小学校4年生向け生成AI導入授業③
1時間目:図工「AIによる絵画の鑑賞」
2時間目:国語「AIと詩を作ろう」
と来て、最後は
3時間目:道徳「AIと考える『絵葉書と切手』」
です。これ、基本的には2023年3月4日に行った公開授業と同じです。
ただ、あのときは「カナダに転校した子からのビデオレター」という飛び道具がありました。でも、今回は「小学校4年生に向けた生成AIの入門にふさわしい授業」がテーマですから、飛び道具を使うわけにはいきません。どこの学校でもできるように、ちょっと内容をいじりました。
教材は「絵葉書と切手」です。あらすじは…
遠くに引っ越してしまった友達からひろ子に絵はがきが届く。ところが貼ってある切手が足りず料金不足だった。料金不足だったことを兄は知らせたほうがいいと言い、母は知らせなくてもいいのでは、と言う。ひろ子は迷ったが、「やっぱり知らせよう」と考え手紙を書き始める。
今回は、ひろ子が迷ったところでお話を読むのを止めてみました。最後の結論をどうするか、お話の結末を知らせずに子どもたちに考えさせたわけです。前回、協議会で「そういう方法がいいのでは」とご指摘を受けたのでそうしてみましたが、これどっちでもいいですね。知らせない方が展開を作りやすいかもしれませんが…うん、どちらでもいいです。
まあ、ともかくそこで子どもたちは散々に悩みます。伝えるべきだ。いや、伝えない方がいい。それぞれにもっともな理由を出し合ったところで「じゃあ、AIの意見も聞いてみよう」とします。
Bingは厳密モードにします。そうすることによって、このようなやり取りが展開されます。
このどっちつかずの回答に児童のイライラが募るのは3月のときと同じです。まあ、それこそがこちらの作戦なわけですが。そこから子どもたちは
「あなたはどう考えるのですか」
「あなただったらどうするのですか」
「早く教えて下さい」
などなど質問を考えるのですが、Bingの答は煮えきりません。
しかし、ちょっとひねった質問をする子も。
「自分はこう考える」と伝えれば、相手の出方も変わるのではないか、と思ったわけですね。(この辺り、もう少し年齢が上ならプロンプトの書き方の話に繋げられそうですが、小4ですからね…。)しかし、それでもBingの答は変わりません。
すると前にBingが答えたことに引っかかる部分を見つけた子がいて、「方法ってどんな方法?」と聞いてみました。すると、
ここから子どもたちは「伝えるなら電話?メール?直接、会ったとき?」という問題に話題をシフトしていきます。この伝え方だったら、相手はこう思うのではないか。ここに気をつけて伝えるといいのではないか等々。もうこの教材の道徳としては十分かな、という感じです。
子どもたちが根拠を持って自分の立場をハッキリさせることができたところで、Bingを「創造性」モードにします。すると。
「私なら伝えると思います」とBingが自分の意見を述べたことに歓声が上がります。
「そうそう、そうだろう!」
「あー、その言い方、同じ!」
等々。肯定的な、どこか嬉しいような声が上がりますが、ここが大切なところです。
担任「ねえ、AIが最初からこれを出していたら、どうなっていたかな?」
児童「え…」
担任「『ああ、そうなんだ』って思っていなかった?」
児童「…思っていたかもしれない」
児童「でも、いいじゃないですか。AI、いいこと言ってるんだから」
担任「今はね。だけどAIっていつでも正しいっけ?」
おそらく、ここで子どもたちの頭には前日の「白いぼうし」の読書感想文が頭に浮かんだことでしょう。
児童「…正しくないこともある」
担任「だよね。でも、最後のAIは正しいと思ったわけでしょう?それはどうして判断できたの?」
児童「だって、みんなで色々言ったりして…」
担任「そう、考えたからだよ。君たちがこの授業で考えたから。」
児童「考えたから?」
担任「そう、ここまで必死に考えから、最後にAIが出してきた答えをきちんと受け止めることができているんだよ。何も考えないで答えだけもらって納得しちゃうのとはわけが違う。それって、すごく大切なことなんだよ。」
さあ、この三回の授業を通して、児童の中のAIに対する考えはどうなったでしょうか?色々な感想がありましたが、最大公約数的なものを一つ紹介しておきましょう。
「AIは、多くの情報を持っていますが、分からないところなどは、適当にしてしまい、本当のことではないものを伝えてしまうことがあるので、『その情報は本当でないものもあるかもしれない』とすべては信じないで付き合っていくのがいいと思います。」
ちょっとネガティブな想いを持たせすぎたかもしれません。でも、凄いところはこれからいくらでも見せられますからね。生成AIとの付き合い始めはこのくらいでいいのではないでしょうか?
3日間の授業が終わった後に「AIについてどんなイメージをもっているか」について聞いてみました。
「作業が速い」と「多くの情報を持っている」が同率一位。でも、それに続くのは「できることとできないことがある」。
どうでしょう? 生成AI導入としては、悪くないと思うのですが?
※タイトル画像はBing image creatorに「生成AIについて勉強を始めた小学生が明るい未来を見つめている姿を日本のアニメ風に。」で描いてもらったものです。