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養育時間,両親間葛藤,親子関係,及び子どもの身体的健康

 ウィリアム・V・ファブリキウス氏は、アリゾナ州立大学心理学科の准教授です。氏の研究分野は、子どもの社会的認知発達、特に子どもの「心の理論」の発達、並びに、離婚した家族における父子関係で、数多くの論文を執筆し、日本でも良く知られている著名な学者です。
 この記事はファブリキウス氏による2011年のレポート「PARENTING TIME, PARENT CONFLICT, PARENT-CHILD RELATIONSHIPS,
AND CHILDREN’S PHYSICAL HEALTH」を翻訳したものです。今回の翻訳と無料公開にあたり氏から承諾を頂いたことをここに御報告するとともに、深く感謝の意を表します。

養育時間,両親間葛藤,親子関係,及び子どもの身体的健康

ウィリアム V ファブリシウス
プリシラ・ディアス
サンフォード・L・ブレイバー
アリゾナ州立大学
 
最終草案 2/12/2011

K.クエンレと L. ドロッド(編)「養育計画の評価:家庭裁判所応用研究」
(オックスフォード大学出版,2012年)
に収録

アリゾナ州家族調停裁判所協会会議
セドナ、アリゾナ州  2010年2月6日 にて
ウィリアム・V・ファブリシウス が発表した
開会プレナリー:「子どもの監護権と政策の意義に関する30年間の研究」
に基づく

養育時間,両親間葛藤,親子関係,及び子どもの身体的健康

はじめに

この章で取り上げる問題

 2つの問題が家庭裁判所や政策立案者の前に立ちはだかっている。「子どものアウトカムには養育時間の量や質が何よりも重要なのか」、「高葛藤の家族は養育時間を制限すべきか」。研究文献の殆どが考察で次のように述べている。子どものウェルビーイングにとって、養育時間のは養育時間のよりも重要であり、両親間に頻繁かつ激しい葛藤がある場合は、子どもに深刻な害を与える懸念があるため、養育時間を制限すべきである。この推定は長い間支持されてきたが、新しい研究結果に照らして再検討すべきであるというのが本章の主旨である。本章では初めに、養育時間の量と親子関係の質との相関について、深刻な両親間葛藤がある場合とない場合、両方の新たなデータを提示する。次に、家族関係と長期的なストレスに起因する子どもの身体的健康との関連性を、健康文献で報告されている新たな研究結果から議論する。最後に、新たな研究結果から、多くの子どもが父親ともっと楽しい時間を共有したいという感情を抱くような最小限の養育時間は、公衆衛上の由々しき問題であることを明らかにする。

養育時間と両親間葛藤が子どもの健康に影響を与える仕組み

 図1は、養育時間の効果がどのようにして最終的に子どもの健康アウトカムに影響を与えるかを示す概念モデル、言い換えると仮説を示している。このタイプのモデルは現在実施中の研究(例えば、Fabricius & Luecken, 2007; Fabricius, Braver, Diaz & Velez, 2010)でテストしているもので、この章の様々な節を体系立てるために本章でも使用する。このモデルは、養育時間が複数ある親の動作のうちの1つ、即ち 父子の交流に影響を与えることを示している。交流とは一緒に物事を行って過ごす時間のことである。よって、どの父親も自分の子どもと交流したがることを考えると、「影響」とは、養育時間が多くなるほどと交流が増え、養育時間が少なくなるほど交流が減ることを意味する。矢印を用いて影響を説明するなら、通常、矢印の左端の状況が増加するほど右端の状況が増加し、左側の状況が減少するほど右側の状況が減少することを意味する。
 一般に、養育時間が父親の応答性に影響を与えるようなことはあってはならない。父親の応答性とは、子どもが要求やニーズを表明した時に父親がその要求に応えようとする能力を指し、子どもが依頼する頻度ではなく、父親がどれだけ確実に応答するかを反映している。応答性は、親子で直に交流したか否かに関わらず見出され、言葉や行動に明確な形で現れる。例を挙げるなら、会話をすること、直接あるいは電話で父親が真剣に子どもの話に耳を傾けること、子どもが欲しがっているものを買ったり作ったりすること、子どもが頼んだ時に、宿題を手伝うこと等である。
 このモデルは、父子の交流と父親の応答性の両方が、父子関係において子どもが感じる情緒的安心感に別々に影響を与えることを示している。両親間葛藤は、父子関係の情緒的安心感にも影響を与える(この場合、両親間葛藤が激しいほど情緒的安心感が低下し、両親間葛藤が低いほど情緒的に安心感が増加する)。簡素化のため、図 1には父親要因と類似する母親要因の影響を記入していないが、敢えて言えば、母子の交流、母子の応答性、および両親間葛藤は母子関係に影響を与え、母子関係と父子関係の両方が子どもの健康上のアウトカムに影響を与えるということである。養育時間が母子関係と父子関係に与える影響については、後で詳しく述べる。

