界政府腐敗時の恐れ、二つ目は過度な倫理観、価値観の統一です。
仮に全世界の軍と法律、福祉等をつかさどる政府が腐敗してしまった場合、権力者(達)による、これまで史上類を見ない独裁が行われ、しかもそれをだれも止める事が出来ないという状況に陥る可能性があります。
また、共通善の定義が広がりすぎる事により、個人個人で違ってもいい範囲の価値観に、価値観、社会規範の押し付けが行われてしまう危険性もあるのです。
政府腐敗の懸念については、誤った現状認識による暴挙や、短期的な利己主義を徹底予防でき、かつ時代に合わせて柔軟に変化していけるような、未だかつてないほど完成された政府構造を作っていく必要があると考えています。
例えば、世界政府の運営システムに議会制民主主義を採用する他、世界政府の議員の判断力、共感性等を定期的に計測し、基準を満たさない職員には交代してもらう事で(その後の余生は保証することで、引退しやすい環境を作る)、能力と倫理観共に優れている単に聞こえの良いことを言うだけで選挙で当選できないようにする。賄賂等については、政府の運営システムに数多の監視を設ける事で、そもそも送れないようにする。という風に、世界中の政治学、政治歴史学、経済学、心理学者が協力し合い、柔軟に変革し続ける社会システムを、長い時間をかけて構築していく必要があると、私は予想しています。

そして価値観の押し付けについては、あくまで全人類が同意できる福祉と法整備にとどめるよう、市民が政府を監視していく事で防ぐことができると思われます。衣食住と身の安全をはじめとした十分な物質的幸福、そして所属と愛の欲求のような精神的幸福のみを政府が保証し、自身の価値観、信念が絡んでくる趣味、宗教、自己実現などについては、それらを追求できる環境の身を提供するにとどめるのが、現実的な解と思われます。

以上の事より、この発送に私は以下のような評価をしています。

【世界政府の樹立】
実現の容易さ:★☆☆☆☆
実現速度:★☆☆☆☆
持続性:★★★★★(世界規模での、真の恒久平和実現が見込める)
負担の軽さ:★★★★☆(コストの問題というよりは、実現難度の問題)

世の中には無数の価値観、正しさの定義があります。だからこそ、お互いの相違点を認めつつ共通の正義を探していき、それを元に自他共に、持続的な幸福に導いていく姿勢を持ち、生きていくべきではないのでしょうか。

余談:力と倫理観に恵まれし個人は現れるのか?

記事後半は、非常に実現が難しい一方、実現すれば多くの人を救うことのできる2つのアイデアを述べてきました。
アイデアの方向性は少し違いましたが、このどちらにも共通する要素として挙げられるのが「力と倫理観に恵まれた個人」の必要性です。
恐らく多くの方は、そんな人が現れるわけがないから実現は不可能と、先ほどのアイデアに荒唐無稽さを感じた事でしょう。
ここでは、一見ばかばかしく思えるアイデアをなぜ私が執筆したのか。
それについてご説明できればと思います。

2021年時点で、世界の上位1%の超富裕層の資産は、世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の資産は全体の2%となっています。
また、資本以外の領域でも、非常に高い技術力を持つ学者や技術者、卓越した指導力を持つ経営者、政治家といった、世界を動かすことのできる力が、先進国と言われる国々を中心に、徐々に増えてきています。
飛びぬけた力を持つ人々が、世界平和とそれに伴う自分たちも含めたすべての人々の持続的な幸福という共通目的の元行動を起こしていく事が出来れば、到底実現が出来ないようなアイデアも不可能ではなくなるのです。


最も、そういう人が現れるまで待てばよいと、楽観論に走るべきではないと私は考えています。
現在社会にて富を得ている人々が、本当にその立場と幸福に見合った責務、使命を果たしているのか。自身の権限を乱用し、他者を虐げたり、搾取しようとしていないか。このように考える事で、恵まれた立場の人々を、一般人の方々がしっかりと見守り、そしてよりよい未来を作るためにその人生をささげる人々を応援していくことが、彼らの中で、世界平和実現の使命を果たす人物が現れる確率を少しでも高めていくために、必要になってくると思われます。
そもそも、これまでの人類の歴史を紐解いていくと、(彼らの行動が正しかったかどうかの判断は別として)武士階級に所属していた幕末志士達や、没落しつつあったものの貴族階級に属していたナポレオンなど、時代を変革し、進めてきた先人の多くが、貴族や恵まれた立場、地位を持っている者達でした。高い地位の人々が世界を前に進めるというのは、歴史的に見ても珍しいことではないのです。
十分な物質的、精神的幸福を得られる環境下に育った人は、心の余裕を持つことになるでしょう。一例として、大成された起業家の方々の子どもや、古くより続く名家のご子息といった立場の方々は、比較的心身ともに余裕がある傾向があるために「自身も他者も救い、それにより持続的な幸福を得る」という考えを持つ方が生まれやすいと考えられます。

