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離婚後の父子関係の長年にわたる改善:オランダの記述的調査結果

この文献はオープンアクセスです。原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:DEMOGRAPHIC RESEARCH VOLUME 46,
原題名:The long-term improvement in father–child relationships after divorce: Descriptive findings from the Netherlands
原著者:Frederique Van Spijker、Matthijs Kalmijn、Ruben van Gaalen

 オープンアクセスの本論文は、クリエイティブ・コモンズ帰属3.0ドイツ(CC BY 3.0 DE)の条件に基づいて公開されており、原本の著者と出典をクレジットすることを条件に、あらゆる媒体での使用、複製、配布が許可されます。https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/de/legalcode を参照してください。

離婚後の父子関係の長年にわたる改善:オランダの記述的調査結果

フレデリック・ファン・スパイカー、マタイス・カルマイン、ルーベン・ファン・ガーレン

要旨

背景
親の離婚が父子関係に与える悪影響が、時代とともに、どのように変化したのか殆どわかっていない。既存のコホート研究には、離婚後の父子関係に関する質問は含まれておらず、調査期間も短い場合が多い。

目的
本研究の目的は、親の離婚と父子のコンタクトの関連性の長期的な変化を説明することである。

方法
回答者の幼少期の親との関係に関する後ろ向きの質問が含まれている「オランダの統合横断調査(N = 24,172)」を使用した。傾向を調べるために、離婚コホートを比較した。教育グループ間の傾向を比較するため、コホートと教育の相互作用効果を使用した。

結果
結果は、離婚後の父子関係がコホート全体で改善したことを示している。離婚後に父親に会わない子どもの割合は劇的に減少し、コンタクトが維持されていた場合は-より控えめではあるが-父親との絆の質の認識も増加した。皮肉なことに、父子関係の存在しない割合が非常に急速に減少したため、父親との関係が悪い割合も全体的に増加した。更に、離婚後の父親との関係には学歴の違いが大きく見られるが、これらの違いは離婚コホート全体で減少した。

結論
離婚後の父子関係の質はコホート全体で大幅に改善した。この傾向は、離婚の制度化(父親に対する社会的烙印が減り、法的取決めが改善される)とジェンダーの役割の変化という観点から解釈されている。

1. はじめに

 離婚と父子関係の間には全体的に明らかな負の相関関係があるものの(Cheadle, Amato, King 2010)、これが時代とともにどのように変化したか殆どわかっていない。1960年代と1970年代の大部分の社会調査と人口統計調査には、幼少期の父子関係に関する質問が含まれていないため、長期的な傾向を研究することは困難である。アメリカにおいて様々な調査で離婚した父親を比較したある研究は、1976年から2002年の間に父子のコンタクトが増加したことを示している(Amato, Meyers, Emery 2009)。別の3つの傾向研究は、ある時点で収集された調査に基づいており、後ろ向きの設計を使用している。これらの研究-アメリカ、オランダ、ベルギー・フランダースで実施-では、離婚コホートを比較することで、離婚した父親と子どものコンタクトが増え、共同監護が増えていることも明らかになった(KalmijnとDe Graaf 2000, Sodermansら 2013, Westphal, Poortman, van der Lippe 2014)。
 この記述的研究では、プールしてあるオランダの横断的調査を使用した。これらの調査は、回答者の幼少期における両親との関係の質に関する後ろ向き質問を含んでいる。調査の特徴の1つは、両親が離婚した子どもには、離婚後の両親との関係の質に特に言及した質問をしていることである。その結果、長期間(1950~2009年)にわたる離婚後の親子関係の変化を記述することができるようになった。
 幾つかの研究は、離婚後の関係が社会的に階層化していることを示している。具体的には、高学歴の父親や社会経済的地位の高い父親は、離婚後も子どもと良好な関係を維持する可能性が高くなる(Kalmijn 2015)。このような父親は、子どもにとってより魅力的なリソースを提供する可能性があり、それが子どもにとってより頻繁に面会する動機となる(Ryan, Kalil, Ziol-Guest 2008)。更に、より高学歴の父親は、婚姻中から子どもにより多くの投資をしている傾向があり、これらの投資は離婚後の父親の役割を強化する可能性がある(Sayer, Bianchi, Robinson 2004)。
 このノートでは、離婚後の父親と母親との関係における教育の違いについて説明し、考え得る差異が時代とともにどのように変化したかを検討する。
この研究ノートの背景はオランダである。オランダの離婚率は1960年代半ばから1980年代半ばにかけて増加し、それ以降は明確な傾向なしに変動している。1990年代末まで、法制度では通常、親権と日常の世話役は母親に与えられ、一方で父親には定期的な訪問の取決めが提供され、母親は重要な問題(例えば、学校の選択、医療処置)について父親に報告し、相談しなければならなかった。その後、法制度は離婚した父親が単なる後見人以上の立場を占める権利を認め始め(SpruijtとDuindam 2009)、2009年には共同子育てがデフォルトになった(PoortmanとVan Gaalen 2017)。結婚した父親が家事や育児に費やす時間は、時代とともに増加している(Bucx 2011)。