子どものアウトカムには養育時間の量や質が何よりも重要なのか

養育時間の古くて新しい尺度

 離婚後の父子交流に関する研究をレビューした有力な文献(Amato & Gilbreth、1999)が10年ほど前に発表され、養育の質が量よりも重要であるという見解が定着した。具体的には、Amato & Gilbrethは、子どものアウトカムにおいて、交流の頻度が父子関係の他の2つの諸元、即ち、父と子の感情的親密さと父親の民主的養育スタイルよりも重要ではないことを見出した。彼らは、レビューした研究における具体的な行動―親子で企画に取り組む、子どもの問題に耳を傾ける、学校の勉強を見守り手伝う、助言を与える、規則を説く、強制せずに躾ける―を民主的養育スタイルの指標としてコード化した。Amato & Gilbrethの研究結果はその後も影響を与え続け、多くの研究者が別居している父親の養育時間の量を増やすことが子どものためになることに否定的な見解を示している (例えば、Hawkins, Amato, & King, 2007; Stewart, 2003)。しかし、この節の後半では、それらの研究は養育時間の量の影響を測定する代わりに交流頻度の影響を測定しているので、裁判所や政策立案者は、そこから養育時間の量の影響が意味することを注意深く読み取らねばならないことを述べ、加えて、より良い尺度を用いた養育時間の量に関する研究を示す。
 Amato & Gilbreth (1999)は、1999年以前の研究の殆どが交流頻度を測定していたが、訪問の期間や規則性を測定している研究はほんの僅かな数であったと指摘した。父親と子どもの交流頻度に対する質問では、「年1回」「月に1~3回」「週1回」等の限られた数の項目から回答を選択する方式が用いられた。 しかし、頻度は養育時間の量を表していない。例えば、2つの離婚家族が隔週父親の家で同じ時間を過ごす養育スケジュールを取り決めている場合、家族によって異なる項目を選択し得る。一方の家族は月に2回の訪問として数え、「月に1~3回」と報告する。もう一方の家族は月に4日として数え、「週1回」と報告する。例え両方の家族が「月に1~3回」と報告したとしても、一方の家族にとっては2日間の週末訪問、もう一方の家族は3日間の週末訪問であるかもしれない。Argysら(2007)は、最近いくつかの大規模な調査-そのうちの4つは頻度を測定していた-を比較し、「父子交流の報告において最も顕著なことは何か・・・そしておそらく研究者にとって最も由々しいことは、報告される父子交流の実施率が調査毎に著しく異なることである」(p. 383)と結論付けた。このように研究データが本質的な信頼性を欠いているため、父子交流の頻度と子どものアウトカムとの間に一貫した関係を見出すことが困難になっている。1999年以前の研究の多く、そして今日の多くの研究が、頻度を測定したいくつかの国家調査¹、そして、その他の国家および州の調査²に基づいている。個々の研究者(例えば、Coley & Medeiros, 2007; Laumann-Billings & Emery, 2000)が、頻度の尺度を使用し続けているだけではない。
 1980年代以降になっても相変わらず、離婚に関する研究に、養育時間に関する標準的な尺度は存在していない。Argysら (2007) は、自らが実施した調査で、「(父子交流に関する)質問の言い回しのばらつきが重要である」と指摘した(p. 382)。Argysらのレビューがきっかけになり、上手く行けば、離婚研究の分野における養育時間の量に関し、確かで信頼できる尺度の開発が始まるかもしれない。何故なら裁判所や政策立案者がその情報を非常に必要としているからである。僅かながら進展もある。Smyth (2004)は、オーストラリア家族学研究所³が設計した電話調査について研究結果を述べている。[ii] Smythらは電話調査の質問を使用して各家庭を個別のグループに分類し、各家庭が実践している種々の養育計画を明らかにした。質問は養育時間を計算できるようになっていた。しかし、この質問の欠点の一つは、型通りの養育計画を持っていない親や、遠くに住んでいて年間計画を持っている人には当てはまらないことである。もう一つの欠点は、回答が質問した時点で実施している養育計画しか捉えられないことである。例えば、転居によって養育計画を変更した場合、その家庭のデータは、子どもがこれまでずっと実施していた養育計画を表していない可能性がある。
 一方、Fabricius and Luecken (2007)は、異なるアプローチを採った。彼らは青年に過去を振り返ってもらい、4つの質問をした。質問内容は、一学年の間と休暇中に父親と昼夜を問わず過ごした日数の代表値である⁴。養育時間の量は回答から計算可能であり、後述する新たなデータは、このアプローチ方法を使用して採取した。 この振り返りアプローチの利点は、離婚後の最も典型的または代表的な期間に焦点を当てた回答を得るのが可能なことである。
 養育時間に関する確かな尺度を手に入れることは、養育時間の量と質に関する相対的な重要性の問題を解くための前提条件の1つだが、養育時間の質に関する確かな尺度を持つことでもある。その問題には次節で目を向ける。 
 これまで述べてきたことを以下に要約する。

  • 古い尺度で収集されたデータにより、養育時間の量に対する重要性が疑問視された。

  • 古い尺度は、養育時間の量ではなく、訪問の頻度を反映していた。

  • 新しい尺度は、養育時間の量を反映している。

時間の量と時間の質の区別

 Argysら(2007) も、「最も重要なのは、[別居親との]親子交流の質に関する尺度である。というコンセンサスは得られていない」(p. 396)と結論付けた。コンセンサスが欠如していることは、表1から明らかである。表には質の高い父親の関与をテーマにした最近の4研究を取り上げた。研究には、3つの異なる国家調査が使用されている。大規模な全国調査には、程度の差こそあれ、本章のモデルの中心的な構成概念、即ち、親と子どもが行っている直接交流(IN)の量、子どものニーズと要求に対し親が応答する程度(RE)、親子関係における子どもの情緒的安心感(ES)の3つを取り入れた項目が含まれている(図1)。表1から、各研究で高品質の父性愛に基づく養育について構成概念を組み立てているものの、コンセンサスが得られていないこと、そして、それぞれの研究が独特の方法で同一の構成概念に交流(IN)、応答性(RE)、情緒的安心感(ES)を混ぜ合わせていることがわかる。
 この分野で必要なのは、別居親の関与の質と、関与の質が養育時間にどのように関連するかを、これまで以上に原則に基づき理論的分析を行うことである。本章の図 1に示したスキームは、理論に基づいており、直感的にも理解できるだろう。第一に、Lamb, Pleck, Charnov, Levine (1985)の古典的な分析によれば、親子が一緒に過ごす時間は、子どもが親を利用できる時間と、親子が実際に交流する時間に分けることができる。別居親の場合、養育時間(PT)を通して利用可能性を提供する。しかし、このスキームでは、交流を更に数量 (IN) と品質 (RE)に区別する。一貫した規律や見守り等のような一方の親の行動が重要でないから省略しているわけでもない。養育時間に関連する可能性が高い親の行動 (IN) と養育時間に関連する可能性が低い親の行動 (RE) とを区別することに主眼を置くからである。
 第二に、これらの3つの諸元(IN、RE、ES)は、アタッチメント理論(Bowlby, 1969)の中心的な構成概念に基づいている。アタッチメント理論によれば、交流に対する親の利用可能性と子に対する応答性の両方が幼児の親との情緒的な繋がりに対する安心感、そして最終的には健全な自立の発展に貢献する。親の利用可能性と応答性という親の行動から、子どもは親の支援と世話が今後も受けられると信じるようになる。Robert Karen (1998)は、アタッチメント理論の歴史的発展と現在の研究をレビューした後、アタッチメント理論を次のように要約した。「子どもたちが感情的にも知的にも力強く成長するには、親の利用可能性と応答性が必要である」(p. 416)。
 第三に、青年が自分と両親との関係を考える際に、青年の心の中でこの三つの諸元が何よりも重要であることが見出されている。父親が思春期の子どもの発達にどのような役割を演じるか調査するため、縦断研究を行った。募った393家族の子どもと、学年がグレード7の時とグレード10になった時にオープンエンドの面接をして、子どもが述べた親との関係を分析した。対象とする家族はアングロサクソン系アメリカ人とメキシコ系アメリカ人の家族が半々、非離婚家族と継父の家族が半々の構成にした (標本の詳細はBaham, Weimer, Braver, & Fabricius, 2008, and Schenck et al., in press参照)。親の類型(同居する母、同居する実父、同居する継父、別居する実父)に関らず、グレード7の時とグレード10の時の両方、アングロサクソン系とメキシコ系の両方のグループで、ほぼ全ての青年が自発的に交流(IN)、応答性(RE)、情緒的安心感(ES)の項目で両親と自分との関係を評価した。交流(IN)の例は「母は何をするにも私たちと一緒です」「父は時々私をバスケットボールに連れて行ってくれます」「お互い別々に行動して、一緒にいることは殆どありません」、応答性(RE)の例は「父は私をいつも見守ってくれています」「父は私に関心を持ってくれてます」「私が助けを求めると、母はいつも大忙しなんです」、情緒的安心感(ES)の例は「父は私を癒してくれます」「母は素敵だけど、意地悪をする」「父は私をよく怒鳴りつける」である。アタッチメント理論によれば、子どもは幼児期の親の行動(INおよびRE)から両親それぞれにアタッチメントと情緒的安心感を形成する。青少年になっても未だに幼児と同じ一般的な分類に準じた親の行動を観察し、区別していることは注目に値する。この発見は、Aquilino(2006)の発見と一致している。Aquilino(2006)によれば、子どもが青年になった時の父親の関与や父親と密な関係を測定したところ、思春期における父親との頻繁な交流が最も重要な予測変数であったという。青年になった子どもが両親との関係を述べる上で依然として上述した親の行動(INとRE)を重要視している事実は、本章のモデルが交流(IN)と応答性(RE)を根本的に区別することに更なる正当性を与えている。Bowlby (1969)が常に強調していたように、アタッチメントのプロセスは、生涯を通じて作動し続けているのである。
 図1は、「子どものアウトカムには養育時間の量や質が何よりも重要なのか」または「養育時間や親子関係は何よりも重要なのか」いった問いかけは、論点をすり替えたストローマン論法を用いた比較であり、ディベートするまでもないことを明らかにしている。図1に示すように、養育時間は親子交流を介して情緒的な安心感を伴う親子関係を構築するのに役立つが、応答性を含むそれ以外の親の行動も同様である。情緒的な安心感を伴う親子関係は、ポジティブな子どものアウトカムを保証してくれる。従って、養育時間は因果連鎖の中で最も左端に位置するのに対し、親の応答性や親子関係の情緒的安心感のような行動(通常はルーブリックの「品質」に包含される別の構成要素である)は右端に位置して子どものアウトカムに近接している。因果連鎖の中で子どものアウトカムに近い位置にある親の行動は、遠く離れた親の行動よりも、子どものアウトカムに対し強い相関関係を持つことになる。養育時間や様々な養育の品質に関する指標が子どものアウトカムにとって重要か否かを問うことは、それぞれの親の行動が因果連鎖内で子どものアウトカムから同じリンク数離れた位置を占めている理論的モデルが前提になっている。しかし、そのようなモデルはこれまで提案されておらず、そのようなモデルが存在しない以上、そのモデルを前提においた問いかけは公正ではない。本章のモデルで、例えば、交流(IN)と応答性(RE)のどちらが情緒的安心感(ES)にとってより重要かを尋ねるなら公正である。しかし、次節で焦点を当てるのは、裁判所や政策立案者にとって何よりも重要で、新たなデータがある、「養育時間(PT)と父親と一緒にいる時の情緒的安心感(ES)との強い関係は何なのか」という問いかけである。
 これまで述べてきたことを以下に要約する。

