SDGsとLGBT(2019年12月号)

※本記事はIDCJ SDGs室がこれまでのメールマガジンで取り上げた特集です。掲載内容はメールマガジン発行当時の状況に基づきます。

LGBTという言葉はご存じの方が多いと思います。Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシュアル、Tはトランスジェンダーの略称で、性的マイノリティの総称として使われます。昨今では、自分の性的嗜好がどちらかわからない、あるいは日時によって揺れ動くような人々をXジェンダーと呼びます。ただ、Xジェンダーという用語を使うのは日本だけのようで、世界的にはQ(クエスショニング、クィア)と表現し、全てを含めてLGBTQと言ったりします。LGBTに該当する人々は結構多く、電通ダイバーシティ・ラボ調査(2015年)のよると、その割合は日本人全体の7.6%、ちょうどAB型人口の割合と同じくらいだそうです。学校の一クラスに二人くらいはいた計算になります。

日本社会は以前から性的マイノリティの存在を受け入れているようで、著名人の中にも公言している人がいます。TVタレントとして活躍している人も少なくないです。性同一性障がい者に対する性別適合手術は保険適用されますし、医師の診断書があれば戸籍上の性別を変更することも可能です。また、世田谷区や渋谷区では同性カップルの宣誓を認める公的書類を作成することを決め、それがニュースにもなりました。

SDGsは「誰一人取り残さない(nobody left behind)」が謳われ、少数民族や身障者を含め様々なタイプのマイノリティの存在に焦点を当てています。特に女性や女児に関する問題については、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」を設け、様々な視点から課題を整理しています。女性だからという理由で差別を受けず、暴力やハラスメントを受けることが無いよう求めています。

では、SDGsの中でLGBTはどう扱われているかというと、実は全く表に出てきません。「性別」によって差別しないといった表現の中に暗に含まれているかもしれません。ただ、ゴール5で女性の問題に焦点を当てているのに、そこでLGBTに言及がないのは極めて不自然です。本当に「誰一人取り残さない」のだろうかと考えてしまいます。

世界では性的マイノリティの問題に正面から向き合わない国が依然として多いです。カトリックやイスラム教では同性愛は罪だと見なしています。それゆえ、国際的な合意をめざしたSDGsでは、あえて性認識の問題には踏み込まないで、ゴール5は女性だけを対象としたのかもしれません。「誰一人取り残さない」という掛け声が白々しく感じられます。

今日でも、国によっては同性愛者が発覚すると公の場で鞭打ちの刑を執行したりします。本年、インドネシアの某地域で地元の宗教警察が、性認識が女性である「男子」学生を広場に集め、全員を丸坊主にした事件がありました。これには呆れたというより笑ってしまいました。これはマイノリティに対する明らかなハラスメントでしょう。

日本では「女性活躍」といった用語で性別による差別や不利益をなくそうという活動が展開しています。女性活躍担当大臣まで設けられています。しかし、社会から差別され不利益な扱いを受けている「性」は「女性」だけではないはずです。今後、「誰一人取り残さない」というメッセージが社会に浸透していく過程で、性認識の多様性という視点が日本でさらに広まってゆくことを期待しています。

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