2. データと方法

 オランダ統計局(CBS)が実施した1998年、2003年、2008年、2013年のオランダ家族・出生率調査(Onderzoek Gezinsvorming)のプールされた調査データを使用する。2013年の調査は、オランダ学際人口研究所(NIDI)と共同で実施した。サンプルは、データが全国的に代表的であることを保証するために、2段階の確率設計に基づいていた。第1段階では市町村を選択し、第2段階ではこれらの市町村の住民を無作為に選択した。1998年の対象人口は、18歳から52歳までの独立生活者で構成されていた。2003年以降は、年齢範囲を拡大し、18歳から62歳までの人々を含むようになった。調査のサンプルサイズは、10,167(1998)から10,255(2013)の範囲だった。面接は全て、オランダ統計局の訓練を受けた面接担当者が実施した。回答率は57%~73%の範囲だった。離婚家庭または別離家庭で育ち、離婚後に母親と暮らした回答者のみを対象とした(N = 2,362)。離婚後に両親と暮らした子どもは対象としていない(当時、共同子育ての取決めは一般的ではなかった)。親が幼少期に亡くなっていた場合、その回答者は分析から除外している。尺度のいずれかに欠損値があった回答者も分析から除外している。親の最高学歴を測定するために使用される変数には、最も多くの欠損値(9.4%)が含まれていた。親の学歴をインプットするために多重代入法を使用し、その後に結果を確認したが、結果は変わらなかった。
 4件の調査では、離婚した家庭における親子関係に関する質問は、離婚後の幼少期に父親や母親との関係について回答者がどう考えていたかに関するものある。幼少期とは、回答者がまだ親の家に住んでいた期間と定義している。全ての調査において、回答者は親との関係を「悪い」、「まあまあ」、「良い」のいずれかで説明するよう求められた。また、それぞれの親と、またはそれぞれの親の間で「全くコンタクトなし」を示すこともある。親子関係の時代による変化は、離婚コホート、即ち離婚または別離が起こった年を比較することで測定する。統制変数は、性別、親の最高学歴、および両親が離婚したときの子どもの年齢である。比較のために、教育を以下の3つの一般的なカテゴリにコード化する:⑴小学校または低等職業学校(中等職業学校の1年目を含む)、⑵一般的な中等学校または中等職業学校の2~4年目、⑶高等職業学校または大学(高等教育)。変数の作成には、最も教育を受けた親を使用した。
 後ろ向きデータは、幾つかの種類のバイアスの影響を受ける可能性がある(De Vries 2006)。バイアスの1つの形態は、イベントの発生から時間が経つほど、報告の正確性が低下することである。これに対処するために、離婚からの経過時間を統制する。
 まず、離婚家庭の回答者に関する記述統計を示す(表1)。次に、⑴「コンタクトなし」の確率を予測するロジットモデルと、(2)離婚した父親との関係の質を予測する順序ロジットモデルを推定する(表2)。1つ目のモデルでコホート効果を推定し、2つ目のモデルでコホートと教育の相互作用を追加する。

表1:サンプル内の変数に関する記述統計

3. 結果

 図1に、最も重要な記述結果を示す。離婚後に父親とコンタクトのない子どもの割合は、1950年代と1960年代の離婚では49.9% だったのに対し、1990年代と2000年代の離婚では9.6%と低くなっている。最年長世代で父親と「コンタクトなし」の子どもの数が多い点は特筆に値し、その傾向は非常に強く直線的である。他のカテゴリを見ても変化が見られる。親との関係が「悪い」割合は18.1%から26.3%に増加し、親との関係が「良い」割合は19.6%から40.7%に増加しており、後者の傾向は前者よりもかなり強い。