  • 研究では通常3つの項目を測定しているが、しばしば混乱が見られる。3つの項目とは、親と子どもが行う直接的な交流の量、親が子どものニーズや要求に反応する度合い、親子関係の情緒的安心感である。

  • 3つの項目はアタッチメント理論に基づいて区別されており、また、青年が自分と両親との関係を述べた内容にも基づいている。

  • 本章のモデルは、養育時間のが父子交流のに影響を与えること、その結果、父子関係の(即ち、安心感)に影響を与えること、つまり、養育時間は、父子交流の(即ち、父親の応答性)に影響を与えないことを示している。

  • 養育時間の量や質が何よりも重要かという問いかけは、ストローマン論法を用いた比較である。

養育時間の量と親子関係の質に関する新しい調査結果

 16歳になる前に両親の離婚を経験した1030人の学生を対象に、2005年から2006年にわたって調査を実施した。学生たちの両親は平均して約10年前に離婚していた。学生は入門心理学部が管理するオンライン調査を受けた。調査は施設内審査委員会の人間被験者承認を事前に得ている。この調査には、脚注4の養育時間に関する質問のほか、過去と現在の家族関係や状況に関する多数の質問を含んでいた。このため、父子関係、母子関係で別々に点をつけることにより、幾つかの観点から両親との関係で子どもが抱く情緒的安心感を捕捉することができた。得点は、調査時において学生が見た親子関係の状態を表していて、学生の年齢は一般に18歳から20歳なので、この調査で養育時間(PT)と情緒的安心感(ES)の長期にわたる関連性を評価することができる。
 図2は、父親と過ごした養育時間(PT)と父親と過ごした際の情緒的安心感(ES)との関係を示す。横軸は「月」(つまり 28日) 当たりの養育時間(PT)を表し、13~15日の目盛で垂線を引いた。この垂線は、各親と過ごす養育時間(PT)が50%であることを表す。父との養育時間(PT)が0%から50%(相関係数r=0.51,N数=871,P値<0.001)の範囲では、養育時間(PT)が増加する毎に情緒的安心感が改善している。父との養育時間(PT)が50%から100%の範囲では、情緒的安心感は統計的に有意な変化(相関係数r=0.51,N数=152)を示していない。即ち、この範囲は子どもが主に父親と一緒に暮らしているケースとなりサンプルサイズが小さいことから、ジグザグは信頼性が低く、 おそらく不規則変動を示していると思われる。
 分かりやすくするため、図2に母子関係の得点を記載していないが、別の研究(Fabricius, 2003; Fabricius & Luecken, 2003)で見出したように、長期的な母子関係は、父子関係と類似していた。即ち、父と過ごす養育時間(PT)が0%から50%の範囲では養育時間(PT)が増加しても情緒的安心感は一定のままだったが、50%を超える範囲では減少した。これまで得られた知見は、どちらかの親が子どもと同居していて長い時間一緒に過ごしている場合、もう一方の親との養育時間(PT)を増やしても、子どもと同居親との関係に害を及ぼすリスクがないことを示している。それどころか、別居親の養育時間(PT)が増加すると、子どもと別居親の関係が改善し、子どもは両親同等の養育時間(PT)を含め、恩恵を受け続けられる。なお、養育時間(PT)が50%の時点で、それぞれの親子関係における情緒的安心感が最高水準に達するようである。
 父親と過ごす養育時間(PT)は情緒的安心感(ES)と極めて強い相関がある。相関係数0.51は、学生間の人間関係における安心感のバラツキについて、その約25%を養育時間(PT)で説明し得ることを意味する。本章のモデルでは、養育時間(PT)は情緒的安心感(ES)に影響を与える親の行動の一つに過ぎず、養育時間が可能せしめる父子交流(IN)の量を通じてのみ間接的に影響を与える(Fabriciusら(2010)は、養育時間(PT)が親子交流(IN)と有意に相関し、応答性(RE)と相関していないという別の証拠を報告した )。長い時を経ても被験者の約4分の1が養育時間(PT)でその後の人間関係における安心感を説明できるという事実は重要である。そこで、養育時間(PT)が情緒的安心感の変化を引き起こすという仮説を立てた。そして、因果関係を直接明らかにすることはできないが、0%から50%までの養育時間(PT)領域に渡って情緒的安心感(ES)が増加するのは、3日毎に分けた養育時間(PT)のそれぞれの領域で父親が自己選択した養育時間と実績養育時間とに差異が存在するためであるという対立仮説を考えた。ところで、自己選択は 2つの道筋で発生する可能性がある。子どもに無関心な父親-子どもが大学生の年齢に達した時点で最終的に父子関係が最悪の事態に陥る-の大半が0%の養育時間(PT)を自分で選択するか、他者に割り当てられるであろう。そして、そのような子どもに無関心な父親は、養育時間(PT)領域が50%に上昇するにつれ、その領域に該当する養育時間を選択または割り当てられる可能性は徐々に低下するであろう。同様に、取り分け子どもに関与してきた父親や関与しようとする父親の場合は、逆の自己選択プロセスが生じる可能性がある。
 そこで、先ず父親関係の最低得点から最高得点までを5つのグループに5等分し(五分位)、自己選択を説明することができるか調べた。上位20%は最も子どもとの関係が良い父親であり、自己選択仮説に従えば、子どもに最も関与してきた父親や関与しようとしている父親ということになる。下位20%は恐らく最も子どもに関心が無い父親ということになる。つまり、自己選択仮説は、父子関係における安心感が養育時間(PT)0%から50%の領域に渡って増加するのは、その養育時間(PT)領域に渡って特に子どもに関与した/または無関心な父親が分布しているためだと説いている。自己選択仮説によれば、第1五分位内か第5五分位内のいずれかで養育時間(PT)と情的安心感(ES)の間に有意な相関関係を見出す可能性は低いだろう。そのためには、子どもが大学生の年齢に達した時に抱く親子関係の安心感レベルと最終的に一致し得る養育時間(PT)領域を、子どもに特に関与した父親や特に無関心な父親が自ら選択、または割り当てられるという、驚くべき再現性が必要になるだろう。実際には寧ろ、第1と第5の両方の五分位で養育時間(PT)と情緒的安心感(ES)の間に有意な正の相関関係があり、また、第2から第4五分位のうちの2つにおいても有意な正の相関関係があった。このことから、最も子どもに関与した父親がより高い養育時間(PT)領域に分類された、もしくは、最も関心の低い父親がより低い養育時間(PT)領域に分類されたとする、自己選択仮説が説く養育時間(PT)と情緒的安心感(ES)との関連は、データの詳細を十分に説明できないことが分かる。Fabriciusら(2010)も自己選択仮説を考慮はしたが、父親と子どもはより多くの養育時間(PT)を望んでいるという一般的な知見に照らして「自己選択仮説は今や否定的に見るべきだ」と結論づけた(p. 214)。図2に示す新たなデータは、自己選択仮説を否定する更なる根拠となっている。入手可能な証拠は、養育時間(PT)が父子関係の安心感に影響を与えるという仮説と更に整合している。
 過去の研究(即ち、Amato & Gilbrethがレビューしたもの、1999年)は、父子交流と父子関係との関連よりも、父子交流と子どものアウトカム、具体的には抑うつ、攻撃性、学業成績他との関連に焦点を当てていた。しかし、研究テーマは変遷を続けていて、Fabriciusら(2010) は、親子交流と親子関係の関連に焦点を当てた研究をレビューした。親子交流と子どものアウトカムに関する研究が説得力に欠ける調査結果だったのとは対照的に、最近の研究は、親子交流と親子関係との首尾一貫した関係を見出している。最近の諸々の研究を表2にまとめた。
 これまで論じてきた内容を要約すると次のようになる。

