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未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務  報告書

 これまで海外の文献を紹介してきましたが、今回初めて日本の文献「未成年期の父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務 報告書」を紹介します。オリジナルは法務省のサイトにPDF形式でアップされていますが、PDF形式は参照に手間がかかること、考察がないためデータをどう解釈したら良いのか分かり辛いことから、内容をnoteに転記し、私のコメントを加えました。
 また、コメントの他に、関連データの日本全体の動向やトピックス、そして、ウォラースタイン博士の「別離を乗り越えて(未翻訳),1979年」から関連する研究結果を抜粋し紹介しました。博士が研究を実施した期間は、アメリカがまだ離婚後単独親権制度だったので、単独親権制度下にある日本の現状と比較することは有意義だと考えます。
 尚、コメントは私個人の意見です。その前提での取扱いをお願いします。
 また、オリジナルはふんだんに円グラフや表を使用していますが、本紙では必要と思われる箇所に使用を限定するとともに、内容は変えていませんが体裁を変更しています。更に、法務省から提供頂いた生データを使用して法務省とは別の切口からの分析も試みています。

「別離を乗り越えて」(原題:Surviving the Breakup)について
著者:Judith Wallerstein
心理学者で、離婚が子供に及ぼす長期的影響に関する権威である。カリフォルニア大学バークレー校の上級講師であり、カリフォルニア州にある「ジュディス・ウォーラースタイン家族移行研究センター」の創設者である。医学、心理学、法学の多くの団体から、多数の賞を得ている。2012年没。
(ウィキペディアより)
帯の書評:子どもと離婚に関するアメリカ人の思考に革命を起こした本
「特筆すべき感受性と永続する重要性を備えた歴史に残る研究」 
~ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン
読者レビュー:「子どもの意見や感情が見事に文書化されている」
離婚と別居の子どもへの影響に関し、調停者または家族と関わる仕事をする人が研究結果を議論する際に欠くことのできない本の一冊。子どもがどのように感じるのか、子どもが家族生活の中で起こる変化にどのように対処するのか、子どもの福祉にどのように影響を与えるのかを子どもの視点から述べている。私が何度も何度も参照している本。

未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する
実態についての調査・分析業務

報告書

令和3年1月
公益社団法人商事法務研究会

はしがき

 本報告書は,法務省から受託した「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務」について,調査・分析の結果をまとめたものである。 業務の名称は「離婚」となっているが,協力研究者との協議の結果,未成年期の子の立場からすれば,父母の離婚よりも父母の別居の方が影響が大きいため,別居時を中心としつつ離婚も含めた調査をすることが,本件業務の趣旨・目的に照らしてより適切であるとの判断に至った。そこで,受託後の法務省との協議も踏まえ,設問は父母の別居に関するものが中心となっていることをお断りする。 設問の設定については,本件業務の趣旨・目的に加え,受託時の法務省の関心事項及び受託後の法務省との協議を踏まえ,研究者の協力の下に決定した。まず,設問の内容及び選択肢については,民法(家族法)を専門とする棚村政行教授(早稲田大学) 及び久保野恵美子教授(東北大学)の協力を得た上で当研究会において原案を作成し, 法社会学・法意識調査を専門とする藤本亮教授(名古屋大学)の協力を経て,回答者に誤解・混乱を生じさせないように留意した上で確定させた。また,クロス分析についても,法務省の関心事項をベースに,別居・離婚が子に対してどのような影響があるのかについて明らかとなるようにする観点から,適切な指標を選択したものである。 調査方法としては,令和3年 1月20日から21日にかけて WEBモニターアンケー トの方法を用い,未成年時に父母の別居・離婚を経験した,20代及び30代の男女それぞれ250名,合計1000名に達するまで回答を募集する方法により行った。私的な事項に関する多数の設問に丁寧に回答いただいた方々に,この場を借りて感謝申し上げる。

2021 年 1 月
公益社団法人商事法務研究会

目 次

質問一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
未成年時に親が別居・離婚を経験した子に対する調査へのコメント(棚村政行)・・・ 5
調査結果(簡易版・グラフ入り)・・・・・・・・・・・・・・  9
調査結果(詳細版・回答者数)・・・・・・・・・・・・・・・ 43
調査結果(詳細版・回答率)・・・・・・・・・・・・・・・・129
自由記載欄のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・215

協力研究者(五十音順)
久保野 恵美子(東北大学大学院法学研究科教授)
棚 村 政 行(早稲田大学法学学術院教授)
藤 本 亮(名古屋大学大学院法学研究科教授)

質 問 一 覧


【スクリーニング質問】
1 あなたの性別をお知らせください。
2 あなたの年齢をお知らせください。
3 あなたのお住まいの地域をお知らせください。
4 あなたの婚姻状況をお知らせください。
5 あなたはお子様がいらっしゃいますか。
6 あなたの職業をお知らせください。
7 あなたが生まれた直後の時点で、あなたは、父母の両方と一緒に暮らしていましたか。
8 未成年期に父母の離婚又は別居を経験しましたか。
9 父母の別居後は、父母のどちらと一緒に暮らしましたか。

【実体的な質問】
Q2 父母が別居を始めたのは、あなたが何歳の時ですか。
Q3 父母の別居時のあなたのきょうだいの有無と人数を教えて下さい。
Q5 父母の別居後に、同居親の他に同居していた人はいましたか。
Q6 父母の別居前の家庭内の状況について覚えていますか。
Q7_1 父母が不仲になる前、あなたと同居親の関係はどのような状況でしたか。
Q7_2 父母が不仲になる前、あなたと別居親の関係はどのような状況でしたか。
Q8_1 あなたは、父母が別居を開始する前に、父母が不仲になっていることを知っていましたか。
Q8_2 あなたは、父母が別居を開始する前に、父母が不仲になっていることについて、どのように感じていましたか。
Q9 あなたの父母が不仲になった原因は何でしたか。現時点の認識で答えて下さい。
Q10_1 父母が別居を開始する前に、父母が不仲であることについて、それぞれ父母から説明はありましたか。
Q10_2 父母が別居を開始する前に、不仲となった原因について、それぞれ父母から説明はありましたか。
Q10_3 不仲となった原因の説明は事実どおりでしたか。
Q11_1 父母が不仲になっているときに、あなたは、誰かに相談しましたか。
Q11_2 誰に相談しましたか。
Q12 父母の別居時の状況について覚えていますか。
Q13_1 あなたは、父母が別居をした時に、何が起こっているのかを理解していましたか。
Q13_2 あなたは、父母が別居をした当時、どのような気持ちでしたか。
Q14_1 あなたは、父母が別居をするときに、父母に自分の考え・気持ち(本心)を伝えましたか。
Q14_2 伝えた内容は何ですか。
Q15 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、あなたは父又は母に意見・希望を伝えましたか。
Q15_1 前問で「伝えたが、本心ではなかった」とお答えになりましたが、それはどちらの親に対しての配慮でしょうか。
Q15_2 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、あなたの意見・ 希望どおりになりましたか。
Q15_3 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、父母等から、 あなたに対してあなたの考えを変えようとするような働きかけはありましたか。
Q16_1 父母が離婚・別居をするときに、あなたは、誰かに相談することはできましたか(相談相手はいましたか)。
Q16_2 誰に相談しましたか。
Q17_1 父母の別居直後、あなたと同居親との関係は、どのような状況でしたか。
Q17_2 父母の別居直後、あなたと別居親との関係は、どのような状況でしたか。
Q17_3 父母の別居から2、3年後の時点で、あなたと同居親との関係は、どのような状況でしたか。
Q17_4 父母の別居から2、3年後の時点で、あなたと別居親との関係は、どのような状況でしたか。
Q18 父母の別居は、あなたの金銭面の生活状況に、どのような影響がありましたか。
Q19 父母の別居後に、別居親があなたの生活費(養育費)を支払うことについて、父母間で取り決め(約束)はされていましたか。
Q20 別居親は、父母の離婚・別居後も、あなたの生活費を支払っていましたか。
Q21_1 あなたは、父母の離婚・別居後、未成年の間に、金銭面で困ったことがあったときに、誰かに相談しましたか。
Q21_2 誰に相談しましたか。
Q22_1 同居親は、あなたの金銭面の相談に対応してくれましたか。
Q22_2 別居親は、あなたの金銭面の相談に対応してくれましたか。
Q23_1 あなたは、父母の別居直後の時点で、別居親と自由に連絡をとることができましたか。
Q23_2 あなたは、父母の別居から2、3年後の時点で、別居親と自由に連絡をとることができましたか。
Q24_1 父母別居後のあなたと別居親との交流(実際に会う、電話をする、メールやラインをする、手紙を書く等)について、父母間で取り決め(約束)はされていましたか。
Q24_2A 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、あなたの希望・意見を伝えましたか。
Q24_2B 前問で「伝えたが、本心ではなかった」とお答えになりましたが、それはどちらの親に対しての配慮でしょうか。
Q24_2C 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、取り決めの内容はあなたの希望どおりになっていましたか。
Q24_2D 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、父母等から、あなたに対してあなたの考えを変えようとするような働きかけはありましたか。
Q24_3A 別居親とあなたとの交流は取り決めどおりに実施されていましたか。
Q24_3B 取り決めどおりの交流がされなかったのは、原因はなんですか。
Q25_1 あなたは、父母の別居の直後、別居親とどのくらいの頻度で会いたいと思っていましたか。
Q25_2 会いたいと思わなかった理由は何ですか。
Q26_1 父母の別居後、別居親とどのような方法で交流をしていましたか。
Q26_2 父母の別居後、別居親とどのような頻度で交流をしていましたか。
Q26_3 父母の別居後、別居親との交流の有無や頻度等について、当時どのように感じていましたか。
Q27 あなたは、父母の別居後、別居親側の祖父母等の親族と交流していましたか。
Q28_1 父母が別居した後、あなたの住む場所に関する事項については、誰が決めていましたか。
Q28_2 父母が別居した後、あなたの教育や就職に関する事項については、誰が決めていましたか。
Q28_3 父母が別居した後、あなたの大きな病気をしたときの治療や歯列矯正等の医療に関する事項については、誰が決めていましたか。
Q29_1 あなたは、父母の離婚後、未成年の間に、父母のいずれかの再婚を経験しましたか。
Q29_2 同居親が再婚したときに、どのようなことを感じましたか。
Q30_1 父母の離婚・別居を経験した後、あなたは健康面について次のような経験をしましたか。
Q30_2 父母の離婚・別居を経験した後、あなたは生活面について次のような経験をしましたか。
Q31 父母の離婚・別居は、あなたの恋愛、婚姻、婚姻生活に対して影響があったと思いますか。
Q32 お子さんがいる方にお尋ねします。父母の離婚・別居は、あなたの子とあなたの間の親子関係に対して影響があったと思いますか。
Q33 あなたが成年に達した時点での父母の離婚・別居の形態は、次のうちどれですか。
Q33_2 裁判所で離婚をしたと回答した方に伺います。調停離婚と裁判離婚のどちらでしたか。
Q34 父母の離婚・別居について、今振り返ってみると、どのように思いますか。
Q35 同居親の決定について、今はどのように感じていますか。
Q36_1 あなたと同居親の現在の関係を教えて下さい。
Q36_2 あなたと別居親の現在の関係を教えて下さい。
Q37 今振り返ってみて、両親の別居後、あなたが未成年の間の、別居親との交流はどのようにあるべきだったと思いますか。
Q38_1 今振り返ってみて、父母が離婚・別居した後、あなたの住む場所については、 父母のうち誰が決めるのが理想だったと思いますか。
Q38_2 今振り返ってみて、父母が離婚・別居した後、あなたの教育や就職に関する事項については、父母のうち誰が決めるのが理想だったと思いますか。
Q39 自身の経験を踏まえて今後、父母の離婚又は別居を経験する子ども達について、ど のような支援や配慮をしていくことが望ましいと思いますか。

未成年時に親が別居・離婚を経験した子に対する調査へのコメント

2021 年 1 月 26 日
早稲田大学 棚村 政行

1 回答者の属性
 20~30 代の男女 1000 名に対するアンケート、平均年齢約 30 歳
  未婚 57.2%、既婚 42.8%
  子どもあり 37.5%、子どもなし 62.5%
  会社員(一般社員)40.1%、パート・アルバイト 15.8%

2  別居時の状況
 同居親=母親・別居親=父親が 78.6%、別居親=母親・同居親=父親が 21.4%
  別居時の子の年齢は、一番多いのが 3~6 歳の就学前
  別居時の兄弟姉妹は、いないが 25.7%、いる場合の人数の平均は 1.18 人
  別居後の同居者は、きょうだい 43.2%、母方祖父母が 18.7%と続く

3 父母(と)の関係
 記憶あり 67.2%、記憶なし 32.8%
  同居親との関係は、普通 22.0%、非常に良い~まあまあ良いまで 65.2%と、9割弱は 普通から良好
  別居親との関係も、普通 23.8%、非常に良い~まあまあ良いまで 47.5%で、7割以上 は普通から良好
  父母の不仲を知っていたかについても、知っていた 42.3%、薄々感じていた 38.5%と 約8割が気付いていた
  子どもとしては、仲直りしてほしい 30.4%、家族が解体する 24.3%、早く別居・離婚 してほしい 21.0%、生活環境が変化する 16.4%、自責の念 16.2%の順で多い
  子どもから見た不仲になった原因は、性格の不一致、異性関係、借金、身体的暴力、 精神的暴力、思いやりの欠如、子育て非協力、浪費、家事非協力

4 別居・離婚の説明や相談の有無
 不仲であることについて、父母からの説明なしは 35.0%、同居親からの説明 20.8%、父母一緒に説明 15.0%、別々に説明 13.2%で、半数近く説明はあり。その説明が事実どおりだったのは 44.4%、双方の説明とも事実が 8.9%で、半数は事実を説明されてい た。
 子どもが誰かに相談したのは 9.4%しかなく、46.5%は相談したいことがあったが相談せず、抱え込んだり、言いたくなかったり。相談相手としては、同居親 39.7%、友人 25.4%、別居親 20.6%、きょうだい 20.6%、学校の先生 17.5%と続く。

5 別居当時の理解・認識・気持ち・子どもの意見
 記憶あり 60.9%、記憶なし 39.1%
  意味の理解は 66.3%、わからない、考えない 29.5% 子どもの気持ちとしては、悲しい 37.4%、ショック 29.9%、将来や経済的な不安 27.3%。他方、ホッとした 14.3%、嬉しかったが 11.0%もいた。
  自分の本心を双方または同居親に伝えたのは 26.1%で、伝えられなかった 21.5%、伝 えることはなかった 33.5%。内容としては、別居しないで 26.8%、早く別居して 24.4%、親の考えを聞きたい 34.0%、または自分の考えを聞いて 20.6%、子どもを巻き込まないで 17.7%の順。
 いずれと暮らしたいかについて、本心を言えた子は 28.2%しかいなく、伝えたが本心ではない子が 9.9%、伝えていない子が 18.1%いた。伝えたが本心ではない子のうち、父母双方に配慮したが 36.7%、同居親に配慮は 60.0%と、親への気兼ねが多い。どちらと住むかについて希望どおりは 50.0%おり、希望どおりでなかったのは 32.5%。そのことについて相談したは 8.9%しかなく、適切な人がいない 18.6%、抱え込んだ 9.7%、言いたくなかった 18.6%だった。ここでも、相談した中で多かったのは、同居親で 40.7%、別居親と友人が同率で 25.9%、きょうだい、学校の先生の順。

6 別居から2~3年後の関係
 子と別居直後の同居親との関係は、非常に良い 24.9%、良い 22.8%、まあまあ良い 10.8%で、普通 28.3%を入れると、9割弱は問題なかった。これに対して、別居直後の別居親との関係は、普通が 32.5%と最も多いが、非常に良い~まあまあ良いは 35.4%しかなく、良くない~非常に悪いは 32.1%であった
 2~3年後の子と同居親との関係は、普通が 27.8%で最も多く、6割近くが非常に良い~まあまあ良いのに対して、2~3年後の別居親との関係は、普通が 30.5%、非常に良い~まあまあ良いが 34%だった。

7 経済面・生活費・養育費
 別居で生活水準は変化なしが 24.4%いたが、苦しくなったが 40.5%にもなっていた。
 生活費について父母の取り決めの有無では、わからないが 45.6%もいたが、取り決めあり 24.6%、取り決めなしは 29.8%だった。
 きちんと支払われていたは 16.8%しかなく、全く支払われていなかった 18.9%、時々支払われていた 6.8%、当初は支払われていたがその後支払われなくなった 14.0%と、4割は支払いが滞っていた
 金銭面について誰かに相談した子は 7.1%しかおらず、相談したくない子も6割に上った。相談した子の相談相手は、同居親、別居親、同居親側の祖父母、きょうだい、友 人の順。相談をした同居親や別居親の約8割は相談に応じてくれた。別居親の1割は相談をしたのに何もしてくれなかった。

8 面会交流
 別居親といつでも連絡できた子は 35.8%、同居親を通じて連絡できる子は 16.3%、自由 に連絡をとれない子は 19.5%、連絡をとりたくない子は 28.4%いた。別居から2~3年後もほぼ同じであった。
 面会交流の取り決めありは 12.2%、取り決めなしは 51.4%と半数は取り決めがなかった。取り決めありのうち面会交流についての希望を伝えた子は 37.7%、伝えたが本心ではない 27.9%、伝えなかった子が 16.4%と、4割以上が伝えられなかった。ここでも親への気兼ねが9割以上。半数は希望どおりになったが、3割は希望どおりにならなかった。同居親から子に対して希望を変えるように働きかけがあったが5割弱だった。面会交流が取り決めどおり実施されたのは6割弱で、守られなかったのが約4割。その原因は、同居親が嫌がったと同居親の時間がなかったを合わせると同居親側の原因が5割を超え、別居親の意思や時間が 34.0%、子どもの拒絶や時間なしは3割。
 子どもの気持ちとして、会いたくない 20.1%、気が向いたときに会えればいい 17.9%、 あまり会いたくない 12.1%と消極的な子も少なくなかったが、26.1%は面会交流をしたかった。会いたくない理由は、同居親や自分にひどいことをしたが約4割、嫌いが約4割、自分に対して無関心と親子としての関係がないを合わせると4割だった。
 面会交流の方法としては、宿泊が3割を超え、昼間に会う 25.4%、電話 20.1%、メール 15.7%と多い。頻度としては不定期が 41.6%と最も多かった。それに満足していたのは 13.2%しかなく、もっと交流をしたかった 15.5%、交流したくなかった 12.7%と、 あまり良好な関係をもてなかった子は交流を望まず、半数以上は感想なしを選んでいた。祖父母との交流も3割弱はしていたが、半数はしていなかった。

9 重要事項の決定・再婚・離婚の影響
 住む場所については、ほぼ同居親が決めていた子が 43.3%と多かった。
 教育・就職、医療など子の重要事項のうち教育・就職は、父母が相談して決めたは 12.2%と少なく、同居親が決めたが 42.3%、別居親は 4.7%となっており、36.7%はわからないと答えていた。
 親の再婚を経験した子は約3割だった。再婚の影響は、気遣い、なじめない、困惑、親をとられたというマイナスもあったが、家族が増えてうれしかったという声もあった。しかし、再婚相手と合わないなども 15.5%あった。
 離婚の影響として、精神的不安定が 20.1%、腹痛・だるさ・不眠等の健康面での影響が 約4割あった。生活面でも、言うのが恥ずかしい、旅行がなくなった、生活のリズムが崩れた、不登校等がある一方、自立心や精神力が強くなるなどのプラス面もあっ た。自分への影響、子どもへの影響でも、どちらともいえないが約3割を占めた。
 離婚・別居の形態は、協議離婚が3割、裁判所での離婚1割で、裁判所の中では調停が多かった。わからないが 45.4%もいたが、これはしかたない。 

10 子どもからみた親の離婚・別居、子どもの希望
 父母にも自分にも良かったが 28.3%、父母は良かったが自分は良くなかったが 14.0%だ った。
 父母双方に育てられたかったは 13.4%、同居親でよかったが 38.5%いた。
 同居親との現在の関係は、普通が 23.0%で、とても良い~まあまあ良いは 63.6%、別居親との関係も、普通が 20.5%、まあまあ良いも含めて良い関係が 37.2%しかなく、全く関わりがないが 33.4%。面会交流について、もっとしたかった 18.6%、ちょうどよかった 24.6%で、多すぎたは 5.7%しかなかった。理想と思う重要事項の決定は、父母が相談は2割弱、同居親が決めるは 4割程度で、わからないが4割弱だった。別居親との関係修復が必要
 子どもが希望する支援や制度として、精神・健康のチェック 44.3%、相談窓口の設置 42.9%、子どもの権利のための法整備 37.4%、子の代理人制度 26.7%、広報・啓発活動 30.9%と高かった。

【雑感】
 今回の調査で、子どもの目から父母の関係や親子関係を冷静に捉えていること、別居・ 離婚の際の面会交流や養育費などで話し合いが十分でなかったり、取り決めがなされず、 子どもへの説明・希望も十分にされていないこと、とくに同居親との関係は良好である が、別居親との関係がよくないこと、子どもの重要事項については、父母が相談して決めるのは少なく同居親が決めていること、子どもの相談窓口、権利保障、支援などを望んでいることが明らかになった。

未成年時に親の別居・離婚を経験した子に対する調査(簡易版)

SC1 あなたの性別を教えてください。(SA)
   男性   498(49.8%)
   女性   500(50.0%)
   その他   2(  0.2%)
   合計   1,000( 100%)

SC2 あなたの年齢をお知らせください。(NU)
          合計     男性     女性
   20~29歳  500(50.0%) 248(49.8%) 250(50.0%)
   30~39歳  500(50.0%) 250(50.2%) 250(50.0%)
    平均   29.90      29.96     29.87
    合計  1,000( 100%)

SC3 あなたのお住まいの地域をお知らせください。(SA)
   北海道          49(  4.9%)
   東北              64(  6.4%)
   北関東             51(  5.1%)
   東京都           171(17.1%)
   東京都をを除く首都圏    193(19.3%)
   中部            144(14.4%)
   近畿            165(16.5%)
   中国           53( 5.3%)
   四国              22( 2.2%)
   九州           88( 8.8%)
   合計         1,000( 100%)