図1:離婚後の父子関係

 ここでは示していないものの、父親に関する結果を客観的に捉えるために特筆すべき点は、―これはよく知られている調査結果であるが―離婚後、父親よりも母親との関係が良好であるということである。更に重要なのは、離婚後の子どもと母親の関係は世代間で殆ど変化がないことである。全てのコホートで、子どもの大多数(74%~77%)が母親との関係を良好と評価した。離婚した親を持つ子どものうち、母親との関係が「悪い」の僅か10%程度で、これはどのコホートでも一定している。
 表2は、父子関係のロジスティック回帰分析の結果を示している。係数は対数オッズ比である。即ち、「コンタクトなし」と報告する対数オッズへの影響(モデル1、モデル2)と、関係があるという事実を条件として、低品質の関係ではなく高品質の関係を持つオッズへの影響(モデル3、モデル4)である。

表2:離婚後の父親との関係に関するロジット回帰と順序ロジット回帰

 ロジットモデルは、離婚コホートの負の有意な影響を示しており、「コンタクトなし」オッズが、時代が下がるにつれ低下していることを確認できる。順序ロジットモデルは、離婚コホートの正の影響を示しており、-測定により-父子関係の質が向上していることを確認できる。言い換えると、父親とコンタクトのある子どもの割合が増加しており、父親とのコンタクトがある場合、父親と良好な関係を持つ子どもの割合が増加している。
 教育は、父親との「コンタクトなし」オッズに強い負の影響を及ぼし、関係の質にやや弱い正の影響を及ぼしていた。言い換えれば、高学歴の父親は子どもとコンタクトする可能性が高く、コンタクトがある場合、関係が良好である可能性が高くなる。違いは主に、低学歴のグループと2つの高学歴のグループの間に存在している。
 2番目のモデルでは、教育と離婚コホート間の相互作用を追加している。「コンタクトなし」のロジットモデルの場合、相互作用は正(高学歴および中学歴は低学歴と比較して)で、統計的に有意である。これは、父親とコンタクトがなかった子どもの割合の減少が、高学歴の家庭の方が低学歴の家庭よりも小さかったことを示している。図2では、他の全ての変数を平均値で一定に保ったまま予測値をプロットしている。この図は、全ての教育グループで「コンタクトなし」オッズが減少したことを示している。ただし、改善が最も大きかったのは、低学歴の父親だった。

図2:親の教育レベル別の「コンタクトなし」の予測マージン

 父子関係の質に関するモデルでは、コホートと教育の間に有意な相互作用は見られなかったが、パターンは非常に類似している。全体的な傾向は正で、中学歴および高学歴のグループにおいて相互作用は負である。図3はこれを示し、全ての教育グループで父親と良好な関係を築くオッズが上昇したが、この上昇は低学歴の父親でより顕著であった。両方のグラフは、時代の進行に伴い、教育グループ間の離婚後の父子関係が収束していることを示している。

