11. プラン検討-2 寸法を押さえる
マンションの中の住まいづくりでは、広さ、アウトラインの形状、窓や玄関の位置、設備配管の接続位置などがきっちり決まっている。「もう少しこうなっていれば良いのに」と思っても変更することはできない。そのために事前調査を丁寧に行い、条件を整理することが大切になる。
プランニングでは、条件が整理されたスケルトンの平面図に様々なラインやボリュームを配置するが、一つ一つのラインとボリュームの寸法もまた、きちんと考えられ、確認した寸法でなければならない。初期段階であっても曖昧な検討は意味がないと思う。
初期段階のプラン検討で押さえておくべき住まいの寸法はいくつかある。
まず壁の厚さ。
間仕切壁は、プラスターボード(PB)と下地材でできている。プラスターボードの厚さは12.5mm。下地材は木下地とLGS(軽量形鋼)があるが、細かい造作がしやすいので、私たちは木下地を採用している。木下地材は垂木と呼ばれているもので断面の寸法は30x40(mm)。
組み合わせると、
PB12.5mm+垂木40mm+PB12.5mm=65mm
または
PB12.5mm+垂木30mm+PB12.5mm=55mm
これが標準的な間仕切り壁の厚さになる。
トイレのまわりの壁など、遮音を考慮する間仕切り壁で、グラスウールを充填しプラスターボードを二層に張る場合や、壁に埋め込む電気設備などで特定の壁厚が必要なものがある場合は、必要な寸法をきちんと確認して適宜調整する。
戸袋になる壁は、引戸が納まる部分の空間を60mm確保することにしているので、
PB12.5mm+垂木30mm+空間60mm+ 垂木30mm+ PB12.5mm=145mm
外周部やユニットバスの周り、PSの周りなどの片面だけをプラスターボードで仕上げる壁は、提案段階では50mmで検討する。
次に収納の奥行き。
クローゼットは奥行600mmを標準にする。
下足入は奥行360mmを標準にする。
扉などを設置する場合は、開戸の場合は40mm、引戸の場合は枚数あたり40mmをプラスする。
収納の量はまずはヒアリングした時の印象を頼りにする程度で良いと思う。
次に水回り設備のボリューム。
トイレ空間は800x1400(mm)を基準に検討する。余裕があれば広くしたり、手洗器や収納カウンターなどを計画する。逆にキツければ少し狭めることもできる。
洗面カウンターは配管スペースを含んで奥行き700mm程度を確保する。幅は1200mmを下回らないように検討する。
ユニットバスはヒアリング内容を確認してできるだけ希望に沿うようにする。Pさんの場合はバスタイムの優先順位が高いので1618サイズで検討することにする。メーカーのサイトからCADデータをダウンロードして配置する。
キッチンカウンターは、壁につける部分の奥行きを650mm、アイランドになる部分の奥行きを750〜800mmで検討する。幅は2000mm程度を基準に状況に合わせて調整する。
次に大きな家電。
冷蔵庫のサイズは容量、メーカーなどによって幅も奥行きも様々。同じメーカーの中で容量が同じでも幅がスリムなもの、奥行きが浅いものなどがある。希望する容量をヒアリングしていくつかの機種を選定し検討する。左右に3cm程度のクリアランスをとるようにする。
洗濯機は日本製か海外製かで変わる。海外製ならW600D650+配管スペース。日本製ならW680D720を確保する。
最後に置き家具。
ダイニングテーブル、ソファ、チェスト、デスク、ベッドなどの大きな家具は予め施主から意向をヒアリングし、モノが決まっている場合には詳細について聞き取りをし、使用中のものを継続して使うものは採寸する。決まっていない場合はプランとともに提案することにする。
ここまで列挙してきた何種類かの太さの壁のラインといくつかの矩形のボリュームをスケルトンの平面図の中に配置することになる。次に押さえて置く必要があるのは、人の動作と移動のための空間の寸法。
玄関の土間の奥行は1100mm程度確保できるように検討する。上がり框部分の間口幅は1200mm程度確保したい。
廊下の幅は900mmを基準にする。
各スペースの入口は標準を800mmにして、オープンなスペースならより広く、クローズなスペースなら少し狭く調整する。
キッチンや洗面室、脱衣スペースなどの動作をともなうスペースは900mmを標準に確保する。
以上が基本的に頭に入れておく寸法。もちろんイレギュラーな状況はいくらでもある。普段からメジャーを手元に置いて身の回りの寸法をチェックし、自分の感覚で判断できるようにしておくと良いと思う。
CADを使った検討ではきちんと数字を打ち込んでレイアウトしていくので曖昧さはほとんどない。可能性のあるアイディアなのかどうかはすぐにわかる。
さあ、今度こそプランニングを始めよう。
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