見出し画像

I(いつも)C(ちかくで)T(たすけになる)

ICTは何の略?

ご存知のようにICTは、 “Information and Communication Technology” の略なわけです。でも、我々はあちこちでICTを「I(いつも)C(ちかくで)T(たすけになる)」と言ったり書いたりしています。


願い

我々が取り組んでいるICT×インクルーシブ教育が目指しているのは、「ICTを活用してインクルーシブ教育を実現する」ということです。そのために、学習者用デジタル教科書やらAIスピーカーやらロボットやらマイクラやら、色々なものを使って様々な試みに取り組んでいるのですが、その全てがうまくいくわけでは、もちろんありません。

「これ、もう一工夫、必要だったね」という時もあれば、「ここは違うアプリの方がはまったんじゃない?」ということもあります。いつもいつもICTが有効なわけではありませんし、それを使うことが目的になってもいけないでしょう。でも、それが子どもの学びを救うのなら、その可能性があるのなら、我々は躊躇わずにICTを使っていきたいと考えています。  

そして、学びに困難を抱えた子どもたちが「大丈夫、僕にはICTがあるから!」と思えるようになってくれればな、と願っているのです。

道は遠い

とは言え、そこに至るまでの道のりはかなりありそうです。放送大学の中川一史先生に講師をしていただいた時、「でも、ICTってI(いつも)C(ちょっと)T(トラブルになる)よね」とご指摘を受けました。そう、その通り。ICTって本当によくトラブルを起こします。

私の学級ではひと足早く一人一台が実現していて、子どもたちはSurfaceGoを使っていますが、トラブルフリーの日は、ほぼ無いです(苦笑)。トラブルには色々あります。「キーボードが反応しません!」といったハードウェアに由来するものもあれば、「なんかずっと反応がありません」といったソフトウェアに由来するものがあり、「ログインできない!」といったクラウド環境に由来するものもあれば、「充電があと2%しかありません...」といった使っている子どもに由来するものもあります。

これを教師が一人で全て解決しようとすると、発狂します。いや、もしかしたらそれを笑って全てこなせる御仁もいらっしゃるのかもしれませんが、私は無理です。そんなことをしようと思ったら絶対、機嫌が悪くなって、無意味に子どもに当たり散らしたりするでしょう。

トラブルを逆手に取る

では、どうするか。子どもにふるのです。

「Wordでルビを削除したい時ってどうすればいいの?」
「ああ、それは○○君が知ってるよ」
嘘です。○○君がそのやり方を知っているかどうかなんて私は把握していません。私が把握しているのは、「この子と○○君が話せばきっと解決方法を自分たちで探すだろうな」ということだけです。

「マイクラで僕のワールドに入れない子がいるんだけど」
「マイクラのバージョンが違うんじゃない?アップデートすれば?」
「アップデートってどうやるの?」
「知らない」
嘘です。知っています。でも、子どもって教えられたことはすぐ忘れるけれど、自分で調べたことは忘れません。だったらなるべく自分で調べさせた方がいいでしょう。この子は、ワールドに入れない子と二人でそれを探り当てました。

「みんなにアンケート取りたいからフォームの作り方、教えて」
「やだ」
「なんで?!」
「忙しいから」
嘘です。暇です。忙しそうなフリしながら昨日のF1の結果を見ているだけだったりします。
「すーさんってサイテー」
と言って顔をしかめた子に近くの子が声をかけます。
「それ、私、わかるよ!」
「教えて!」
「うん!」

インクルーシブ教育は雰囲気作りから

思うに、インクルーシブ教育が教室で展開されるために必要なのは、インクルーシブな雰囲気ではないでしょうか。そういう雰囲気を学級の中に醸成するのが担任の腕の見せ所なのかもしれません。

先の例で言えば、私の嘘が引き金となって、子どもたちの間に「できないこと、わからないことがあったらお互いに教え合う」という雰囲気が醸成されたのなら、それはそれで成功なのだろうと思います。トラブルを起こすICTは、確かに「I(いつも)C(ちょっと)T(トラブルになる)」ですが、それはそれでインクルーシブ教育に役立つのです。

ということで、高い性能を発揮しても、トラブルを起こしても、どちらにしても「ICT×インクルーシブ教育」は成立します。ですが、やっぱりICTはトラブルフリーがいいですね。そして、いつも子どもたちに自信を与えてくれるデバイスであって欲しいな、と思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?