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【研究ノート2】リーダーシップ理論(その2)「8段階の企業変革プロセス」

「カモメになったペンギン」という本を2009年5月に買った(とAmazonが教えてくれた。正確には5月19日とのこと。すごい!)。当時の日記を読み返すと、新型インフルエンザが日本に入ってきて自粛モードになった頃のようである。「マスクが嫌いなのでかなわん」と書いていた。更にマスコミの反政府運動が最高潮に達していたのもこの頃なので世の中の風潮も今となんだか似ている。民主党政権がその年の9月から始まるので、そんな異変前夜の頃の話である。

社外の勉強会でリーダーシップの勉強にこの本が良いと勧められて読んだ。内容はジョン・P・コッター氏の「8段階の企業変革プロセス」を南極のペンギンの寓話で説明したものである。ペンギン村の氷が崩壊してしまい、大惨事になることを予見した主人公のフレッドが、いろんな人を巻き込みながら、変革チームを作り、話を聞いてくれない人たちを説得し、ビジョンを掲げて新しい場所に移動していく物語である。

実際、会社の中で、いざ変革をしようと思っても、変革に対して抵抗する人たちが多くてなかなか新しいことはやりにくいのは事実だ。この本の中でその説得方法としてコッターは次のような8段階を推奨している。

1.危機意識を高める
(危機が差し迫っているという緊迫感を共有し、変革の必要性を認識させる。)
2.変革推進チームを作る
(変革を主導できるパワフルなチームを作る。評判の良い人、人脈が豊富な人、分析力のある人、専門家など。)
3.適切なビジョンと戦略を作る
(変革を主導するような心躍るビジョンを掲げる。大胆な戦略を描く。)
4.変革のビジョンを周知徹底させる
(変革によって何を目指すのか。心に響くメッセージを伝える。)
5.推進チーム以外の人たちの自発的な行動を促す
(ビジョンや戦略に賛同する人たちの障害になっているものを取り除く。)
6.短期的な成果を生む
(短期的な成果を上げ、悲観論者や懐疑的な人を味方につける。)
7.さらに変革を進める
(変革の波を次々と起こし、変革の勢いを止めない。)
8.変革を根付かせる
(新しい行動を文化として根付かせるようにしていく。)

まあ、変革の旗を掲げるところまでは結構、いろいろな会社や組織でもやっているのだが、「心躍るビジョン」や「心に響くメッセージ」というレベルまで行かないために、現状維持派の腹に落ちないことが多い。そもそも変革を行うときに、専門家やデータ分析に長けたパワフルな変革チームが組成できていないと(データの裏付けが取れないので)やろうとしたことに自信が生まれないため、リーダーの行動がぶれてしまい、プロジェクトが崩壊してしまうことが多い。

それにしても抵抗勢力を説得するのは大変である。海外と違って、日本の場合は「根回し」というものがとても大事であり、偉い人に「そんな話は聞いていない」と言われた日には、せっかくの一大プロジェクトも一巻の終わりである。若手リーダーなんかだと、何でも反対のオヤジたちがいたりして、相当事前にうまく立ち回らないと先に進めなくなることが多い。50年以上前に書かれた中江千枝氏の「タテ社会の人間関係」の話は未だに健在であり、日本では上司を飛び越えて相談をしたり、年次が上の先輩に対して忌憚のない意見交換はなかなかできず、また社内だけを見ている人たちばかりなのでなかなか思うような変革ができないのである。

ということで、昨日もお話しましたが、上司(リーダー)ー部下(フォロワー)という組織構造を大きく転換しないことにはなかなか思うように変革は進まないのではないかと考えております。

で、抵抗勢力の話が出たついでに「イノベーター理論」のイノベーションのベルカーブという図を掲載します。

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これは新商品を普及させる戦略図なのだけれど、変革を行う際にも同様のことが言えるのではと思い掲載しております。変革を開始後、アーリーアダプターまでは賛同を得られるのだけれど、そこから先がなかなか進まない(キャズムと言われている部分)。様子見のアーリーマジョリティを動かすのが一苦労で、更にレイトマジョリティの行動を促すのも大変である。そして最後まで抵抗する人たち「ラガード」というのも存在する。まあ、なかなか新しいことをするってのは胆力が必要で難しいことだなと思います。(「リーダーシップ理論(その3)につづく)

【今日の研究】
リーダーシップの5つの理論のうち、5番目のTSLとTFLを研究。
特にTFL (Transformational Leadership) について先行研究を調査。
最も有名な人物がバーナード・バス。
彼は多因子リーダーシップ質問表(MLQ:Multifactor Leadership Questionnaire) というものを作成し、因子分析の結果、TFLは以下の3つの資質から構成されるとした。(入山章栄著:「世界標準の経営理論」を参照(一部表現を変更))

①カリスマ (charisma):企業・組織のビジョン・ミッションを明確に掲げ、それが「いかに魅力的で」「部下のビジョンにかなっているか」を部下に伝え、部下にその組織で働くプライド、忠誠心、敬意を増加させる。
②知的刺激 (intellectual stimulation) :部下にものごとを新しい視点で考えること、その意味や問題解決策を深く考えさせて行動させることで、部下の知的好奇心を刺激する。
③個別的配慮 (individualized consideration):部下に対してコーチングや教育を行い、部下一人ひとりと個別に向き合い、学習による成長を重視する。

しかしながら、上記の前提で、まず企業・組織のビジョン・ミッションがすぐに陳腐化してしまうのが現代である。VUCA時代のビジネスモデルとしては、この前提条件が崩れてしまうので、方法を変更しなければいけないが、現状の企業は人事評価などにおいても上記のことがなされているように感じております。

明日は、「非連続的組織変革」について研究する予定。

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