SC4 あなたの婚姻状況をお知らせください。 (SA)
                合計    男性     女性 
   未婚          572(57.2%) 333(66.9%)  237(47.4%)
    内訳)20~24歳  161(88.0%)   84(92.3%)    76(83.5%)
       25~29歳  194(61.2%) 115(73.2%)    78(49.1%)
       30~34歳  118(48.6%)   70(63.1%)    48(36.4%)
       35~39歳    99(38.5%)   64(46.0%)    35(29.7%)
   既婚(離別・死別含む) 428(42.8%) 165(33.1%)  263(52.6%)
   合計          1000(100%) 498(100%)  500(100%)

年齢層別未婚率に関する日本の動向
 令和3年国勢調査の配偶者関係別人口によれば、15歳以上の男女別年齢層別未婚率は、以下の通りです。
  男性)20~24:95.7%,25~29:76.4%,30~34:51.8%,35~39:38.5%
  女性)20~24:93.0%,25~29:65.8%,30~34:38.5%,35~39:26.2%
 年代別未婚率は、常に男性の方が女性より高く、25歳から男性の方が12%ほど女性を上回る傾向にあります。また、男女ともに、25歳以降で急激に未婚率が下がります。

SC5 あなたはお子様がいらっしゃいますか。 (SA)
         合計      男性    女性
   はい   375(37.5%) 156(30.7%) 219(43.8%)
   いいえ  625(62.5%) 342(69.3%) 281(56.2%)
   合計  1000(100%) 498(100%)  500(100%)

子ど子どものいる世帯の割合(令和2年 国勢調査)
  一般世帯は、単独世帯、核家族世帯、その他の世帯に大別され、更に、核家族世帯は、夫婦のみの世帯、夫婦と子どもから成る世帯、ひとり親と子どもから成る世帯に分けられます。令和2年の国勢調査において、子どもがいる世帯の割合は、夫婦と子どもから成る世帯が25.1%、ひとり親と子どもから成る世帯は9.0%でした。ここ15年間で最も増加しているのは単独世帯で、最も多い年齢層は、男性は25~34歳、女性は75~84歳です。
 年齢層別、男女別の子どものいる世帯の割合は次のような実績でした。
  男性        15~24歳 25~34歳  35~44歳
    夫婦と子ども   50.0%   40.0%   57.1%
    一人親と子ども  13.5%    7.3%     6.8%
     合 計     63.5%   47.3%   63.9%
  女性        15~24歳 25~34歳  35~44歳
    夫婦と子ども   52.0%   44.8%   58.8%
    一人親と子ども  14.2%    8.9%   10.9%
     合 計     66.2%   53.7%   69.7%

SC6 あなたの職業をお知らせください。(SA)
                    合計   男性   女性
   会社勤務(一般社員)       401(40.1%)  253(50.8%)  148(29.6%)
   会社勤務(管理職)        38( 3.8%)    25( 5.0%)     13( 2.6%)
   会社経営(経営者・役員)     17(1.7%)     11( 2.2%)       6( 1.2%)
   公務員・教職員・非営利団体職員  29( 2.9%)    21( 4.2%)       8( 1.6%)
   派遣社員・契約社員        48( 4.8%)    22( 4.4%)     26( 5.2%)
   自営業(商工サービス)      16( 1.6%)    11( 2.2%)       5( 1.0%)
   SOHO               6( 0.6%)      5( 1.0%)       1( 0.2%)
   農林漁業               4( 0.4%)      2( 0.0%)       2( 0.4%)
   専門職(弁護士・税理士等・
       医療関連)        25( 2.5%)    11( 2.2%)     14( 2.8%)
   パート・アルバイト        158(15.8%)    46( 9.2%)   111(22.2%)
   専業主婦・主夫          92( 9.2%)      0( 0.0%)     92(18.4%)
   学生               59( 5.9%)    27( 5.4%)     31( 6.2%)
   無職               96( 9.6%)    57(11.4%)    39( 7.8%)
   その他の職業           11( 1.1%)      7( 1.4%)       4( 0.8%)
   合計              1000(100%)  498(100%)   500(100%)

日本の専業主婦世帯の推移
 厚生労働省の令和3年版・厚生労働白書「共働き等世帯の年次推移」によると1996年に「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」と「雇用者の共働き世帯」の数が逆転し、その後は共働き世帯が右肩上がり、専業主婦世帯は右肩下がりが継続。2020年では共働き世帯が1240万世帯、専業主婦世帯が571万世帯となっています。上記の総世帯数から専業主婦世帯数を除した31.5%が専業主婦割合となります。
 今回の調査対象の女性のうち、既婚者は263人。「学生」「無職」も専業主婦にカウントすると、96人が専業主婦となりますので、36.5%が専業主婦となります。

SC7 あなたが生まれた直後の時点で、あなたは、父母の両方と一緒に暮らしていましたか。(SA)
   はい  1000(100%)
   いいえ    0( 0.0%)
   合計  1000(100%)

SC8 未成年期に父母の離婚又は別居を経験しましたか。(SA)
   はい  1000(100%)
   いいえ   0( 0.0%)
   合計  1000(100%)

SC9 父母の別居後は、父母のどちらと一緒に暮らしましたか。(SA)
                    合計   男性    女性
   父               214(21.4%)   136(27.3%)    78(15.6%)
   母               786(78.6%)   362(72.7%)  422(84.4%)
   父母のどちらとも暮らしていない    0(0.0%)       0(0 .0%)      0(0.0%)
   合計             1000(100%)   498(100%)    500(100%)

 別居後に母親と暮らす割合は約80%。女の子は父親に引き取られる割合が男の子よりも低いことがわかります。野暮な?男親にとって、繊細さを要求される?娘の子育ては、「自分の経験を活かせず、知識も不十分だから向いていない」という気後れが影響しているのかもしれません。
 なお、母子世帯、父子世帯と一口にいっても、祖父母などの親以外の大人が同居しているケースを含む場合もあるので、ひとり親家庭の母子世帯、あるいは父子世帯なのか、定義に注意する必要があります。

40年前のアメリカの監護実態(ウォラースタイン博士の研究)
・全国で様々な監護形態が出現してきたが、離婚家庭の80%以上は、母親が監護権を持ち、子どもと同居し、父親が訪問権(日本で言う面会交流権)を持つ形態である。
・父親が法的監護権を獲得することも増え続けており、その場合は母親が訪問権を得る。
・幼い子どもを持つカップルの間で、共同監護(夫々の親と週に数日を過ごす、夫々の親と隔週や隔月で交互に過ごす)の取決めも人気が高まっている。
・博士の研究対象になっている家庭の取決めは、殆どが母親が監護権、父親が訪問権をもつ形態だった。

Q2 父母が別居を始めたのは、あなたが何歳の時ですか。(SA)
  3歳未満                119(11.9%)
  3歳から6歳(就学前)         199(19.9%)
  7歳から9歳(小学生(1年~3年))  157(15.7%)
  10歳から12歳(小学生(4年~6年))  167(16.7%)
  13歳から15歳(中学生)         137(13.7%)
  16歳から18歳(中学校卒業後)      138(13.8%)
  20歳未満                 83( 8.3%)
  合計                  1000(100%)

 7歳未満の就学前ゾーンで父母が別居をした子どもが30%います。親にとって子どものケアが大変な時期である一方、子どもにとっても健全な成長に資する重要な時期に離婚が多いことに留意する必要があります。
 因みに、厚生労働省の「令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」の「同居期間別にみた離婚件数の年次推移」によると、5年毎のゾーンでは、結婚5年未満の離婚がが最も多く、総離婚件数の約30%程度となっており、この調査の構成率は日本全国と動向と一致しています。
 この年齢のゾーンが多い理由として、同居生活を送っていく中で性格の不一致が顕在化、子育てによる家庭環境の変化、小学校入学を節目にした意思決定等の要素が起因するといわれています。

最早期記憶
 自分自身に関する一番幼い時の記憶(最早期記憶)は、従来は早くて3歳半頃と考えられていましたが、最新の研究で2歳半まで遡れることが判明しました。従って、それ以前の記憶は、本当の記憶ではなく、成長して他人から聞いた話を基に作られた記憶です。本調査では3歳未満の時期に別居した子どもも調査対象になっていますが、記憶という観点からはちょうど微妙なタイミングに当たるため、別居時に3歳未満だった人のデータはその点を念頭においておく必要があります。
 また、調査対象が調査時点で20~39歳の大人なので、この調査の回答は1年前~36年前の別居や離婚時の感情や事実を思い出したものです。離婚から調査までの間で記憶の塗り替えが生じている可能性もあり、その点にも留意しておく必要があります。

子どもの記憶と面会交流
生まれてから再早期記憶までの記憶がない現象のことを「幼児期健忘」と呼びます。この原因は未だ解明されていませんが、2,3歳までの脳の急激な発達により、新しい脳細胞が追加される際に記憶を読みだすスキームが新しいスキームに置き換えられ、古い記憶にアクセスできなくなるという説があります。
 研究によると、再早期記憶の年齢に達するまで子どもの記憶期間は、次のようになっています。
  生後6か月:1日,生後9か月:約1か月、2歳:約1年間
 人の脳は3歳までに80%が完成するため、3歳までの子育てが子どもの健全な成長において極めて重要であることが発達心理学により判明しています。特に両親とのアタッチメントは、青年期の人格形成にも影響を及ぼします。アタッチメント理論を説いたボウルビィ博士は、「少なくとも1人の養育者との親密なアタッチメントを維持しなければならない」と主張しています。少なくとも1人というのであれば、母親1人だけのアタッチメントで良いではないかと考える方もいるでしょう。しかし、母親1人の場合、その母親がいなくなった場合や母親の養育の質が低下した場合に、その影響が子どもを直撃します。また、乳幼児期における父親の子育てへの関与が子どもの身体面、精神面において良い結果を生むことが研究から分かっており(「父親の関与に関する積み木」を参照)、やはり「両方」の親が子どもの養育に関わることが子どもの成長にとって理想です。
  更に言えば、心理学者のシャファーは、生後数年間において一方の親との接触を失うことは、その分離が必ずトラウマになると立証できないが、トラウマ的な出来事になる可能性があることは疑う余地がなく、可能な限り、関係、環境、日課の連続性を維持した方が良いと述べています(新曜社「子どもの養育に心理学がいえること」を参照)。
 諸外国は、このような子どもの記憶期間や発達心理学の研究成果に基づいて面会交流の条件(頻度と時間)を定めており、よく紹介されているアリゾナ州の事例では次のようになっています。
 0歳~2歳:平日2回夕方3~4時間&週末半日
 3歳~5歳:平日2回夕方3~4時間&週末1泊

分析する年齢層分類について
ウォラースタイン博士は研究に参加した60家族の子ども131人を、未就学児(3~5歳)、小学校低学年(6~8歳)、小学校高学年(9~12歳)、青年(13~18歳)に分類すると、離婚後の子どもの感情や行動に規則性を見出せることを発見し、当該区分(一般的な発達段階の区分と同じ)で分析を行っています。そこで、本調査の回答をクロス集計で年齢別に分ける場合は、同じ区分で分けることにしました。
[参考]ウォラースタイン博士の研究に参加した子どもの年齢層
          合計    男子   女子
  未就学児   34(26.1%)  19(30.2%)  15(22.1%)
  小学校低学年 35(26.7%)  19(30.2%)  16(23.5%)
  小学校高学年 44(33.5%)  18(28.6%)  26(38.2%)
  青年     18(13.7%)  7(11.1%)   11(16.2%)
  合計      131(100%)  63(100%)   68(100%))

Q3 父母の別居時のあなたのきょうだいの有無と人数を教えて下さい。(MA)
   兄     222(22.2%) 1.18人
   弟     212(21.2%) 1.16人
   姉     195(19.5%) 1.19人
   妹     239(23.9%) 1.19人
   いない   257(25.7%)
   わからない  45( 4.5%)
   回答者数  1000(100%)
   ※右列の数字は兄弟がいる場合の平均人数。

合計特殊出生率について
合計特殊出生率とは、Σ(母の年齢別出生数/年齢別女子人口)
 但し、合計は15~49歳の母と女性が対象
から算出した値であり、1人の女性が生涯に産む子どもの数と見做す値のことです。
 厚生労働省の2021年人口動態統計によると、1.30人で、6年連続で前年を下回っています。
 厚生労働省は、集計対象の年齢ゾーンの人口減と晩婚化で出産する年齢が高くなっていることが原因であるとの見解を示しています。

Q5 父母の別居後に、同居親の他に同居していた人はいましたか。(MA)
             オリジナル     補正値
                     男性   女性
   きょうだい     432(43.2%)  --( --.-%)  --( --.-%)
   父方祖父母     105(10.5%)    69(32.2%)  28( 3.6%)
   母方祖父母     187(18.7%)   7(  3.3%)   159(20.1%)
   母方の親族      50(  5.0%)    4(  1.9%)     46( 5.9%)
   父方の親族      19(  1.9%)   13( 6.1%)    6( 0.8%)
   同居親の再婚相手・  
   交際相手          17(  1.7%)    2(  0.9%)    14( 1.8%)
   その他          3(  0.3%)     0( 0.0%)      2( 0.3%)
   いない         278(27.8%)   96(44.9%) 511(65.0%)
   わからない       43( 4.3%)   23(10.7%)   20(  2.5%)
   回答者数      1000     214(100%)  786(100%)

この質問に関する自由記載内容
   ひいおばあちゃん
   母方の祖母の再婚相手とその子(叔母)
   母方兄弟

 オリジナルはデータ区分に子どもの兄弟姉妹も含んでいたため、「きょうだい」という回答をオミットして、「大人と子ども」の視点で再分類しました(上記の補正値)。
 「いない」という回答が、ひとりの親と子どもだけから成る、所謂「ひとり親」家庭になります。同居親が男性の場合は、「わからない」という回答が女性の場合よりも多いので、そこは考慮しなくてはいけないものの、「ひとり親」の回答が女性よりも20%低いことに留意する必要があります。同居親が男性のケースにおける「父方祖父母」(父子の実家暮らし)と同居親が女性のケースにおける「母方祖父母」(母子の実家暮らし)を比べると、「父方祖父母」(父子の実家暮らし)の方が10%高く、男性親は離婚後に子どものケアを祖父母にみてもらうケースが多いものと推測されます。男性同居親と「母方祖父母」、女性同居親と「父方祖父母」という、変わったパターンが若干数ですが存在しますが、父親が婿入りしたが母親が家を出た、あるいは母親が嫁入りしたが父親が家を出た可能性があります。
 世帯タイプを細かく分類した考察はしないので、今回の調査データには母子の実家暮らしの約20%、父子の実家暮らしのは約30%が含まれていることを頭の片隅におき、データを眺めて下さい。

Q6 父母の別居前の家庭内の状況について覚えていますか。(SA)
        合計       3歳未満  就学前   小学生以降
   はい     672(67.2%)   44(36.9%)   102(51.3%)   526(77.1%)
   いいえ    328(32.8%)   75(63.1%)   97(48.7%)  156(22.9%)
   合計   1000(100%)  119(100%)  199(100%)   682(100%)

 「いいえ」328人のうち、就学前に両親が別居したの子ども172人が占めていました。最早期記憶は3歳近傍からなので、この年齢層の「いいえ」は予想された結果です。一方で、小学生以降に親が別居した子どもで156人のうち、小学校高学年以降に親が別居した子どもが112人います(下表)。記憶力は18歳になるまで上がり続けるので、記憶とは別の理由(例えば父母と離れて生活していた)によるものと思われます。

別居前の記憶有無(Q6)vs別居時の年齢層(Q2)

Q7_1 父母が不仲になる前、あなたと同居親の関係はどのような状況でしたか。(SA)
[対象]Q6で「はい」の回答者
   非常に良い関係     181(26.9%)
   良い関係        153(22.8%)
   まあまあ良い関係    104(15.5%)
   普通          148(22.0%)
   あまり良い関係ではない  52( 7.7%)
   悪い関係         14( 2.1%)
   非常に悪い関係      20( 3.0%)
   合計          672(100%)

子どもの87%が同居親と普通以上の関係でした。

Q7_2 父母が不仲になる前、あなたと別居親の関係はどのような状況でしたか。(SA)
[対象]Q6で「はい」の回答者
   非常に良い関係     108(16.1%)
   良い関係        123(18.3%)
   まあまあ良い関係     88(13.1%)
   普通          160(23.8%)
   あまり良い関係ではない  94(14.0%)
   悪い関係         42( 6.3%)
   非常に悪い関係      57( 8.5%)
   合計          672(100%)

子どもと同居親の関係ほど多くはありませんでしたが、それでも、子どもの71%が別居親と普通以上の関係でした。

両親が不仲になる前の同居親(Q7_1)との関係vs別居親との関係(Q7_2)

 上表は表側(縦に)同居親との関係、表頭(横)に別居親との関係を整理したものです。
 面白いことに、「非常に悪い関係」以外は、同居親に対する関係と別居親に対する関係が同じレベルのセルが最も構成率が高くなっています。例えば、「非常に良い関係」(1行目)では、両方の親と非常に良い関係にある子どもが88人(左端)です。一方、同居親とは非常によい関係にあるが、別居親とは非常に悪い関係にある子どもは18人(右端)しかいません。子どもはどちらからの親に入れ込むことはなく、両方の親と等距離の関係にあるのが一般的なのかもしれません。
 また、どの関係レベルでも同居親との関係の方が別居親との関係より良い傾向にあるようです。例えば、両方の親とは「良い関係」にある子どもは76人(2行目2列)ですが、同居親と「良い関係」で別居親と「非常に良い関係」にある子どもは13人(2行目1列)、別居親と「良い関係」で同居親と「非常に良い関係」にある子どもは29人(1行目2列)となっています。同居親の80%が母親です。関西大学の保田教授によると、母親が我が子と一緒に過ごす時間は約7年6か月、父親は約3年4か月だそうです。子どもと一緒にいる時間の長い母親、即ち、同居親の方が、別居親より子どもと同じ体験を共有か出来るので子どもとの関係が良いのかも知れません。

不仲になってから別居や離婚をするまでの親子関係
 この研究では、「不仲になる前」の親子関係Q7と「別居直後」の親子関係Q17を調査していますが、「不仲になってから別居するまで」の親子関係は調査をしていません。「別居直後」がそれを代替するのかもしれませんが、参考までに別居前の両親が不仲の状態にある家庭の親子関係をウォラースタイン博士の研究結果から紹介します。
[良い関係]
・少なくとも20%の子どもが父親と非常に良い、或いは良い関係だった
・30%程度の子どもが母親と非常に良い、或いは、良い関係だった
・子どもの25%が、両方の親から満足いく世話をしてもらっていた
・子どもの75%は、母親が身の回りの世話をしていた
・子どもの50%に、身の回りの世話ができる父親がいた
・親同士で上手く対話できる者は5%しかいなかったが、父親の25%と母親の30%は子どもと非常に良くコミュニケーションがとれていた
・親同士の30%以上に意見の相違があったが、子育てに問題はなかった
・子どもの50%が両親から比較的一貫した扱いを受けていた
[悪い関係]
・子どもの40%以上が父親との関係が悪かった
・父親の中にはメンタルを病んだり、ネグレクトしたり、子どもに暴力や性的虐待をする者もおり、子どもに悪影響を与えていた
・子どもの少なくとも25%が母親との関係が悪く、深刻なネグレクトと脅迫による虐待がその特徴だった
・子どもを酷く扱う親は、一方の親も酷く扱った
・研究に参加した家庭の25%でDVが常態化しており、その家庭の50%の子どもがしばしば現場を目撃していた。
・DVが習慣化した家庭の子どもは恐怖を感じて暮らしていた
・暴力が滅多にない家庭であっても一度でも恐怖を感じた子どもは、そのことを長期間、鮮明に覚えていた
[結論]
・親同士が不仲でも多くの親が子どもの成長を気にかけ、大人になり、子どもとの関係を中心に据え、子どものケアをしていた。
・その結果、子どもは親のストレスの影響を必ずしも受けておらず、親同士が不仲であることを気にかけていなかった。

Q8_1 あなたは、父母が別居を開始する前に、父母が不仲になっていることを知っていましたか。(SA)
   知っていた    284(42.3%)
   薄々感じていた  259(38.5%)
   知らなかった     91(13.5%)
   覚えていない     38( 5.7%)
   合計       672(100%)

 「はっきり」から「薄々」まで、幅はあるものの、約80%の子どもが父母の不仲をに気付いていました。但し、両親の不仲を知っていることと、両親の別居や離婚が子どもにショックを与えるか否かは別であると、ウォラースタイン博士は40年前に次のような警告をしています。
 不仲であることを認識していない子どもが3分の1、僅かに認識していた子どもが3分の1、残り3分の1が不仲を認識し、両親の別離を懸念していた。ある9歳の少女は、別離の指標として何年間も両親のベッドの間隔を観察していた。しかし、不仲を認識していたからといって、別離に対する心理的準備が出来ていたわけでも、別居時の苦痛が軽減したわけでもなかった。「別居」に驚かなった子どももいたが、その子にとっても「離婚」は青天の霹靂だった。

Q8_2 あなたは、父母が別居を開始する前に、父母が不仲になっていることについて、どのように感じていましたか。(MA)
[対象]Q8_1で「知っていた」「薄々感じていた」の回答者
                    合計   身体的DV
   仲直りして欲しい        165(30.4%)   93
   父母の仲が悪いのは自分のせいな
   のではないか            88(16.2%)   35
   家族がバラバラになってしまう  132(24.3%)   66
   信じたくない            54( 9.9%)    24
   恥ずかしい             38( 7.0%)    20
   今の生活環境(住所、学校等)が
   変わってしまう           89(16.4%)   39 
   経済状況が悪くなってしまう     51( 9.4%)    23
   自分が父母の双方から捨てられて
   しまうのではないか         28( 5.2%)    12
   家族以外の親族に助けてほしい    22( 4.1%)    18
   法律の専門家に助けてほしい     12( 2.2%)   7
   親の問題には関わりたくない     79(14.5%)   40
   早く離婚・別居してほしい    114(21.0%)   49
   何が起こっているのかわからなか
   った                58(10.7%)  25
   その他                  8( 1.5%)    5
   覚えていない             35( 6.4%)   15
   回答者数              543

この質問に関する自由記載内容
   物心ついた時から不仲だったため、それが通常だった
   父母間の仲が良い周りの友達が羨ましかった
   なんとも思わなかった
   怖かった
   いずれ離婚しそうな気がしていた
   小さい時から不仲だったのであまり何も思ってなかった
   仲が悪いのなら別れれば良い
   どちらも好きなようにしている

