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水鏡の5月

2020、コロナ渦。
誰もが透明な恐怖と、時間軸のない不安の中にあって、
季節はそれを知ってか知らずか、桜の花も通り過ぎ、
梅雨の憂鬱な足音と、平行線の太陽と夏の匂い。


私ももちろん、そんな真っ只中にいた。

なにげない日常の、いつもいつも、毎日のように通るその道に、
稲田の水鏡の風景をみたとき、
そこにツンと立つ、稲の苗たちの希望に溢れた姿をみたとき、
「これをしあわせっていうんだな」、と心が小さくうなずいたのを感じた。


水鏡の5月
 

草いきれの向こうに 夏まだ早い日差し 風は冷たい
ふるさとの枯れた稲田に 光が満たされていく
 
 どこまでも続く青 ふわり浮かぶ雲
 なにひとつ遮るものなどない
 目に見えるすべてを余さず映す 水鏡の5月
 
しあわせって きっと明日を
夢見て 願うことかも
夢なんて あるよでないよな 今でも明日は待ってる
しあわせって もしかしたら
いつでも どこでも だれにでも
同じように見える こんな昼下がりの退屈なのかも
 
日暮れまで背を伸ばした 菜花の細い影が 風に揺れてる
おなじ色に染まる あぜ道を たった一人
 
 まぶしい黄金の西陽 影おどる鳥たち
 なにひとつ遮るものなどない
 目に見えるすべてが愛しく思えた 種まく季節
 
しあわせって きっと今より
遠くを眺めることかも
生きてると辛いことも多いけど 通り過ぎれば宝物
しあわせって もしかしたら
いつでも どこでも だれにでも
同じように見える こんな薄曇りの憂鬱なのかも
 
まだ明るい夜空に ほら 一番星
 
しあわせって きっとだれかを
想って 微笑むことかも
どんなにつたない思い出でも あなたがいたら嬉しい
しあわせって もしかしたら
いつでも どこでも だれにでも
同じように隠した こんな寂しがり屋のため息なのかも
 
同じように過ぎてく こんなありふれた毎日の中で

水鏡の5月


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