  • 本章のモデルと一致し、長期的な父子関係は、どのレベルの養育時間でも改善する。そして、養育時間(PT)が母親と同じになるまで、子どもが受ける恩恵は増え続ける。長期的な母子関係は、養育時間(PT)が父親と同じになるまで一定のままである。

  • これまでの述べた科学的根拠から、養育時間の量が親子関係の安心感に因果効果を及ぼすという結論が更に強固になる。養育時間の量と安心感との関連が自己選択に起因するという説は疑わしい。

  • 他の多くの研究もまた、父子の交流と父子関係の間に一貫した関連を見出している。

養育時間の動向

 裁判所と政策立案者は、養育に関する文化的価値観と基準の変化を認識せねばならない。なぜなら、監護権政策とその実践の正当性は養育の価値観と基準を正確に反映することで、ある程度担保されているからである(Fabricius,et al.,2010)。通常両方の親が等しい養育時間を持つことが子どもにとって最善である、という強いコンセンサスが世間一般に存在する。両親均等な養育時間が子どもの最善に資するかという質問をした場所全てで、そして米国とカナダの全人口層の大多数が、複数の質問形式のバリエーションでも、均等な養育時間の効果を支持している。質問形式のバリエーションには、離婚前に各親が行った育児の量の違い、両親間葛藤の程度の違いを考慮するための質問も含んでいる。表3は上述した意向調査を要約したものである。世間一般のコンセンサスを最もよく特徴付けるのは、恐らく養育に関する文化的価値であろう。男女共同参画への長期的な歴史的傾向との繋がりと、その普遍性と堅牢性の証拠の両方を考えると、単なる主張と捉えるより、そう捉える方が寧ろ自然である。この文化的価値は図2から得られる知見と一致している点に注目されたい。
 実際の基準では、父親との養育時間はゆっくりと増加、特に両親均等な養育時間が漸増しているように見受けられる。2005~06年に収集されたデータによれば、平均して10年前に両親の離婚を経験した学生の約9%が両方の親と等しい養育時間を持っていた、つまりPT(50%)であった。ウィスコンシン州では、均等な養育時間が1996~9999年の15%から2003~044年には24%に増加した(Brown & Cancian, 2007)。ワシントンでは、2008年から09年にかけて、養育時間PTが等しい離婚した両親の割合は約20%であった(Washington State Center for Court Research, 2009)。アリゾナ州では、両方の親に均等な養育時間PTを指定する事件簿の割合が2002年の5%(Venohr & Griffith, 2003)から2007年の15%、3倍になった(Venohr & Kaunelis,2008)。 なお、アリゾナ州の事件簿は、法律婚で離婚した両親と事実婚の両親の両方を含んでいたが、以前は法律婚で離婚した両親だけが対象だったので、その違いが割合に反映されている。均等な養育時間を実践している割合は、その価値を認めるコンセンサスの割合より低い。Fabriciusら (2010) は、この点について考えられる複雑な理由を議論している。
 裁判所は科学的知見からも政策と実践の正当性を担保する。交替居所を伴う共同養育を実践する家族の調査結果が明らかになっている。2002年、Bausermanは共同監護権と単独監護権を比較する研究に関し包括的なレビューを発表した。このレビューには、1,846人の単独監護権で育った子どもと814人の共同監護権で育った子どもを含む11の出版物と22の未発表(ほぼ全てが博士論文)研究が含まれていた。 「共同監護権」のカテゴリには、身体的単独監護権を採る法的共同監護権だけでなく、身体的共同監護権が含まれていた。共同監護権で育った子どもは、一般的な適応、即ち家族関係、自尊心、感情的および行動の適応、及び離婚固有の適応が、(両親が離婚していない子どもと同程度であるだけでなく)単独監護権で育った子どもよりも有意に良好だった。法的共同監護権を実践する家族と身体的共同監護権を実践する家族では、共通して子どもが利益を得ており、両方とも「実際にかなりの時間をそれぞれの親と一緒に過ごしていた」 (p.93) ことが分かっている。
 しかし、争点となるのは、身体的共同監護権を望んだ両親が別の親より「優れて」いたことが子どもの適応が良い要因になっている可能性である。古典的研究文献「スタンフォード・チャイルド・カスタディ・スタディ」(Maccoby & Mnookin, 1992)では、両親が身体的共同監護権を望む傾向にありそうな特性だけでなく、養育に関してより多くのスキルとリソースを持っていそうな特性を統計的に制御した。この特性には、教育、収入、両親間の当初における敵意の程度が含まれる。この特性を制御した後でさえ、身体的共同監護権で育った子どもは依然として自分たちの養育の取決めに最も満足を示し、最も長期的適応が良かった(Maccoby, Buchanan, Mnookin, & Dornbusch, 1993)。更に、身体的共同監護権を実践する両親の大多数が、当初は身体的共同監護権を望んでおらず、同意していなかった。 Maccoby & Mnookin(1992)は、裁判所の判決が出る前の両親に当初選択した監護権のタイプをインタビュー(「実際になされた、あるいは要求されるであろう法的手続きに関わらず、身体的単独監護権のどの点が個人的に良いと思ったのか」p. 99)してデータを収集した。「スタンフォード・チャイルド・カスタディ・スタディ」の初期の波を使用して、単独監護権または身体的共同監護権のいずれかの願いを表明していた両親のうち、身体的共同監護権を実践していたのは92家族であると判断した。両方の親が身体的共同監護権を望んでいたのは、92家族のうち僅か19家族だった。身体的共同監護権の家族における最大のサブグループ(N=37)は、母親が自分自身ために身体的単独監護権を望み、父親は身体的共同監護権を望んでいた。先の19家族では、それぞれの親が自分だけのために身体的単独監護権を望んでいた。従って、当初から身体的共同監護権に同意していた両親は非常に僅かで、大多数が身体的共同監護権に当初反対していたが受け入れざるを得なかった親であった。反対していた親の約半数が、裁判所をある程度利用(調停、監護評価、裁判、裁判による賦課)した後、已む無く結果を受け入れていた。にもかかわらず、身体的共同監護権で育った子どもは、数年後に最もよく適応していた。
 次に裁判所や政策立案者が養育時間と両親間葛藤に関して直面していることに目を向ける。ここまでは、養育時間(PT)の量が親子関係の情緒的安心感に及ぼす影響に関し、その根拠と根底にある理論、および科学と現代の文化的な養育価値との間の一貫性を検討してきた。次節では、高葛藤の家族で養育時間と情緒的安心感との関係が変化するか否かを検討する。
 これまで論じてきた内容を要約すると次のようになる。