 子どもが父母の不仲に対して感じていた内容の上位1,2番は、①仲直りして欲しい30%、②家族がバラバラになってしまう24%で、崩壊しつつある家庭を修復したいという要望ですが、3番目は、③早く離婚・別居して欲しい21%で、家庭の解消を促すような提案になっていました。子どもが親同士の関係修復を望むことは、「和合幻想」「和解幻想」として良く知られています。別居や離婚して欲しいという感情は、「親は親、私は私」という思考ができる年齢であるか、あるいは、その思考に辿り着くまでの時間が経過したか、子どもが深刻なストレスを感じるほどの親同士のDVや激しい葛藤、または虐待を受けていた場合と考えられます。
 そこで、表の最右列に「身体的DV」欄を設け、Q9「現時点で認識している不仲になった原因」毎に「身体的な暴力」と回答していたラップ件数を記載しました。どの回答でも「身体的DV」の件数が約半分を占めており、身体的DVが存在する、イコール、早急に分かれて欲しいと感じたわけではないようです。先述したように、ウォラースタイン博士の研究では25%の子どもの家庭でDVが常態化していながら、(後述しますが)離婚を歓迎していた子どもは10%程度であり、この結果自体はおかしくありません。

両親の離婚後に子どもが感じたこと(ウォラースタイン博士の研究)
 離婚を告知された時の子どもの瞬間的反応は、後述するので、ここでは告知から暫く経過した時点に子どもが感じたことを記載します。年齢層や時間の経過により感じたことは変化しますが、ここでは共通しているテーマを取り上げます。
⑴恐怖
 ・幼い子供は全て、今後誰が自分の養育をしてくれるのか心配していた。
 ・全ての子どもの75%以上が、現在だけでなく将来の養育者と保護者について心配していた。
 ・経済力のある家庭の子どもですら、大学に行けないのではと心配した。
 ・児童養護施設に入所することになると心配する子どももいた。
 ・夫婦関係が解消されれば、親子関係も解消されると結論づけていた。
 ・子どもの約50%が父親に見捨てられることを非常に恐れていた。
 ・人間関係に対する信頼が低下し、その回の訪問が終わる度に父親ともう二度と会えないのではないかと恐怖した。
 ・戦いに負けた親は家から追放され戻ってくることが許されない結果になると予想した。
 ・子どもの30%は母親にも見捨てられると心配していた
 ・幼い子どもは朝起きると母親がいなくなっていることを恐れた。
 ・「ママはパパのことを本当は愛していなかったんだ。これから何が起こってもおかしくないわ。たぶんパパの次は私ね」(9歳の女子)
⑵喪失感
・子どもの50%以上が涙を流して悲しんだ。
・30%以上の子どもが不眠、情動不安、集中力低下、過緊張、空虚感、遊びの疎外、強迫観念、身体的愁訴等の急性うつ病の症状を呈した。
・年少の子どもは父親に対して喪失感を、年長の子どもは家庭に対して喪失感を抱いた。
・子どもの60%、特に年少の子どもは父親に対する喪失感が大きかった。
・「僕たちにはパパが必要なのに、パパが居ないんです」(5歳の男子)
・全ての年齢の子どもが、両親が和解する幻想に夢中になっていた
⑶不安
・家を出た父親がやっていけるか、父親の生活と住居は大丈夫か心配した。
・50%超の子どもが母親の健康を心配した。
・母親の帰りが遅いと母親も居なくなるのではないかと心配した。
・家計が悪化していことを感じ、今後の生活を心配した。
・転校や引っ越しを心配した。
・親が再婚して、連れ子に親の愛情を奪われるのではないか心配した。
⑷被拒絶感
・父親が家を出て行ったのは自分への愛情を失ったためと思った。
・母親が以前ほど世話しないのは自分への愛情を失ったためだと思った。
・50%超の子どもが一方あるいは両方の親からの被拒絶感に苦しんだ。
・怒り悲しむ母親の怒鳴り声は自分を拒絶している証拠と考えた。
・父親から拒絶されたと考えたのは6~12歳の少年が最も多かった。
⑸孤独感
・母親が仕事から帰ってくるまで、孤独を感じた
・気分転換ができ、仲間の支援を受けられた青年だけが孤独感から免れた
⑹忠誠葛藤
・片親だけと親密にならないように両親と距離を置いて孤独になった
・一方の親と同盟を組み、もう一方の親に怒りを向け、非難した。
 ※「同盟」とは片親疎外のことです
⑺攻撃行動
・最年少の子どもは癇癪を起し、他の子どもを殴打した
・子どもの25%は一方、或いは、両方の親に怒りの感情を抱いた
・怒りの対象は父親が多かったが、家庭のことでは母親に当たった
・両親は自分たちのニーズを優先し、子どもを二次的にしか考慮せず、利己的な行動をしたと考えた
・親が不道徳な行使をしたことを裏切り行為と見做した。
⑻自責
・離婚の原因は自分にあると考える子どもは最年少の子どもに多かった
・年長の子どもで自責の念を持った者は、他の面でも適応が悪い子だった

Q9 あなたの父母が不仲になった原因は何でしたか。現時点の認識で答えて下さい。(MA)
[対象]Q6で「はい」の回答者
   性格の不一致               266(39.6%)
   身体的な暴力               124(18.5%)
   精神的な暴力               107(15.9%)
   借金                   133(19.8%)
   失業                      42( 6.3%)
   働かない                    62(9.2%)
   子育てに協力しない              88(13.1%)
   家事に協力しない               79(11.8%)
   子に虐待する                   38(5.7%)
   親族関係(相手の親族との折り合いが悪い)     60(8.9%)
   異性関係(浮気)             134(19.9%)
   生活費を渡さない             58( 8.6%)
   浪費                     84(12.5%)
   家族に対する思いやりがない        96(14.3%)
   アルコール依存              41( 6.1%)
   ギャンブル                57( 8.5%)
   その他                  16( 2.4%)
   わからない                66( 9.8%)
   回答者数                  672

この質問に関する自由記載内容
   
配偶者の金品の窃盗
   子どもの障害と病気
   単身赴任
   急に離婚しようと父が言ったので理由は分からない
   父の仕事が忙しい
   浮気
   病気
   死別
   大麻依存
   仕事の関係
   父が統合失調症になった
   心身の状態
   1 億円の横領発覚
   人としてのタチの悪さ
   不仲にはなってない
   死別

 離婚理由を分析する際、一般的に用いられるのは司法統計です。そのデータは家庭裁判所に申立てられた婚姻関係事件について、選択肢の中から最大3つ選択した申立ての動機を纏めたものです。「家事 令和2年度 第19表 婚姻関係事件数-申立ての動機別申立人別ー全家庭裁判所」によれば、件数の大きい順に3つ挙げると、「性格が合わない」、「精神的に虐待する」、「生活費を渡さない」になっています。
 一方、今回の調査は裁判所を介さない協議離婚を含みます。Q33の回答から分かるように、この調査で裁判所を介して離婚したケースは約13%です(厚生労働省のひとり親調査も約13%で近い値になっています)。司法統計から得た離婚の動機を、離婚全体に一般化はできませんが、今回の調査結果を司法統計と対比させる形で評価します。
 今回の調査は、司法統計とは選択項目が異なり(例えば、性的不調和が選択項目にない)、また、選択方法も異なり(複数回答であるが、最大選択数を設定していない)ますが、選択項目の内容はほぼ司法統計と同じでした。不仲の理由を選択数が多い順に並べると、「性格の不一致」、「異性関係」、「借金」となり、2番目以降は内容が異なるものの、最も多い動機は「性格の不一致」で司法統計と一致していました。
 司法統計と今回調査の比較は、先述した理由等から厳密には統計的意味がありませんが、動機が一対一で対応するようグルーピングしてグラフを作成してみました(下図)。そうしますと、偶々かもしれませんが、両者の動機の分布は似たような形状をしており、異なる部分は、①三下り半を突き付けられるような「家庭を顧みない」ケースは否応なしに協議離婚するから、②明確な理由がないケースは「性格の不一致」で裁判所に申立てて離婚するから、かもしれません。

不仲(離婚)原因別の回答数/回答数の総計

回答のグルーピング規則
〇今回調査の編集
「身体的な暴力」+「子に虐待する」=「暴力を振るう」
「借金」+「働かない」+「生活費を渡さない」+「家族に対するおもいやりがない」+「ギャンブル」=「家庭を顧みない」
「失業」+「子育てに協力しない」+「家事に協力しない」+「その他」=「その他」
〇司法統計の編集
「家庭を捨てて省みない」+「生活費を渡さない」=「家庭を顧みない」
「同居に応じない」+「病気」+「性的不調和」+「その他」=「その他」

Q10_1 父母が別居を開始する前に、父母が不仲であることについて、それぞれ父母から説明はありましたか。(SA)
[対象]Q6で「はい」の回答者
   父母の双方から一緒に説明があった  101(15.0%)
   父母の双方から別々に説明があった    89(13.2%)
   同居親のみから説明があった     140(20.8%)
   別居親のみから説明があった        26( 3.9%)
   なかった              235(35.0%)
   覚えていない              81(12.1%)
   合計                672(100%)

 質問の「不仲であることを説明」という表現が微妙ですが、「別居(離婚)するつもりだという説明」をしたか、という意味かと思います。53%が説明を聞いているものの、説明がなかったという回答が35%も占めています。
 不仲であること、不仲の理由は何かを子どもに伝える行為は、子どもの心の準備や、子どもに親の不仲を納得してもらうためのものです。ウォラースタイン博士は、自身の研究結果から、それだけではなく、子どものメンタルへのダメージを軽減する言葉、心配を払拭する言葉を添えるべきと提言しました。子どもを安心させる言葉を添えることは、海外では今や離婚に際して実施すべき基本事項となっています。しかし、今回の研究を見る限り、日本は未だにその基本が周知されていないようです。

ウォラースタイン博士が研究で観察した離婚告知の実態
観察したこと
・大人にとって子どもを交えて離婚することを話し合うのは難儀だった
・最年少の子どもの80%は適切な説明も、継続的なケアの保証も聞いていなかった(朝起きて一方の親がいなくなっていることを知った)
・大人は、子どもへの告知に際し、どこまで詳細に(特に性的内容に関して)説明すべきか分からなかった
・いつ(別居前日or1週間前or1か月前)、どこで、どのように(全員同時にor別々にor年齢毎に)子どもに告知すべきか分からなかった
・子どもは親が悩んでいて不幸を感じていると理解していた
・子どもは親の苦悩を改善したい、改善できないまでも、苦悩に加担したくないと考えていた
・殆どの子どもは親への質問に気兼ねし、親が話しかけるのを待っていた
・離婚の告知は簡潔で、子どもへの影響に関する説明(両方の親と会い続けるための計画、離婚とは何か、家族はどこに住むのか)は添えられていなかった
・離婚によって生活が改善することを話せば子どもが離婚に同意すると考えていた親は、告知後に激しく落ち込む子どもを見てショックを受けた
・子どもが自分の気持ちを表明できない形で告知する親もいた
・家が2つになるだけで、それ以外は今より良くなると説く親もいた
・全ての家庭で、子どもが意見表明できる機会を与えていなかった
・全ての家庭で、離婚当初の家庭状況は厳しいが暫くすれば良くなることを子どもと共有化できていなかった
・告知するだけでなく、子どもが自分の人生の重要な変化点を理解・統合するための手ほどきをすべきだと認識している親は一人もいなかった
今後すべきこと
親に介入や教育を施し、以下に示す「離婚の決定を子どもに伝える行為の意味」を理解してもらう。
・子どもが離婚後の危機に対処するための情報と情報を得る機会を与える
・(子どもへの影響を同時に説明をすることは)親の核心的役割である「子どもの支援」の1つである

Q10_2 父母が別居を開始する前に、不仲となった原因について、それぞれ父母から説明はありましたか。(SA)
[対象]Q6で「はい」の回答者
   父母の双方から一緒に説明があった    71(10.6%)
   父母の双方から別々に説明があった  101(15.0%)
   同居親のみから説明があった     137(20.4%)
   別居親のみから説明があった       29( 4.3%)
   なかった              252(57.5%)
   覚えていない              82(12.2%)
   合計                672(100%)

 「不仲となった原因」という表現が微妙ですが、「別居(離婚)することになった原因」と解釈した場合、説明が「なかった」が約60%を占めるのは問題です。幼い子どもには理解できないと考え、話をしない親もいるようですが、子どもは幼いなりの理解ができますし、親が子どもの理解できる言葉を用いて説明することも重要です。子どもは望んでもいない両親の不仲に巻き込まれた被害であり、親にはその原因を説明する義務があります。不仲に至った理由を正直に、(しかし必要以上に詳しく説明せず)簡潔に話すのが良いとされています。嘘は子どもの不信感を買うことになるので避け、相手の悪口を言わずに冷静に話すことがポイントです。

Q10_3 不仲となった原因の説明は事実どおりでしたか。(SA)
[対象]Q10_2「説明があった」の回答者
  事実どおりあった                    158(44.4%)
  事実と異なっていた                   29(  8.6%)
  双方とも事実どおりだった                30(  8.9%)
  同居親は事実どおりだったが、別居親は事実と異なっていた 35(10.4%)
  別居親は事実どおりだったが、同居親が事実と異なっていた 19( 5.6%)
  双方とも事実と異なっていた                 7( 2.1%)
  わからない                       62(18.3%)
  覚えていない                        6( 1.8%)
  合計                          338(100%)

不仲の原因は事実だったか(Q10_3) vs 誰から説明をうけたか(Q10_2)

 流石に同居親と別居親の双方から一緒に説明された不仲原因は69%が真実でしたが、口裏を合わせ嘘の説明をした両親が17%いました。
 同居親と別居親から別々に説明を受けた場合は、確率計算より、同居親の60%、別居親の50%が真実を説明していたと思われます。
 一方の親からだけ説明を受けた場合、同居親の場合は65%、別居親の場合は41%が真実を説明しました。
 同居親は子どもと暮らしているだけに、別居親より嘘をつかない傾向にあるようです。

Q11_1 父母が不仲になっているときに、あなたは誰かに相談しましたか。(SA)
   相談した                    63( 9.4%)
   相談したかったが、適切な人がいなかった  128(19.0%)
   相談できる人はいたが、自分で抱え込んだ     56( 8.3%)
   人に言いたくなかった           129(19.2%)
   その他                   6( 0.9%)
   相談したいことはなかった         290(43.2%)
   合計                   672(100%)

この質問に関する自由記載内容
   幼いので知りません
   小さかったので覚えてないかな
   したいかどうか覚えていないが、どちらにしても適切な相手がいなかった
   わかっていなかった
   相談できる人はいなかった
   言っても仕方がない

父母の不仲を誰かに相談したか(Q11_2) vs 別居時の年齢層(Q2)

 一番選択が多かったのは、「相談したいことはなかった」43%でした。この中には、幼過ぎて何もわからなかったであろう就学以前の子どもと問題を理解できるようになったであろう小学生以降の子どもが含まれています。後者は「この件は親同士の問題であり、子どもが関与することではない」という冷めた理解をしているものと推測できます。このような子どもの理解は正しく、子どもが誰かに相談する前に、両親が自発的にカウンセリングを受けるべきなのでしょう。
 「相談した」子どもは9%だけでした。相談する気持ちはあった、或いは、相談できる人はいたのに相談しなかった子どもは、27%(=19.0+8.3)もいました。相談したい子どもが気軽に悩みを相談できる仕組みが必要です。
 気になる点は、「人に言いたくなかった」という選択が19%もあることです。家庭内の揉め事、それも親の不仲(別居や離婚)を外部の人間に話すことがみっともない、或いは、偏見に晒されるという意識から発した感情なのだと思います。両親の不仲や不仲の結果の別居・離婚に対し、偏見があるのでしょうが、この偏見は解消すべきものと考えますし、当事者も偏見に屈しないで、相談を求めていく姿勢が重要だと考えます。心理学者の小田切紀子氏がこの点について良い文章を書いているのでいかに紹介いたします。 

 親が離婚を恥ずかしいこと、人に言ってはいけないことと考えれば、子どもも親の離婚を恥と受け止め、親の離婚を引け目に感じて周囲に隠そうとします。親は、人間として本当に恥ずかしい生き方は何かを考える必要があります。
 また、離婚が子どもに不利になると思っている親は、親自身が離婚や離婚家庭に対して偏見や先入観をもち、払拭できていないことがあります。離婚家庭の子どもというだけで、差別のまなざしを向けてくる人たちがいるのであれば、自分は価値観が違うと思い、一定の距離をおいて付き合ったほうがいと思います。

「離婚 前を向いて歩きつづけるために」小田切 紀子著(サイエンス社)

Q11_2 誰に相談しましたか。(MA)
[対象]Q11_1で「相談した」の対象者
   同居親          25(39.7%)
   別居親            13(20.6%)
   きょうだい          13(20.6%)
   同居親側の祖父母      9(14.3%)
   別居親側の祖父母       6( 9.5%)
   同居親の祖父母以外の親族  7(11.1%)
   別居親の祖父母以外の親族  6( 9.5%)
   学校の先生          11(17.5%)
   塾や習い事の先生       3( 4.8%)
   友人             16(25.4%)
   その他            0( 0.0%)
   回答者数           63

 相談の具体的内容が分からず、コメントが難しいのですが、「父母が些細なことで頻繁に大喧嘩をしてストレスを感じているので、何とかして欲しい」という子どもの気持ちが出発点としましょう。
 善処を求める相談をする、親の喧嘩を辞めさせる方法を相談する、喧嘩で済まず別居や離婚になったらどうしようと相談する。という異なるタイプの相談が考えられます。善処は当事者に求めることなので、善処を求める相談は、両親に真っ先にした。別居や離婚に至った場合は自分の進学や住所にも影響があることなので、別居に至った場合の相談は、学校の先生にした。友人には自分と同じ年齢の立場での助言が欲しくて相談した。このような展開だと想像します。
 両親は、子どもが片親になることは、子どもの将来にとって不利と考え、子どもが激しいストレスを受けているのに、離婚をせずにいるのかもしれません。いずれにせよ、子どもは両親の不仲で悩んでいるわけで、子どもを救済する鍵は、両親が握っています。両親がカウンセリングを受け、関係を修復するか、最大限子どもに影響を与えない形で別居や離婚するか、の2択しか対策はありません。

離婚に関するウォラースタイン博士の離婚に対する見解(抜粋&要約)
離婚は、不幸な結婚生活に縛られた大人が役立てるべく与えられた適切な社会的救済および選択肢であり、この社会の人々にとって一層利用しやすくなり得る法的資源だと私たちは仮定した。残念なことに、不幸な結婚生活と離婚は両方とも、子どもにとっては何も得るものがなく、夫々が独自の対となるストレスを、関係する子どもと両親に与えている。そこで、私たちは家族にとっていつ離婚するのが賢明か、子どもが成人するまで離婚は控えるべきかを研究する代わりに、子どもと両親に成り代わって、離婚の苦い経験を拭い去るための離婚方法と離婚に関して知っておくべきことを研究した。

Q12 父母の別居時の状況について覚えていますか。(SA)
         合計
   はい   609(60.9%)
   いいえ  391(39.1%)
   合計  1000(100%)

別居時の記憶有無(Q12)vs別居時の年齢層(Q2)

 覚えていないと答えた子どもは391人、うち、就学前が192人でした。この傾向はQ6「別居前の家庭内の状況を覚えていますか」と変わりません。
 Q6に対する「いいえ」の回答が32.8%なので、時系列だけ考えると今回の「いいえ」の回答Q6より少なくても良いように思いますが、7%増加した39.1%で、相変わらず高位です。

Q13_1 あなたは、父母が別居をした時に、何が起こっているのかを理解しましたか。(SA)
[対象]Q12で「はい」の回答者
   意味はわかっていた            404(66.3%)
   よくわからなかった            136(22.3%)
   何が起こっているか、考えないようにした    44( 7.2%)
   覚えていない                 25( 4.1%)
   合計                   609(100%)

別居の理解(Q13_1)vs別居時の年齢層(Q2)

 何が起こっているのか理解できたのは66%だけでした。何が起こっているのか意味を理解できる「3歳未満」が18人(1行目1列)もいる一方で、よくわからない青年以降の子どもが25人(2行目の5列+6列)います。この質問が、「別居」の意味を理解できていたかを確認したかったのか、「別居の背景や事態」を認識しているかを確認したかったのか、回答者によって解釈が違ったのだと思われます。
 因みに、「別居」ではなく、「離婚」に関して、ウォラースタイン博士は次のようなことを述べています。
 子どもから見ると離婚の中核となる出来事は、両親の身体的別離である。両親の結婚生活の破綻を認識する、しないに拘らず、子どもは一方の親が家を去ったことに間違いなく気付くからである。この身体的別離により、子どもは「2人の親を1つの単位」とする認識を改めざるを得ない。かくして、離婚により自分自身の救済を求める親と、離婚を翻し家族を破綻前の1単位に戻そうとする子どもとが正面衝突することになる。

ウォラースタイン博士の研究によれば、「親が離婚を告知した時の子どもの瞬間的反応(概要)」は次のようなものでした。
・離婚によって救われたと表明したり、離婚の決定を歓迎した子どもは10%未満だった。
・DVがあった家庭で、離婚によって救われたと表明したのは、殆どが青年(13~18歳)だった。中には離婚を積極的に進める子どももいた。
・殆どの子どもが、不安や怒りを感じていた。
・75%以上の子どもが激しく反対した
・多くの子どもが涙を流し、離婚の再考を促した。
・年少の子ども(子ども全体の30%を占める)は、離婚の告知を信じていなかった

Q13_2 あなたは、父母が別居をした当時、どのような気持ちでしたか。(MA)
[対象]Q12で「はい」の回答者
   悲しかった           228(37.4%)
   ショックだった         182(29.9%)
   状況が変わることが嬉しかった    67(11.0%)
   ホッとした             87(14.3%)
   怒りを感じた            58( 9.5%)
   割り切れなかった          62(10.2%)
   自暴自棄になった          37( 6.1%)
   将来に不安を感じた         98(16.1%)
   経済的な不安を感じた        68(11.2%)
   恥ずかしかった           45( 7.4%)
   その他               16( 2.6%)
   特になし            111(18.2%)
   回答者数            609

