『麒麟がくる』3 逃げよ信長

今週の『麒麟がくる』も、とてもおもしろかった。フィクションが史実を超えるとはこのことを言うのではないかと思う。浅井長政によって後方から挟み撃ちとなり、その情報を信長の家臣ではない将軍お側衆の十兵衛光秀が信長に知らせ、退却しようとしない信長を「信長様には生きてもらわなければなりません!」と強く説得する。(佐々木蔵之介)籐吉郎が、しんがりを勤めるのは知っていたが、十兵衛に自分が妹にした仕打ちを訴えて、自分をしんがりにしてくれと懇願するという場面は想像できなかった。そして、十兵衛と二人で3万の軍勢のしんがりを勤めて、兵を温存するというのも池端俊策の想像力のなぜるわざといえる。

ラストシーン近くで、「生きておれば次があります!」という十兵衛に対し、「生きておれば次があるか?!」と二人で笑うシーンも見事であった。

 比叡山焼き討ちという当時としては、とんでもないことをしでかす信長だから100年もの間さまざまな魑魅魍魎の跋扈を許した後期室町幕府を倒すことができたのだろう。奈良時代の終わりに寺社の勢力が強大になって、平安京に遷都した事態は800年近く経っても比叡山の覚恕を象徴とする勢力に残っていたということなのだろう。朝倉義景が「死を恐れぬ一向門徒とは二度と闘いたくない!」と言って姉川の敗戦の後、叡山の覚恕を頼るわけだが、覚恕と摂津晴門の密談を聞くに及んで、信長は叡山焼き討ちを決意する。ここから、一向門徒との果てしない戦いが始まる。

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