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力不足

「AI特別授業」という記事を前に書きました。

この授業を受けた子たちは、既に僕の手を離れているわけですが、このクラスの終盤、「AI特別授業」を受けてこんな学級通信を書きました。一部抜粋します。

さて、4年生の生活もあとちょっとで終わりです。今日、水曜とあって、木曜の終業式で終わりだものね。ということは、僕が君たちに何か教えたり伝えたりすることができるのもあとわずかということです。そこで、前に聞いたことを改めてみんなに聞いてみたい。みんなは、なぜ学んでいるのですか?

前に答えてもらったときは、こんな答えが多かった。「いい学校に進学するため」「将来、役に立つから」「将来、自分のやりたい職業につけるように」等々。うん、でもね、君がやりたいと思っているその仕事、君が大人になったときにあるかどうかはわからないよ。

たとえば「ケーキ屋さんになりたい!」と思っているとする。阪口さんのお話で「バームクーヘンを作るAIの話」があったよね? バームクーヘンを人間の職人より上手に作れるなら、いずれ全てのケーキはAIの方が上手に作れるようになってしまっているかもしれない。

じゃあ「ケーキ屋さんになりたい!」という夢は捨てた方がいいのか? 僕は、そうは思わない。確かに「美味しいケーキをたくさん作って売る」だけだったらAIの方がうまくできるようになっているかもしれない。でもAIには決定的にできないことがある。それは何か。

「もっと美味しいケーキを作りたい!」と願うことです。だってAIは統計的に効率的な答えを出すだけで、そこに「願い」なんてないのだもの。「もっと美味しいケーキを作りたい!」と願うことは人間にしかできない。もちろん、その「願い」を実現するのにAIが強い味方になってくれることは間違いないでしょう。そういう意味で、阪口さんもおっしゃっていたようにAIとは仲のいい友達でいた方がいいと思う。だけど、AIと仲良くなるためには、君たちの中に「願い」がないとね。

「いい学校に進学するために学ぶ」「将来、役に立つから学ぶ」「将来、自分の望む職業につけるように学ぶ」というのは、「願い」として強いものかな? ちょっと弱いんじゃないかな、と僕は心配している。だって「したい!」がないもの。

だからね、僕は君たちが「なぜ学ぶのですか?」と問われたとき、「自分が学びたいから学んでいるのです!」と答えるようになって欲しいな、とずっと思ってきた。今、この瞬間もそう思っている。君たちの担任でなくなってからもずっと思い続ける。

申し訳ないけれど、僕はそんなに有能な教師ではないので、君たち全員を「自分が学びたいから学んでいるのです!」と言い切れるところまで育てることはできなかったな、と思う。でも、AIについて知ることが出来た君たちは、4月からの高学年生としての生活の中で、きっと「自分が学びたいから学んでいるのです!」と言えるようになるよ。その姿を見られる日がとても楽しみです。

最後は偉そうに書いていますが、要するに「力不足でごめんなさい」ということなのです。たった一年。されど一年。力不足な面は、今更どうにもならない部分もあるわけですが、足りないなりに全力を尽くすことはできるはず。こちらも「したい!」と願い続けて仕事にあたりたいと思います。

※タイトル画像は例によってBing Image Creatorに“Clenched fist, middle aged, male, teacher”で描いてもらいました。


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