この質問に関する自由記載内容
   離婚というものを知らなかったため、呆然としていた
   ただの引越しだと思っていた
   割りきれた
   びっくりした
   かかわり合いになりたくない
   漠然と不安だった
   予想した通りだと思った
   そういうもんなんや、と子どもながらに思っていた
   状況をよくわかっていなかったので混乱していた
   寂しかった
   めんどくさい
   不満だった(別居親側(祖父母含む)と共に居る選択肢をもらえなかったから)
   困った
   完全には離れていないので、ややこしかった
   わからなかった
   なんとも思わなかった

別居開始時の子どもの気持ち(Q13_2)vs別居直後の子どもと別居親との関係(Q17_2)

 子どもの気持ちのベスト5は、①悲しかった228人、②ショックだった182人、③将来に不安を感じた98人、④ホッとした87人、⑤経済的な不安を感じた68人でした。
 ①②は別居親との関係は普通以上がそれぞれ79%と75%。上表から同居親との関係を直接読み取ることはできませんが、「子どもと同居親との関係>子どもと別居親との関係」なので、別居親との関係が普通以上なら、同居親との関係も普通以上と考えても良いでしょう。そうすると、両方の親との親子関係が良好だった子どもは、父母の別居で「悲しい」という感情を抱くことがわかります。
 ③⑤における別居親との関係は、非常に良い関係(左端)~非常に悪い関係(右端)の範囲で割と満遍なく分布していますが、「普通」(左から4列目)と「あまり良好ではない」(左から5列目)が若干多いように見えます。別居親との関係が良い場合は「別居しようが別居親は支援してくれる筈」、別居親との関係が悪い場合は「別居しなくても別居親は支援なんかしない、別居親との関係が「普通」「あまり良好でない」場合は、「支援が期待できるかも」と子どもが考えていると思います。完全に期待している、全く期待していないの間の淡い期待が抱ける最後のケースでは、別居がトリガーとなって支援が期待できなくなると不安に感じるのかもしれません。
 ④は別居親との非常に悪い関係にある子どもが30%を占めており、「状況が変わることが嬉しかった」(3行目)とほぼ同じ構成率です。別居親は同居親や子どもにとって有害な親と認識されていて、別居を歓迎する心理になったと推測できます。
 ※複数回答(MA)なので、上記のクロス表は横%表(行の合計に対する割合表示)です。

ウォラースタイン博士の研究によれば、「親が離婚を告知した時の子どもの瞬間的反応(詳細)」は次のようなものでした。
・神に助けを求めて祈った
・嘔吐後に母親に抱き着いてキスをして、新しい家電製品をプレゼントするので離婚を諦めるよう母親を宥めた(8歳の女子)。
・「パパにまた会えるの?」と尋ねた
・離婚の告知時は静かにテレビを見ていて、数日後に泣きじゃくった(5歳の男子)
・「死にそうだよ!」と叫びながら家中を走り回った(12歳の男子)
・泣きながら隣家に駆けて行き、助けを求めた(9歳の男子)
・何も言うことはなかった(10歳の女子)
・「気にしてないよ」と言ってやせ我慢をした(11歳の男子)
・絶叫し、怒鳴り、親を罵った(13歳の女子)
・「今頃になって」と親を怒鳴りつけた(11歳の男子)
・「離婚はすべきでない」と親を叱責した(9歳の男子)
・丸一日、部屋に閉じこもった(8歳の男子)

Q14_1 あなたは、父母が別居をするときに、父母に自分の考え・気持ち(本心)を伝えましたか。(SA)
[対象]Q12で「はい」の回答者
   父母の双方に直接伝えた             80(13.1%)
   同居親のみに直接伝えた             79(13.0%)
   別居親のみに直接伝えた              32( 5.3%)
   親族等の第三者を通じて伝えた           18( 3.0%)
   伝えたいことはあったが、伝えられなかった  131(21.5%)
   特に伝えたいことはなかった         204(33.5%)
   覚えていない                  65(10.7%)
   合計                    609(100%)

別居時に親に気持ちを伝えたか(Q14_1)vs別居開始前に親から不仲の説明があったか(Q10_1)

 少なくとも父母のどちらか一方に本心を伝えた子どもは34%で、その90%が別居前に別居理由を聞いていました。
 一方、伝えたいことを伝えられなかった子どもは22%ですが、そのうち54%は別居前に親が別居理由を伝えていません。子どもの知らないうちに家を出て行ってしまったのかもしれません。
 特に伝えたいことはなかったが34%を占めていますが、「言ったところで聴いてもらえない」「私に無関係。好きにすれば」ということでしょう。前者の理由であれば、親は子供に対する姿勢を改めるべきですし、後者の理由であれば、子どもは自分が別居や離婚の影響を真面に受ける当事者であることを認識して欲しいと思います。
 こどもの権利条約では、条約締結国に子どもの意見表明権を保障するように求めています。親の意思や子どもの意思や年齢に拘らず、別居前、離婚前に必ず子どもの声を聴く仕組みが必要だと考えます。
※上記のクロス集計表は横%表(行の合計に対する割合表示)です。

Q14_2 伝えた内容は何ですか。(MA)
[対象]Q14_1で「伝えた」の回答者
   別居しないでほしいと言った              56(26.8%)
   早く別居するように言った               51(24.4%)
   親の考え、気持ちを聞きたいと言った          71(34.0%)
   自分の考えを聞いてほしいと言った           43(20.6%)
   子どもを巻き込まないでほしいと言った         37(17.7%)
   父母の間に入って別居を回避するように
   調整しようとした                   37( 8.1%)
   父母の間に入って早く別居するように調
   整しようとした                    11( 5.3%)
   その他                          7( 3.3%)
   回答者数                      209

この質問に関する自由記載内容
   自分を連れて行ってほしいと
   大元の原因である、父方の親族と縁切りしようと言いました
   環境が変わってつらい
   離婚はせずに、まずは別居してみることを提案した
   覚えていない
   離婚しても、自分(私)が別居親に自由に会いに行っても文句を言わない、という 約束をしてほしい、と言った
   喧嘩するくらいなら別々に暮らした方が楽しく暮らせると言った

別居時に父母に伝えた内容(Q14_2) vs 別居直後の子どもと別居親との関係(Q17_2)

 一番選択された内容は「親の考え、気持ちを聞きたい」34%でした。選択肢の言葉が足りず、「何に対して聞きたい」のかが分からないので、子どもが何をイメージして回答したのかを想定するしかないのですが、別居した後の父母の生活(住居や生計の立て方等)、子どもたちに対する気持ちや将来設計等、子どもたちは思い思いに解釈したものと想定します。人生の岐路ですから、どうしても親の思考内容を確認したいと思うのは当然です。
 子どもが親に伝えた内容が、別居に反対するものと別居に賛同するものとに大きく分かれているため、親子関係の影響があるのか、クロス集計で確認してみました。回避と別居どの内容の場合も、別居親との関係が「普通」以上で70%を占めています。親と関係が良いので、自分の気持ちを伝えることができたことがわかります。但し、「早く別居するように言った」場合では、別居親との関係が「あまり良い関係でない」が20%を占めているのが特徴的です。

Q15_1 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、あなたは父又は母に意見・希望を伝えましたか。(SA)
[対象]Q12で「はい」の回答者
   本心を伝えた             172(28.2%)
   伝えたが、本心ではなかった         60( 9.9%)
   意見・希望はあったが、伝えていない  110(18.1%)
   意見・希望はなかった         181(29.7%)
   覚えていない               86(14.1%)
   合計                  609(100%)

 設問では「伝えましたか」となっているため、どのような文脈の中で子どもが意見・希望を伝えたのかがわかりません。「別居する」という話を親から聞かされて、こども自ら「じゃぁ、母(父)に付いていく」と述べたのか、「どちらと一緒に暮らしたい?」或いは「お母(父)さんはあなたと暮らしたいと思ってるけど、あなたはどう思う?」と親に問われて「母(父)と暮らす」と答えたのか。「あなたは私が面倒をみる」と親に通達されたのかで、その後の子どもの対応は変わるはずです。
 この後の質問や回答から、「どちらと暮らす?」と選択を迫ったケースが多かったように想像されます。子どもの意見を聴かねばなりませんが、決断は親がしなければなりません。「どちらと暮らす?」とか「離婚してもいいかな?」という聞き方は、子どもに離婚の許可を得る(責任の一端を担わせる)質問なので絶対してはいけないとされています。詳しくは、「ひとり親の子育て」(諸富祥彦著,WAVE出版)をご覧頂くのが良いですが、「子どもに決断させる行為は親の責任放棄であり、重すぎる責任を子どもに負わせては絶対にいけません」。
 話をもとに戻します。恐らく、親からの問いかけに答えたのでしょうが、本心を伝えた子どもは28%しかいませんでした。本心を伝えていない子どもが同数の28%(=9.9+18.1)もいました。更に、意見がなかった子どもがほぼ同数の30%いました。
 なぜ、意見がなかった子どもがこれほど多いのでしょうか、また、「本心を伝えた」という「本心」は本当の本心でしょうか?別居して欲しくないという子どもがいることや先行研究の結論を踏まえれば、本当の本心は「両方の親と暮らしたい」だと思います。今の日本の民法では離婚後は両親の一方にしか監護権が認められず(民法819条)、居所を指定する権利は監護権の中の権利の1つであり(民法第821条)、監護親は母親が多いという事実があります。子どもは、民法に関する知識がなくとも、それまでの知見から自分と暮らす親が誰になるのか先読みしていて、意見する意思を放棄している、或いは、意見することを放棄しているのではないでしょうか。

Q15_1SQ 前問で「伝えたが、本心ではなかった」とお答えになりましたが、それはどちらの親に対しての配慮でしょうか。(SA)
[対象]Q15_1で「伝えたが、本心ではなかった」の回答者
   父母の双方に配慮  22(36.7%)
   同居親に配慮    36(60.0%)
   別居親に配慮       2( 3.3%)
   その他          0( 0.0%)
   合計        60(100%)

 別居直後の子どもと同居親、別居親との関係は、ともに良好である子どもが多く(Q17_1,Q17_2)、子どもにしてみれば両方の親に配慮した形で希望を伝えようとする筈です。しかし、両方の親をを傷つけずに希望を伝えられる状況は多くはないでしょうし、傷つけずに済むうまい理由を見つけることも難しいでしょう。その結果、二者択一を迫られれば、今後も長い時間を共有するであろう同居親を、僅かな頻度で短い時間しか交流しない別居親よりも優先して配慮するほうが合理的です。
 そういう意味で、同居親に配慮60%、次に父母双方に配慮37%という回答結果は当然の結論です。

Q15_2 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、あなたの意見・希望どおりになりましたか。(SA)
[対象]Q15_1で「本心を伝えた」「伝えたが、本心ではなかった」「意見・希望はあったが、伝えていない」の回答者
   意見・希望どおりになった     171(50.0%)
   意見・希望どおりにならなかった  111(32.5%)
   意見・希望はなかった         34( 9.9%)
   わからない              26( 7.6%)
   合計               342(100%)

同居親が希望通りになったか(Q15_2)vs別居時の同居親(SC9)vs希望表明の有無(Q15_1)

 本心を伝えた子どもは78%(1行目1列)が希望通りになっています。希望を偽って伝えた子どもは23%(1行目2列)が希望通りに、68%(2行目2列)が伝えた通りになっています。本心を伝えたら希望通りになったかは分かりませんが、結果だけみると、希望通りを伝えれば希望通りの結果を得られる可能性が高いようです。
 希望を伝えなくても希望通りになった子どもは21%(1行目3列)います。希望を偽って伝えたのに希望通りになった子どもとほぼ同じ割合です。一般に、母親が同居親になる比率が父親が同居親になる比率より高いので、母親と一緒に暮らすことを希望しているなら、希望を伝えずとも、希望通り同居親が母親となる可能性が高いようです。 

Q15_3 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、父母等から、あなたに対してあなたの考えを変えようとする働きかけはありましたか。(MA)
[対象]Q12で「はい」の回答者
   同居親から      117(19.2%)
   別居親から      69(11.3%)
   同居親側の親族から  42( 6.9%)
   別居親側の親族から  20( 3.3%)
   きょうだいから    13( 2.1%)
   その他        2( 0.3%)
   なし         388(63.7%)
   回答者数       609

 この質問に関する自由記載内容
   わからない
   父は入院した

同居親の再考提案者(Q15_3) vs 別居後の同居親(SC9) vs 子どもの性別(SC1)

 回答者数609人で「再考の働き掛けなし」が388件。残りの221人が働き掛けを受けましたが、構成率は男性が49%、女性が24%でした。つまり、男の子が女の子の2倍、働き掛けを受けていました。働きかけるのは同居親側が多く、男性、女性ともに同居親と同居親の親族を合わると55%になります。次いで別居親側が25%を占めています。
 同居親は母親が多いので、理由はわかりませんが、母親から再考の働き掛けを、どちらかと言えば女の子よりも男の子にしていることがわかりました。

Q16_1 父母が離婚・別居をするときに、あなたは、誰かに相談することはできましたか(相談相手はいましたか)。(SA)
[対象]Q12で「はい」の回答者
   相談した                   54( 8.9%)
   相談したかったが、適切な人がいなかった 113(18.6%)
   相談できる人はいたが、自分で抱え込んだ    59( 9.7%)
   人には言いたくなかった         113(18.6%)
   その他                     4( 0.7%)
   相談したいことはなかった        266(43.7%)
   合計                  609(100%)

この質問に関する自由記載内容
   小さかったので
   相談相手は居なかった
   よくわからない
   覚えていない

 父母が不仲になったときの回答(Q11_1)とほぼ同じ構成率でした。「相談したいことはなかった」が断トツで多く44%、「人に言いたくない」が19%、結果として相談しなかったのが29%(=18.6+9.7)、相談したのは9%だけでした。
 子どもが気軽に相談できる仕組みが求められています。

Q16_2 誰に相談しましたか。(MA)
[対象]Q16_1で「相談した」の回答者
   同居親          22(40.7%)
   別居親          14(25.9%)
   きょうだい        13(24.1%)
   同居親側の祖父母          5( 9.3%)
   別居親側の祖父母       3( 5.6%)
   同居親の祖父母以外の親族   5( 9.3%)
   別居親の祖父母以外の親族   2( 3.7%)
   学校の先生          9(16.7%)
   塾や習い事の先生       3( 5.6%)
   友人           14(25.9%)
   その他            1( 1.9%)
   回答者数         54

この質問に関する自由記載内容
 恋人

相談相手についても、不仲になったときの相談相手と構成率はほぼ同じです(Q11_2)。
 学校の先生の中にはスクールカウンセラーが入っているか分かりませんが、学校の先生への相談も17%程度で相変わらず低位です。実はウォラースタイン博士は学校の役割に注目していました。博士の次のように課題認識しています。
 子どもが離婚家庭で生活を送る中で、教師は日常的に子どもと接する。このため、教師は子どもの行動や成績の変化を的確に察知していた。ところが、教師は子どもの両親の離婚を知らないことが多かった。その理由はプライベートな情報を家族と共有化する習慣がこの国には存在せず、親は事実を伝えることで子どもが偏見の目で見られるのではないかと思考し、教師は前向きな姿勢はあるがその方面の支援スキルが十分でない上に、プライベートなことに立ち入るべきではないと思考しているからである。結果として子どもは不利益を蒙っている。学校という機能を支援システムとして利用することを期待しているが、支援を利用する能力が子どもに求められるため、必ずしも有効に利用できていない。
 モンスターペアレントと称される親が存在する中、デリケートな内容に触れることはリスクがありますが、親と学校が連携を強化することは、現在の日本においても子どもにとって非常に大切なことだと思います。

子どもの支援状況(ウォラースタイン博士の研究)
・大部分の家庭は同じ住居で安定した生活を送っていたが、近親者の他に子どもの支援となるリソースは殆ど存在していなかった
・子どもの75%は別の地域に住む祖父母、叔父叔母の支援を受けていなかった
・子どもの近所に住む祖父母は子どもにとってかなりの支援になっていた
・学校以外には子どもの生活に関与するの機関は殆どなかった
・子どもの5%未満が教会や牧師の支援を受けていた
・隣人の年配の女性に台所で何時間も話しを聞いてもらった子どももいた
・友人の両親の力を借り、友人の家で長く暮らす子どももいた
・学校のカウンセラーが離婚の件で相談に乗ってくれた
・地域社会や友人から十分な支援を受けた子どもは全体の10%未満だった
・小児科の医師は離婚の事実を知らず、子どもと話しをすることもなかった
・弁護士から面会を求められた子どももいなかった
・学校は離婚が起ころうが通い続けねばならないので、生活リズムが狂うのを防ぎ、家族の困難や苦しむ親から避難する場所として役立った
・子どもは全体として教師から期待されるほどの支援を受けていなかった
・子どもの50%は教師からの全く支援を受けていなかった
・多くの教師が子どもの両親が離婚したことを知らず、子どもから教わることが多かった
・教師は子どもの家庭に関する情報に疎く、プライバシー侵害を躊躇った
・子どもに対し感受性の高い小学校の教師もいたが僅かだった
・託児所と幼稚園の先生は、全体として、幼い子どもの不安を抑えるのに十分なケアを提供することができなかった
・子どもは友人を頼ることで悲しみや恐怖を和らげられると思っていなかった
・子どもは家庭から距離を置き、友人と行動をともにした
・一人っ子は兄弟のいる子どもよりもストレスを感じていた
・子ども自身は兄弟が役立っていると認めなかったが、実際には役立っていた
・年長の兄や姉は末っ子の面倒を見たので、末っ子は兄や姉に保護されていると感じていた

Q17_1 父母の別居直後、あなたと同居親との関係は、どのような状況でしたか。(SA)
   関係は非常に良い   249(24.9%)
   関係は良い      228(22.8%)
   関係はまあまあ良い  108(10.8%)
   普通         283(28.3%)
   関係は良くない      56( 5.6%)
   関係は悪い        24( 2.4%)
   関係は非常に悪い     52( 5.2%)
   合計         1000(100%)

不仲になる前の同居親との関係(Q7_1) vs 別居直後の同居親との関係(Q17_1)

 同居親と子どもとの関係を、不仲になる前と別居直後とで比較しました。不仲になる前の関係は、家庭内の状況を覚えている子ども672人だけが対象となるのに対し、それ以降の親子関係の推移は1000人が対象となることから、それぞれのN数で構成率を算出し、標準化して比較しています。
 不仲になる前に比べ、「とても良い関係」「まあまあ良い関係」が減少し、「普通」が増えていることがわかります。
 普通以上の関係は86.8%で、不仲になる前の87.2%と殆ど変わっていません。

Q17_2 父母の別居直後、あなたと別居親との関係は、どのような状況でしたか。(SA)
   関係は非常に良い  108(10.8%)
   関係は良い     151(15.1%)
   関係はまあまあ良い 95( 9.2%)
   普通        325(32.5%)
   関係は良くない   104(10.4%)
   関係は悪い     55( 5.5%)
   関係は非常に悪い  162(16.2%)
   合計       1000(100%)

不仲になる前の別居親との関係(Q7_2) vs 別居直後の別居親との関係(Q17_2)

 別居親と子どもの関係の変化を、上述した同居親と同様に比較しました。同居親と同様に「とても良い関係」「良い関係」が減少することに加え、「まあまあ良い」も減少し、「普通」が増加しています。同居親と異なり、関係が悪いゾーンは更に悪い方へのシフトしているのが別居親の特徴です。例えば、「とても悪い関係」は10%近く増加しています。
 それでも、普通以上の関係は67.6%で、3.7%悪化しただけで、65%以上でした。

離婚初期の親子関係の変化(ウォラースタイン博士の研究)
 博士は別居直後の子どもと親との関係を次のように報告しています。
 ⑴親の態度
  ・離婚した相手と似ていた子どもは、しばしば離婚した相手の身代わりにされた。
  ・自分と性別の異なる子ども全員を離婚した相手の身代わりにすることもあった。
  ・連れ子を可愛がり、相手との間に生まれた子どもに辛くあたった
  ・幼い子どもを頼り、自分と対等の支援者にように扱った。
  ・これまで大事にしていた子どもよりも新しいパートナーを優先した。
  ・子どもは新しいパートナーに夢中になる親に嫉妬した。
  ・結婚破綻後に初めて親子関係の大切さに気付き、以前よりも子どもに愛情を感じるようになった。
 ⑵子どもと監護親
  ・養育能力が低下し、幼少の未就学児を贔屓してケアするようになった。
  ・母親は少年に無頓着になり、娘の方に愛情を注いだ。
  ・子どものケアのために仕事を休まざるをえない場合に子どもにあたった。
  ・家庭内の些細なことで子どもを怒鳴り付けたり、暴力を振るった。
  ・子どもが自分を嫌うことを恐れ、子どもを甘やかした。
  ・子どもが家庭の決まりを守らなくなり、親に暴行を振るうこともあった。
  ・年長の子どもに、年少の子どもを叱る権限を委譲する親もいた。
  ・子どもが親に対して親の役割を演じた(役割の逆転)。
  ・仕事に忙しく、子どものケアが不足し、子どもの適応が悪化した。
  ・離婚により親の精神衛生状態が悪化し、子どもに影響を与えた。
  ・殆どの母親が離婚後1年で、婚姻期間中と同レベルの養育能力を取戻した。
 ⑶子どもと非監護親
  ・離婚により父子関係は、訪問をするパートタイムの親と訪問を受けるパートタイムの子どもの関係になった。
  ・婚姻期間中は良好だった親子関係が悪化したり、婚姻期間中に悪かった親子関係が改善したり、婚姻期間中の関係は必ずしも継続しなかった。
  ・子どもに対してすべきことをしていない不快感と離婚の罪悪感により、子どもに御馳走をしたり、高価な贈り物を与えた
  ・両親の30%が子どもに対する愛情と忠誠心で競い合っていた
  ・母親の60%が別離1年後も訪問中に中等度以上のストレスを感じ、父親は20%だけがストレスを感じた
  ・結果、子どもの30%が訪問時に両親の怒りに晒された
  ・母親の50%が父親の継続的な父子交流を評価し、注意深く思いやりを持って保護した
  ・母親の20%が父子交流に全く価値を見出さず、父親が来る前に子どもを遠くにやったり、体調不良、宿題で忙しいと主張したり、騒ぎ立てたり、子どもを置き去りにしたりして、父子交流を積極的に妨害した
  ・両者の中間にいる30%の母親は、父親が高額な贈り物をすること、家事から解放された上で子どもと交流している「良いとこどり」に憤慨していた
  ・彼女たちは、父親の作成したスケジュールに難癖をつけ、訪問の約束を忘れ、融通の利かないスケジュールを厳守させて、父親を凹ませ、子どもが父親を見下すように設計した仕掛けを使って多種多様な策を弄した
  ・両親間葛藤に挟まれた子どもは、ストレスに苦しんだり、訪問した父親と別れる際に改めて悲しみを覚えたり、訪問後に体調を崩したり、不安障害を起こした
  ・一部の母親はこれらの症状を利用して、訪問は子どもに有害で中止すべきと主張し、弁護士を呼び、子どもを更に苦しめた
  ・子どもは一緒に暮らす母親の機嫌をとるため、父親の前で良い子であっても母親の前では拗ねてみせることがしばしばあった
  ・事実を知らない母親は父親に訪問を中止するよう脅迫した 
  ・母親から離婚を求められた父親は、自己評価が低下し、父親に会いたがっている子どもを訪問するエネルギーを欠いていた
  ・父親の精神状態を理解できない母子は、父親が子どもに関心を失くしたと理解し、子どもは自己評価を低下させた
  ・離婚を求めた父親は、その罪悪感から婚姻期間中は仲の良かった子どものを訪問したがらないか、頻繁に訪問をするかのどちらかだった
  ・父親の中には再婚すると訪問を止めるものもいた
  ・婚姻中は子どもを気にかけていなかったのに、離婚すると突然子どもに関心をもった父親は、頻繁に訪問をしたが、突然訪問を止めた