  • これまでの全ての世論調査結果から、両親が均等な養育時間を持つことは、広く一般大衆に支持されていることが分かる。

  • 実際、両親の養育時間は均等になる方向にゆっくり進んでいる傾向が見受けられる。

  • 身体的共同親権で育つ子どもは、身体的単独親権で育つ子どもよりもかなり発達に優れている。この調査結果は、身体的共同親権を選択する両親が他の親より「優れて」いたからという単純な理由ではないように見受けられる。

高葛藤の家族は養育時間を制限すべきか?

先行研究は混乱を来しているが整理可能

 裁判所や政策立案者が直面する厄介な問題の一つは、葛藤が激しい両親の養育時間決定に関わることである⁵。養育時間が増加すると子どもが更に多くの葛藤にさらされるという主張があるが、いささか混乱をきたしている。養育時間が増えること自体が、子どもをより多くの両親間葛藤にさらすことになるのか必ずしも明らかではない。別居親との交流が頻繁な養育時間スケジュールは、それぞれの親の養育時間が不連続になり、結果として両親間の行き来が多くなる可能性がある。加えて、それほど知られていないが、この問題に関する先行研究は、実際のところ非常に混乱を来している。Amato and Rezac(1994)とHetherington, Cox, and Cox(1978)は、高葛藤の家族で頻繁な親子交流を行うと、子どものアウトカムが乏しくなる傾向を見出した。Johnston, Kline, & Tschann(1989)は、親権を裁判所で争った著しく高葛藤の家族から成るサンプルから、単独親権を取決めた家族で訪問の量が増えると一般的に子どもに有害であることを見出した。これらの調査結果から、幾人かの評論家(例えば、Amato, 1993; Emery, 1999)が、高葛藤が存続する場合は養育時間を制限することを提唱するようになった。
 その一方で、正反対の証拠が少なくとも同程度存在する。Buchanan, Maccoby, and Dornbush(1996)は、高葛藤の家族で訪問の量が増えても有害なことを見出せず、Crosbie-Burnett(1991)は、高葛藤の家族で交流の頻繁が増えても有害なことを見出せなかった。Johnstonら(1989)の研究結果は、単独監護権の家族に限定した結論だった。即ち、身体的共同監護権の取り決め(子どもが父親と月に12~13日過ごした)をした家族の子どもは、単独監護権の子どもより適応が悪くなかった。Amato and Rezac(1994)の調査結果は少年に限定したものだった。即ち、高葛藤の家族で交流の頻度が増えた少女は、アウトカムが悪化しなかった。Healy, Malley and Stewart(1990)とKurdek(1986)は、両親間葛藤が激しい場合、訪問の頻度を増やすと、寧ろ適応問題が減少するという反対のパターンを見出した。同様に、Fabricius and Luecken(2007)は、葛藤が高頻度の家族、低頻度の家族の両方で、養育時間が増えると父子関係が改善すること、そして、父子関係の安心感に与える両親間葛藤のネガティブな影響を打ち消す役目を果たすことを見出した。
 このように研究によって調査結果が異なる理由は、その研究で交流頻度を測定したのか、それとも養育時間の量を測定したのか区別することで部分的に説明できる。大部分の研究が交流頻度を測定し (Amato & Rezak, 1994; Crosbie-Burnett, 1991; Healy et al., 1990; Hetherington et al., 1978; Kurdek, 1986)、それらの研究では異なる結果が混在していた。しかし、養育時間の量を測定した研究では、結果が一致していた。Buchananら(1996)とFabricius and Luecken(2007)は、養育時間が増えても高葛藤の家族に有害ではないことを見出し、Johnstonら(1989)は交替居所が監護権を裁判所で争った家族に有害でないことを見出した。確かにJohnstonら(1989)は、単独監護権を取り決めた家族で養育時間を増やすことは有害であることを見出した。しかし、彼らの研究では、期せずして養育時間の量と子どもが親の間を行き来する頻度とが実質的に相関していた。このように、しばしば研究によっては、交流頻度を増やし葛藤のある両親間の行き来が増えると子どもに有害となり得ることを示すが、有害になる理由は、恐らく子どもが葛藤の場面に曝される頻度が増えるからであろう。もっとも、両親間の行き来を制限する方法は2つある。1つは訪問を幾つか間引く方法で、もう1つは、幾つかの訪問を結び付けて長くし、中断のない期間にする方法である。1番目のケースでは養育時間の量が減少し、2番目のケースでは養育時間は変わらないか増加する。2番目のアプローチは高葛藤の家族で引き続き実行可能であり、望ましいことは疑いない。なぜなら、葛藤する両親を持つ殆どの子どもにとって養育時間のを増やすことが有害であるという証拠や、親同士が長い期間監護権を争っている子どもにとって交替居所は有害であるという証拠が存在しないからである。それどころか、低葛藤の家族はもちろん高葛藤の家族でも養育時間の増加を通じて、父子関係を強化できる (Buchanan et al., 1996; Fabricius and Luecken, 2007; Johnston et al., 1989)、強化された親子関係によって、子どもを両親間葛藤の影響から部分的に保護することができる (Fainsilber- Katz & Gottman, 1997; Sandler, et al., 2008; Vandewater & Lansford, 1998) という科学的根拠が示されている。
 これまで述べてきたことを以下に要約する。

  • 交流頻度に古い尺度を使用した研究では、両親間葛藤が激しい家族は、親子交流が頻繁になると子どもに害を与えるという結果もあれば、害を与えるとは言えないという結果もあった。即ち、交流頻度の高い家族の一部で、家族間の行き来が多くなることが原因になって子どもに害を与えている可能性がある。

