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小説限定読書会@エンタメを語ろうの会


オフライン読書会に参加する

自分で開催してるオンライン読書会とは別のオフライン読書会に参加してきました。今年、他の人に建ててもらった目標で、"オフライン読書会を開く/参加する"というものがあって、9月までで合計6回参加したので、一応目標はクリアという扱いにします。

2023/9/30 小説限定読書会

人数が10人ほどだったので、2グループに別れて2回シェアの時間がありました。普段は3回グループを変えつつシェアするということでしが、私としてはじっくりお話を聞けて良かったです。

私がシェアしたのはこの2冊でした。シェアの内容とは違いますが、それぞれの作品についての感想と周辺のことを記録しておきます。

むらさきのスカートの女 今村夏子

フィクションの、それも現代の日本の小説は、長らく読んだ記憶がありません。おそらく子供の頃に読んだ物語がファンタジーやシャーロックホームズなどの外国文学に偏っていたことが理由だと思います。単に、読もうという気持ちにならないのだと思います。

ノンフィクション小説は、好んで幾つか読んでいるので、現実に発生したことか、もしくは全く現実ではない物語の2極で分けた時に、日本が舞台のフィクション小説はちょうど中途半端な位置になってしまい、あまり食指が動かないという理由もありそうです。

ですので、私がこの本を手に取ることはありそうになかったのですが、今年帰省した際に暇を持て余していた際にKindleで見つけたのでした。不気味な表紙と、都市伝説めいた「むらさきのスカートの女」というタイトルに惹かれたのでしょう。

商店街や地域の住人から"むらさきのスカートの女"と陰で呼ばれている女性に、異常な執着を示す女性(以降彼女)の目線から語られる物語です。

物語は彼女の語りで始まります。

うちの近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。いつもむらさき色のスカートを穿いているのでそう呼ばれているのだ。

むらさきのスカートの女 今村夏子

私は彼女の目を通して、むらさきのスカートの女の人生に介入し、干渉しました。彼女はむらさきのスカートの女に気取られぬように近づき、生活パターンを具に調べ上げ、彼女の職場に就職するように仕向けます。むらさきのスカートの女が社会から外れた存在から、仕事に就いて、社会性を取り戻していき、人に好かれ、嫌われ、転落していく様を私は、彼女の目線から共に味わうことになります。

むらさきのスカートの女を追いかけると同時に、それに執着する彼女の異常性が常に意識されます。私自身も彼女と同様にむらさきのスカートの女に執着している状態に至ります。むらさきのスカートの女の行動をもどかしく思い、応援し、成長を喜び、卑しさを嫌います。それはちょうど彼女が抱く感情と同期されるようです。彼女の執着がリアルだったからこそ、私は現実世界と離れた物語としてではなく、現実世界と地続きである現実の物語であると感じました。

木になった亜沙 今村夏子

私は今村夏子の他の作品も読むことにしました。幾つか読んだ中で、気に入ったのは、"せとのママの誕生日"という作品です。Webでも公開されており、端的に今村夏子の作品の雰囲気を味わうことができます。つまり、語られる範囲から間接的に示される異常さや不穏さが、物語の核心であるということです。

この作品を読んだ時も私は3人の女性のグループに何も知らずについていった4人目として物語が目の前で展開されていくように感じることができました。リアルで不穏でユーモラス。

そして、"木になった亜沙"に辿り着くことになります。

私たちが本を読むにつけて、逃れられないメタ的な感覚があります。それは物語が終わりそうだという感覚です。話の筋や展開から読めることもありますし、物質的には残りのページ数から知覚されることもあります。その前提として、物語が私たちが期待するように終わって欲しいという感情があるのだと思います。

その物語が終わらなかったらどのような感情になるのでしょうか。その感情を教えてくれるのが"木になった亜沙"という作品です。

この物語を読んだ時、私は完全に物語の外側にいました。今村夏子(以降彼女)が語る亜沙の物語を耳を澄ませて聞き入っています。彼女の語りに全く引き込まれてしまい、次の言葉をじっと待っています。

彼女は亜沙の物語をこのように語り始めます。

亜沙は小さなアパートに母と二人で住んでいた。アパートの裏手には大家さんの管理するひまわり畑がひろがっていた。ある日、母は大家さんからビニール袋いっぱいにひまわりの種をもらって帰ってきた。

木になった亜沙  今村夏子

私は物語が期待通りに終わらないことに不安を覚えました、そして物語がどうなっていくのか全く読めない状態にリセットされたことに戸惑いました。先を知るには、彼女の言葉を待つより他はありません。私が見知ったもので私が全く知らない世界が描かれます。彼女に抵抗できず、服従せざるを得ませんでした。

人の話を通じて感染する実行ファイル  Bing Image Creator

これは完成された物語です。あらすじを話すだけで、練り上げられたすべらない話や落語のように、聞く人を楽しませることができます。読者に、.exe実行ファイル形式の感情を与えて感染し、人に語りたくさせます。

私は今回も合わせて2回この短編について読書会でシェアしました。彼女の語り口を真似つつ、あらすじをなぞるだけのシェアだったのですが、とても好評でした。そもそもの物語が素晴らしいのだと思います。

エンタメを語ろうの会

おすすめの本をシェアする形の読書会で、熱がこもっていてみなさんのシェアに引き込まれました。

昨日また読書会が開催されて、私は参加できなかったのですが、LINEで回ってきた画像を見たら、前回私がシェアした今村夏子の本が入ってるではありませんか。私もお勧めされた星新一の作品を読んで、いたく感激しました。また参加したいです。

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