Q17_3 父母の別居から2、3年後の時点で、あなたと同居親との関係は、どのような状況でしたか。(SA)
   関係は非常に良い   268(25.8%)
   関係は良い      207(20.7%)
   関係はまあまあ良い  112(11.2%)
   普通         278(27.8%)
   関係は良くない       53( 5.3%)
   関係は悪い         51( 3.1%)
   関係は非常に悪い      61( 6.1%)
   合計          1000(100%)

別居直後の同居親との関係(Q17_1) vs 2,3年後の同居別居親との関係(Q17_3)

 別居から2,3後の子どもと同居親との関係は、別居直後から殆ど変化していませんでした。普通以上の関係は85.5%で、別居時点より1.3%だけ悪化しました。

Q17_4 父母の別居から2、3年後の時点で、あなたと別居親との関係は、どのような状況でしたか。(SA)
   関係は非常に良い   113(11.3%)
   関係は良い      123(12.3%)
   関係はまあまあ良い  108(10.8%)
   普通         305(30.5%)
   関係は良くない       96( 9.6%)
   関係は悪い         59( 5.9%)
   関係は非常に悪い   196(19.6%)
   合計          1000(100%)

別居直後の同居親との関係(Q17_2) vs 2,3年後の同居別居親との関係(Q17_4)

 良い方の関係はそれほど悪化していませんが、悪い方の関係はより悪くなっています。「とても悪い関係」は3%、別居直後より悪化しています。
 普通以上の良い関係は64.9%で、別居直後より2.7%悪化しています。

離婚後18か月の親子関係(ウォラースタイン博士の研究)
 非常に多くの親が、未だ確固とした離婚後の安定を達成していなかったが、日常の親子交流の中で、離婚それ自体に関連する激情は治まっていた。子どもを叱るのが苦手だった母親は、嫌われることを恐れずに家庭のルールの遵守を子どもに求めた。両方の親が、子どもと感情や内面的思考を共有化できるようになり子どもへの愛情が増加した。
 子どもは親に対して、1年半の経験を反映した態度をとり始めていた。監護を担う母親に対する敬意が高まり、信頼が厚くなった。別離当初の母親への怒りの一部は徐々に消え、母子の間に新たな関係が現れ始めた。多くの親が子どもに拒絶されることを心配していたが、子どもは両方の親を愛し続けていた。同時に、未だに親同士が葛藤状態にあるため、両方の親に対し幻滅と滑稽を感じていた。
 母親と違い、殆どの父親は子どもから尊敬や信頼を得ていなかったが、父親に対する極端な態度は緩和された。父親の生活能力に対する懸念も激減した。9歳から10歳の少年は、父親をロールモデルにすることを拒絶する一方で、母親の能力を高評価し、母親に対する忠誠を誇らしげに語った。
 青年期の子どもは、両親が互いに敬意を払って離婚に関する行動を執り、新たな関係を構築することを望んでいた。
 子どもたちは再婚や引っ越しで再び家庭に困難が起こるのではないかと戦々恐々とし、両方の親に注意の目を向け続けていた。

Q18 父母の別居は、あなたの金銭面の生活状況に、どのような影響がありましたか。(SA)
   別居により、生活水準・経済状況は
   苦しくなった            204(20.4%)
   別居により、生活水準・経済状況は
   若干苦しくなった          201(20.1%)
   別居により、生活水準・経済状況は
   ほとんど変わらなかった       244(24.4%)
   別居により、生活水準・経済状況は
   むしろ好転した              73( 7.3%)
   わからない             278(27.8%)
   合計               1000(100%)

 離婚をすると、これまで共有あるいは共用できていた事や物が共有できなくなるため、一般に生活は厳しくなります。特に、同居親は、子どものケアと仕事の両立が求められので、時間的制約が生じ、就職を望む者にとっては就職先、既に就職していた者にとっては就業時間が制約され、収入を得られない、あるいは収入が減少する事態に陥ります。
 ですから、離婚以前より生活水準が悪化したと感じた子どもが40%いたことは理解できます。もっと多いと想定していただけに、寧ろ以外な構成率でした。
 殆ど変わらなかったが24%、寧ろ好転したが7%。先述したメカニズムからすると、同居親の収入が離婚後に増えるケースは考えづらいのですが、現実に存在します。そうすると、婚姻中は別居親が要因となって貧困生活を余儀なくされていたが、離婚によって搾取から解放されたケースだと想定されます。

離婚による経済的変化(ウォラースタイン博士の研究)
 離婚は共有財産を父母2人の間で等しく分割するため、豊かさの程度がどうであれ、家族全員の生活水準は低下する。同居親は、僅かな収入で自分と子どもが暮らさねばならないという大きなストレスを感じる。この収入減と経済的不安定に加え、元配偶者と暮らしぶりを比較していた。
 男性の40%と女性の25%は裕福だったので生活水準の変化はなかった。男性の60%と(父親の87%が養育費を定期的に支払っていたのに拘らず)女性の75%は顕著に悪化した。男性の25%と女性の30%の生活水準低下は深刻で、女性の7%は生活保護受給者になった。

Q19 父母の別居後に、別居親があなたの生活費(養育費)を支払うことについて、父母間で取り決め(約束)はされていましたか。(SA)
                合計    父親   母親
   取り決めがされていた  246(24.6%)   42(19.6%) 204(26.0%)
   取り決めはなかった   298(29.8%)   81(37.9%) 217(27.6%)
   わからない       456(45.6%)   91(42.5%) 365(46.4%)
   合計         1000(100%)  214(100%) 786(100%)

 厚生労働省「全国ひとり親世帯調査(平成28年度)」によれば、養育費の取決めをしている家庭は、父子世帯で20.8%、母子家庭で42.9%となっています。
 今回調査の取決め有無は、子どもが自分で確かめたのか、それとも親から聞いただけなのかが分からなため、その正確さは分かりませんが、子どもから取決め有無を問われた親は正しく回答したと仮定してみましょう。更に、厚生労働省の調査に親が正しく回答していると仮定すると、今回調査と厚生労働省の「取り決めあり」の比率が近しいかどうか比較して、次のように整理できます。
 父子世帯:「わからない」は、ほぼ「取決めをしていない」に該当する
 母子世帯:「わからない」は、「取り決めをしていない」「取り決めをしていた」が半々で構成されている
 父子世帯の父親は、取決めがあった場合は、その旨を子どもに正確に伝え、取り決めがなかった場合は伝えていない。母子世帯の母親は、取り決めがあった場合でもなかった場合でも積極的にその事実を子どもに伝えていないという推測が可能です。

Q20 別居親は、父母の離婚・別居後も、あなたの生活費を支払っていましたか。(SA)
                  合計        父親   母親
   きちんと支払われていた    168(16.8%)    35(16.4%) 133(16.9%)
   当初は支払われていたが、その
   後に支払われなくなった    140(14.0%)    35(16.4%) 105(13.4%)
   時々は支払われていた        68( 6.8%)     11( 5.1%)   57( 7.3%)
   全く支払われていなかった    189(18.9%)   37(17.3%) 152(19.3%)
   支払い状況はわからない     435(43.5%)   96(44.9%) 339(43.1%)
   合計             1000(100%) 214(100%)  786(100%)

 厚生労働省「全国ひとり親世帯調査(平成28年度)」によれば、養育費の受給状況は、次のようになっています。
 父子世帯:現在も受けている 3.2%,受けたことがある 4.9%,受けたことがない86.0%,不詳 5.8%
 母子世帯:現在も受けている24.3%,受けたことがある15.5%,受けたことがない56.0%,不詳 4.2%
 この調査の対象となっている家庭は必ずしもひとり親世帯ではありませんが、厚生労働省のデータと比較してみましょう。
 同居親が母親の場合、別居親である父親が養育費を支払ったことがあるケースは、37.6%(=16.9+13.4+7.3)なので、厚生労働省データの養育費を受け取ったケース39.8%(=24.3+13.5)とほぼ等しく、「支払い状況が分からない」43.1%は別居親が支払わずにいたケースに該当すると思われます。
 同居親が父親の場合、別居親である母親が養育費を支払ったことがあるケースは、37.9%(=16.4+16.4+5.1)なので、厚生労働者データの養育費を受け取ったケース8.1%(=3.2+4.9)と30%もの差があります。女性の別居親が男性の別居親より経済環境が良いとは考えにくいことから、子どもが事実を正しく認識していない可能性があります。
 母子世帯の母親は養育費を受け取っていなかったことを積極的に子どもに伝えることはなかった。父子世帯の父親は養育費を受け取っていなかったことを子どもに伝えなかっただけでなく、母親から受け取っていたと子どもに伝えていた者もいたという推測ができます。

Q21_1 あなたは、父母の離婚・別居後、未成年の間に、金銭面で困ったことがあったときに、誰かに相談しましたか。(SA)
   相談した                       71( 7.1%)
   相談したかったが、適切な人がいなかった   127(12.7%)
   相談できる人はいたが、自分で抱え込んだ     59( 5.9%)
   人に言いたくなかった           141(14.1%)
   その他                    6( 0.6%)
   相談したいことはなかった          596(59.6%)
   合計                   1000(100%)

この質問に関する自由記載内容
   わからない
   したいかどうか以前のことで、適切な人がいなかった
   特に困らなかった
   困った事はなかった
   相談する相手は居なかった。同居親は仕事でほぼ家に居らず、同居親の両親(同居 親側の祖父母)はぐうたらな姉だけを甘やかして自分(私)にはとことん理不尽 なことしか言わなかったから。
   困ったことはない

 最も多かった回答「相談したいことはなかった」が「金銭面で困ったことがなかった」を意味するのか、「金銭面で困ったことがあったが、相談するほどではなかった」を意味するのか判然としませんが、いずれにせよ、それほど金銭面で困らなかったという意味だと解釈しました。そうすると、残り40%は金銭面で困っていたわけですが、困った内容や理由(例えば、人に言えないような事情に起因しているとか)が不明だと、考察が困難です。しかし、質問Q21_2に対する回答は「親に相談した」が最も多かったことから、一般に親が金銭面の負担をすることが多い「進学や留学にあたっての学費や生活費」「資格取得に必要な教材等の購入費用や教習費用」を相談したい内容であるという前提をおき、考察していきます。
 質問Q21_1の回答に戻ります。上述した前提に立ちますと、回答「適切な人がいなかった」13%は、子どもの中で親が相談するのに不適切な人と結論づけられていたことを意味します。子どもが金銭面で困っているのですから、同居親の家庭は家計が厳しく、別居親の方も家計が厳しいか、別居親との関係が悪いものと想定されます。また、回答「自分で抱え込んだ」6%は、両方の親の家計が厳しく、相談を気兼ねしたと想定されます。回答「人にいいたくなかった」14%は、親に頭を下げて支援してもらうのが嫌だったか、金銭面で困った理由が教育や資格に関するものではなく、人に言えないような理由だった可能性もあります。
 総括しますと、金銭面で困っている子どもが40%いることに対処するために、養育費を必ず受給できる仕組みの構築は必須であり、補足として、離婚後も連絡を取り合える親子関係に資する対策、離婚家庭に限らない教育支援制度の充実が必要だと思います。

Q21_2 誰に相談しましたか。(MA)
[対象]Q21_1で「相談した」の回答者
   同居親       42(59.2%)
   別居親       19(26.8%)
   きょうだい       9(12.7%)
   同居親側の祖父母  12(16.9%)
   別居親側の祖父母    4(  5.6%)
   同居親側の親族     2(  2.8%)
   別居親側の親族     5(  7.0%)
   学校の先生       4(  5.6%)
   塾や習い事の先生    4(  5.6%)
   友人          8(11.3%)
   その他            2( 2.8%)
   回答者数         71

この質問に関する自由記載内容
   同僚
   恋人

 それぞれの相談先にどのような相談を持ち掛けたか分かりませんが、学習や教材費に起因する金銭面の相談に関しては、次のような相談内容と相談先が想定されます。
 ・進学すると金が稼げなくなるが許可してくれるか(親、他の親族全て)
 ・進学したいが学費を支援してくれるか(親、他の親族全て)
 ・学費が必要だが進学した方が良いか(学校の先生、塾や習い事の先生)
 ・学費も考慮したお薦めの進学先(学校の先生、塾や習い事の先生)
 ・進学に際し学費支援制度がないか(学校の先生、塾や習い事の先生)
 ・親が進学に反対だがどうしたら良いと思うか(友人)
 相談先は同居親が1番で59%、別居親が2番で27%となっています。親の役割の視点からは「親>親以外の親族」、生活への影響度からは「同居する人>同居しない人」、社会的関係からは「親を含む親族>他人」という相談順番になるのは自然です。関係からすれば、同居親への相談が100%ではなく59%で、別居親も低位の27%である理由は、相談に乗ってもらえると期待できる親だけに相談したということでしょう。経済的支援は気持ちだけでは実施できないので、子どもなりに見極めているのだと思います。

Q22_1 同居親は、あなたの金額面の相談に対応してくれましたか。(SA)
[対象]Q21_2で「同居親」の回答者
   誠実に対応してくれた        32(76.2%)
   不十分ながら対応をした         8(19.0%)
   話を聞いたが、何もしてくれなかった    1( 2.4%)
   話を聞いてくれなかった          0( 0.0%)
   その他                  1( 2.4%)
   合計                 42(100%)

「不十分ながら対応をした」を含め対応してくれた同居親は95.2%で、かなり高い対応率でした。同居親に相談した子どもは59.2%ですから、子どもは相談に乗ってくれた後に対応してくれる親か否かを冷静な目で判断し、対応してくれそうな親に相談した結果、対応率が高くなったと推定されます。

Q22_2 別居親は、あなたの金銭面の相談に対応してくれましたか。(SA)
[対象]Q21_2で「別居親」の回答者
   誠実に対応してくれた         15(78.9%)
   不十分ながら対応をした           1( 5.3%)
   話を聞いたが、何もしてくれなかった    2(10.5%)
   話を聞いてくれなかった           0( 0.0%)
   その他                   1( 5.3%)
   合計                  19(100%)

「不十分ながら対応をした」を含め対応してくれた別居親は84.22%で、かなり多かったのですが、同居親に比べ10%低い値になっていました。別居親に相談した子どもは26.8%。厳選した別居親だけに相談したものの、同居親よりも対応率が低位だった理由は、一緒に過ごす時間が少ないため、子どもの予測精度が低くなったこと、別居親は同居親のように始終顔を会わせないため支援を断りやすいのかもしれません。

Q23_1 あなたは、父母の別居直後、別居親と自由に連絡をとることができましたか。(SA)
             合計
   いつでも連絡をとれた   358(35.8%)
   同居親に言えば、連絡が
   とれた          163(16.3%)
   自由に連絡をとることは
   できなかった       195(19.5%)
   連絡を取りたくなかった  284(28.4%)
   合計          1000(100%)

別居直後の別居親との連絡可否(Q23_1) vs 別居時点の別居親との関係(Q17_2)

 オリジナルは1000人を対象にしていますので、別居時点で3歳未満の子どもが分析に含まれています。もちろん、同居親と別居親が隣近所に住んでいれば、子どもがお散歩ついでに別居親とアクセスすることも可能でしょうが、やはり自分の携帯電話を持ち始める小学校高学年からを対象にした方が、データとしての価値が高いと考え、対象を小学校高学年以降525人に絞り再分析したのが上表です。
 「いつでも連絡をとれた」が43%。想像していたよりも、連絡をとろうと思えばとれる状態が確保されていました。「連絡をとりたくなかった」は子どもの意思の有無であり、連絡する手段の有無とは別なので、ここのN数は「いつでも連絡をとれた」にカウントすべきかもしれません。仮に加算すると80%近くが連絡手段が確保されていたことになります。
 課題となるのは黄色の網掛け部分は、別居親とのアクセスに同居親の干渉が可能なケースです。子どもが別居親とだけ相談したいこともあるでしょうから、子どもと別居親がフリーアクセスできるチャンネルが必要だと思います。

Q23_2 あなたは、父母の別居から2,3年後の時点で、別居親と自由に連絡をとることができましたか。(SA)
   いつでも連絡をとれた   351(35.1%)
   同居親に言えば、連絡が
   とれた          168(16.8%)
   自由に連絡をとることは
   できなかった       187(18.7%)
   連絡を取りたくなかった  294(29.4%)
   合計          1000(100%)

別居2,3年後の別居親との連絡可否(Q23_2) vs 別居2,3年後の別居親との関係(Q17_4)

 子どもの別居親への連絡可否の状態は、別居から2、3年経過しても、別居時点と殆どかわっていないことが、上2表の比較からわかりました。

Q24_1 父母別居後のあなたと別居親との交流(実際に会う、電話する、メールやラインをする、手紙を書く等)について、父母間で取り決め(約束)はされていましたか。(SA)
               合計    父親   母親
   取り決めがあった   122(12.2%)  38(17.8%)   84(10.7%)
   取り決めはなかった  514(51.4%) 115(53.7%) 399(50.8%)
   わからない      364(36.4%)  61(28.5%)  303(38.5%)
   合計        1000(100%) 214(100%)  786(100%)

 厚生労働省「全国ひとり親世帯調査(平成28年度)」によれば、面会交流の取決めをしている家庭は、父子世帯で27.3%、母子家庭で24.1%となっています。今回調査は、ひとり親世帯以外も含まれていますが、そのまま単純比較します。
 今回の調査(子どもの回答)と厚生労働省(親の回答)とを比較すると、養育費の場合と違い、父子世帯、母子世帯ともに、「取り決めがあった」が親の回答よりも10%ほど低くなっています。「取り決めはなかった」も両世帯で20%ほど低くなっています。
 この事象は、回答者の違いに起因すると推測します。つまり、今回調査は子どもの回答なので、取り決め有無は同居親からの伝聞に由来することが想定され、面会交流を実施していなかった場合、そもそも「取り決めはなかった」と子どもに伝えるか、曖昧なままにしておく可能性があるからです。
 実際、Q24_3で取決めの履行率を比較しますが、厚生労働省の実績より履行率が「高く」なっているので、この想定は十分あり得る事と思います。

Q24_2A 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、あなたの希望・意見を伝えましたか。(SA)
[対象]Q24_1で「取り決めがあった」の回答者
   本心を伝えた            46(37.7%)
   伝えたが、本心ではなかった     34(27.9%)
   意見・希望はあったが、伝えていない 20(16.4%)
   意見・希望はなかった        16(13.1%)
   覚えていない              6( 4.9%)
   合計               122(100%)

 別居時と同様に、両親の葛藤の影響で、自分の本心を親に伝えることができない子どもが44.3%存在しました。
 面会交流の取決め内容は、一度決定すると、内容見直しに時間を要し、当初決定した頻度や時間、場所が固定化してしまう懸念があります。当初計画から子どもの希望に最大限沿った計画にするよう、子どもの考えを聴くことが重要です。

Q24_2B 前問で「伝えたが、本心ではなかった」とお答えになりましたが、それはどちらの親に対しての配慮でしょうか。(SA)
[対象]Q24_2Aで「伝えたが、本心ではなかった」の回答者
   父母の双方に配慮  15(44.1%)
   同居親に配慮    19(55.9%)
   別居親に配慮      0( 0.0%)
   その他         0( 0.0%)
   合計         34(100%)

 別居に至る夫婦は高葛藤状態にあり、「相手と関わりたくない」という理由で養育費の取決めをしない同居親も存在します。そのような親からすれば、養育費以上に別居親と細々としたスケジュール調整が必要な面会交流は、実施せざるを得ないなら必要最低限にしたいという思考になります。
 一方、子どもが両方の親との交流を望んでいることを知っている別居親は、面会交流を最大限拡充したいという思考になります。
 子どもは両方の親が考えていることを理解しているので、板挟みになり、両方の親が妥協できる交流内容を自分なりに考えて提案します。
 勿論、両方の親が納得するような内容を見出せないケースの方が多く、その場合は、子どもの生殺与奪を握る同居親の側にたった提案をせざるを得ません。
 今回調査のこの回答は、上述した子どもの思考プロセスを見事に示した結果といえるでしょう。
 対策としては、科学的根拠に基づいて交流内容をテンプレート化し、それを基にそれぞれの子どもに合わせてアレンジを加える仕組み(養育費算定表を利用した養育費決定のような仕組み)を構築すべきだと思います。そうすることで、子どもに「指示された交流内容を実践するだけ」というエクスキューズを用意してあげられるので、精神的負担を軽減できると思います。 

Q24_2C 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、取り決めの内容はあなたの希望どおりになっていましたか。(SA)
[対象]Q24_1で「取り決めがあった」の回答者
   意見・希望どおりになった    62(50.8%)
   意見・希望どおりにならなかった 34(27.9%)
   意見・希望はなかった      14(11.5%)
   わからない           12(9.8%)
   合計             122(100%)

取決めで要望をした結果(Q24_2C) vs 親に伝えた内容(Q24_2A)