  • 養育時間の量を測定したところ、養育時間を増やすことは子どもにとって有害ではなく、寧ろ高葛藤の家族でさえ有益であるという矛盾のない研究結果が得られた。

葛藤が深刻なケースにおける新しい研究結果

 激しい両親間葛藤の家族における養育時間と親子関係の関連を、上述した新しい2005年から2006年のデータセットを用いて更に詳しく調査した。Fabricius and Luecken(2007)における両親間葛藤の尺度では、両親間葛藤の頻度を質問した。本章では別の尺度を検討し、親が最終的に別離する前、別離中、別離から最大5年経過した後の3点における両親間葛藤の深刻さを質問した。図3に、養育時間(PT)と父子の情緒的安心感(ES)との関係を、親同士が高葛藤であると答えたと学生と低葛藤であると答えた学生とを対比して示す。両親間葛藤が高いケースと低いケースの両方で、養育時間を増やすと父子関係が良くなることは明らかである。これらの両親間葛藤の程度に関する研究結果は、Fabricius and Luecken(2007)の葛藤の頻度に関する研究結果を再現、拡張している。なお、これらの調査結果を採用し、暴力や虐待がある家族に適用してはいけないのは言うまでもない。
 これまで述べてきたことを以下に要約する。

  • 長期的な親子関係は、両親間葛藤がより深刻な家庭だけでなく、全く深刻でない家庭でも養育時間の増加に伴い改善した。

  • しかし、この調査結果は、暴力や虐待がある家庭に適用してはならない。

子どもの長期的な身体的健康への関連

リスクのある家族

 離婚に伴い往々にして発生する壊れた親子関係と両親間葛藤は、子どもを精神的健康問題を抱える危険に曝す。長い間離婚に関する研究は、このことを明らかにしてきた。最近では「リスクのある家族」に焦点を当てた身体的健康に関する研究が、離婚に関する研究と関連を持つようになっている。その理由は、子どもの身体的健康に重大な影響を与える長期的ストレスが、精神的健康問題と同一の家族要因から生じているためである。 また、身体的健康に関する研究は、家族要因が引き起こす根本的な生理機構に関しても洞察も与えてくれる。しかし、その研究結果は離婚に関する文研究に未だ取り上げられておらず、裁判所や政策立案者にはあまり知られていないようである。
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校のRena Repetti, Shelley E. Taylor, and Teresa E. Seemanは、2004年に権威あるジャーナル、Psychological Bulletinに初めて家族関係に関する大規模な身体的健康文献のレビューを掲載し、機能不全を起こしている家族の関係は「精神疾患、主要な慢性疾患、および早期死亡のリスクの蓄積につながる」と結論付けた(p. 330、強調を追加)。 この文献では数十年前に始まった15件の大規模な、縦断的身体的健康研究をレビューしているが、幸いなことに、その研究の多くが、食事、アルコール、運動、喫煙などに関する質問に加えて家族関係に関する質問を幾つか含んでいた。調査結果は、激しい両親間葛藤だけでなく、冷たく、支援のない親子関係、いわゆる「リスクのある家族」によって特徴づけられる家族が子どもたちに悪影響を及ぼすことを矛盾なく指摘している。調査結果は、両親で葛藤が生じている場合と親子関係が乏しくなっている場合の両方が、子どもに類似した影響を及ぼすことを示唆した。
 縦断研究により、家族内の葛藤と攻撃的行為は、少年の心臓病のリスク、癌のリスク、軽度の感染症の増加、成人期の肥満の可能性の増加、糖尿病に対する代謝制御の低下、自己申告の健康状態の全体的な悪化に関連していることが明らかになった。また、横断研究により、幼少期の低成長(Valenzuela, 1997)、一般的な健康状態の悪化(Gottman & Katz, 1989)が明らかになった。しかも、医学的問題を抱えていると診断された小児においては、病気の重篤な症状に対して制御能力低下を示した(Gil et al., 1987; Martin, Miller-Johnson, Kitzmann, & Emery 1998)。
 親子関係が乏しくなると、数年後に病気や身体的愁訴になる割合が高くなり(Gottman, Katz, & Hooven, 1996, 1997; Wickrama, Lorenz, & Conger, 1997)、中年期においてはより深刻な病状に至る割合が高くなる(Russek & Schwartz, 1997; Shaffer, Duszynski, & Thomas, 1982)ことが明らかになった。例えば、Russek and Schwartz(1997)は、1950年代初頭、ハーバード大に在学する男子学生に両方の親との関係を説明するよう求め、そのデータを調査した。回答書の記述は、ポジティブ(「非常に密接」「暖かく親密」)またはネガティブ(「大目に見る」「緊張し冷たい」)にコード化した。 母親との関係では12%、父親との関係では20%がネガティブにコード化された。35年後、元学生たちと対面インタビューを行い、入手可能な医療記録のレビューに基づいて彼らの健康状態を取得した。母親または父親とのネガティブな関係を説明した者のうち、85~91%が心血管疾患、十二指腸潰瘍、および/またはアルコール中毒を発症したのに対し、ポジティブな関係を説明した者は45~50%にすぎなかった。上述した研究は、ほぼ母親だけが子育てをしていた1950年代と1960年代に始まっている。それゆえ、崩壊した親子関係に係わる健康上のリスクは、育児の主な担い手である母親だけでなく、父親との関係が乏しくても、母親との関係が乏しかった場合と類似した影響を子どもに与えることを示している。この事実は注目に値する。
 親子関係の評価と両親間葛藤の評価を同時に実施した研究では、それぞれに関して類似した影響を見出した。例えば、Shaffer et al. (1982)は、医学部を1948年から1964年に卒業した男性医師のデータを調べ、家族同士のお互いに対する態度をポジティブ(暖かい、密接である、理解しあえる、信頼できる)か、ネガティブ(無関心、嫌い、苦痛、過度な緊張)かに分けて論じた。よりネガティブでポジティブな要素が殆どない家族関係を説明した男性は、年齢、飲酒、喫煙、体重超過、血清コレステロール値などの健康上のリスク要因を統制して調査した後でも、将来における癌の罹患リスクが高かった。
 これまで述べてきたことを以下に要約する。

  • 両親間に葛藤が生じている、あるいは、親子関係が乏しい、その何れかの特徴を有する家族は、早期死亡率を含む深刻で長期的な健康上のリスクを子どもが抱える。

  • 上述した研究は、ほぼ母親だけが子育てを担っていた1950年代と1960年代に始まり、母親または父親のどちらか一方との関係が乏しいと類似した悪影響を子どもに与えることを明らかにしている。従って、子どもに影響を与える親子関係は子育てを主に担う親だけに限定されるものではないことがわかる。

