今年の干支は己亥(きがい・つちのとい)
今年の干支は己亥(きがい・つちのとい)。
「己」は安岡正篤の「干支の活学」によれば、次のように書かれている。
古代文字は三横線と二縦線との合字になっており、ものが形を曲げて縮まりかくれた象で、外物に対して内なる自身すなわち「おのれ」を表し、五行観では木火土金水で、土が五行の中であり戊己を土とし、戊を兄(え)、己を弟(と)とするから「つちのと」という。
昨年の干支「戊戌」の「戊」は樹木が非常に茂っている様子を表していて、剪定しなければいけなかった年であった。今年の「己」はその後を受けて、いよいよ収穫時期になるのだが、勝手に早期に取り込んだり逆に遅らせたりするのではなく、タイミングを見計らってきっちり対応する必要があるということになる。要は、利己的であるとよろしくなく、己(おのれ)を律していく必要がある年なのだそうだ。
「己亥」のもう一方の「亥」は「干支の活学」によれば、こう書かれている。
亥は核である(漢代の字書「釈名」)。現代的に言えば起爆性エネルギーである。
突如として猛然と飛び出してくる猪をこの「亥」に持ってきているので、イメージが湧きやすい。こうした起爆性エネルギーを孕む年であるため、一歩間違えば大混乱が起きやすいということでもある。今年は富士山の噴火があるのではないかと言われているが、そういうマグマ(起爆性エネルギー)が溜まる年でもある。
亥年には実際に、1707年に富士山の宝永大噴火、1923年に関東大震災、1959年(己亥)に伊勢湾台風、1995年に阪神・淡路大震災、2007年に新潟県中部地震などが発生しており天災が起こりやすい年である。また、1911年の辛亥革命、1959年のキューバ革命、1995年の地下鉄サリン事件など、革命やテロなども起こりやすい年になっている。
昨年の世界情勢を見ると、まず米国の保護主義の高まりから、米中の経済戦争が始まり、米国を発端にして世界の秩序が壊れ始めているように見える。ヨーロッパではUKのEU離脱問題やフランスのデモ長期化、ドイツの与党惨敗などますます混沌とした状態になってきている。朝鮮半島は韓国の北への傾倒が激しくなっているし、ロシアも国内の不満が高まっている。こうしてみると、世界全体で混沌とした状態が継続していくなか、不満のエネルギーがどんどん高まり、本年は暴発しかねない年になっているのではないだろうか。
一方の日本はというと、天皇陛下の譲位と皇太子の即位が春に控え、2020年には東京オリンピック、2025年には大阪万博と経済活性化のイベントが目白押しである。政治的にも非常に安定的に推移している状態であり、世界の中でも例外的に安定的で特異な国になっている。
本年はG20サミットが大阪で開催されることもあり、日本が世界をリードしていけるもっとも良い年なのではないかとも期待できる。ただ、先程書いたように「己亥」の年であるため、「己」が利己的になりすぎるとすべてが失敗してしまう可能性も高く、政治の舵取りが非常に難しいとも思う。国民が一つになってわが国を大切にする気持ちがあれば良いのだが、長期政権になればなるほど反対勢力も強くなり、特に昨今のマスコミの状況では政治的な多難が予想される。
経済的には、引き続きオリンピック景気が継続する見込みであり、土木・建設関連投資は増えるものの、最も重要なITテクノロジーを使ったFintech、IoT、AIなどのデジタルビジネスは米中の後塵を配しており、特にプラットフォームビジネスについては米国に完全に押さえられている状態になっている。
一昨年頃からガートナーやJUASや私が所属するBSIA(ビジネスシステムイニシアティブ協会)など各種IT団体が、各企業でデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みを急ぐ必要があることを主張しているが、なかなか日本企業全体でその流れが加速する状況にはなっていない。逆に間違った働き方改革が進行しており、日本企業の世界の中での没落が始まっているようにも見える。
正しいことには猪突猛進で進んでいく必要がある。特にデジタル・ビジネスについて、もう既に世界は第4次産業革命の真っ只中にあり、日本は完全に周回遅れくらいになっていることを肝に銘じて、各企業の経営者は発想の転換をはかり、もっともっと変革のスピードを上げていかなければならないのではないだろうか。
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