 本心を伝えたケースでは80%が取決めに反映されていました。希望とは違う内容を伝えたケースでは、伝えた内容とは別の内容(結果、希望通りの内容)が53%、取決めに反映されました。
 希望を伝えないケースは半分以上55%が希望通りになりませんでした。
 結果を見ますと、ダメ元で意見・希望を伝えた方が、希望通りになる可能性が高いように思われます。

Q24_2D 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、父母等から、あなたに対してあなたの考えを変えようとする働きかけはありましたか。(MA)
[対象]Q24_1で「取り決めがあった」の回答者
   同居親から      59(48.4%)
   別居親から      22(18.0%)
   同居親側の親族から  20(16.4%)
   別居親側の親族から    6( 4.9%)
   きょうだいから      6( 4.9%)
   その他          1( 0.8%)
   なし         35(28.7%)
   回答者数      122

この質問に関する自由記載内容
  働きかけはなかったが自分から会いたくない意思があった

 働き掛けの内容が分かりませんが、恐らく「交流する必要はない」「交流頻度や時間が多すぎる」という面会交流内容を縮小する方向ではないかと想定されます。
 日本では未だに離婚を相手方の親族を含めた縁切りであると理解している年配者も多いため、同居親側の親族からは、特段理由もなく面会交流をしないよう勧告があったのではないかと推測します。
 また、同居親からは、養育費を払っていないとか、過去に自分になされた酷い行為と異性関係とかを理由に別居親との交流は子どものためいなからないから止めるべきと勧告しているのかもしれません。

Q24_3A 別居親とあなたとの交流は取り決めどおりに実施されていましたか。(SA)
[対象]Q24_1で「取り決めがあった」の回答者
                   合計   父親  母親
   取り決めどおりだった      71(58.2%)  16(42.1%) 55(65.5%)
   最初は取り決めどおりだった
   が、次第に守られなくなった   41(33.6%)  19(50.0%) 22(26.2%)
   全く守られてなかった      9( 7.4%)    3(7.9%)      6(7.1%)
   その他             1( 0.8%)    0( 0.0%)     1(1.2%)
   合計             122(100%)  38(100%)  84(100%)

この質問に関する自由記載内容
  働きかけはなかったが自分から会いたくない意思があった

 この回答の「次第に守られなくなった」「全く守られてなかった」が、「次第に面会交流の内容が縮小した」ことを指すのか、「面会交流自体を実施していない」ことを指すのかが分かりませんが、「実施していない」と解釈します。
取決めがあった子どもが最後まで取決め通りに実施した率、つまり、最終取決め履行率は、父子世帯で42.1%、母子世帯で65.5%でした。
最初は取決めが守られていた場合も取決め通りに実施したとして整理する、当初取決め履行率は、父子世帯で92.1%、母子世帯で91.7%でした。
 ここで、厚生労働省の「平成28年度 全国ひとり親世帯調査」のデータを見て比較みましょう。面会交流の実施状況の「うち、面会交流の取り決めをしている世帯」欄から数字を拾うと、父子世帯の当初取決め履行率は73.8%、最終取決め履行率は59.5%、母子世帯の当初取決め履行率は75.5%、最終取決め履行率は53.1%でした。
 因みに、「全国ひとり親世帯調査」では次のような項目で面会交流を実施しない理由を整理しています。
                  父子世帯   母子世帯
 相手が養育費を払わない        1(6.7%)    72( 6.1%)
 相手が面会交流の約束を守らない    2(1.3%)    11(  0.9%)
 子どもが会いたがらない      22(14.6%)   116( 9.8%)
 塾や学校の行事で子どもが忙しい    1(  0.7%)    10( 0.8%)
 面会交流によって子どもが精神的
 又は身体的に不安定になる      13( 8.6%)    44( 3.7%)
 相手に暴力などの問題行動がある     2( 1.3%)    14( 1.2%)
 相手が面会交流を求めてこない     17(11.3)  160(13.5%)
 親族が反対している          3( 1.3%)    10( 0.8%)
 第三者による面会交流の支援が
 受けられない             -  (-)    -  (-)
 相手が結婚した           8( 5.3%)   27( 2.3%)
 その他              14( 9.3%)   105( 8.8%)
 不詳               68(45.0%)  620(52.1%)

面会交流取決め率(Q24_1),取決め履行率(Q24_3A)

Q24_3B 取り決めどおりの交流がなされなかったのは、原因はなんですか。(MA)
[対象]Q24_3Aで「次第に守られなくなった」「全く守られてなかった」の回答者
   同居親がいやがった           9(18.0%)
   同居親の時間がなかった       17(34.0%)
   別居親の交流する気がなくなった     8(16.0%)
   別居親の時間がなかった         9(18.0%)
   別居親の住んでいるところが遠かった   5(16.0%)
   あなたが交流する気がなくなった     9(18.0%)
   あなたの時間がなかった         6(12.0%)
   その他                 4(  8.0%)
   回答者数               50

この質問に関する自由記載内容
   会いたくないのに連絡してくる
   わからない
   こちらが同居親に内緒で別居親に交流しに行ったから
   同居親の両親(同居親の祖父母)が嫌がり、別居親の所に遊びに行った日には自分 (私)の夕飯を用意してくれない・理不尽な怒りをぶつけてくる等の精神的嫌がらせをされた。

 取決めが守れなかった理由を、同居親、別居親、子どもに分けると、同居親26、別居親22、こども15となり、当事者全員に課題があることがわかりましまた。
 面会交流を継続していくには、①同居親が面会交流の意義を理解し協力的であること、②別居親が別居親や子どもの要望等に対し、冷静かつ柔軟な対応ができること、③子どもは自分の生活スタイルに合った交流内容を提案する、といった家族のメンバーそれぞれの前向きた姿勢が必要だと思います。
 また、取決め通りの履行をするために、罰則を与える必要もあるでしょう。裁判所で決めた取決めは本来法的効力を有します。なので、「交流させたくない」「交流したくない」という自分都合の不履行は許されるべきではありません。

Q25_1 あなたは、父母の別居の直後、別居親とどのくらいの頻度で会いたいと思っていましたか。(SA)
   毎日会いたかった         70( 7.0%)
   週に2,3回くらい会いたかった  53( 5.3%)
   週に1回くらい会いたかった    61( 6.1%)
   月に2回くらい会いたかった    23( 2.3%)
   月に1回くらい会いたかった    54( 5.4%)
   気が向いたときに会えればいいと
   思った              179(17.9%)
   あまり会いたいと思わなかった   121(12.1%)
   全く会いたくなかった       201(20.1%)
   覚えていない           238(23.8%)
   合計              1000(100%)

子どもが希望する別居親との交流頻度(Q25_1) vs 別居時の子どもの年齢層(Q2)

 上表を見て分かるように「覚えていない」が多いため、「覚えていない」を分母から除いた構成率を各セルの下段に表示しました。以下のコメントの構成率は、下段の方になります。
 毎日会いたいが年齢層に関わらず、10±5%を占めています。両親が不仲になり別居や離婚に至っても、子どもは年齢に関わらず、別居親との交流を望んでいたことがわかります。一方で、別居時点から別居親に会いたくないと考える子どもが一定数存在していました。「あまり会いたいと思わなかった」「全く会いたくなかった」の合計が年齢層に関わらず、30~50%を占め、年齢が高い方が構成率が大きくなっています。
 年齢層別にみると、3才未満の子どもは毎日会いたいの構成率が14%、毎週2、3日も16%と非常に高くなっています。
 総括すると、一定数の別居親を拒絶する子どものを除き、子どもは、両親が離婚をしても、婚姻期間中と同じ頻度で別居親と会いたいという気持ちを持っていることが分かりました。

Q25_2 会いたいと思わなかった理由は何ですか。(MA)
                    全回答  嫌いと重複
   別居親とは当然会えなくなるもの
   だと思っていた          44(13.7%)    6(  4.8%)
   同居親に対してひどいことをした  69(21.4%)  37(29.6%)
   自分に対してひどいことをした   61(18.9%)  33(26.4%)
   同居親が望まない         35(10.9%)    5(  4.0%)
   嫌いだった            125(38.8%)   -
   あなたの生活態度、勉強等につい
   てうるさく言う          15( 4.7%)     8(  6.4%)
   あなたの生活費を払わなかった   38(11.8%)  19(15.2%)
   あなたに関心や配慮がなかった   58(18.0%)  24(19.2%)
   親子としての関係がほとんどなか
   った               73(22.7%)  35(28.0%)
   同居親への気づかいがなかった   37(11.5%)  16(12.8%)
   親の争いに巻き込まれそうだった  34(10.6%)    9(  7.2%)
   その他              26( 8.1%)     1(  0.8%)
   回答者数             322(100%)  125(100%)

この質問に関する自由記載内容
   興味がない
   会う理由がないから
   覚えていないから
   興味がなかった
   物心つく前だったので、その人の記憶がない
   とくになし
   もう家族じゃないと言われたから
   覚えていない
   誤解していた
   捨てられたと思った
   特に何もないが会うのが面倒だった
   同居親の気持ちを考えた
   怖かった
   興味がなかった
   怖かったから
   記憶がない
   人として苦手だから
   なんとも思ってなかったから
   生活環境に満足していて覚えていなかったし会いたいと思わなかった
   精神疾患だから
   どうでもよかった
   特になし
   めんどくさいから
   関心がなかった
   興味がない
   あまり興味がない

別居親と会いたくない理由(Q25_2) vs 別居時の子どもの年齢層(Q2) 

 別居親と会いたくない理由は、「嫌いだから」が最も多く39%でした。しかし、「嫌いだから」は理由ではなく、結果です。何故嫌いになったのかがわかるように、「嫌いだった」とラップしている項目を集計した数字が、「嫌いと重複」の下の数字となります。「同居親にひどいことした」「自分にひどいことをした」ために嫌いになったことがわかります。
 全回答に戻り、「嫌いだから」を除いて評価すると、会いたくない理由の上位3つは、①親子としての関係が殆どなかった、②同居親に対して酷いことをした、③自分に対して酷いことをした、となっています。
 両親の婚姻期間中から別居親(多くが父親)不在の家庭では、離婚したところで今までと同じ別居親不在の状態が継続するだけなので、会うニーズを感じないということです。こどもの感情はもっともに感じます。しかし、将来において助けになることもあるでしょうから、細々とでも関係を繋いでおくことは大切に思います。一方で、親としての役割を果たしてこなかった親に対し、せめて離婚後は親としての役割を果たすよう教育をすることも重要と考えます。
 次に、暴力に関する件ですが、自分への虐待は勿論のこと、自分の世話をしてくれる親への暴力に激しい嫌悪感を抱くのは当然です。家族に対して暴力を振るう人が離婚後も同居親と子どもに関わらないようにする仕組みが必要です。現在、離婚後の親権制度が議論されていますが、親権制度の如何に関わらず、アセスメントに基づいたDV認定を行い、それを各種の制度に活用していくことが大切だと考えます。
 また、上位にはランキングされていませんが、「離婚したら会えないもんだと思っていた」という理由があります。これは非常に問題です。1994年に日本が批准した国連子どもの権利条約は、第9条で親子不分離を謳っています。子の最善に利益を損なう場合を除き、離婚後も親子関係の維持に努めることは、世界の常識です。離婚後単独親権制度の「1つの家」という概念が染みついた日本では、年端のいかない子どもでも、両親間で争いが生じた場合、敗者は家を去り、2度とその家に暮らす者と会うことができないことを肌感覚で理解しているのかもしれません。大人は、このような誤った思考の社会を変えていかねばなりません。

Q26_1 父母の別居後、別居親とどのような方法で交流をしていましたか。(MA)
   別居親の家に泊まる      189(18.9%)
   別居親が泊まりに来る       67( 6.7%)
   別居親と一緒に旅行に行く     79( 7.9%)
   昼間に会う          254(25.4%)
   ネットや携帯でのビデオ通話    35( 3.5%)
   電話             201(20.1%)
   メール            157(15.7%)
   SNS              47( 4.7%)
   あなたの写真や成績表を送る    23( 2.3%)
   その他              18( 1.8%)
   なし             413(41.3%)
   回答者数          1000

この質問に関する自由記載内容
   月に一回食事をした
   別居親の経営しているお店にいく
   夕食
   別居親の家に遊びに行く
   学校のイベントに来てもらう
   学校から帰宅時に家に寄っていく
   別居親の家に遊びに行く
   別居親と一緒に日帰り旅行の様な感じでお墓参り
   ご飯食べ
   同居親と会いに行く
   別居親から手紙が送られてきた
   自分(私)が希望する場所に買い物に連れて行ってもらう
   家事はしに来た
   お見舞い
   小さい時で覚えてない
   手紙
   食事
   別居親の母、その母方の祖母の家に泊まりに来る

 交流なしがダントツで41%、交流ありの中では昼間に会う25%、電話20%、別居親の家に泊まる19%、メールが16%でした。
 「別居親の家に泊まる」が予想していたよりも多く実践されていました。
電話やメールは交流がないよりはマシですが、ウィルス対策等により面着の交流ができない場合の代替手段の位置づけだと考えます。
 また、写真や成績表送付が「交流」に挙げられていますが、現在の裁判所運用では「間接交流」と称する立派な交流でしょうが、世の中一般の常識に照らせば交流ではありません。スマホ等のツールが発達した現在、お金をかけずに安全を確保したリモート交流が実施できるので、これらのツールを積極的に活用すべきだと思います。寧ろ今の時代、裁判所の「手紙、写真等の送付」という交流命令は、交流妨害ではないでしょうか。

Q26_2 【面会交流ありベース】父母の別居後、別居親とどのような頻度で交流をしていましたか。(SA)
[対象]Q26_1の「なし」413名&ほか123名 以外の回答者
  不定期         193(41.6%)
  半年に1回未満       37( 8.0%)
  半年に1回程度       47(10.1%)
  2,3か月に1回程度    60(12.9%)
  月1回程度         56(12.1%)
  月2回程度         26( 5.6%)
  週1回程度         31( 6.7%)
  週2回以上         14( 3.0%)
  合計          464(100%)

別居後の別居親との交流頻度(Q26_2) vs 別居直後の子どもの希望する頻度(Q25_1)

 実際に別居親と交流した頻度と別居時点で子どもが希望していた交流頻度を比較して、子どもの要望していた頻度に近いセルに網掛けをしました。
 実績は、頻繁な交流頻度を望んでいた子どもにとって満足いくものではなかったでしょうが、交流拒絶を望んでいた子どもにとっては大変満足いく結果になっていました。毎日の交流を望んでいた子どもの23%は、毎日どころか不定期交流になっていることに留意して下さい。
 今日の離婚後における別居親との交流は、子どもの希望は反映されずに、頻度の低い交流となっていて、結果として別居親との交流を望まない子どもと両親にとっては都合の良い結果になっている。と言えそうです。

別居後の別居親との交流頻度(Q26_2) vs子どもの感想(Q26_3)[交流希望別]

 同居親や自分自身が辛い思いをした「親に会いたいと思わない」子どもは、現在の相場といわれる「月1回」の交流頻度で良かったと感じているのに対し、別居親とある頻度で会いたいと思う子どもは「月1回」では足りないと感じていました。
 このことは、面会交流を機械的に履行するのではなく、子どもの意見をしっかり聴いて、それを反映した交流をする、そういった思考と仕組みが必要なことを示しています。

 現在アメリカでは、別居親は年間100日~120日の面会交流(訪問と呼びます)が認められているそうです。月1回2時間の日本とは随分違います。では、アメリカは以前からこのような状況だったのでしょうか。今から40年以上前のウォラースタインの博士の研究結果を見てみますと、離別から5か月後の時点で、子どもの3分の2が平均して月2回の「相当程度の」訪問を受けていたそうです。
 ウォラースタイン博士の研究は、1970年代半ばのアメリカが離婚後単独親権制度であった時期に実施され、研究対象の家庭の殆どが、母親が監護権を持った同居親で、父親が訪問権を持った別居親でした。現在の日本と極めて似た状況です。それにしても、この「相応程度」は何に基づいて決めていたのでしょうか?博士によれば、この訪問条件は1960年代後半と変わっておらず、労働人口に占める一人親の割合が60%を超えていながら、監護形態と訪問条件が変わらない理由を以下のように分析しています。
  ⑴性別役割分業時の訪問条件が慣習として根付いていた
  ⑵世間は監護を母親の役割と見做し、母親は世間の目を意識した
  ⑶離婚時の勝敗に拘る元夫婦は、子どもの監護権と訪問条件も戦利品と見做していた
  ⑷弁護士にとって依頼主はあくまで親であり、子どもの意見を聴く義務はなかった
  ⑸判例主義の裁判所は先例にならった命令を出し続けた
 如何ですか?日本の現状と似ていませんか?日本では月1回2時間が多いのですが、ネット上には以下のような理由が流布されていました。
  ⑴初めて面会交流を認めた昭和39年の東京家裁の判決が月1回だった
  ⑵面会交流調停の期日間隔が月1回で、期日間に試行面会をしたため
  ⑶面会交流支援機関の要員上、月1回2時間が限界であるため
  ⑷月1回2時間が相場とされていて、調停の落とし所を相場にするため
 これらの理由が本当か否か分かりませんが、40年前のアメリカと同様に、科学的根拠に基づいていないことは確かなようです。

Q26_3 父母の別居後、別居親との交流の有無や頻度等について、当時どのように感じていましたか。(SA)
   満足だった         132(13.2%)
   もっと交流したかった    155(15.5%)
   交流をすくなくしたかった    62( 6.2%)
   交流をしたくなかった    127(12.7%)
   特に感想はない       505(50.5%)
   その他             19( 1.9%)
   合計           1000(100%)

この質問に関する自由記載内容
   会っていない
   別居後一度も会っていないので、何とも言えない
   交流できなかった
   交流は一度もしていません
   会ったことがない
   わからない
   一切会っていない
   交流していない
   毎回会うのが久々で嬉しいけど妙に恥ずかしかった
   覚えてない
   一切交流していない
   覚えていないので分からない
   交流なしの項目がない
   面倒だった
   離婚してから20 年は会えなかった
   一度も会ってない
   会えていない
   1 度も会っていないので、わからない
   寂しかった

頻度と時間に関する当時の気持ち(Q26_3) vs 交流頻度実績(Q26_2)

 子どもの希望していた頻度に対して実績は少ない方にシフトしていたので、当然ながら「もっと交流したい」(2行目)という感想がどの交流頻度でも多いという結果になりました。
 不定期の交流で「満足だった」という回答が多いのは、「会いたくない」という子どもたちの希望が叶っているためです。
 特記すべきは、「面会交流なし」の子どもの多くが、「特に感想はない」と回答している点です。自由記載内容にある「1度も会っていないのでわからない」が理由だと想像しますが、本来は大人になる前に埋めるべきものが埋まってまっているはずが、埋まらないまま大人になってしまったように感じられます。

Q27 あなたは、父母の別居後、別居親側の祖父母の親族と交流していましたか。(SA)
   していた      293(29.3%)
   していなかった   501(50.1%)
   覚えていない    206(20.6%)
   合計      1000(100%)

 別居親側の祖父母と交流できていた子どもは29%。私が想像していたより多くの子どもが交流できていることが分かりました。
 こどもの人生にとって重要な人は、両親だけに限りません。日本では面会交流権は親だけに認められていますが、諸外国は祖父母にも面会交流権(訪問権)を与えています。アメリカは1965年に訪問権として制定、フランスは1970年の民法典、イギリスは1989年児童法に明文化されています。日本と違い、訪問権は訪問する親の権利ではなく、訪問される子どもの権利ととらえているからかもしれません。

Q28_1 父母が別居した後、あなたの住む場所に関する事項については、誰が決めていましたか。(SA)
   父母が相談して決めていた  150(15.0%)
   同居親が決めていた     433(43.3%)
   別居親が決めていた       46( 4.6%)
   同居親の親族が決めていた    27(  2.7%)
   別居親の親族が決めていた    10(  1.0%)
   わからない         334(33.4%)
   合計           1000(100%)

 「同居親が決めていた」が最も多いという結果でした。離婚後単独親権制度の日本では、親が子どもと一緒に住む場所は、親権者である同居親が独断で決定することが可能です。離婚時点の高葛藤の夫婦関係を想像すると、両親が相談することなく、同居親が独断で決定するケースが多いのは当然のように思います。
 今回の調査からは分りませんが、どのようなシチュエーションで居所が決まったのかも重要だと思います。例えば、「父母が相談して決めていた」ケースでは、父親が母親と話合い、子どもを残して父親が家を出て行ったのかもしれませんし、あるいは、子連れで家を出た同居親に、婚姻時の住まいの近くで暮らすよう別居親が要望したというケースもあるかもしれません。
 なお、「わからない」という回答が多くあるのが気にかかります。子どもは、住所が決まった以上、それを受け入れざるを得ず、誰が決めたかに関心がなかったのかも知れません。
 ついでながら、今から40年以上前のアメリカはどうだったのか、ウォラースタイン博士の論文から抽出して紹介します。
 ・別離後に家計が厳しくなり、別離から半年以内で、子どもの20%が家賃の低い住居に引越しをしていた。引越しに子どもの転校が伴う場合、大抵の親は、子どもが新しい友達を作る際に不安にならないよう、その学年が修了するまで引越しを控えていた。
 ・別離18か月後の時点では、母子の25%以上が、家計に見合う家賃の低い住居に引っ越していた。親が子どものことを気に掛けた結果、子どもの50%以上が、両親の別離以前に通っていた学校に通っており、母子と父親の大多数が互いに1時間の距離の範囲で暮らしていた。父親、母親ともに20%程度が再婚した結果、子どもの25%が実親の新しいパートナーと暮らし、残り75%が母だけの家庭で暮らしていた。
 ・別離5年後の時点では、子どもの65%が引越しをしていた。引っ越さずにいた親の大半が、財産分与に伴う自宅の売却待ちだった。引越しの大半は経済的理由であり、引っ越し先はその殆どが引越し前に暮らしていた場所から半径30マイル以内であった。非監護親である父親も多くの引越しをしたが、50%は子どもと同じ郡内で暮らし、30%は子どもの住居から1時間以内の場所に住んでいた。

Q28_2 父母が別居した後、あなたの教育や就職に関わる事項については、誰が決めていましたか。(SA)
   父母が相談して決めていた  122(12.2%)
   同居親が決めていた     433(42.3%)
   別居親が決めていた       47(  4.7%)
   同居親の親族が決めていた    32( 3.2%)
   別居親の親族が決めていた      9( 0.9%)
   わからない         367(36.7%)
   合計           1000(100%)