リスクのある家族が健康を害するメカニズムとしてのストレス反応システム

 Repettiら (2002)は、リスクのある家族が、乳幼児期および幼少期に生理学的および神経内分泌系制御に形成された蓄積性障害(即ち、視床下部-交感神経-副腎髄質(SAM)反応性、視床下部-下垂体前葉-副腎皮質(HPA)反応性、およびセロトニン作動性機能における障害)を通じて、子どもの身体の健康に影響を与える証拠を見出した。このような障害は、脳を含む器官や免疫系を含むシステムに影響を及ぼす可能性がある。最近の一致した見解(Troxel & Matthews, 2004; Ripetti et al.. 2004)では、両親間葛藤と乏しい親子関係の社会的プロセスが一定のストレスを家庭内に引き起こし、そのストレスが慢性的に活性化し、その結果子どもの生物学的ストレス反応を調節不全にする、心血管系機能の低下と高血圧(例えば、Ewart, 1991)および冠動脈心疾患(例えば、Woodall & Matthews, 1989)に至らしめ、恐らく子どもの情動的コンピテンスと自己調節技能の獲得を妨げる(例えば、Camras et al., 1988; Dunn & Brown, 1994; Dunn, Brown, Slomkowski, Tesla, & Youngblade, 1991)とされている。
 心理的なプロセスが、この調節不全に認知的情緒的な面を加える。現代的アタッチメント理論(Bowlby, 1969)によれば、親子関係が乏しくなると、不安、怒り、継続的な親のサポートに対する不信感、そして自尊心を低下させ、そのこと自体が慢性的に活性化し、子どもの生物学的ストレス対応を調整不全にする。Davies & Cummings(1994)のアタッチメントに基づく理論によれば、両親が葛藤すると、子どもは争っている一方または両方の親から自分が見捨てられるのを恐れ、同様に情緒不安定になる。図1のモデルでいえば、両親間葛藤は親子交流や応答性と同様の親の行動である。 両親間葛藤はまた、親が子どもに関わるのを止め、親子交流と応答性を減じることにもつながる(例えば、Fauber, Forehand, Thomas, & Weirson, 1990; Goldberg & Easterbrooks, 1984; Parke & Tinsley, 1981)。このように、両親間葛藤は、親子関係において子どもが感じる安心感に対し間接的に影響も与える。なお、図1はモデルを分かり易くすることを優先したため、上述した更に複雑なパスを記入していない。
 この情緒的安心感のメカニズムは抽象的な作り話ではない。例えば、誰かが銃を抜いたり、誰もいない立体駐車場で背後に足音を聞いたりして身に恐れを感じた時に、急場で経験する「闘争逃走」反応システムが私たちには組込まれている。現代心理学における最大の進歩の一つは、このシステムが家庭で子どもが正常に発達する間にどのように機能するかを見出したことである。無力な乳児と幼少児が敏感に検知する安全と保護に対する主な脅威は、親の不在、親の不応答、および両親間葛藤である。急性型の場合、親の不在等の脅威は、全ての大人が脅威を感じた時に経験するのと同じ息切れ、血圧と心拍数の増加、恐怖等を子どもに引き起こす。なぜなら、息切れ等の症状は同一の強力なホルモンが瞬間的に放出されることによって引き起こされるからである。機能不全に陥った両親間葛藤と冷淡な親子関係を特徴とする家族は、子どもがこれらの脅威を繰り返し経験し、脅威がない時に脅威を予期して事前に対処することを学ぶ。このような状態下に置かれた子どもは、上述したホルモンが慢性的に低下し、長期的な健康上の問題を子どもに引き起こす。
 最近調査した離婚家庭の大学生は、その約40%が父親と最小限の養育時間しか過ごしていなかったことを熟考するなら、そして、図2を見て最小限の養育時間を過ごすという壊れた父子関係が、今は若年青年と父親の関係に形を変えてそのまま存在していることを確認したなら、更に、両親との関係が疎遠であると調査と同様の回答をした若年成人の生涯にわたる健康アウトカムに壊れた父子関係を結びつけて考えるなら、若年青年が示した個人的な悩みの程度に-公衆衛生上の問題の観点から-警戒すべきである。図3を見て、深刻な両親間葛藤も経験した人の父親との関係がさらに悪化していることを確認したなら、更に気に掛けるべきである。
 これまで述べてきたことを以下に要約する。

  • アタッチメント理論と一致し、両親が利用可能性と応答性を欠いていた場合、若しくは互いに葛藤している場合、子どもはその状況を継続的な支援への脅威と認識し、ストレス応答システムが慢性的に活性化するようになる。

  • ストレス対応システムが慢性的に活性化すると、子どもの臓器やシステム自体が損傷を受ける。

離婚家庭の子どもの健康リスクを減らすために裁判所や政策立案者が利用できるメカニズム

 上述した調査結果から、激しい両親間葛藤と冷淡な親子関係は、子どもの将来における多くの精神的健康問題や大きな病気に繋がる重大なリスクであることが分かる。その意味するところは、家庭裁判所と政策立案者は、両親間葛藤を最小限に抑えることと、親子関係を強化することを同等に考慮すべきということである。なぜなら、両者が子どもの健康に類似した長期的な影響を及ぼすからである。裁判所の管轄区域の多くが、確かに養育を積極的に促進することにより両親間葛藤を減らし、親子関係を強化する方針を有し、介入している。
 高葛藤な家庭の養育時間を制限すべきかという問題に取り組む場合、裁判所は養育時間の短縮に潜む親子関係を損なうリスクに考慮すべきである。頻繁で激しい両親間葛藤を伴う離婚家庭では、父親との養育時間を増やすと父子関係が改善することが証明されている。両親間葛藤が存在する場合に養育時間を制限すると、子どもがその親と交流できる量が制限され、親子関係を損なわれたり、子どもの身体的健康が長期的なダメージを2倍受けるリスクがある。裁判所は、両親間の行き来が少ないスケジュールや、両親が直接のやり取りをせずに済む行き来など、養育時間を短縮するよりも、子どもが両親間葛藤に曝されずに対処するより良い選択肢を持っている。両親間葛藤があるというだけで養育時間を原則的に制限するべきでないのは科学的根拠から明らかである。寧ろ、激しい両親間葛藤の家庭では裁判所が養育時間を増やす選択肢を検討すべきとデータは語っている。この結論は、高葛藤の家庭では養育時間を制限するという、一般に受け入れられている知識と慣習に真っ向から対立していると認識している。しかし、これまで論じてきたように、一般に受け入れられている知識と慣習の根拠は、高葛藤家庭の子どもの養育時間を増やすと子どもに有害な影響が生じるという強固な経験的証拠に基づいている訳ではない。高葛藤家族の子どもの養育時間を増やすことを検討すべきとする勧告は、両親間葛藤と親子関係が子どもの健康に与える影響は互いに無関係であり得るというRepettiら (2004)の結論と一致している。つまり、葛藤状態にある両親が、必ずしも子どもに冷淡で、子どもの支えにならない親とは限らないということである。この結論は、高葛藤家族でも親子関係を改善できることを意味する。改善した親子関係が両親間葛藤の有害な影響を打ち消すことができるという直接的な証拠は簡単に入手できる(Fainsilber- Katz & Gottman, 1997; Sandler, et al., 2008; Vandewater & Lansford, 1998)。
 養育時間の割り当ては、全家庭の親子関係を強化せねばならない裁判所や政策立案者にとって重要なツールである。証拠と理論の両方が、養育時間が増えると親子の交流を増やせるので、父子関係の長期的な質が改善することを示唆している。本章において、図2で示した証拠が、養育時間が親子関係に因果的な影響を及ぼすという比較的強い立論をしていると主張した。また、その主張は、アタッチメント理論が主張する因果的影響の理論的説明から支持されている。青少年が両親との関係を表現する上で親子交流が中心的な役割を演じていたことからわかるように、親子交流は青少年にとって極めて重要である。彼らは自分とそれぞれの両親との交流量を注意深く監視し、その量が個人的に十分であるかどうかを評価する。アタッチメント理論では、親の利用可能性は子どもにとって潜在的な脅威の1つとされ、子どもの情緒的安心感システムがその状態を監視するように設計されている。交流に費やした時間を通して、情緒的に密接で協力的な関係が発達するため、交流時間を失うと、子どもは慢性的なストレスに曝され、親との関係は壊れ、青年になってもその親子関係は変わらなかった。(例えば, Aquilino, 2006).
 裁判所や政策立案者は、養育時間の割り当てが親子関係を強化するツールであると考えることに消極的な場合がある。それは、次のような専門家の助言や証言をしばしば授かるからである。(a)養育時間の質が養育時間の量よりも重要である、(b)個々の家庭にとってどの程度の養育時間が最適かわからない以上、特定レベルの養育時間を促す政策は避けるべきである。(a)が不公平な比較である理由は既に議論した。そこで、ここでは(b)について類推を用いて議論する。教育水準は、人々が得る職種に影響を与え、その結果、生涯賃金に影響を与えるが、経済学者は次のように言って質問を組み立てない。「生涯賃金を決定する上で、教育水準と職種のどちらが重要なのか?」。教育は間接的な効果があるので、教育水準と職種のどちらか一方を選ぶこの質問は役に立たない。 職種と収入の相関関係は、教育水準と収入の相関関係よりも強いが、経済学者が教育に払う注意を減らすよう主張することにはならない。
 類推を更に進める。社会的に見て、どの人にどのレベルの教育を受けさせるのが最善なのか分からないこと、全ての人に同じレベルの教育を受けさせることはできないことは当然だと考えられている。にもかかわらず、生涯賃金を増やせるように教育の重要性を人々に知らせる政策を支持し、教育を望む全ての人が教育を受けられるようにし、全ての子どもに規定した最低水準に達するまで教育を奨励しさえする。教育のケースと同様に、裁判所と政策立案者は、どの家庭に対しても許容できる両親間葛藤のレベル、または親子関係における安心感のレベルを知ることができないにもかかわらず、両親間葛藤の低減、親子関係の強化を奨励する政策を制定している。ならば、教育のケースと同様に、裁判所と政策立案者は、個々の家庭状況に応じ、両方の親に対し一方の親の養育時間を最大化することを強く奨める政策を制定できるだろう。
 両親間葛藤が低い離婚家族でも高い離婚家族でも存在する養育時間と父子関係との強い関係。冷淡な親子関係がいかに子どもの長期的な健康を損なうかを何十年にもわたって築き上げてきた証拠と理論的な見解。両者は、多くの子どもにとって依然と継続している最小限の養育時間が、研究者、政策立案者、および個々の裁判所が注意を払うべき公衆衛生上の問題であることを示している。多くの研究(Fabricius, et al., 2010レビュー)が、子どもや離婚した父親は一般的に、より多くの養育時間を望んでいることを示している。異常な状況がなければ、特に高葛藤な家庭で、より多くの養育時間を与え、奨励することが子どもに好ましく、そのことを疑うだけの説得力のある理由は見出せない。

