お はよう おやすみ

廊下に続くドアが開く音がしたので、スマホの画面から目を離した。

ボサボサになった髪と、まだ半分も目覚めていないだろう顔。だっさい部屋着。週末の朝を十二分に堪能したようだ。

さむい… さむい…

と、なんとか聞き取れるくらいの声量でモゴモゴ言いながらこっちに歩いてくる。

あ、力尽きた。

人をダメにするソファー(クッション?)に倒れこんだ背中から気配が消えていく。

ダメだこりゃ。

よいしょ と立ち上がって床暖房の温度を少し上げ、隣のソファーに腰掛けた。寝ぐせ頭がくるりと動き、へらへらした顔がこちらに向く。

はよー

おはよ、と返して 同じ体勢になってみた。眠そうな顔が近い。じんわりとお腹のあたりが温かくなる感覚。

ソファーの下のとこがたまらんのだよねえ

真似してソファーと床の間に腕を突っ込んでみると、なるほど たしかに。腕を伸ばして きみの指に触れた。

今日は何しようか

駅前にできたカフェ行きたいなあ

靴下に穴空いたから、新しいのほしいな

風強いから気をつけないとねえ

重ねられた手が ソファーにうまった頭が床に落ちたからだが ゆっくりと溶けていく。ああ 今日もあたたかい。