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スピードアップと深化をAIで


紹介されました

先日、東京大学 エドテック連携研究機構 生成系AIと教育環境研究プロジェクト(GENEE)の主催で開催された「生成AI時代の情報教育」というシンポジウムで、堀田龍也先生が私の実践を紹介してくださいました。

ちなみに、この実践に関しての詳細はこちら。

研究者にとって論文を引用されることが実績であるように、実践者にとっては自分の実践がこうして引用されることは大きなことです。ますます頑張らないとな、と思います。

ということで、このところ集中的に取り組んでいるのが「生成AIを活用した授業のスピードアップと深化」です。

授業のスピードアップと深化

どの授業でもそうですが、「何かの課題に焦点を当て、それを児童が考え、その考えを可視化して共有する。それによって更に考えを深める。」ということを狙っています。

この一連のプロセスの中で限界を感じていたのが「児童が考え、その考えを可視化して共有する」という部分。

ICTが入ってくる前は、一人ひとりに聞くか、紙に書かせるよりなかったので非効率なことこの上ありませんでした。ICTが入ることで、この部分はかなり改善されたと言っていいでしょう。全員の考えを集約して一気に共有することができるようになりました。

とは言え。私の学級は35人です。全員で考えを共有したとして、それを各自が把握するのには大変な時間がかかります。

もちろん時間をかけて友達の考えを読み、それにコメントを付け合うこともたまにはあっていいでしょう。しかし、毎回、それをやっていたらどれだけ授業時数があっても足りません。子どもの方も、毎度毎度友達の考えを読まされるのはキャパオーバーでしょう。

では、どうするか。これまでは場合によっては私がダイジェストしていました。子どもたちの成果物やふり返りの中から「これは!」と思うものをいくつかピックアップして子どもたちに提示し、そこから次の課題を導き出す。そんな方法です。

しかし、私の情報処理能力もそんなに高いわけではありません。45分の中で「考えさせる→集約→分析→ダイジェストの提示」を全て行うのはかなり厳しいです。

そこで、これまでは集約までで授業を終え、子どもが帰ってから分析し、翌日の授業でダイジェストを提示する、という方法を取っていました。国語などはこれでいいのですが、そうはいかないものがあります。何か。そう、道徳です。

道徳は基本的に1授業1テーマなので、その45分の中で決着をつけねばなりません。私にとっては「可視化、共有化を高度にすればするほど教師の限界を超える」のが道徳なのです。

ここに生成AIの出番があります。「分析」を生成AIにやらせれば、授業のスピードアップを図るとともに、子どもたちの思考を更に深化させることが出来るのではないか。そう考えたのです。

授業でのトライ

実際の授業では、どのようになるか。道徳の教科書に「つまらないな」という話があります。ざっくり、こんな話です。

信二、さとし、りょうの3人組が、新しい公園に最新式の遊具があるので行ってみようということになる。ところが当日になって、りょうが不参加と知って信二は「3人で遊べると思ったのに」とがっかり。さとしは「りょうがいないからかな」と考える。公園に行ってみたらあったのは幼児向けの遊具。つまらなくなって帰ろうとするところに、同級生のめぐみが通りかかる。どうだった?と聞かれて「つまらなかった」と答え、さとしに同意を求めるが、「信二はりょうがいないからつまらないのだ」と考えるさとしは何も言わない。それにいらつく信二。翌日も二人は遊べない。

まず話を読む前に「友達に言いたいことを言えるようになるためにはどうしたらいいでしょうか。」ということについての児童の考えをオンラインフォームで集めておきます。お話を読み、私が発問をして子どもたちがグループで議論している間に、先のオンラインフォームの結果(児童の個人情報を削除したExcelファイル)をChatGPTに分析させます。

その結果を、グループでの話し合いが終わった児童に返します。AIの返答は長いので、大事なところをピックアップして児童に見せます。

この結果を見た子どもたちから声があがります。
「そりゃ勇気を出せればいいけれど、それができないから大変なんだよ」
そこで子どもたちに「勇気を出して言えるためにはどうしたらいいか」ということを問います。すると各グループから以下のようなアイディアが出てきました。

これをAIに入れて妥当性を吟味させれば、児童に考えさせる材料になったのだろうと思いますが、さすがに時間切れ。この後、ふり返りを書いて授業を終えました。

授業の評価もAIで

さて、この授業、AIはどう評価してくれるでしょうか。以下のようなプロンプトを入力してみました。

これに対する回答、かなり長かったので全ては載せませんが、かなり納得のいく回答であったことは書いておきます。一部、抜粋するとこんな感じですね。

いかがでしょうか。私としては、生成AIを活用することで児童にどんどん考えるネタを与えることができるので、授業そのものがかなりスピードアップしたように感じています。また、その授業の評価もさっと得られるので、授業研究も以前より効率的に進められているように思います。

「生成AIを使うと人間は考えることをやめてしまうのではないか」というような指摘を何度か見たことがありますが、私の実感は真逆です。生成AIの登場で教師はますます考えるようになりましたし、授業中の児童も以前よりずっとたくさん考えているように思います。この生成AIとの付き合いが続いていった後、人類にはどのような変化が起こるのでしょうか。

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