ガイドライン: 考慮事項と注意事項

  • 裁判所と政策立案者は、両親間葛藤を最小化することと、親子関係を強化することを同等に考慮して、類似する子どもの健康に対する長期的な影響を与えないようにすべきである。

  • 裁判所が子どもを両親間葛藤に曝さないようにするには、親子関係を損ないかねない養育時間の短縮よりも好ましい選択肢がある。即ち、子どもが両親間を頻繁に行き来せずに済む養育スケジュールや親同士が直にやり取りせずに子どもが両親間を行き来できる養育スケジュールを命令することである。

  • 実証結果と理論の両方が、養育時間の量が父子関係における子どもの長期的安心感に影響を与えること示唆している。裁判所は親子の交流時間を短縮する方法とは別の重要な方法を用いて親子関係を強化しなければならない。

  • 裁判所と政策立案者は、個々の家庭状況に応じて、両方の親に一方の親の養育時間最大化を奨励する政策を制定すべきである。

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脚注

¹ 全国青少年縦断調査 1979年(NLSY79; http://www.bls.gov/nls/nlsy79.htm);アメリカ家族調査 (NSAF; http://www.icpsr.umich.edu/icpsrweb/ICPSR/series/216);家族と世帯の全国調査 1987 (NSFH87) および 1992 (NSFH92; Sweet, Bumpass, & Call; 1988)。

² 青年期の健康に関する全国縦断調査1995-1996 年 (ADD HEALTH 95; Harris, et al. 2003); .全国青年縦断調査 1997 年(NLSY97; http://www.bls.gov/nls/nlsy97.htm);親と子どもに関するイギリス・エイボン縦断研究 1991 年(ALSPAC91; Golding,1996 年)、カナダの子どもと若者に関する全国縦断調査 1994-1995 年(NLSCY94; Juby, Billette, Laplante, & Le Bourdais, 2007);ウィスコンシン州の養育費実証評価 – 母親の調査、1990 年代後半 (WCSDE; http://www.irp.wisc.edu/research/childsup/csde.htm)。

³ 「一定のパターンの対面交流を実施していると報告した親に、6つの質問をしました。交流は、毎週、隔週、または毎月のスケジュールに基づいて取決めていますか? [週/隔週/月]ごとに、通常何回交流を妨害されていますか? [各]交流の妨害について考えます: 通常、交流は何曜日に始まりますか?交流訪問は通常、何曜日の何時に始まりますか?交流は通常、何曜日に終了しますか?通常、交流の訪問は何曜日の何時に終了しますか?」(スミス.2004; p.36)

⁴ 「離婚後の最も典型的な生活の取決めを考えると、どのようなものでしたか?⒜学年度の平均2週間のうち、あなたが父親とずっと一緒に過ごした日数[0~14日]は?⒝学年度の平均2週間のうち、あなたが父親と夜通しで過ごした(即ち、宿泊)の回数[0~14回]は?⒞15週間の学校休暇((クリスマス=2 週間、春休み=1週間、夏休み=12週間)のうち、あなたが父親と一緒に過ごした時間が学年度中とは異なっていた回数[0~15回]は?また、⒟上記の学校休暇中にあなたが父親と一緒に過ごした時間のうち、通常のスケジュールとは違っていた時間の割合[0%から100%まで、10%刻みで]は?

⁵ この問題は複雑であり、また紙面の都合上、ここでは身体的な暴力のレベルに達する葛藤は含めない。この点については、Lamb & Kelly (2009)が良い議論を展開しており、Jaffe, Johnston, Crooks, & Bala (2008) や Kelly and Johnson (2008) が観察した、身体的暴力の種類と期間を区別しなければならないという急速に変化する合意見解に言及している。

表1
父親の関与を調査した質の高い4つの研究における構築、項目、データソース
及び、研究項目を図1で示したモデルの構成要素に分類した方法

表2
父子交流と父子関係との関連に関する研究
表3
均等な養育時間に関する世論調査
図1
養育時間と親の行動、父親と一緒にいる時の子どもの情緒的安心感、
及び子どもの健康に関するアウトカムを関係付ける概念モデル
図2
学生が父親と過ごした1ヵ月(4週間)当りの養育時間の量と
若年成人になった時の父子関係における情緒的安心感との関係
図3
学生が父親と過ごした1ヵ月(4週間)当りの養育時間の量と
若年成人になった時の父子関係における情緒的安心感との関係
学生が申告した両親間葛藤の激しい場合(実線)と少ない場合(破線)で比較

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