 居所決定とほぼ同じ構成率で、同居親の決定は42%(居所決定より1%低い)でした。
 現時点の民法では、離婚後は一方の親だけが監護権を有し、居所と同様にこどもの教育も監護権に含まれるため、同居親が決めているケースが多いのは当然です。寧ろ、父母が相談して決めていたケースが12%存在していたことが意外でした。

Q28_3 父母が別居した後、あなたの大きな病気をしたときの治療や歯列矯正等の医療に関する事項については、誰が決めていましたか。(SA)
   父母が相談して決めていた  136(13.6%)
   同居親が決めていた     410(41.0%)
   別居親が決めていた       47(  4.7%)
   同居親の親族が決めていた    35(  3.5%)
   別居親の親族が決めていた      7(  0.7%)
   わからない         365(36.7%)
   合計           1000(100%)

 居所決定とほぼ同じ構成率で、同居親の決定は41%(居所決定より2%低い)でした。こどもの医療も居所、教育と同じで、監護権の対象です。

Q29_1 あなたは、父母の離婚後、未成年の間に、父母のいずれかの再婚を経験しましたか。(SA)
   なし          678(67.8%)
   同居親が再婚した    161(16.1%)
   別居親が再婚した    116(11.6%)
   父母双方が再婚した      45( 4.5%)
   合計           1000(100%)

日本における再婚状況
厚生労働省の平成28年度「婚姻に関する統計」によれば、2007年に離婚した者が離婚後後5年以内に再婚をした割合は、離婚時の年齢が25歳~29歳の階級で男性が39%、女性が36%でした(この統計値は子どものいる親と子どものいない親とを分けていません)。

再婚に関するウォラースタイン博士の研究結果
 研究対象となった父親の43%(24人)が別離後の4年間で再婚し、そのうちの5人が離婚、2人が再び再婚した。その結果、別離5年後には子どもの44%に父親と継母と暮らしていた。母親は30%が再婚し、うち2人が再び再婚、2人が未亡人になった。その結果、子どもの25%が母親と継父と暮らしていた。
 再婚は殆どの大人にとって満足のいくものだった。継父に子どもがいる母親の負担は大きかったが、以前よりもストレスは低下していた。継母との間に子どもができた父親は、前妻との間の子どもに関連して葛藤を抱える者もいた。
 多くの子どもの生活は充実し、実父との関係が禁止や制約されず、継父が実父と入れ替わろうとしなければ、満足のいくものだった。しかし、子どもは再婚家庭の恩恵を受けながら、そのニーズは再婚した親のニーズと異なるために、実の両親に対して新たな感情を抱くようになっていた。

Q29_2 同居親が再婚したときに、どのようなことをかんじましたか。(MA)
[対象]Q29_1の「同居親が再婚した」「父母双方が再婚した」の回答者
   同居親が自分に気をつかっていた  31(15.0%)
   新しい生活になじめなかった    70(34.0%)
   家族の数が増えて困惑した     30(14.6%)
   親をとられたような気がした    35(17.0%)
   家族が増えて嬉しかった      30(14.6%)
   別居親に悪いなと思った      14( 6.8%)
   再婚相手との関係がよかった    23(11.2%)
   再婚相手と合わなかった      32(15.5%)
   その他                2(  1.0%)
   特になし             50(24.3%)
   回答者数            206

この質問に関する自由記載内容
   好きにしてっと思った
   同居している全ての人間に気を使った

 再婚に関する受止めは、再婚した時の子どもの年齢に負うところが大きいと思います。なので、「新しい生活になじめなかった」が最も多いということは、年齢に関係なく、必ず再婚に伴う感情だということでしょう。その後も馴染めない状態が継続するか否かは、「お互いがどのように対処していくことが家族にとって良いのか」に関する知識があるかないかに左右されると思います。
 夫婦の一方、あるいは、両方が子どもを連れて再婚してできた家庭を英語で「ステップファミリー」と呼びます。日本では、この言葉を「造語」と思っている人がいるほど、世間に認知されていないようです。このような状況なので、家族のメンバーがどのような気持ちで暮らすことが良いのか、といった諸外国や先人のノウハウを、もっと家族や世間に理解してもらうことが重要だと考えます。ステップファミリーに興味のある方は、角川新書「ステップファミリー」を読むことをお薦めします。SAJ(ステップファミリー・アソシエーション・ジャパン)という情報提供や支援をしている組織が、サイトも開設していますので、こちらも覗いてみてください。

ステップファミリーの家族に関する分析(ウォラースタイン博士の研究)
博士は母親、継父、子ども、実父、義理の兄弟姉妹、継母に分けて観察結果を報告しています。長くなりますが、役立つ読者もいると思うので要点を紹介します。
⑴母親
・前回の結婚を反省し、あまり夫に期待せず、自分への期待を高めた。
・経済的な負担を分担することに同意し、常勤で働いていた。
・一部の母親は子どものために結婚せねばならないと感じていた。
・多くの母親は以前の結婚より良い生活を手に入れることを望んだ。
・一部には前回の結婚の影響から抜け出せない者もいた。
⑵継父
・少数の例外を除いて、自分の子どもの父親になって欲しいという妻の希望に沿うよう努力した。
・再婚前から妻の子どもと知り合いだった継父もいたが、知合いから継父になり、態度が変わったことに対し子どもが反発することもあった。
・継父の多くが性急に父親になろうとしたが、子どもは継父が実父と入れ替わろうとしている、継父との交流は実父への愛情を裏切ることになると考えて反発した。「あなたは私のパパじゃない」(3歳の女子)。
・それでも、8歳以下の子どもと継父は、早期に良好な関係が定着した。
・年長の子どもと青年は、継父の存在を不愉快に感じ、良好な関係になるには時間を要した(一部には最後まで関係改善に至らない者もいた)。
・年長の子どもと青年は、何らかの事件が転機になり、急に継父との関係が良くなることがあった。但し、父親ではなく尊敬する大人として。
⑶子ども
・当初は新しい父ができることを頻りに、そして非常に心配していた。
・ひとり親より安定した家庭に変わるので、継父を歓迎した。
・母親が幸福になり、家族全員が楽になった。「大人が2人いることは良いことだ」(9歳の男子)
・継父が努力をし、自分たちに親切で、関心を持ち、同情的であることに気が付き、継父を認めた。「彼は話せる父親なの」(11歳の女子)
・母親の愛情が継父に占有され、自分が排除・拒絶されていると感じた。
・母親を慰める役割から解放されたことを歓迎した。
・新参者に権威が与えられ、自分が脇に追いやられることに憤慨した。
・憤慨や屈辱を感じた子どもの中には継父を追出そうとする者もいた。
・母親と継父の間に軋轢が生じると以前の離婚を思い出し、不安を感じた。
⑷実父
・子どもの継父と実父との関係が、再婚後の子どもの心理的発達と適応に核心的に重要だった。
・継父と実父は、子どもの感情の同じ場所を占有していなかった。
・多くの子どもが両方の父との関係を維持して快適に暮らすことができた。
・再婚家庭の実父の大多数は、再婚前と同様に訪問を続けていた。
・子どもの実父が継続的な訪問をしても継父が子どもに与える良い影響はキャンセルされなかった。
・実父が継父に置き換わったのは、子どもが実父を自発的に拒否したか、自発的に実父と継父を置き換えた場合だけだった。
・殆どの子どもが、継父、実父、実母の3人のための場所を作った。「私は実父のようであり、継父のようであり、実母のようでもあります」(12歳の男子)、「どっちのパパのことを尋ねてるの?」(10歳の女子)
・子どもより実父や継父の方が、各々の役割分担ができなかった。
・実母と継父が子どもに実父への愛情を放棄するよう要求する場合、子どもはメンタルに深刻な悪影響を受けた。
⑸義理の兄弟姉妹
・継父の約50%に前妻の子どもがおり、母親の子どもよりも年長で自立している傾向があった
・前妻が身体的監護権を持つ子どもが、何等かのトラブルを起こした後に継父の家庭に加わるケースが多く見られた
・身体的監護権を持つ親同士が再婚する場合、子どもたちの年齢が近く、家庭内にサブグループを形成した
・子どもの世話は殆ど母親が担当しており、家事が苦手な母親の中には再度離婚する者もいた
・兄弟姉妹は1年ほどで落ち着き、楽しく過ごし始めた
・兄弟姉妹は仲間が増えたことを喜んだ
・子どもの人数が多く、親の監督が行き届かない場合には、子どもの中に仲間外れになるものが出たり、逆恨みした親に虐待される子どももいた。
⑹継母
・若い継母は夫の子どもとの年齢が近く、子どもから反抗的態度を受け易く、青年期の子どもに対処する経験や準備が不足していた。
・若い継母は、父親の以前の結婚を破壊した犯人として子どもから非難を浴びることがあった
・継母は子どもの母親としての役割に関心を持つ者が少なく、親密な親子関係の進展には時間を要した
・年長の子どもは年少の子どもより継母に憤慨し、親密な関係に否定的だったが、年少の子どもは温かく、親密な関係を築くようになった
・実母に問題がある場合、子どもは継母との関係が良好となる。但し、母親としてではなく、尊敬する兄弟姉妹として。
・前妻の子どもと父親との訪問に対する継母の影響は大きく、継母が訪問に否定的な場合は訪問が滞り、継母が訪問に積極的な場合は訪問が開始あるいは再開した。
・継母に子どもが生まれることを前妻の子どもは喜んだ
・継母に子どもが生まれると、父親は前妻の子どもに費やす時間や関心が減少した

Q30_1 父母の離婚・別居を経験した後、あなたは健康面について次のような経験をしましたか。(MA)
   腹痛があった     104(10.4%)
   だるさを感じていた  109(10.9%)
   頭痛があった       86(  8.6%)
   不眠           93(  9.3%)
   食欲不振・過食      71(  7.1%)
   精神的不安定     201(20.1%)
   その他          11(  1.1%)
   いずれもなし     608(60.8%)
   回答者数      1000

この質問に関する自由記載内容
   脱毛
   覚えていない
   覚えてない
   円形脱毛症
   眼の手術
   小さかったのでわからない
   夜尿症
   上記症状(食欲不振・過食[事務局補充])で胃潰瘍で入院
   喘息が発症し、小児喘息から慢性喘息へ変わってしまい、一生涯喘息がいつ発症してもおかしくない状態になった
   覚えていない
   覚えていない

 両親の離婚や別居に影響を受けなかった子どもが60%、影響を受けて何らかの精神的、肉体的症状が現れた子どもが40%も存在しています。離婚直後のカウンセリングを義務付ける必要があるように思います。
 親の離婚が子どものメンタルヘルスに影響を与えることは、よく知られています。ウォラースタイン博士は、本記事で紹介した離婚5年後の面接以降も縦断研究を継続、15年後、25年後も面接を実施して、離婚の子どもへの影響が長期にわたることや潜伏していた影響が何らかのイベントで表面化するスリーパー影響を見出し、社会にインパクトを与えました。
 博士が当初から主張しているように、離婚は悪影響を与えるだけでなく、離婚後に適切な対応をすることで、家族全員にメリットをもたらすことができます。更に現在では、成長後の子どものアウトカムは、離婚自体の影響ではなく、離婚に起因する環境変化や個々の子どものレジリエンス等の様々な因子に左右されことが明らかになっています(風間書房「親の離婚を経験した子どもの精神発達に関する研究」参照)。

Q30_2 父母の離婚・別居を経験した後、あなたは生活面について次のような経験をしましたか。(MA)
   家族関係を周りに話すの
   が恥ずかしかった     193(19.3%)
   家族でのイベント(旅行
   等)がなくなった     120(12.0%)
   生活のリズムに乱れが生
   じた(昼夜逆転)       85(  8.5%)
   不良仲間と遊んだ       42(  4.2%)
   悪いことをした        67(  6.7%)
   自殺を図った         41(  4.1%)
   ひきこもり          57(  5.7%)
   不登校(学校や保育園な
   どに行けなくなった)    79(  7.9%)
   家庭内暴力(家族にあた
   り散らす)         32(  3.2%)
   精神的に強くなった     72(  7.2%)
   自立心・独立心が強く 
   なった         123(12.3%)
   人付き合いがうまくなっ
   た             55(  5.5%)
   困難なことがあっても挫
   けなくなった        67(  6.7%)
   その他           10(  1.0%)
   いずれもなし      480(48.0%)
   回答者数       1000

この質問に関する自由記載内容
   覚えてない
   自傷行為で髪を抜いた
   小さかったので覚えてない
   他人にとても話しづらいことを経験した
   母の偉大さに気付いた
   家庭関係を人に話すのが面倒になり、人と深い付き合いをしなくなった
   同じ母子家庭の子らとの交流があった
   自殺することばかり考えたりやり方を検索したりしていた
   同居親の家に自分の居場所が無いと常に感じていた
   部活を辞めた

 身体的な不調や睡眠障害、引きこもり、昼夜逆転、希死念慮、不登校等の内在化問題行動に加え、非行、家庭内の暴力等の外材化問題行動等の悪いアウトカムが約40%(=8.5+4.2+6.7+4.1+5.7+7.9+3.2)を占めていますが、タフな精神、強い自立心、巧みな人付き合い等の獲得という精神面や知性面の成長に結びついた良いアウトカムも32%(=7.2+12.3+5.5+6.7)を占めていました。 

良いアウトカムを導く因子(ウォラースタイン博士の研究)
・離婚5年後の面接で、子どもの34%が適応が良かった。
・自己評価が高く、学校、遊びの場、家庭で上手く対処していた。
・年齢差や性差は存在しなかった
・周辺の多くの側面に興味を持ち、責任能力を備え、想像力と知的潜在能力を発揮していた
・人間関係に比較的敏感で精神的に成熟していた
・これらのスキルは家庭の危機に精通し、親の苦悩を観察し、その困難を解決しようとしたことで身に着いたと想定された
・離婚後の多くのストレスを克服することで強化され、安定して成長した
・アウトカムの良い子どもには以下の点が共通していた
 ①両親が揃った家庭と変わらない両方の親との安定した親密な関係
  ⇒養育責任を果たそうとする親の努力から自分への愛情を確認した
 ②監護親との関係が良好
  ⇒子どもとの関係が非常によいが40%、良いが20%
 ③非監護親が長年に渡り継続的かつ安定した訪問をしている
 ④良い友達がいる
 ⑤祖父母が近くに住んでいる、遠くに住んでいるが子どもに関心を持っている
 ⑥両方の親が精神的に安定している
 ⑦経済的安定性

Q31 父母の離婚・別居は、あなたの恋愛、婚姻、婚姻生活に対して影響があったと思いますか。(SA)
   とても良い影響       66( 6.6%)
   良い影響          72( 7.2%)
   まあまあ良い影響      74( 7.4%)
   どちらともいえない   275(27.5%)
   余り良い影響はない   111(11.1%)
   悪い影響          69( 6.9%)
   とても悪い影響       60( 6.0%)
   わからない       273(27.3%)
   合計        1000(100%)

 最も多い回答は「どちらともいえない」28%で、文字通り「良いこともあれば、悪いこともある」という意味かと思います。「わからない」が27%で2番目に多いのも特徴です。「わからない」を除き、少しでも良い影響がある場合とそうでもない場合を比較すると、良いが46%(=7.4+27.5+11.1)、そうでもない24%(=11.1+6.9+6.0)で、良い影響があった方が多いように様に思いますが、「わからない」をそうでもないに方に加算すると両者は逆転します。そうすると、子ども全体としては良い悪いが半々というのが本当の結論かもしれません。

回答「わからない」の統計的意味について
 Q31とQ32は、アンケート対象者の「現時点における考え」を答える質問であり、離婚・別居をした時点の事実や気持ちを振り返って答える質問ではありません。にも拘らず、「わからない」という回答が約30%を占めている点に留意する必要があります。
 「わからない」は”無回答”(don't know)を略し、DKと呼ばれます。DKに関しては、朝倉書店「社会調査の基本」に詳細な分析が記載されています。結論だけ書きだしますと、無回答が多いのは、①身近な日常生活から離れた質問、②意識に関する質問(実態に関する質問は低い)、③過去の事項に関する質問(昔になるほど高い)であり、「回答したくない質問」、「普段考えていない質問」、「文字通り質問内容がわからない質問」だそうです。
 親の離婚は何らかの形で子どもに影響を与えることは、よく知られていて、当事者なら不安を感じつつ興味あるテーマだと思います。そうすると、本質問の「分からない」は「回答したくない」もっと言えば「考えたくない」というのが正しい回答のように思います。

Q32 お子さんがいる方にお尋ねします。父母の離婚・別居は、あなたの子とあなたの間の親子関係に対して影響があったと思いますか。(SA)
[対象]SC5で「はい」の回答者
   とても良い影響      47(12.5%)
   良い影響         31( 8.3%)
   まあまあ良い影響     36( 9.6%)
   どちらともいえない  108(28.8%)
   余り良い影響はない    26( 6.9%)
   悪い影響           9( 2.4%)
   とても悪い影響       12( 3.2%)
   わからない      106(28.3%)
   合計         375(100%)

 この質問の回答も前問Q31と同様に「どちらともいえない」が29%で最も多く、次が「わからない」28%でした。前問同様に、「良い」と「そうでもない」に分けると、良いは30.4%(=12.5+8.3+9.6)、そうでもないは12.5%(=6.9+2.4+3.2)で、良い影響があったという方が多く、「わからない」を「そうでもない」にカウントすると、両者の関係は逆転します。

 この調査では両親の離婚は、自分の恋愛・婚姻・離婚、並びに、自分と子どもとの親子関係にどちらかと言えば良い影響を与えているという意識でした。実際のところ、どのような影響が実績として発生しているかを紹介します。
 ⑴両親の離婚は子どもの結婚に影響する
  渡辺泰正氏の研究「親の離婚が子どもの初婚タイミングに及ぼす影響とそのメカニズム」によれば、親の離婚は子どもの初婚タイミングを早める(20歳時点で結婚)一方で、30代前半時点の未婚率には影響を与えません。
 ⑵両親の離婚は子どもの離婚に影響する
  これまでの研究により、親が離婚している子どもは、自分も離婚する割合が高くなるという事実が証明されています。親の離婚を経験し、「夫婦関係は何時か破綻する」ことを学ぶためだとされています。
 こちらはネットで多くの情報が手に入るので興味があればネットで検索してみてください。
 ⑶両親の離婚は子どもが自分の子を授かった時の親子関係に影響する。
  論文形式ではありませんが、ウォラースタイン博士の「それでも僕らは生きていく」第1章5節の”子供を持った離婚家庭の子供たち”から一部を抜粋します。
 ・離婚25年目に面接した元子どもの60%が結婚していた
 ・子どもがいたのは、その30%だった
 ・子どもをつくる予定の者は少数だった
 ・子どもをつくった親たちは全て「私の子供には、私が味わった思いはさせない」と口を揃えて言った
 ・1つの場所で安定した家庭を子供たちに与えたいと思っている。
 ・子供たちにきちんと保護された子供時代を与え、愛情溢れる両親としてそれを一緒に体験したい。

Q33 あなたが成年に達した時点での父母の離婚・別居の形態は次のうちのどれですか。(SA)
   協議離婚をした     306(30.6%)
   裁判所で離婚をした   127(12.7%)
   別居していたが、離婚
   はしていなかった    113(11.3%)
   わからない       454(45.4%)
   合計         1000(100%)

 別居していたが、離婚はしていなかった子どもを除くと、親が離婚していたこどもの数は887人。厚生労働省によると離婚の87%が協議離婚なので、この構成率が今回の調査対象にも当てはまるとすると、「わからない」はほぼ全て「協議離婚」に該当することになります。

同居親別(SC9)の離婚の形態(Q13) vs 養育費と面会交流の取決め有無(Q19, Q24_1)

 Q33の回答をSC9の回答で母子世帯と父子世帯とに分け、Q19の養育費の取決め有無とQ24_1の面会交流の取決め有無との関係を整理してみました。
 厚生労働省の調査では、養育費、面会交流ともに裁判所を利用した離婚では協議離婚よりも取決め率が2倍高いのですが、本調査の結果を見ると、協議離婚よりは良いものの、さほど差がないという結果でした。

 厚生労働省の令和2年(2022)人口動態統計によると、2018年の離婚形式別の離婚件数は次のようになっています。
 ①協議離婚:181,988(87.4%),②調停離婚:19,882(9.5%),③審判離婚:1,096(0.5%),④和解離婚:3,354(1.6%),⑤認諾離婚:11(0.0%),⑥判決離婚:1,992(1.0%),合計208,333。裁判所を介して離婚した割合は、12.6%となります。

Q33SQ 裁判所で離婚をしたと回答した方に伺います。調停離婚と裁判離婚のどちらでしたか。(SA)
[対象]Q33で「裁判所で離婚をした」の回答者
   離婚調停    57(30.6%)
   裁判離婚    48(12.7%)
   その他       0(11.3%)
   わからない   22(45.4%)
   合計     127(100%)

種類別離婚実績(Q33SQ)と別居時点の子どもの年齢層(Q2)

 裁判所を利用した離婚には、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。今回調査では、親が裁判所を利用して離婚したことは知っているものの、どの形式で離婚したのか、わからない子どもが45%いました。
 「わからない」と回答をした22人の子どものうち9人は、離婚の法手続きを十分理解できる青年時に親が離婚しています。このことから、「両親の離婚に裁判所が関与したことは知っているが、離婚の形式は全く興味がない」ということだと思われます。

Q34 父母の離婚・別居について、今振り返ってみると、どのように思いますか。(SA)
   父母にも自分にもよかった    283(28.3%)
   父母にも自分にもよくなかった     93( 9.3%)
   父母にとってはよかったが、自
   分にとってはよくなかった    140(14.0%)
   父母にとってはよくなかったが
   自分にとってはよかった        37( 3.7%)
   特になし            447(44.7%)
   合計             1000(100%)

 離婚が家族全員にとってよかったと考えている子どもは28%、自分にとってよくなかったと考える子どもが23%(=9%+14%)いました。離婚の良し悪しを評価しない、若しくは評価できない子どもが45%もいることも特徴的です。

離婚に対する子どもの考え(Q34)と同居親との関係(Q36_1)
離婚に対する子どもの考え(Q34)と別居親との関係(Q36_2)

