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画家とAIの絵から子どもは何を感じるか(前編)

生成AI時代、人間の価値はどこにあるのか。人間がすべきことは、目指すべきことは何か。それを考えるのは、これから生成AIと共に人生を歩む子どもたちであるべきであろうと考えて行った授業実践について書きます。

プロの画家と生成AIに同じプロンプトで絵を描かせたら? それを見て子どもたちはどう思ったか? そこから我々が考えるべきことは何か?

長田さん登場

今回の実践、2回の授業で構成したのですが、1回目の授業は年末の12月20日に行いました。このときのテーマは、とにかくプロの画家の描いた絵を見て「画家の描いた絵ってこういう感じか」というのを掴むこと。

4枚の絵を持って教室にやって来てくれたのは長田絵美さんです。

長田さんには前にも2019年のICT✕インクルーシブ教育セミナーでご協力いただいたことがありました。

最初は4枚の絵に布をかけてあったのですが、それを取っていく度に子どもたちからは「オー!」「へー!」と様々な声があがります。

子どもたちが絵について様々、語り合った後に長田さんが登場。子どもたちに「絵を描くときに思っていたこと」などを語ります。これが子どもたちにとってはなかなかに衝撃的。

作者が絵に込めた想い

たとえば、この絵。みなさんはどう感じられますか?

The Reflection (Emi Osada)

子どもたちは「アリクイだ」「水に映っている自分を見ているの?」といったような感想を言っていたのですが、長田さんが絵に込めた想いはこのようなものでした。(長田さんは「絵を見た方が自由に想ってくださればいいけれど、自分としては創作するときにこういうことを想っていました」と説明されていました。)

作者本人による解説

描いているのは動物だけれど、人間の世界を描いているわけですね。この発想に子どもたちは感心することしきり。休憩時間には長田さんの話を聞きたい子の列が途切れませんでした。

同じプロンプトで絵を描いてもらう

さて、ここまでは普通に鑑賞の授業。ここから子どもたちに提案します。
「長田さんとAIに同じプロンプトで絵を描いてもらおう」
さすがに子どもたちもギョッとしていました。「そんなこと頼んでいいの?」という子も。

まあ、それは普通の感覚ですよ。こんなこと、頼める画家は長田さんしかいません。なぜ頼めるか? 彼女、私の卒業生なんですよね(笑)。結婚式のスピーチもしているので、まあ断れないでしょう、うん。

子どもたちも「頼んでいいんだ!」と納得すると盛り上がってきます。どんなプロンプトにするかの話し合いにも熱が入っていました。最終的に投票で選ばれたプロンプトはこのようなものでした。

シマエナガという鳥にしてください、絵具を使ったようにしてください。いい感じの色でお願いします。幻想的にお願いしいます。背景をぼやかして、シマエナガだけはっきり書いてください。背景は森の中にしてください。動物はシマエナガが五匹までお願いします。(飛んでいる姿)油絵でお願いします。白黒ではなくて、カラーでお願いします。

「それ、どんな絵だよ…。」と思わずにはいられませんでしたが、ともかく長田さんには冬休みの宿題(彼女にまた宿題を出す日が来るとは!)で、このプロンプトで絵を描いてくるようにお願いしました。

この日の授業後、子どもたちが書いた感想からいくつかひろってみましょう。

人間に例えて動物の絵を描いていてびっくりした。長田さんの絵にはたくさんのいろいろな感情が詰まっていることがわかった。

今日は、本当に人が油絵で描いた絵を実際に見ました。遠くから見るのと近くから見るのでは、意外とと印象が違ってびっくりしました。遠くから見た時は、木や意外な色で書いている模様だと思いました。でも、近くから見るといろいろな動物がいたりその動物の表情が分かりました。 私も次に絵を描くときには、自分の気持ちやその時の行動を絵を見て分かるようにしたいです。 何色も色を混ぜって色んな絵をかいていてすごいなと思いました。

今日、長田さんの絵をいっぱい見ました。スポンジやふりかけみたいに絵の具をやっている作品がありました。AIが作った物と長田さんの作った物を2ヶ月後に見てみたいです。

こうした感想を読みながら私は「2ヶ月後、AIが描いた絵と長田さんが描いた絵を見比べて君たちはどう感じるのかな?」と思わずにはいられませんでした。(後編に続く)

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