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コロナ、休校、タブレット(3)世界の美術館から自分の好きな絵を紹介する

休校期間中、かなりチャレンジングな課題を出したこともありました。子どもたちはそれによく応えてくれたと思っています。今回はその一つ。「世界の美術館から自分の好きな絵を紹介する」について。

課題の提示

その日の課題はZoomでパワポのスライドを見せながら行いました。30枚くらい使ったのですが、代表的なものをピックアップしつつ再現してみましょう。

スライド4

卒業前の貴重な時間を奪われて学校に行けなくなってしまった君たちは、もしかしたら第二次世界大戦以来の「かわいそうな世代」かもしれない。だって君たちの毎日って下手するとこんな感じでしょ?

スライド16

でも、それで終わったらつまらないよ。第二次世界大戦以来の「たくましい世代」にならない?

スライド5

たくましい世代ってどうしたらいいのだろう? 僕はこんな風に考えているよ。

スライド20

だいぶ感じが違うと思わない? 今日の課題は君たちがたくましくなるための「今だからできる 今しかできない」ことをしてもらおうと思っています。では課題の進め方を発表しよう。今日の課題で必要とされるのはこうした力です。

スライド23

課題の取り組み方はこんな感じ。

1.【2019年版】パブリックドメインで無料!世界の名画500万枚をダウンロードできる美術館サイト16個まとめ にアクセスして、美術館を選びます。
2.好きな絵を選びましょう。手当り次第だと難しいので、何かのキーワードで検索しましょう。
3.絵の画像をダウンロード。
4.パワポに貼り付けて、その絵を見て感じたことを文章に書く。
5.スライドを[ファイル]-[エクスポート]-[ファイルの種類の変更]-[JPEGファイル交換形式]-[名前をつけて保存]で適当なところに保存。
6.保存したスライドをTeams[自分の選ぶ名画]に投稿。(目標、午前中!!)
7.友達のスライドがあがってきたら、それにコメントをつける。

じゃあ、やってみよう。

雑な指示は子どもを育てる、のか

こんな指示で子どもたちは課題に取り組めるのか。これがけっこう取り組めました。何人か質問を送ってくる子はいましたが、ほとんどは自分でどんどん進めていました。紹介されているのは海外の美術館のWEBサイトなので、当然、日本語ではありません。そして僕が課題に取り組むにあたって教えた単語はこれだけ。

スライド27

それでも子どもたちは自力で検索して絵を見て選び、スライドを作っていきました。途中、こんな姑息な裏技は教えましたが。

絵は表示されているけれど保存ができない、ダウンロードができない、という時の裏技。
1.画像の上で右クリックして名前をつけて保存(対象をファイルに保存、かも)
2.WEBページ完全 で例えばデスクトップに保存
3.そうすると、デスクトップにその名前のファイルとは別に、同じ名前のフォルダができているはず
4.その中に画像ファイルがあるよ。

学校で授業をしている時にも感じていたのですが、子どもたちがタブレットで活動しようとしている時、あまり細かい指示は邪魔になるのではないかと思います。「目標さえ明確に示せば、そこにたどり着くための道のりは子どもが自分で切り開いていく」のではないでしょうか。もちろん切り開いていくための道具は用意してやらなければならないわけですが、あとは任せて見ていて、困ったときだけ助けてやる。そんなスタンスがいいように考えています。これは教室でもオンラインでも同じでした。

「雑な指示は子どもを育てる」のです。たぶん。

成果

子どもたちはどんなスライドを作ってきたでしょうか。いくつか紹介しましょう。

どう見る?この絵あなたは

ゴッホの絵に対する感想もいいのですが、これに対する仲間からのコメントもなかなか良かったです。

背景と花の色の違いにまで目を向けられたのはすごいと思う。最後の「上から見るか下から見るかではずいぶん違うなと思った」っていうのに納得した。
自分の考えがなぜそうなったのかを順序立てて説明しているのがいいと思った。
花だけでなく、背景にも目をつけられているのはすごいと思う。しかも、なんで、花の後ろは、薄い水色なのかを考えてるのもいいと思う。

もういくつか紹介しましょう。

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登場人物(?)の顔の表情から状況を推測しているのはいいと思った。

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その人たちが何やっているのか読み取ったり、家の高さなどに注目して位を見極め(?)ているのがいいと思う。
建物の高さの違いから位の違いを考えているのがいいと思った。

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身近な神社の祭りから、この絵にして、さらに、題名とか、絵のにぎやかさに視点を向けたのはいいと思う。
絵をよく見て、疑問を見いだせているのはすごいと思った。
確かに、外国の言葉をたくさん使っている題名なのに日本の絵が描かれているのが不思議。「ドラゴンマスクエンターテイナー」って、何?

再確認した当たり前のこと

どうでしょう? 私は「素晴らしい」と思いました。絵の解釈としてどうなのか、なんてどうでもいいのです。外国の美術館のWEBサイトに行って絵を探す。気に入った絵を見て考える。考えたことを自分の言葉で表現する。友達が表現したものを読んで考えたことを伝え合う。そうしたことがオンライン上で(教師の極めて雑な指示しかない中で)できているわけです。これ、情報活用能力と言っていいのではないでしょうか?

また、絵をめぐるやり取りでは、実は「男子が女子にコメントする」「女子が男子にコメントする」ということがたくさん起こっています。教室ではほとんど話したところなんて見たことのないような二人がとても高度な意見のやり取りをする。そういう場面がいくつも見られました。オンラインだと照れも躊躇いもなくなるのでしょうか。

子どもの声も入っているのでここでは公開しませんが、実は何人か、ムービーを作ってくれた子もいます。Xbox Game Barを起動させ、パワポでスライドショーを流しながら解説するところを収録したムービーです。「時間があったら、全員にこれをやらせてYouTubeチャンネル作って公開したいなぁ」と思ったりしました。

チャレンジングな課題を出すと、それをきっかけにして子どもたちは成長します。そして、教師の方もそこから学びを得て次へ繋げることができます。だから、やはり失敗を恐れずにチャレンジするのが大切なのではないか。「世界の美術館から自分の好きな絵を紹介する」は、当たり前ではあるけれど疎かにしがちなことを再確認させてくれる取り組みになりました。


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