図3:親の教育レベル別の「良好なコンタクト」の予測マージン

4. 結論

 離婚後に父親と関係を持たない子どもの割合が長期的に減少していることを実証した。父子関係が存在する場合、離婚後の父子関係が悪い割合は減少した。これらの傾向は統計的に有意であるだけでなく、特に離婚後に父親と全くコンタクトがなかった子どもの数において、かなり大きなものである。これを別の視点から見ると、かつての、離婚が増加傾向にあった時代に父親とコンタクトがなかった頻度がどのくらいだったかを考えることができる。1950年代と1960年代に両親が離婚した子どものほぼ半数が、離婚後に父親に会っていなかったが、この現象は注目されていなかったようである。この傾向は様々な方法で解釈できると考えている。
 第一に、多くの西洋諸国では、家事と育児の分担に関するジェンダー規範がより平等になっている。その結果、男性は以前よりもこれらの活動に多くの時間を費やし、特に子どもに費やす時間が増えている(Sayer, Bianchi、Robinson 2004)。子どもへの投資が増えたことから、離婚家庭における父子関係を含め、父子関係全般が時代の進行とともに改善されたと予想される。教育上の違いが時代の進行とともに小さくなっているという私たちの調査結果は、この解釈と一致している。ジェンダー役割意識は伝統的に教育によって強く階層化されており、1970年代と1980年代にはジェンダー役割意識がよりリベラルになる傾向が低学歴層でより顕著であったという証拠がある(BrewsterとPadavic 2000; Cotter, HermsenとVanneman 2011)。
 第二に、過去数十年で離婚法が自由化され、これが離婚した父親の立場に有利に働いた。
かつては、生活の取決めの決着に関する監護法が一般的に母親に有利だったため、別居する父親が子どもの生活に関わり続けることは困難だったが、現在では法律が離婚した父親の役割を認めており、共同子育てがますます重要になっている(PoortmanとVan Gaalen 2017)。同時に、離婚率が上昇し、離婚が規範的に受容されるようになり、離婚した父親に対する偏見は減少している。これは緩やかなプロセスであり、一連の法改正とゆっくり変化する規範が寄与している。この傾向は、父親と何がしかのコンタクトがあるか、コンタクトがないかの違いに特に現れるという私たちの調査結果は、この解釈と一致している。
 私たちの調査結果には幾つかの重要な意味がある。一方では、離婚後の父子関係の改善は、子どもと父親の両方に有益である。最近のメタ分析では、父親との良好な関係は子どものウェルビーイングと正の相関関係にあることが示されている(AdamsonsとJohnson 2013)。ただし、離婚後の父親のどのような関与が子どもにとって重要であるかは議論の対象となっている。もう一方では、懸念も、特に親同士の葛藤に関して残っている。一部の法学者は、離婚後のプロセスで父親により影響力を与えると、元パートナー間の緊張や葛藤が増えるリスクがあると主張している。「完全停止」モデルからより「オープン」なモデルへの移行は、離婚後の両親の関係の質の多様性が高まることを意味する。このため、共同子育てや分担養育が規範になるにつれ、離婚プロセスに関係する他の人間関係と比較して、父子関係の傾向を監視することが依然として重要になる。

参考文献

  • Adamsons, K. and Johnson, S.K. (2013). An updated and expanded meta-analysis of nonresident fathering and child well-Being. Journal of Family Psychology 27(4): 589–599. doi:10.1037/a0033786.

  • Amato, P.R., Meyers, C.E., and Emery, R.E. (2009). Changes in nonresident father-child contact from 1972 to 2002. Family Relations 58: 41–53. doi:10.1111/j.1741- 3729.2008.00533.x.

  • Brewster, K.L. and Padavic, I. (2000). Change in gender ideology, 1977–1996: The contributions of intracohort change and population turnover. Journal of Marriage and the Family 62(2): 477–487. doi:10.1111/j.1741-3737.2000.00477.x.

  • Bucx, F. (2011). Gezinsrapport 2011. Den Haag: SCP.

  • Cheadle, J.E., Amato, P.R., and King, V. (2010). Patterns of nonresident father contact. Demography 47(1): 205–225. doi:10.1353/dem.0.0084.

  • Cotter, D., Hermsen, J.M., and Vanneman, R. (2011). The end of the gender revolution? Gender role attitudes from 1977 to 2008. American Journal of Sociology 117(1): 259–289. doi:10.1086/658853.

  • De Vries, J. (2006). Measurement error in family background variables : The bias in the intergenerational transmission of status, cultural consumption, party preference, and religiosity. Doctoral Thesis, Nijmegen University, Netherlands.

  • Kalmijn, M. and De Graaf, P. (2000). Gescheiden vaders en hun kinderen: Een empirische analyse van voogdij en bezoekfrequentie. Bevolking en Gezin 29: 59–84.

  • Kalmijn, M. (2015). Father-child relations after divorce in four European countries: Patterns and determinants. Comparative Population Studies 40(3): 251–276. doi:10.12765/CPoS-2015-10.

  • Poortman, A.R. and Van Gaalen, R. (2017). Shared residence after separation: A review and new findings from the Netherlands. Family Court Review 55(4): 531–544. doi:10.1111/fcre.12302.