私たちは、多くが非力な存在です。歴史に名を刻んだり、大勢の人々から称賛されたりすることはまれでしょう。それでも私たちは、ただ生きているだけで素晴らしい存在なのです。そして、私たちは自分が正しいと信じる正義、愛、理想といった意志を、他の人に伝え、広めていくことができるのです。そしてその意志を、平和と幸せを望む私たちの意思を、力と倫理観に恵まれた残り1%の人々が受け継ぎ、解き放っていく。
これからの社会は、能力や立場に恵まれた人たちが、そうでない人々の切実な願いや意志を受け継ぎ、それを元に世界をより善い場所へと導く役割を担っていくことになると、私は予見しています。

そう考えるが故に、上記2つの一見非現実的に思えるアイデアを、十分現実的と考えこの文章に記載することとしたのです。

『教養としての政治学入門』という本の一節の引用になりますが、「実際に行うには物質的、そして精神的コストがあまりにも大きすぎて耐えられないような戦争準備のために膨大な資金を費やすのではなく、戦争を出来ない仕組みの実装、ひいては富と力の極端に不平等な配分が行われ、それによって争いが勃発している社会構造自体の転換を行っていく方が現実的」なのかもしれません。
世界政府の樹立や原子爆弾の無効化といったものは、まさしく巨大で夢のような話です。しかし、世界の現状を論理的に読み解いていくと、そうした夢のようなアイデアを考え、実現の方法を熟慮していく事こそが、実は最も現実的であると思われるような状況に、私たちは生きているのだと思うのです。

まとめ、そして閲覧者の方へ

以上が、私がこのnoteで提示した、恒久平和実現のために考えられる4つのアイデアです。

【ニュークリアシェアリング(核共有)】
実現の容易さ:★★★☆☆
実現速度:★★★★☆
持続性:★☆☆☆☆
負担の軽さ:★★☆☆☆

【総合ミサイル防空】
実現の容易さ:★★★★★
実現速度:★★★☆☆
持続性:★★★☆☆
負担の軽さ:★★★☆☆

【衛星によるミサイル防空】
実現の容易さ:★★☆☆☆
実現速度:★★☆☆☆
持続性:★★★★☆
負担の軽さ:★★☆☆☆

【世界政府の樹立】
実現の容易さ:★☆☆☆☆
実現速度:★☆☆☆☆
持続性:★★★★★
負担の軽さ:★★★★☆

これらのアイデアの特徴、および利点と欠点を比べることを通じて、皆さんが平和維持のための社会の仕組みづくりに少しでも関心を持っていただければと思います。

そしてもう一つ、この記事を最後まで読んでくださった閲覧者の方々に、一つお力添えいただきたいが事あります。
大前提として、私は、自分一人の意見にはどこかしら誤りがあるというスタンスで生きています。まだ17年分の知見しか無いのはもちろんのこと、誤った主観や偏見によって、本当の最適解を選べていない可能性があるためです。ものづくりにしろ政治にしろ哲学にしろ、古代ギリシャの時代から現代にいたるまで、最善のアイデアを考えていく為には、いつの時代も対話が必要でした。
恐らく、私が今回提示したアイデアも、まだ完璧では無いのでしょう。
そこで、皆さんが思う日本がとるべき安全保障対策を、Twitterにて
「#安全保障の最適解」
というハッシュタグを載せて、書いていただきたいのです。可能であれば、その政策を評価する理由などもご記入いただけると助かります。
また、この記事自体へのアドバイス、ご指摘なども大歓迎です。

・核共有の考え方について
・現在の総合ミサイル防空の是非
・防空システム/世界政府のアイデアについて
・余談にあった、力と倫理観に恵まれた人々が、そうでない人々の意思を受け継ぎ、社会を変革していくことの是非

など複数の論点がありますが、これらについての意見を述べた#投稿も楽しみにお待ちしております。
この記事が、多くの方々にとって平和に過ごせる社会の尊さを再認識し、その維持のための方法を考えるきっかけになったのであれば、嬉しい限りです。

引用元、ならび注意書き

注意書き:
今回の記事で述べられているアイデアは、あくまで私個人が、安全保障という一つの社会問題について述べた意見であり、ここに記載した思想のみに生涯固執するつもりで生きている訳ではないことを、ご理解ください。それに従い、私が運営している団体の方針、ならびその協力者の方々が持つ理念、思想とも一切関連が無いことを、ご了承ください。

引用:
記事のサムネイル画像、総合ミサイル防空の説明画像、ミサイル防衛体制の説明画像:防衛省HP( https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/bmd/ )

核保有に関する世論調査のデータ(2006年度):https://www.tv-asahi.co.jp/hst_archive/poll/200610/index.html

その他、安全保障対策についての知見参照元:https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2019/html/n31202000.html#s312022

https://www.mod.go.jp/j/publication/shiritai/budget_h26/index.html

随所で引用した著書:
『教養としての政治学入門』(成蹊大学法学部 編、高安健将、西村美香、浅羽隆史、遠藤誠治、野口雅弘、平石耕、井上正也、立石洋子、今井貴子、西山隆行、板橋拓己、光田剛 著)
『戦争における「人殺し」の心理学』(デーヴグロスマン 著)

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