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07. 訪問-5 ヒアリング-帰宅後と休日

Pさんと私たちが打ち合わせをしているダイニングテーブルの下で、Sはゴロンと横になって寝ている。初日からリラックスしすぎではないだろうか。

「お仕事から帰ってくる時間はどんな感じですか」

Pさん夫婦は少し考えた後、奥さんが答えた。

「私はだいたい18時には帰ってきます。主人は仕事や付き合いで遅くなってしまうこともあるし、バラバラです。私は帰ったら晩御飯の用意をするので、遅くなるかどうかは連絡をもらうようにしています。」

「最近は付き合いは減ったから19時ぐらいに帰れることの方が多くなったと思うよ」とご主人。「早く帰って家で食べた方が美味しいし体の調子もいいから」

「奥さんはお料理が趣味だと普段の夕食も頑張るのですか」

「頑張らないです」少し苦笑気味に奥さんが笑う。「手軽なものプラス、なんというか実験?研究?みたいにお試し料理を作って主人に食べさせてます。」

私たちが笑いながら「実験ってどういうことですか」と聞くと、予定している食事会に向けた考えたメニューの料理を少し作ってご主人の感想を聞いているということだった。本格的だなと思う。「大丈夫、ちゃんと美味しいから」とご主人。Pさん夫婦はお酒を楽しむため、ダイニングにいる時間が長いそうだ。

「そう言えばテレビは見ますか」

リビングに置いてある50インチぐらいで少し古い型のテレビに目を向けながら尋ねる。

「あまり見なくなりました。以前はほとんどつけっぱなしでしたけど、最近はなんかうるさいなと思って、つけてもすぐに消します」と奥さん。「毎日見てはいるけど、時間はかなり減ったね」とご主人。「朝のニュースと夜のニュースぐらいか」

「テレビの買い替えは検討していますか」

「正直なところ悩んでいます。結構存在感があるからいっそのこと無くしてしまいたいとも思うけど、ないと困るのかなとも思うし。」

ご主人も頷いている。「オリンピックとかさ、ワールドカップとかさ、大きい画面で見たいなーっていう時もあるんだよね。本当にたまーになんだけど」

「リビングにソファはあった方がいいですか」

Pさんはまた少し考える。「今はテレビの前に置いてるけど、テレビを見なくなったからこうじゃなくて良いのかな。でもくつろぐ時にはあった方がいいと思うけど」

リビングのテレビとソファの問題でPさんたちが考え込んでしまったので話題を変えることにする。たぶん暮らしの中のテレビの役割や環境は今後も変化していくのだと思う。時代も変わるしPさん自身の考えも変わるから、変化に対応できるようにする方が良いだろう。夕食後について尋ねる。

「それぞれお風呂に入ったりくつろいだりして11時までには寝る感じです」

「僕はお皿を洗う係」

奥さんが笑いながら「海外製の食洗機を入れたいです」と言う。ご主人はすすんでやってくれているけど、食後のくつろいだ後に食器洗いをさせているのが心苦しいらしい。

私たちは海外製のビルトイン食洗機を積極的にすすめていて、私たちの家や完成見学会の住まいに設置されている機器を実際に見てもらいながら必要性を力説している。開放的なキッチンで現在の標準的なライフスタイルならおすすめしたい。

「海外製の食洗機もいくつかメーカーがありますので、洗濯機と同じようにWebで調べてからショールームで確認してください」

設備はどんどん変わっていくから、私たちは基本的な知識はあるけど、細かな進化や比較を全ての住宅設備についてチェックすることはしていない。主要なメーカーや扱っているショールームなどを紹介して、ご自身で検討してもらっている。新しい設備の導入は新しいライフスタイルへの変化になるので、夫婦揃って自分の目で納得して選んでもらいたい。

お風呂には二人ともゆっくり入るらしい。入浴中に本を読んだり、キャンドルを置いたりして楽しんでいるそうだ。

「お二人とも同じ時間に就寝されますか」

「そうですね。時間のズレはそんなにないと思います。ただ、今は二人でひとつのベッドで寝ているのですけど、それぞれ一つずつにできればと考えています。旅行に行くと別々のベッドで、お互いよく眠れるなと思っていたことが最近判明したので」

「誰かのいびきが凄いとか寝相が悪いとかじゃなくて、なんていうか、安定するのかな」とご主人がフォローする。

ここまでのやり取りで普段の日の1日の雰囲気、ご夫婦の暮らしの様子などがだんだんイメージできるようになってきた。ここからさらに具体的な質問を重ねていく。

「休日に家にいる場合、どんな風に過ごしていますか」

「朝はあまり普段と変わらないかな。掃除して、洗濯して、ちょっと買い物に行って、軽くお昼を食べて、ゆっくり料理をしてゆっくり食べて」

お掃除は、お掃除ロボットが普段の日中、誰もいない時にやっていて、お休みの日にそれ以外の掃除をまとめて二人でやっているとのことだった。

「まとめ買いとかしていますか」

「以前はしていました。二人だけになったら意外となんでも減っていかないなと思って、今はしないようにしています。だけど、まとめ買いしていた頃から残っているものが今でもあちこちにあったりして、すっきりしない感じです」

食材などを買いに行く頻度は、週に2回ぐらい、足りないものはその都度買い足し、重いものやかさ張るものは宅配を使っているとのこと。

「今までのお話を伺っているとかなりお料理をされていますし、食事会も考えると食材の分量もかなりありますよね」

「そうですね。それが今回のメインテーマなんじゃないかなと思っています。今はとにかく圧倒的にキッチンが狭くて全然収まっていないのですけど、収まっていないだけじゃなくて使い勝手も悪いし、暑いし、暗いし。食材だけじゃなくて、料理道具も食器ももっと欲しいし、場所もきちんと必要だと思っています。ダイニングも配膳しにくいし、狭いし、ごちゃごちゃしてるし、それは私が悪いんだけど」奥さんのテンションがドーンと急上昇した。

「爆発しちゃったね」と少し眉毛を上げてご主人が呟く。

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Pさんの一日を聞き終えてだいぶイメージができました。もう少し具体的に掘り下げて聞いていこうかなと思ったら、キッチンへの不満で奥さんが爆発してしまいました。

ヒアリングはまだまだ続きます。

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