  • Ryan, R.M., Kalil, A., and Ziol-Guest, K.M. (2008). Longitudinal patterns of nonresident fathers’ involvement: The role of resources and relations. Journal of Marriage and Family 70(4): 962–977. doi:10.1111/j.1741-3737.2008.00539.x.

  • Sayer, L.C., Bianchi, S.M., and Robinson, J.P. (2004). Are parents investing less in children: Trends in mother’s and father’s time with children. American Journal of Sociology 110(1): 1–43. doi:10.1086/386270.

  • Sodermans, A.K., Matthijs, K., and Swicegood, G. (2013). Characteristics of joint physical custody families in Flanders. Demographic Research 28(29): 821–848. doi:10.4054/DemRes.2013.28.29. 

  • Spruijt, E. and Duindam, V. (2009). Joint physical custody in the Netherlands and the well-being of children. Journal of Divorce and Remarriage 51(1): 65–82. doi:10.1080/10502550903423362.

  • Westphal, S.K., Poortman, A.R., and van der Lippe, T. (2014). Non-resident father-child contact across divorce cohorts: The role of father involvement during marriage. European Sociological Review 30(4): 444–456. doi:10.1093/esr/jcu050.

[訳者註]コホート cohort
共通した因子を持ち、観察対象となる集団のこと。人口学においては同年に出生した集団を意味する。疫学においてはコホート研究において用いられる母集団を指し、コホートと呼ばれることが多い。

[訳者註]後ろ向き研究 retrospective study
一定の期間を経て後ろ向きにデータをとる,縦断研究の一つ。代表例が「症例対照研究case-control study」で、現在の「結果(疾病の有無など)」から過去の「要因(食事や生活習慣など)」に遡ってデータを収集し、解析を行う。これに対して、容疑要因に暴露したものと暴露しないものを予め定義された集団から選び,将来に向かって問題とする疾病の発生を観察して,両者の発生率を比較する研究は「前向き研究prospective study」と呼ばれ、代表例は「コホート研究cohort study」である。

[訳者註]ロジットモデル logit model
複数の選択肢から確率的に選択対象を決定する行動をモデル化する手法。選択肢となる変数を目的変数と呼び、選択肢の特性を表現する変数を説明変数と呼ぶ。ロジットモデルを用いて、複数の選択肢から選択対象を決定する行動をモデル化する目的は、⑴目的変数と説明変数の関係性を分析することで、その特性を把握する、⑵ロジットモデルを構築することで、説明変数が変化した際の目的変数変化を予測するに大別される。

[訳者註]コホート効果 cohort effect
「次世代効果」とも言う。年齢や時代による変化以外の,生まれ育った時代環境を反映した他の世代と間に差異が認められる現象。意見や意識に対して大きく作用し,個人としてはあまり変化しないが,古い世代が退場し新しい世代が登場するにしたがって,社会全体は大きく変わっていく。変化の幅は大きいが,逆の方向にまた大きく転換する可能性もあり、流動的である。なお、年齢や世代を問わず、時代と共に社会全体に変化が生じる現象を「時代効果 period effect」、年齢を重ねるごとに変化が生じる現象を「加齢効果(年齢効果) age effect」と言う。

[訳者註]対数オッズ比 log odds ratio
オッズ比の対数をとったものを対数オッズ比と言う。オッズ比とは、その関連の強さの指標であり、オッズ比が高いほど、その因子と病気の関連性が高いことを意味する。以下の2×2のクロス集計表を使用して算出方法を示すと、標本オッズ比θ(標本データから算出した暴露なし群における事象の起こりやすさに対する暴露あり群における事象の起こりやすさの値)は、θ=a/b÷c/d=a・d/b・cとなる。因みに、暴露なし群に対する暴露あり群の事象発生率の比(リスク比)は、a/(a+b)÷c/(c+d)である。

2 x 2のクロス集計表

[訳者註]対数尤度 log likelihood
尤度の対数をとった値を対数尤度と呼ぶ。対数をとる理由は計算がしやすくなる(logをとることで積の形から和の形にできるため、微分計算が楽になる)ためである。対数尤度が大きいモデルほどデータに合っていると考えられる。なお、尤度を平易に表現すると「ある結果から、どのような前提条件があったと推測するのが妥当なのかを教えてくれる指標」である。

(了)

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