 上に示した2つの表は、上表が子どもと「同居親」との関係、下表が子どもと「別居親」との関係を、離婚に対する子どもの考えと関連付けたものです。
 2つの表を比較してみると、「父母にも自分にもよかった」と考える子どもの同居親と関係は「とても良い関係」が一番多く、別居親との関係は「全く関りがない」が一番多くなっています。離婚が家族全員にとって良かったと考える子どもは、「婚姻期間中に父母が激しい葛藤を抱えていて、そのためにストレスを感じていたが、離婚をきっかけに別居親と距離を置くことができたので、母子ともにストレスから解放された」と思考したものと推測できます。

離婚5年後の離婚に関する子どもの視点(ウォラースタイン博士の研究)
 ウォラースタイン博士は、初回、18か月後、5年後に離婚家族と面接を行い、感情や思考、健康状態の変化を分析しています。5年後の面接で得た、離婚に関する子どもの視点は次のようなものでした。
 子どもの28%が離婚を承認、30%が積極的な不承認、42%が離婚を受け入れてはいたが、賛成でも反対でもなかった。不承認は離婚直後の75%から減ってはいるものの、依然と高位だった。
 また、22%が離婚後の家庭が離婚前より「とても良くなった」、22%が「良くなった」、56%が「良くなっていない」と感じ、「良くなっていない」は離婚18か月後より10%減ったが、以前と高位であった。
 離婚を承認した子どもは、①親と自分のニーズを分離して思考できるようになり、離婚が親にとって有益だと結論した年長の子ども、②子どもの年齢に拘らず、親同士の葛藤が激しかった子ども、③両方の親と離婚前と変わらない交流を続けている子ども、④継父との関係が良好な子ども、⑤毒親の子ども、⑥会者定離を悟った子どもであった。
 離婚を承認しない子どもは、①同居親との関係が悪い子ども、②別居親を慕っている子ども、③離婚により孤独を感じている子ども、④自身の成長には両親が揃った家庭が必要だと考える子ども、⑤幸福だった時期の離婚前家庭を諦められない子ども、⑥復縁を望む一方の親の影響を受けた子どもであった。
 総括すると、親同士の葛藤が少なく、両方の親と適度な交流が可能で、両方の親からの愛情を感じ、経済的な心配をせずにすむ離婚後家庭であれば、子どもは離婚を受け入れる可能性が高い。

Q35 同居親の決定について、今はどのように感じていますか。(SA)
   そちらの親で良かった     385(38.5%)
   他方の親が良かった         81( 8.1%)
   父母双方に育てられたかった  134(13.4%)
   特になし           393(39.3%)
   その他              7( 0.7%)
   合計            1000(100%)

この質問に関する自由記載内容
   わからない
   父子家庭も母子家庭も両方経験した
   虐待が酷くなったので児相に助けてもらいたかった
   2人が今幸せならそれで良い
   どっちもどっち
   仕方なかった
   責任逃れをしている

同居親の決定(Q35)と現在の同居親と子どもとの関係(Q36_1)

 同居親の決定に関する子どもの感情で最も多かったのは「特になし」でした。子どもの同居親との関係に「全く関りがない」と回答した子どもの78%が「特になし」」を選択していることから、同居親と上手くいっていない一部の子どもは、どちらの親が同居親でも構わないという「無関心」の感情を抱いていることが分かります。一方で、同居親と非常に中の良い子どもは、その65%が、(当たり前ではあるが)現在の同居親に満足していることがわかりました。

Q36_1 あなたと同居親の現在の関係を教えて下さい。(SA)
   とても良い関係       324(32.4%)
   良い関係          186(18.6%)
   まあまあ良い関係      126(12.6%)
   普通            230(23.0%)
   あまり良い関係ではない   40( 4.0%)
   悪い関係          10( 1.0%)
   とても悪い関係       21( 2.1%)
   全く関わりがない      63( 6.3%)
   合計          1000(100%)

子どもと同居親との関係(時系列)

 同居親との関係は「とても良い関係」が最も延びていました。子どもが成長するにつれ、同居親が苦労しながら監護を続けていたことを理解していく結果と思われます。
 なお、「全く関わりがない」は「とても悪い関係」に加算しています。

Q36_2 あなたと別居親の現在の関係を教えて下さい。(SA)
   とても良い関係       146(14.6%)
   良い関係          136(13.6%)
   まあまあ良い関係        91( 9.1%)
   普通           205(20.5%)
   あまり良い関係ではない     53( 5.3%)
   悪い関係            17( 1.7%)
   とても悪い関係         18( 1.8%)
   全く関わりがない     334(33.4%)
   合計          1000(100%)

子どもと別居親との関係(時系列)

 同居親のケースと同様に。「全く関りがない」を「とても悪い関係」に加算しています。
 「とても良い関係」と「良い関係」は、時間が経過しても大きな変化がありませんが、「普通」以下の悪い関係が時間経過とともに更に悪い関係にシフトしていました。同居親の方は関係が改善し「とても良い関係」に進んでいるのとは対照的です。子どもが成長とともに、離婚とその後の経緯について詳しい話を聞いて別居親に対し憤慨したり、交流が途絶えることによって関係が疎遠になったためだと想定されます。

離婚5年後の別居親と子どもとの関係(ウォラースタイン博士の研究)
 長くなりますが、ウォラースタインの研究結果を抜粋して要点を紹介します。
総括
訪問(日本の面会交流に相当)は制約が多く、訪問だけで発展した親子関係では、お互いを繋げる力とその影響の減衰が、非離婚家庭よりも速かった。しかし、親子関係の重要性は何年経過しても変わることなく、訪問状況に関係なく、子どもの思考と感情、自己概念と自己評価に影響を与え続けていた。子どもの感情は人それぞれでバラエティーに富んでいた。
訪問状況
大部分の父親が訪問を継続し続け、子どもの福祉と発達に関心を持ち続けていた。
・離婚18か月後の調査に対し、子どもの50%は訪問頻度が減少、30%は変化なし、20%は増加していた。
・子どもの25%が毎週数回、少なくとも毎週末に父親と訪問をし、別の20%は毎月2~3回の頻度で訪問をしていた(18か月後の66%より21%悪化)。
・父親が遠くに住んで切るケース(全体の20%)では長期休暇に月1回の頻度で交流していた。
・不規則な訪問をしていた親子は17%、全く交流していない親子は9%だった。
・未就学だった子どもは、年長の子どもより交流時間が長く、泊りがけの交流をしていた
・年齢が増すにつれて訪問時間は短くなり、青年期の若者は数時間から終日の訪問で十分だと考えていた
・子どもが大変満足している訪問パターンは、子どもや別居親の都合が悪い場合は予定を変更したり、よその子を交えたりする柔軟な訪問だった。
・50%の子どもが訪問に満足し、20%が否定的だった。
・訪問に否定的な子どもは、父親が自分たちに関心を寄せていないことに失望と怒りを感じていた。父親を「キモイ奴」と呼ぶ子もいた。
・一部の子どもは、母親につらい想いをさせた父親を青年期になっても許さなかった
・年少の子どもが自分たちを失望させる父親を容認する一方、父親の訪問がないままに青年になった子どもは父親を拒絶するようになった。
父子関係の質の変化
・訪問を高頻度で規則的に続けていたからといって、離婚5年後の父子関係が良好なままとは限らなかった(離婚1年目までは相関有り)。
・子どもの成長とともに交流時間は減少していった。
・訪問の実績よりもお互いの感情と姿勢が父子関係を支配した(30%の父子だけが互いに有意義な関係を維持できた)。
・訪問だけに限定された親子関係は、子どもの成長と発達を促すのに不十分なだけでなく、子どもの支援においても不十分なことがあった。
・子どもを幼児扱いし、子どもの感情を傷つけ、或いは、大人の手伝いに利用するような有害な訪問も見られた。
総括
訪問だけの交流では、父子関係は後退し、徐々に劣化していくが、精神的・肉体的に有害でなければ、以下の理由により交流を継続することが望ましい。
①父親を喪失した痛みや喪失による心理的衝撃から子どもを保護する
②子どもが自暴自棄になったり、全ての物事に拒否反応を示したり、自信を喪失することを防ぐ
③子どもの脆弱さ、孤独の意識、一方の親に対する総依存性を解消する
④母親に集中したであろう激しい葛藤と様々な感情を緩和する

Q37 今振り返ってみて、両親の別居後、あなたが未成年の間の、別居親との交流はどのようにあるべきだったと思いますか。(SA)
                 Q37     Q26_3
   もっと交流をしたかった  186(18.6%)  155(15.5%)
   ちょうどよかった     246(24.6%)  132(13.2%)
   少し交流が多すぎた      57(  5.7%)    62(  6.2%)
   特になし         511(51.1%)   651(65.1%)
   合計          1000(100%)    1000(100%)

 Q26_3で面会交流を実施している当時の面会交流頻度に関する満足度を分析しましたが、Q37の質問は現時点で考えを質問しています。時間の経過でどのように考え方が変わったかを知りたかったので、Q26_3の回答をQ37の回答の横に並べました。選択する回答が両者で微妙に違うため、Q26_3の回答を次のようなルールで集計しなおしています。
 「満足だった」を「ちょうどよかった」へ、「交流を少なくしたかった」を「少し交流が多すぎた」へ、と「交流したくなかった」と「特に感想はない」と「その他」を「特になし」へに集計。
 「もっと交流をしたかった」は、面会交流をしていた当時よりも若干多くなって19%になっています。交流頻度はどちらかと言えば希望に対して少なかったのに、「ちょうどよかった」が10%ほど増えています。この原因はQ26_3の「交流したくなかった」を「特になし」に加算した集計方法が拙かったためだと思われます。つまり、「交流したくなかった」と回答した子どもが実際に殆ど交流していなかった場合は、Q37の回答では「ちょうどよかった」を選ぶからです。そこで、2重クロス分析をして想定が正しいかを確認してみました。

現時点の交流に関する考え(Q37) vs 交流時の考え(Q26_3) vs 実際の交流頻度(Q26_2)

 現時点で「ちょうどよかった」というゾーンでは、面会交流が「不定期」だったのに、「満足だった」「特に感想はない」と答えた子どもが多いことがわかります。想定した通り、「ちょうどよかった」は、交流に否定的な子どもたちにとって、不定期の交流で構わない、寧ろ好都合という意味でした。

Q38_1 今振り返ってみて、父母が離婚・別居した後、あなたの住む場所については、父母のうち誰が決めるのが理想だったと思いますか。(SA)
  父母が相談して決める  190(19.0%)
  同居親が決める     401(40.1%)
  別居親が決める     40( 4.0%)
  わからない       369(36.9%)
  合計         1000(100%) 

居所を決定して欲しかった親(Q38_1) vs 実際に決定した親(Q28_1)

 居所を決定するにあたり、実際に「父母が相談」して決定していた場合は「父母が相談」して決定して欲しい、「同居親が決定」していた場合は「同居親が決定」して欲しい、決定の経緯が「わからない」場合はどうしたものか「わからない」と回答しているケースが最も多く、実績を肯定していることがわかります。
 一方で、実際に居所を決定した親が別居親のケースは、「決定して欲しかった親」の構成率が別居親と同居親でほぼ等しい結果となりました。自分と同居しない親が自分の居所を決定することに、子どもは疑問を感じているのかもしれません。
 いずれにせよ、現在の民法では居所指定権は親の一方にしかないため、指定権のある親は、もう一方の親が子どもの意見を支持しようがしまいが、独断で居所を指定することが可能です。子どもの希望に沿う決定を担保するために、交代居所が実現できる離婚後共同親権(監護)制度の導入が待たれます。

Q38_2 今振り返ってみて、父母が離婚・別居した後、あなたの教育や就職に関する事項については、父母のうち誰が決めるのが理想だったと思いますか。(SA)
   父母が相談して決める  170(17.0%)
   同居親が決める     415(41.5%)
   別居親が決める     39( 3.9%)
   わからない       376(37.6%)
   合計         1000(100%)

教育や就職を決定して欲しい親(Q38_2) vs 実際に決定した親(Q28_2)

 結果は住む場所と同様に、別居親が決定したケースを除き、実績と同じ決定プロセスを子どもは支持していました。教育(習い事や進学先?)や就職(進学か就職か、就職先?)の意思決定には、本人の意思、本人の成績、進学あるいは就職後の将来性に加え、授業料や家賃や生活費といった金銭面の手当も考慮せねばなりません。低調な面会交流の実施率、養育費受取率の実績からは、別居親の精神的・経済的支援は期待できず、必ず同居親が決定プロセスに加わることを理想型として選んだのだと思います。

Q38_3 今振り返ってみて、父母が離婚・別居した後、あなたの大きな病気をしたときの治療や歯列矯正等の医療に関する事項については、父母のうち誰が決めるのが理想だったと思いますか。(SA)
   父母が相談して決める  190(19.0%)
   同居親が決める     400(40.0%)
   別居親が決める       38( 3.8%)
   わからない       372(37.2%)
   合計         1000(100%)  

治療を決定して欲しい親(Q38_3) vs 実際に治療を決定した親(Q28_3)

 こちらも、全問2つと同様に、別居親が決定したケース以外は、実績の決定プロセスを理想型に選んでいました。Q28_3の質問テーマである医療に関する意思決定は、Q28_2の教育や就職に比べ、緊急性が高く、検討に許される時間が少ないため、同居親単独の決定プロセスに支持が集中してもよさそうすが、そうはなりませんでした。別居親単独の決定プロセスが他の実績ほど支持されない理由は、子どもとの日常生活を共有していない別居親は、帰省時にに会う親戚や祖父母のようなもので、人生の重要な意思決定に関与してもらうまでもない存在になっているからかもしれません。
 なお、昨今離婚後共同親権(監護)制度になると、両親の方針が一致せずにデッドロックし、手術等の緊急事態に対処できないという風説が流布しています。しかし、緊急時はその事態が発生した時点で監護していた親が決定を下すと明文化されている国もありますし、そもそも親同士で事前にそのようなときの取決めをしておけばよいのです。実際、海外でデッドロックが社会問題になった話は聞いたことがありません。

Q39 自分の経験を踏まえて今後、父母の離婚又は別居を経験する子ども達について、どのような配慮をしていくことが望ましいと思いますか。(MA)
   離婚又は別居の前後に子どもの精神面・健康面に問題が
   生じていないかをチェックする制度          443(44.3%)
   子どものための身近な相談窓口の設置         429(42.9%)
   子どもの気持ちを父母や裁判所に伝える制度      267(26.7%)
   子どもの権利を尊重する法律の整備          374(37.4%)
   父母の離婚又は別居時には子どもの権利を尊重しなけれ
   ばならないことについての広報・啓発活動       309(30.9%)
   その他                       56( 5.6%)
   回答者数                     1000

この質問に関する自由記載内容
   特になし
   わからない
   親に扶養されている以上親に任せるべき
   共同親権にするべき
   子ども食堂の普及
   金銭的支援
   なし
   特にない
   養育費の手厚い支払いの原則義務 罰則付き
   成人後のカウンセリング
   特にない
   わからない
   わからない
   金銭面の事情による学力低下の支援
   特にない
   特になし
   特になし
   特にない
   未成年でも親などに依存しなくて一人立ちできるような仕組みづくり
   親が決めればいい
   親の事情は子供は口出しできない現状
   最初のケアは親次第やけど子どもは親や周りを見ながら自分なりに成長していくと思います。私は親が離婚したからという理由でグレたりはしませんでしたし、それが恥ずかしいものだとも思った事がありません
   家庭のことだからそこまで深入りしてほしくない
   とくになし
   めんどくさいことしないでほしい
   養育費の強制支払い
   わからない
   同居親(母)に別居親(父)との交流を禁止されており母の一方的な決定に誰も逆らえなかったことに一番悩まされたが未だに解決法はわからない
   特にない
   金銭面の補助をもっとしっかりする
   学校での配慮が欲しかった
   自助グループの様な心の居場所があること
   なし
   父母の離婚を望んでいたので特になし
   別居親の支払い義務についての未払いでもなんとかなってしまう曖昧さをどうすべきか
   片親の差別を無くす。片親でむしろ良いこともある、一つの種類の家庭ということを知ってもらうべき
   親にではなく、子どもにお金をくれる制度
   金銭の確保
   ない
   ない
   両親の離婚後に子供が同居する親の家の同居人も視野に入れなければ、父母間で良い方に決めてもらっても、私のように同居人(祖父母)に精神的攻撃を受ける恐れがあるので、そこも視野に入れるのが望ましい。
   一時的にでも子供の希望があればどちらの親とも離れて暮らすことができる制度
   わからない
   わからない
   若年だと判断は出来ないし、他人も信用出来ないので(気をつかう、怖いなど)、 難しい
   周りが離婚を馬鹿にしない環境づくり
   わからない
   なし
   わからない
   養育費の不払い時に即時に財産差し押さえができる権利と、別居親の収入水準が悪くなった際に養育費を変更しやすくする制度
   子供にも父母のお互いの人生の大切さを理解してもらうように努めるべき
   何も気にしないでほしい
   片親の支援をもっと手厚くしてあげて欲しい
   わからない
   なし
   特にない

 子どもの助言で最も多かったのは、離婚前後の子どもの心と体のケアでした。アメリカではカウンセリングを受けることが一般的になっているようですが、日本はその方面が未だ遅れているように思います。
 因みに、ウォラースタイン博士は、第17章「調査結果の意義」で、家族が離婚を乗り越えるための対策として、以下を項目を挙げています。
  ⑴現実に必要な出費に見合う児童扶養手当の金額設定
  ⑵育児退職後に改めて就職するための研修と教育/就業/家計に関するカウンセリングの提供
  ⑶離婚後の親と子のカウンセリング:予想される反応や反応期間を逸脱している場合
  ⑷幼児保育、学童保育の整備と保育をする施設の充実
  ⑸婚姻中と変わらない子どもと両親との関係
  ⑹親権制度の見直し
  ⑺適切な離婚時期の選択:子どもの年齢ではなく、離婚後の生活に目途がたった時点
  ⑻子どもの意見を聴く:小学校低学年までは取扱いに注意を要する
  ⑼子どもの心理、離婚が子どもの発達と親子関係に及ぼす影響に精通し専門家による支援
  ⑽離婚を決意してから離婚後までの全プロセスにおける支援

離婚後の親権制度について
 ウォラースタイン博士は、上述の対策「⑹親権制度の見直し」について、見直し理由や目的を簡潔に述べています。離婚後の家族法を見直中の日本に役立つと思いますので、ポイントを箇条書きで紹介します。
 ・それぞれの親が子どものウェルビーイングに責任を持ち、真の意味で子どもに関与できるよう取決め、離婚後数年間にわたり、子どもが両方の親との関係を維持し続けることが好ましい。
 ・法的共同監護は、非監護者の心理的責任、金銭的責任を強化する可能性がある。
 ・法的監護権がないため、子どもの生活上の決定を共有できない親の多くが、悲しみと挫折感から子どものもとを去っていった。
 ・子どもが、非監護親が去っていったことを、自分が拒絶されたと受け止め、その衝撃が子どもに有害な影響を与えている。
 ・身体的共同監護は、様々な形態をとることが可能で、両親は子どもと大人のニーズを考慮して子どもと過ごす時間の配分を交渉、変更できる。
 ・一人の親を「心理的影響を与える親」として機械的に指名し、その一人に法的監護権と身体的監護権の両方を与えることは望ましくない
 ・子どもと青年の心理的健康には、両親が別離した後も、可能な限り両方の親と子どもとの関係を継続させる方が良い。
 ・研究結果は、ゴールドスタイン、フロイト、そしてソルニットの学説とは正反対の上記結論に達した。
 ・離婚する両親に、別離後の親子関係を促進する取決めをするよう奨励、支援すべきである。
 博士の研究結果が発表されてから40年以上が経過していますが、日本では未だにゴールドスタインの学説を支持する人が多数います。日本の未来を支える子どものために、学会やマスコミは、しがらみを乗り越えて、科学的に裏付けられた「離婚後における子どもと両方の親との良好な関係の維持の必要性」を今まで以上に世の中に発信していくことが大切ではないでしょうか。

調査結果(詳細版・回答者数)

割愛

調査結果(詳細版・回答率)

割愛

自由記載欄のまとめ

※記入内容は調査結果欄に転載しています
Q5 父母の別居後に、同居親の他に同居していた人はいましたか。【3 件】

Q8-2 あなたは、父母が別居を開始する前に、父母が不仲になっていることについて、ど のように感じていましたか。【8 件】
   
Q9 あなたの父母が不仲になった原因は何でしたか。現時点の認識で答えて下さい。 【16 件】

Q11_1 父母が不仲になっているときに、あなたは、誰かに相談しましたか。【6 件】

Q13_2 あなたは、父母が別居をした当時、どのような気持ちでしたか。【16 件】
  
Q14_2 伝えた内容は何ですか。【7 件】

Q15_3 父母の別居後に、あなたがどちらの親と一緒に住むかについて、父母等から、あ なたに対してあなたの考えを変えようとするような働きかけはありましたか。【2 件】  

Q16_1 父母が離婚・別居をするときに、あなたは、誰かに相談することはできましたか (相談相手はいましたか)。【4 件】 

Q16_2 誰に相談しましたか。【1 件】    

Q21_1 同居親は、あなたの金銭面の相談に対応してくれましたか。【6 件】

Q21_2 別居親は、あなたの金銭面の相談に対応してくれましたか。【2 件】

Q24_2D 父母別居後、別居親とあなたとの交流の取り決めについて、父母等から、あなたに対してあなたの考えを変えようとするような働きかけはありましたか。【1 件】   

Q24_3A 別居親とあなたとの交流は取り決めどおりに実施されていましたか。【1 件】
  
Q24_3B 取り決めどおりの交流がされなかったのは、原因はなんですか。【4 件】

Q25_2 会いたいと思わなかった理由は何ですか。【26 件】

Q26_1 父母の別居後、別居親とどのような方法で交流をしていましたか。【18 件】

Q26_3 父母の別居後、別居親との交流の有無や頻度等について、当時どのように感じて いましたか。【19 件】
 
Q29_2 同居親が再婚したときに、どのようなことを感じましたか。【2 件】 

Q30_1 父母の離婚・別居を経験した後、あなたは健康面について次のような経験をしま したか。【11 件】   

Q30_2 父母の離婚・別居を経験した後、あなたは生活面について次のような経験をしま したか。【10 件】  

Q35 同居親の決定について、今はどのように感じていますか。【7 件】  

Q39 自身の経験を踏まえて今後、父母の離婚又は別居を経験する子ども達について、ど のような支援や配慮をしていくことが望ましいと思いますか。【56 件】

(了)

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